弁護士法人金法律事務所

コラム

遺産分割協議で遺産を取得しない場合と相続放棄の違いとは?

24404654_s

身内が亡くなり相続が発生した際に、受け取りの辞退を検討する場合があるかと思います。
このときの手段として、遺産分割協議の中で自分の取り分をゼロにすることと、相続放棄をするという2つの方法があります。
今回は、遺産分割協議で遺産を取得しない場合と相続放棄をする場合の違いなどについて解説します。

遺産分割協議で遺産を取得しない場合とは

遺産分割協議とは、相続人全員が集まって、亡くなった人の財産を誰にどのように配分するかを取り決める話し合いのことです。
遺産を取得しないケースは、特定の相続人が遺産を相続しないことに合意することで生じます。
この場合、遺産を取得しなくても法律上の相続人であることに変わりはありません。
したがって、家庭裁判所へ出向く必要はなく、親族間での話し合いと遺産分割協議書への署名捺印だけで完結します。

相続放棄とは

相続放棄とは、被相続人が亡くなったことを知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所に対して相続人にならないという意思表示を行う公的な手続きのことです。
家庭裁判所によって受理されると、その人は最初から相続人ではなかったものとみなされます。
相続放棄には、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内という期限が定められています。
この期間を過ぎてしまうと、原則として放棄を選択することができません。
相続放棄を行うと、本来その人が受け取るはずだった相続権は次順位の相続人へと移ります。

遺産分割協議で遺産を取得しない場合と相続放棄の違い

遺産分割協議で遺産を取得しないことを選択した場合と相続放棄をした場合の違いは、主に次の3点です。

債務に対する責任

遺産分割協議で遺産を取得しない場合と相続放棄の違いとして被相続人の残した債務に対する責任が挙げられます。
遺産分割協議で一切の遺産を取得しなかったとしても、法律上の相続人の立場であることには変わりはありません。
遺産分割協議の合意内容は、あくまで相続人間で有効となる取り決めであり、債権者にその効果は及びません。
したがって、一切遺産を取得していなかったとしても、法定相続分の割合に応じて、債務の支払い義務が生じます。
法定相続分に応じた債務の支払い義務を回避したい場合には、債権者と連絡を取り承認してもらう必要があります。
一方で、相続放棄を行っていれば、最初から相続人ではないため借金を支払う義務は発生しません。

家庭裁判所での手続きの必要性

遺産分割協議で遺産を取得しないことを選択した場合、家庭裁判所で特別な手続きを行う必要がありません。
一方、相続放棄をする場合は家庭裁判所で手続きを行う必要があります。
期限内に戸籍謄本などの身分証明書類を揃え、申立書を作成して受理されなければなりません。

遺産分割協議で遺産を取得しないか相続放棄をするかの判断

特定の親族にスムーズに遺産を相続させたい場合は、遺産分割協議で遺産を取得しないと決めることが多くなっています。
法的な手順を踏むことなく、比較的容易に手続きが進むためです。
しかし、遺産分割協議で遺産を取得しないことには、被相続人の借金が発覚した際に支払い義務を負うリスクがあります。
そのため、ご自身が遺産を継承しないことに納得されているのであれば、相続放棄をすることが賢明です。

遺産相続を辞退する際の注意点

遺産相続を辞退する際には、自身に適した手法を選択するために、以下の点に留意してください。

単純承認とみなされる行為

相続放棄を検討している間は、被相続人の財産に手をつけてはいけません。
そういった行為をした瞬間に相続放棄の権利を失うことになります。

相続放棄による返済義務の移動

自分が相続放棄をすると、次順位の親族が新たに相続人となります。
負債が理由で放棄をするのであれば、次順位の親戚に対して相続を放棄した理由を通知することが重要になります。

まとめ

今回は、遺産分割協議で遺産を取得しない場合と相続放棄の違いや、どちらの手法を選択するかの判断基準、および注意点を解説しました。
相続放棄の申立てや遺産分割協議書の作成を個人で行うことに不安を感じた際には、弁護士に相談してください。
特に、借金があるのかどうか不透明な状況では、弁護士に調査を依頼すると効率的です。

自己破産の同時廃止事件とは?流れや費用も併せて解説

27775243_s

裁判所を通じて借金の支払い義務を免除してもらう自己破産には、大きく分けて管財事件と同時廃止事件という2つの形式が存在します。
同時廃止事件は管財事件に比べて費用が安く、解決までの期間も短いため、個人の破産においてはこの手法の適用を目指すことが一般的です。
今回は、同時廃止事件の概要について、適用の流れやかかる費用も併せて解説します。

自己破産の同時廃止事件とは?

