離婚調停が成立しないケースは珍しくなく、その場合にどのように対応すべきか悩む人も多いと思います。
いきなり離婚裁判に進むのは抵抗がある場合でも、検討すべき選択肢があります。
本記事では、離婚調停が不成立になった後の選択肢や対応方法について詳しく解説します。
離婚調停とは
離婚調停とは、夫婦間の話し合いだけでは離婚について合意できない場合に、家庭裁判所で話し合うことで双方が合意、円満に解決することを目指す手続きです。
離婚は、夫婦の間で離婚に関する条件を話し合い、合意した上で離婚届を提出する形式(協議離婚)が一般的ですが、夫婦間での話し合いがまとまらなかったり、話し合いができない状態であったりした場合は、家庭裁判所での調停手続きを利用することができます。
裁判を回避し、夫婦間の問題は話し合いによって双方が納得して解決するのが望ましいという考えから、裁判に進む前に調停手続きを行うことが法律で義務づけられています。
離婚調停では調停委員が間に入り、双方の意見を聞くことで財産分与や養育費など、離婚の条件について調整を行います。
離婚調停が不成立になるケース
家庭裁判所が公表している司法統計では、離婚調停を実施した件数に対する不成立の割合は約16~17%となっています。
離婚調停が不成立になる主な原因としては、以下のようなものがあります。
- 相手が離婚を拒否している
- 離婚理由に納得していない
- 財産分与や養育費などの離婚条件で折り合わない
- 調停に出廷しない
これらの理由により、裁判官が離婚が成立する見込みがないと判断した場合は、調停が不成立となります。
離婚調停が不成立になったら取れる選択肢
それでは、離婚調停が不成立になったらどのような選択肢があるのでしょうか。
順番に見ていきます。
1.協議離婚への再挑戦
まずは、再び夫婦間で話し合いを試みることが考えられます。
夫婦の話し合いによる協議離婚は裁判所の手続きが必要なく、時間や費用などを削減できるというメリットもあります。
また、離婚調停を経たことにより、より相手の意見や主張がわかるようになり、当初の話し合いよりスムーズに進む可能性があります。
ただし、感情的な対立が強く冷静に話し合うことが困難な場合は、弁護士を介して協議する方法もあります。
2.ADR(裁判外紛争解決手続)を利用する
家庭裁判所の調停では解決できなかったが、裁判へ進むのはハードルが高いと感じるようであれば、ADRの利用も視野に入れると良いでしょう。
ADRとは、法務省が管轄する民間の調停機関です。
ただし、ADRを利用して合意に至った場合に作成する合意書には、法的な効力がありません。
取り決めた内容が履行されない場合の強制執行などはできないため、注意が必要です。
なお、ADRを利用して離婚した場合は調停離婚ではなく、協議離婚となります。
3.離婚裁判を申し立てる
離婚裁判は、裁判所が判決によって強制的に離婚を成立させる方法なので、夫婦で合意していなくても離婚が可能ですが、一方で法律により定められた離婚理由に当てはまらない場合は離婚できません。
裁判による離婚は、最終手段と考えておきましょう。
離婚裁判に進む場合の注意点
最後に、離婚裁判を選択した場合の注意点を解説します。
1.離婚裁判は調停以上に時間や費用がかかる
離婚裁判には、離婚調停以上に時間と費用がかかります。
離婚裁判では訴訟の提起後、審理において主張や反論などを行いますが、この期間は1年以上かかる場合があります。
裁判費用については、1万6,000円~2万円程度かかり、訴訟費用の他、財産分与や養育費などについて請求する場合の費用、裁判所からの書類送付に必要な費用などが含まれます。
また、弁護士費用として60~120万円程度必要ですが、弁護士に依頼せず自ら裁判で争うことは現実的ではありません。
基本的に裁判費用を相手に請求することはできないため、注意が必要です。
2.離婚理由を証明する必要性
上述したように、裁判による離婚は強制的に離婚を成立させる方法なので、民法770条に規定された「法定離婚事由」のいずれかに該当する必要があります。
法定離婚事由は以下の5つです。
- 不貞行為(浮気・不倫)
- 悪意の遺棄(正当な理由なく同居義務や協力義務などを履行しない)
- 相手の生死が3年以上明らかではない
- 相手が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- その他、婚姻を継続しがたい重大な事由がある
その他、個別の事情により離婚できるかどうかが決まるため、裁判を起こしたからといって必ず離婚できるわけではない点に留意しておく必要があります。
まとめ
離婚調停が不成立になった後の選択肢や対応方法について解説しました。
調停の不成立は離婚が成立しないことではなく、次の手段を選ぶタイミングであるとも言えます。
裁判や再交渉など、最適な方法を選ぶために専門家の助けを借りることも重要です。
離婚問題においては冷静な対応と適切な次へのステップのために、弁護士への相談も検討してみてはいかがでしょうか。