裁判所を通じて借金の支払い義務を免除してもらう自己破産には、大きく分けて管財事件と同時廃止事件という2つの形式が存在します。同時廃止事件は管財事件に比べて費用が安く、解決までの期間も短いため、個人の破産においてはこの手法の適用を目指すことが一般的です。今回は、同時廃止事件の概要について、適用の流れやかかる費用も併せて解説します。
自己破産の同時廃止事件とは?
自己破産における同時廃止事件とは、債権者に配当できるほどの財産が、破産を申し立てた人にないことが明らかな場合に、破産手続きの開始と終了を同時に行う制度を指します。同時廃止事件として受理されるためには、主に以下の3つの条件を満たしている必要があります。
所有している資産の総額が基準を満たしていないこと
自己破産の同時廃止事件の適用条件の1つめは、本人が所有している資産の総額が裁判所によって定められている基準を満たしていないことです。ただし、この基準は管轄の裁判所によって異なります。
免責不許可事由に当たる疑いがないこと
自己破産の同時廃止事件を適用する2つめの条件として、免責不許可事由に該当する疑いがないことが挙げられます。借金の原因がギャンブルや浪費などである疑いが生じると、同時廃止が適用される可能性は低いです。こうした免責不許可事由が疑われる場合には、財産がないことが認められていても、破産管財人が選任されることがあります。
個人事業主ではないこと
同時廃止事件が適用される3つめの条件は、破産を申し立てる者が個人事業主ではないことです。破産を申し立てる者が個人事業主である場合は、原則として管財事件となります。給与所得者である場合には、破産管財人を立てて調査を行わなければならないほど資金の流れが複雑ではないことが多いため、同時廃止事件が認められやすくなります。
自己破産の同時廃止事件の流れ
同時廃止事件が進められる手順は、以下の通りです。
必要書類の収集
自己破産を検討し始めたら、自身の資産と債務を調査して洗い出す必要があります。また、借金が増えた経緯などを時系列順に整理しておくことも重要です。家計簿を数ヶ月にわたって作成することは、現在の収支に問題がないことを証明するために欠かせません。
裁判所への破産申立て
破産申立てに必要な書類の準備ができたら、管轄の地方裁判所に提出します。この際、同時廃止を希望する旨の上申書を添付することが一般的です。裁判所は提出された資料を審査し、管財人を立てる必要があるかどうかを判断します。
同時廃止の実施
裁判所に同時廃止の要件を満たしていると判断されれば、破産手続きは開始と同時に終了します。この決定が出された事実は、破産手続開始時と免責許可決定時に官報に掲載されます。
支払い義務の免責
同時廃止が行われたら、借金の支払い義務を免責するための審査に入ります。その後、裁判官が最終的な確認を行う場が設けられます。本人は裁判所に出頭して、これまでの反省や今後の更生の意欲について確認を受けます。裁判所から免責を許可されることで、非免責債権を除いた借金の支払い義務が消滅します。
自己破産の同時廃止事件にかかる費用
同時廃止事件は、管財事件よりもかかる費用が安くなります。個人が自己破産する場合、まず支払うべきものはおおよそ次の通りです。
収入印紙代:1,500円
郵便切手 :3,000円~5,000円
官報公告費:1万円~2万円
管財事件であれば必要な20万円以上の管財人への報酬が削減できるため、同時廃止事件が適用されればコストを抑えられます。
同時廃止事件を進めるうえでの注意点
同時廃止はかかる期間や費用を抑えられるという点がメリットですが、不注意でその機会を逃してしまう場合があります。具体的には、以下の点に注意してください。
資産の申告漏れを避ける
資産の申告漏れが発覚すると、同時廃止を受けることは難しくなります。このような場合には、強制的に管財事件へと移行させられる可能性が高いです。
偏頗弁済をしない
偏頗弁済とは、借金返済が困難な状態になった後、特定の債権者にだけ優先的に返済や担保提供を行う不公平な行為です。弁護士が債権者に受任通知を送付すると返済は一時的に停止しますが、中には返済を要求してくる業者もいます。このとき、要求に従って特定の業者にのみ支払うと、偏頗弁済とみなされて自己破産が認められなくなる可能性があります。そのため、債権者から連絡が来た場合には明言を避けて弁護士に報告し、注意を行ってもらうことが重要です。
まとめ
今回は、自己破産の同時廃止事件の定義、手続きの流れ、およびかかる費用について解説しました。同時廃止事件は、債務者が債権者へ配当できる財産を持っていない場合に有効な制度です。しかし、その適用を受けるためには、自身の財産状況の把握や免責不許可事由がないことの証明が求められます。自己破産を検討されているのであれば、早めに弁護士に相談し、自身の状況にあったアドバイスを受けることをおすすめします。