自己破産における同時廃止事件とは、債権者に配当できるほどの財産が、破産を申し立てた人にないことが明らかな場合に、破産手続きの開始と終了を同時に行う制度を指します。
同時廃止事件として受理されるためには、主に以下の3つの条件を満たしている必要があります。

所有している資産の総額が基準を満たしていないこと

自己破産の同時廃止事件の適用条件の1つめは、本人が所有している資産の総額が裁判所によって定められている基準を満たしていないことです。
ただし、この基準は管轄の裁判所によって異なります。

免責不許可事由に当たる疑いがないこと

自己破産の同時廃止事件を適用する2つめの条件として、免責不許可事由に該当する疑いがないことが挙げられます。
借金の原因がギャンブルや浪費などである疑いが生じると、同時廃止が適用される可能性は低いです。
こうした免責不許可事由が疑われる場合には、財産がないことが認められていても、破産管財人が選任されることがあります。

個人事業主ではないこと

同時廃止事件が適用される3つめの条件は、破産を申し立てる者が個人事業主ではないことです。
破産を申し立てる者が個人事業主である場合は、原則として管財事件となります。
給与所得者である場合には、破産管財人を立てて調査を行わなければならないほど資金の流れが複雑ではないことが多いため、同時廃止事件が認められやすくなります。

自己破産の同時廃止事件の流れ

同時廃止事件が進められる手順は、以下の通りです。

必要書類の収集

自己破産を検討し始めたら、自身の資産と債務を調査して洗い出す必要があります。
また、借金が増えた経緯などを時系列順に整理しておくことも重要です。
家計簿を数ヶ月にわたって作成することは、現在の収支に問題がないことを証明するために欠かせません。

裁判所への破産申立て

破産申立てに必要な書類の準備ができたら、管轄の地方裁判所に提出します。
この際、同時廃止を希望する旨の上申書を添付することが一般的です。
裁判所は提出された資料を審査し、管財人を立てる必要があるかどうかを判断します。

同時廃止の実施

裁判所に同時廃止の要件を満たしていると判断されれば、破産手続きは開始と同時に終了します。
この決定が出された事実は、破産手続開始時と免責許可決定時に官報に掲載されます。

支払い義務の免責

同時廃止が行われたら、借金の支払い義務を免責するための審査に入ります。
その後、裁判官が最終的な確認を行う場が設けられます。
本人は裁判所に出頭して、これまでの反省や今後の更生の意欲について確認を受けます。
裁判所から免責を許可されることで、非免責債権を除いた借金の支払い義務が消滅します。

自己破産の同時廃止事件にかかる費用

同時廃止事件は、管財事件よりもかかる費用が安くなります。
個人が自己破産する場合、まず支払うべきものはおおよそ次の通りです。

  • 収入印紙代:1,500円
  • 郵便切手 :3,000円~5,000円
  • 官報公告費:1万円~2万円

管財事件であれば必要な20万円以上の管財人への報酬が削減できるため、同時廃止事件が適用されればコストを抑えられます。

同時廃止事件を進めるうえでの注意点

同時廃止はかかる期間や費用を抑えられるという点がメリットですが、不注意でその機会を逃してしまう場合があります。
具体的には、以下の点に注意してください。

資産の申告漏れを避ける

資産の申告漏れが発覚すると、同時廃止を受けることは難しくなります。
このような場合には、強制的に管財事件へと移行させられる可能性が高いです。

偏頗弁済をしない

偏頗弁済とは、借金返済が困難な状態になった後、特定の債権者にだけ優先的に返済や担保提供を行う不公平な行為です。
弁護士が債権者に受任通知を送付すると返済は一時的に停止しますが、中には返済を要求してくる業者もいます。
このとき、要求に従って特定の業者にのみ支払うと、偏頗弁済とみなされて自己破産が認められなくなる可能性があります。
そのため、債権者から連絡が来た場合には明言を避けて弁護士に報告し、注意を行ってもらうことが重要です。

まとめ

今回は、自己破産の同時廃止事件の定義、手続きの流れ、およびかかる費用について解説しました。
同時廃止事件は、債務者が債権者へ配当できる財産を持っていない場合に有効な制度です。
しかし、その適用を受けるためには、自身の財産状況の把握や免責不許可事由がないことの証明が求められます。
自己破産を検討されているのであれば、早めに弁護士に相談し、自身の状況にあったアドバイスを受けることをおすすめします。

交通事故において完治・症状固定前に示談交渉をしない理由とは?

22447144_s

交通事故の被害に遭った際、加害者が加入している保険会社から早めに示談を済ませるよう提案を受けることがあります。
しかし、怪我の完治前や症状固定の状態に達する前に示談交渉をすると、不利益を招くリスクがあります。
今回は、完治・症状固定前に示談交渉をしない方がよい理由について解説します。

完治と症状固定の定義

示談交渉のタイミングを考えるうえで、完治と症状固定の状態について正確に把握する必要があります。

完治とは?

完治とは、事故によって負った怪我が適切な治療によって完全になくなり、事故前の健康な状態に戻ることを指します。
この状態になれば、これ以上の治療費が発生することはありません。
損害の全容がこの時点で確定したといえます。

症状固定とは?

症状固定とは、医学的な観点から、これ以上治療を継続しても劇的な改善や回復が見込めないことを医師が判断したことをいいます。
症状固定に達した際に残っている不調は後遺障害となります。
症状固定後は、原則としてそれ以降の治療費を加害者側に請求できません。
この場合、後遺障害の等級認定を受け、その結果に準じた損害賠償請求へ移行することになります。

交通事故において完治・症状固定前に示談交渉をしない理由

交通事故に遭った際に、負った怪我の完治または症状固定前に示談交渉をすると、損害賠償を請求するうえで不利益を引き起こすことがあります。
完治・症状固定前に示談交渉をしない方がよい具体的な理由は、次の通りです。

損害賠償の総額が確定しないため

交通事故で負った怪我の完治・症状固定前では、示談交渉の対象となる損害額が確定していません。
交通事故の賠償金は、主に以下の項目で構成されています。

  • 治療費
  • 通院のための交通費
  • 入通院に伴う諸雑費
  • 休業損害
  • 入通院慰謝料

上記の項目は、治療が終了するまで増え続けていくものです。
通院期間中に示談を行うと、本来もらえるはずだったそれ以降の賠償金を放棄することになります。

後遺障害等級認定が受けられなくなるため

怪我が完治せずに身体に不調が残った場合、適切な等級認定を受けることで賠償金を請求できます。
しかし、この後遺障害等級の申請は、症状固定に達した後に作成される後遺障害診断書がなければ行うことができません。
症状固定前に示談を済ませると、後遺障害はないものとみなされ、補償を求める権利は失われます。

交通事故に遭ったら行うべき示談交渉までの手順

交通事故に遭った被害者が、不利益を被らないために守るべき手順は以下の通りです。

医師による診断を待つ

交通事故による正確な損害の全容を把握するために、担当の医師が完治や症状固定の判断を下すのを待ちましょう。
自身の権利を守るために、医学的な判断が出るまでは治療の手を緩めるべきではありません。

適切な検査を受ける

後遺障害を主張するために、交通事故で負った怪我についての客観的な証拠を得ましょう。
そのために、適切な検査を受けておく必要があります。

保険会社の制度を活用する

治療が長引いて生活費に困った場合には、示談をするのではなく、自賠責保険の仮渡金や任意保険の内払い制度の利用を検討してください。
これらは、最終的な賠償額の内払いとして示談成立前に受け取ることができるお金です。

交通事故に遭った際に弁護士に相談するメリット

交通事故の示談交渉には、法律の知識だけでなく医学的な知識も求められます。
弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。

高い基準での賠償金算出

弁護士は、裁判基準で損害賠償金を算定します。
したがって、弁護士に交通事故の相談依頼すると、依頼しない場合に比べて高い金額で示談が成立する可能性があります。
これは、交通事故の被害者にとって大きなメリットです。

症状固定時期の適正化

保険会社からの治療打ち切り要求があったとしても、弁護士が交渉することで、必要な期間の治療を確保しやすくなります。
これによって、被害者はより適切な損害賠償を受けることが期待できます。

後遺障害認定のサポート

後遺障害認定において複雑な申請手順を弁護士が主導することで、適正な等級が認められる可能性が高まります。
書類の不備で本来認められるべき権利を失うリスクを回避できるということは、弁護士に依頼するメリットであるといえます。

まとめ

今回は、交通事故において完治・症状固定前に示談交渉をしない理由について解説しました。
自身の権利を最大限行使するためには、完治・症状固定後に示談交渉を始めることが重要です。
交通事故の被害者が個人で保険会社とやり取りしようとすると、負担を感じられることも多いでしょう。
そういった場合には、弁護士に相談することを検討してください。

業務委託が雇用契約とみなされるケースとは?違いも含めて解説

26345978_s

働き方の多様化が進む現代では、企業が外部の個人と業務委託契約を締結するケースが増えています。
しかし、形式的には業務委託契約を交わしていても、法的には雇用契約とみなされることがあります。
今回は、業務委託と雇用契約の概要や、業務委託が雇用契約とみなされるケースなどについて解説します。

業務委託とは?

業務委託とは、独立した事業者同士が、特定の仕事や事務処理を目的として対等な立場で締結する契約の総称です。
受託者は労働者ではなく独立した個人事業主として扱われるため、労働基準法による労働時間制限や有給休暇の付与、最低賃金の適用などの対象外となります。

雇用契約とは?

雇用契約とは、労働者が使用者の指揮命令に従って労務を提供し、使用者がこれに対して賃金を支払うことを約束する契約です。
労働者は、企業の規律に従って働く代わりに労働法による保護を受けます。

業務委託か雇用契約かを判断する基準

雇用契約は、経済的に弱い立場にある労働者を守るための社会的な安全装置としての役割を担っています。
そのため、本人が業務委託に同意していても、実態が雇用であれば、法律は労働者としての権利を認めることがあります。
業務委託と雇用契約を区別する具体的な基準として、以下の事項があります。

  • 監督の指揮下にあるか
  • 時間的・場所的な拘束力があるか
  • 他人の介在が認められているか
  • 報酬の対象
  • 費用負担の所在

現場で仕事内容について監督者の具体的な指示を受けている場合や、勤務時間および勤務場所が会社によって制約されている場合には、雇用契約であると判断される可能性が高いです。
また、報酬の対象が成果物ではなく働いた時間である場合や、受託者が業務で使用する備品の経費を負担していない場合にも、雇用における個人的な労務提供に近いとみなされます。

業務委託が雇用契約とみなされるケースとは?

業務委託契約を交わしていても、法的に雇用契約であるとみなされやすいケースを紹介します。
以下の状況に当てはまる場合、企業は雇用認定を受けるリスクがあります。

現場で細かい指示を受けているケース

受託者が現場で社員と同様にタスクを細かく割り振られている場合には、雇用契約であるとみなされる可能性が高くなります。
受託者の裁量が認められない状態は、雇用契約とみなされる典型的なパターンです。

出退勤の管理を受けているケース

受託者がタイムカードで打刻を求められている場合は、雇用契約であると判断されやすくなります。
休暇を取る際に会社の許可を得ることを義務付けている場合も、事業主としての自律性が失われているとされます。

他社の業務を行うことが禁止されているケース

特定の会社以外の仕事を受けることが禁じられている場合は、雇用契約とされやすいです。
独立した事業者であれば、制限なく複数のクライアントを持てることが一般的となっています。

企業規定に従うことが求められているケース

社内の就業規則が業務委託の個人に対しても適用されている場合は、業務委託ではなく雇用契約とみなされやすくなります。
社内行事への参加を強制したり、規律違反に対して措置をとったりすることは、組織の構成員として扱っていることを示します。

業務委託の実態が雇用契約であるとみなされた際のリスク

業務委託として締結していた契約の実態が雇用契約であると判断された場合、企業はペナルティを受けることになります。
具体的に企業が負うリスクは、次の通りです。

未払い残業代の遡及請求

労働者性があることが認められれば、企業は過去の労働時間について残業代の支払いを求められるリスクがあります。
業務委託料として一定額を支払っていても、別途手当が加算されます。

社会保険料の遡及徴収

雇用契約であった場合、社会保険への加入義務が発生します。
会社負担分の保険料を過去分にわたって一括で支払う必要があることに加えて、年金事務所からの調査を受けるリスクが生じます。

解雇制限の適用

業務委託であれば、契約期間の満了や中途解約が比較的容易です。
しかし、雇用契約とみなされれば、契約の打ち切りは解雇に該当する恐れがあります。

社会的信用へのダメージ

業務委託の実態が雇用契約であったと発覚すると、労働基準監督署からの是正勧告を受け、悪質な場合には社名が公表されることもあります。
偽装請負を行っていたとみなされることは、企業の社会的な信頼を損なうことにつながります。

まとめ

今回は、業務委託と雇用契約の概要と、これらを区別する基準、業務委託が雇用契約とみなされるケースについて解説しました。
業務委託契約が成立しているかどうかは、契約書の内容だけではなく現場での実態によっても評価されます。
業務委託の実態が雇用契約であると発覚すると、企業は不利益を被る恐れがあります。
自社の委託状況が労働者性の基準に抵触していないか不安を感じられた場合には、早めに弁護士に相談することを検討してください。

離婚が認められる別居年数とは?目安や準備すべき証拠について解説

3080416_s

日本では、夫婦の一方が離婚を拒否している場合、最終的に離婚を成立させるためには家庭裁判所での手続きが必要となることがあります。
このとき、別居期間の長さは離婚が認められる判断材料のひとつとなります。
今回は、離婚裁判における別居年数の目安、別居を示すために準備すべき証拠などについて解説します。

離婚裁判において別居年数が担う役割

離婚裁判で離婚を認められるには、法定離婚事由のいずれかに該当していることを証明しなければなりません。
法定離婚事由とは、不貞行為や悪意の遺棄などといった婚姻を継続しがたい重大な事由のことを指します。
理由のない別居は、夫婦が双方に負う同居義務違反に当たるため、状況によっては婚姻を継続しがたい重大な事由に当たることがあります。

離婚が認められる別居年数の一般的な目安

離婚が認められる別居年数について明確な基準は定められていませんが、一般的な目安は3年から5年となっています。
ただし、婚姻期間の長さによってこの目安にも変動があることには注意が必要です。
なお、婚姻関係を壊す理由を作った側である有責配偶者から離婚を求めることは、原則として認められていません。
また、別居以外の離婚事由が併存している場合には、別居期間が1年未満であっても離婚が認められる可能性が高まります。

離婚裁判において別居しているとみなされるための条件

離婚裁判において別居年数としてカウントされるためには、住居を別にしていることに加えて、夫婦としての経済的・精神的な依存関係が断絶されている必要があります。
別居期間であるとみなされるための具体的な条件は、以下の通りです。

住居の完全な分離

別居期間を証明するためには、住居を完全に別にしていることが求められます。
同じ家に住みながら別々に生活する家庭内別居のようなケースは、完全な分離とはみなされないおそれがあるため、注意してください。

連絡を絶つ

別居による離婚は、法律上の夫婦であっても実態としてすでに婚姻関係が破綻しているときに認められます。
そのため、離婚を認められるためには、別居期間中に相手方と必要以上の連絡を取らないことが有効です。

性的交渉を断つ

別居期間中に夫婦で性交渉を持つと、関係を修復しようとしたと解釈され、別居期間のカウントがリセットされるおそれがあります。
そのため、離婚を目指す際には、配偶者との接触を避けることが求められます。

別居期間を証明するための具体的な証拠

離婚裁判において、いつから別居が始まったかを正確に立証するための準備は欠かせない役割を担っています。
具体的には、以下のものを証拠として準備することを検討してください。

  • 住民票の履歴
  • 賃貸借契約書
  • 引越し業者の領収書
  • 別居の開始を宣言する知人へのメール
  • 通帳の履歴

離婚を見据えて別居を選択する際に起こりえるリスク

離婚を目指している場合、事前に計画することなく別居を選択すると、離婚裁判において自分の立場が不利になるおそれがあります。
別居を検討する際には、次のことに注意してください。

悪意の遺棄とみなされるリスク

正当な理由なく配偶者を一方的に残して家を出ることは、夫婦の同居義務に違反する悪意の遺棄とみなされるおそれがあります。
悪意の遺棄を行った側は有責配偶者として扱われ、離婚が認められにくくなるリスクがあります。
対策としては、置き手紙やメールで合意形成を試みた記録を残すことが有効です。

共有財産を処分されるリスク

別居後、家に残った配偶者が無断で預貯金を引き出したり、家財道具を処分したりするリスクが想定されます。
そのため、家を出る前に通帳のコピーや不動産の権利証などといった記録を確保しておくことが重要です。
証拠がなければ、後の財産分与で正当な取り分を主張することが難しくなる可能性があることに注意してください。

まとめ

今回は、裁判離婚における別居期間の重要性や、具体的に必要とされる年数、別居を選択するうえでの注意点について解説しました。
別居を理由に裁判を経て離婚する場合、認められるまでに数年単位の時間が必要です。
したがって、早期に離婚を成立させたいのであれば、協議による離婚を目指したほうが良いといえます。
配偶者との離婚を検討している場合には、弁護士に相談することを検討してください。

遺留分侵害額請求の手続きの流れを解説

遺留分侵害額請求の手続きの流れを解説

被相続人の兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分といって、最低限度の遺産の取り分が保障されています。
今回は、遺留分が侵害された場合の手続きの流れなどを解説します。

遺留分侵害額請求とは

遺留分侵害額請求とは、贈与や遺贈により自己の遺留分を侵害された場合に、その侵害額に相当する金銭の支払いを求める権利です。
遺留分侵害額請求権には時効があり、遺留分権利者が相続の開始を知り、かつ、遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから1年間行使しない場合、時効によって消滅します。
また、相続開始の時から10年を経過した場合も、権利が消滅します。

遺留分侵害額請求の流れ

遺留分侵害額請求を行う場合、次のような流れで手続きを行います。

①遺言や生前贈与の確認を行う

遺留分を請求する場合、遺言書を確認し、ご自身の遺留分を誰がどの程度侵害していることを特定する必要があります。
また、遺言書だけでなく、被相続人が生前に行っていた贈与についても確認が必要です。
遺留分を算定する際には、原則として、相続開始前の1年間にされた贈与が対象となります。
ただし、相続人に対する贈与については、相続開始から遡って10年間にされたものであれば、遺留分侵害額を算定する際の基礎財産に含まれます。
したがって、まずは遺言書や、遡って10年間の生前贈与の記録を収集し、ご自身の遺留分が具体的にどれだけ侵害されているのかを正確に計算する必要があります。
この計算には、専門的な知識が必要となるため、弁護士に相談して進めることを検討してください。

②遺留分を侵害した者に請求の意思表示を行う

遺留分の侵害額が確定したら、その遺留分を侵害している者に対して、金銭の支払いを請求する意思表示を行います。
遺留分の権利を行使するためには、侵害された方の意思表示がなければ効力を生じません。
口頭での意思表示でも法的には有効ですが、後の水掛け論を避けるため、書面による意思表示を行った方が良いといえるでしょう。
遺留分の請求をしても相手方から返事がないような場合には、配達証明付きの内容証明郵便を送付してください。
これにより、いつ、どのような内容の意思表示を行ったかという証拠を残すことができます。

③遺留分を侵害した者と話し合いを行う

遺留分侵害額請求に相手方が応じた場合には、話し合いによって解決を目指すことになります。
算定した侵害額の根拠を示し、支払い方法や支払い期限などについて当事者間で合意を目指します。
話し合いがまとまり、遺留分を侵害した者から実際に金銭の支払いを受ければ、この段階で遺留分の請求は完了となります。
なお、話し合いにより合意した場合でも、遺留分の支払いが分割になったり、合意した日から払い込みの日まで期間が開く場合には、未払いを防ぐために強制執行のできる公正証書で合意書を作成するといいでしょう。

④遺留分侵害額調停を行う

話し合いによって合意が得られない場合や、相手が話し合いに応じようとしない場合は、家庭裁判所に遺留分侵害額調停を申し立てます。
調停では、裁判官と調停委員が間に入り、当事者双方の主張を聞きながら、合意による解決を目指して調整を行います。
調停はあくまで話し合いの場であるため、双方が納得できる和解案が見つかれば解決となりますが、相手方が頑なに請求を拒否したり、請求額について折り合いがつかなかったりした場合は、調停は不成立となり終了します。

⑤裁判で争う

遺留分侵害額請求調停が不成立に終わった場合は、最終手段として遺留分侵害額請求訴訟を地方裁判所に提起し、裁判で決着をつけることになります。
裁判では、双方の主張と提出された証拠に基づき、裁判官が遺留分侵害の有無や正確な侵害額を判断し、判決を下します。
判決は法的な拘束力を持つため、判決が確定すれば相手方はその判決に従って金銭を支払う義務を負います。

遺言自体の有効性を争うとき

遺留分侵害額請求の手続きを進める中で、遺言書の内容自体がおかしいと感じたり、被相続人の最終的な意思ではなかったのではないかという疑念が生じたりすることがあります。
たとえば、被相続人が認知症などで判断能力を欠いていたときに作成された遺言書であったり、形式的な要件を満たしていない遺言書であったりする場合です。
このようなときには、遺言無効訴訟を提起するという方法もあります。
遺言無効訴訟は、遺言書が法律上有効ではないことを裁判所に認めてもらうための手続きです。
遺言書が無効と認められれば、その遺言書に基づく遺贈はなかったことになり、遺産分割協議によって分割方法を決めることになります。

まとめ

今回は、遺留分侵害請求の手続きの流れや、遺言自体の有効性を争うときなどの解説をしました。
相続の問題は、家族関係を壊しかねないトラブルに発展することがあります。
火種が小さいうちであれば、不利益を最小限に抑えられる可能性があるため、お困りの方は弁護士にご相談ください。

自己破産しても奨学金の返済義務は残る?

自己破産しても奨学金の返済義務は残る?

多額の借金に苦しみ、最終手段として自己破産を検討する際、奨学金の返済義務がどうなるのかは大きな懸念材料です。
奨学金には保証人がいることが一般的であるため、保証人などへの影響も懸念になります。
この記事では、自己破産が奨学金の返済義務や保証人に及ぼす影響について解説いたします。

自己破産とは?

自己破産とは、借金の支払い義務を免除してもらうための法的な手続きです。
多額の借金を抱え、自身の財産や収入をもってしてもすべてを返済することが不可能になった場合に、裁判所に申し立てを行い、認められれば債務が免除されます。
この手続きは、債務者の経済的な更生、すなわち生活の再建を図ることを目的としています。
自己破産が認められるためには、支払不能の状態であることなど、いくつかの要件を満たす必要があります。
裁判所に申し立てを行い、免責決定が下されることで、原則としてすべての借金の支払い義務がなくなります。

自己破産した場合奨学金の返済義務はどうなる?

自己破産の手続きを行い、裁判所から免責が決定された場合、奨学金の返済義務も原則としてなくなります。
奨学金は、法的には一般的な借金として扱われるため、自己破産による免責の対象となります。
ただし、奨学金には通常、連帯保証人または保証人が設定されています。
自己破産によって債務者本人の返済義務が免除されたとしても、その奨学金の残額は、連帯保証人や保証人が代わりに全額を返済する義務を負うことになります。
また、保証人は、債務者に代わって支払った返済分を本人に請求する権利(求償権)を持っているため、自己破産手続きにおいて債権者として扱われ、債務者の財産の分配を受けることができます。

自己破産した場合の影響

自己破産手続きを行うと、借金の支払い義務が免除されるという大きなメリットがある一方で、様々な制約や影響を受けます。

連帯保証人や保証人が返還請求を受ける

自己破産によって債務者本人の奨学金の返済義務が免除されても、その債務は連帯保証人や保証人に引き継がれます。
奨学金の貸与元である日本学生支援機構(JASSO)などは、債務者本人から返済を受けられなくなると、連帯保証人や保証人に対して、奨学金の残額の全額を一括で返済するよう請求します。
このため、奨学金の自己破産は、保証人に多大な経済的負担をかけることになります。

クレジットカードの契約ができなくなる

自己破産の手続きが完了すると、信用情報機関に事故情報が登録されます。 この情報は約5年から10年間登録されたままとなります。
その結果、新たなクレジットカードの新規契約や、現在利用しているクレジットカードの更新ができなくなります。
クレジットカード会社は審査の際に信用情報を参照するため、事故情報が確認されると、審査に通ることは困難になります。

新たな借入れができなくなる

信用情報機関に事故情報が登録されている間は、銀行や消費者金融からの新たな借入れや、住宅ローン、自動車ローンなどの契約が一定期間できなくなります。
金融機関は、債務者の返済能力に対する信用が低くなるため、融資を拒否します。
この制約は、信用情報機関から事故情報が削除されるまで続きます。

一定の職業に就労できなくなる

自己破産手続き中は、法律によって一定の職業や資格が必要な業務に就くことが制限されます。
これを資格制限と呼びます。
具体的には、弁護士、税理士、司法書士といった士業や、生命保険の外交員などが該当します。
これらの職業は、他人の財産や信用を扱うため、破産手続き中の人はその資格や業務が一時的に停止されます。

奨学金の返済が難しい場合の対応

自己破産という最終手段を選ぶ前に、奨学金の返済が困難になった場合には、日本学生支援機構が提供する制度を利用すべきです。

返還期限猶予制度

返還期限猶予制度とは、災害、傷病、経済困難、失業などの事情により、奨学金を期限までに返還することが難しくなった場合に、返還期限を猶予してもらう制度です。
この制度を利用すれば、最長10年間まで返還を待ってもらうことができます。
猶予期間中は、利息の支払いは発生しません。
猶予が認められるには、以下の要件のいずれかを満たしている必要があります。

  • 給与所得者の場合年収が300万円以下である
  • 給与所得者以外の場合年収が200万円以下である
  • 前年度よりも収入が減ったことにより上記の基準に該当している

減額返還制度

減額返還制度とは、奨学金の返還を継続しているものの、経済的な理由で月々の返還額を減らしたい場合に、返還額を一定期間減額してもらう制度です。
月々の返還額を2分の1または3分の1に減額することができます。 減額された期間に応じて、全体の返還期間は延長されます。
この制度は、一時的に収入が減少したり、予期せぬ出費があったりした場合に、返済の負担を軽減するために有効な制度です。
制度を利用するための要件は以下の通りです。

  • 給与所得者の場合年収325万円以下
  • 給与所得者以外の場合年収225万円以下
  • 申請と審査の時点で返済を延滞していない
  • 口座振替加入者である

まとめ

自己破産によって奨学金の返済義務はなくなりますが、連帯保証人や保証人に全額の返済義務が移ります。
自己破産は、信用情報への影響や職業の制限といったデメリットを伴います。
奨学金の返済が難しい場合は、自己破産よりも先に、返還期限猶予制度や減額返還制度といった公的制度の利用を検討しましょう。
自己破産を検討される際は、ぜひ弁護士にご相談ください。

後遺障害認定に不満をもった場合の対応とは?

後遺障害認定に不満をもった場合の対応とは?

交通事故における後遺障害は、等級によって受けられる補償が大きく異なります。
今回は、後遺障害認定の結果に不満をもった場合の対応について解説します。

交通事故における後遺障害認定とは?

交通事故による怪我の治療を続けたにもかかわらず、これ以上治療しても症状の改善が見込めない状態を症状固定といいます。
この症状固定になった時点で身体に残ってしまった障害を後遺障害と呼びます。
後遺障害認定とは、自動車損害賠償保障法に基づいて、この後遺障害が労働能力の喪失につながるものとして、法律で定められた等級に該当するかどうかを審査し、認定する手続きのことです。
後遺障害の等級は、最も重い第1級から最も軽い第14級まで細かく分かれています。
後遺障害等級が認定されることにより、被害者は加害者側に対して後遺障害慰謝料や逸失利益を請求する権利を得ることができます。
逸失利益とは、後遺障害が残ったことによって、将来にわたって得られるはずだった利益(収入)であり、等級認定が示談交渉や裁判において賠償額を決定する際の重要な根拠となります。
認定の手続きは、加害者側の任意保険会社を通じて行うのが一般的ですが、被害者自身が直接、自賠責保険会社に申請することも可能です。

後遺障害認定が不満なら異議申し立てを行うべき

後遺障害認定を申請したにもかかわらず、非該当と判断されたり、予想よりも低い等級に認定されたりする場合があります。
認定結果に納得ができない場合、その決定に対して異議申し立てを行うことができます。
異議申し立てとは、1度くだされた審査結果について、その判断が間違っていることを主張し、改めて再審査を求める手続きのことです。
最初の審査で提出した資料が不十分であったり、症状の重さを正確に伝えきれていなかったりした場合に、新たな医学的資料や詳細な証拠を提出することで、より適切な等級認定を得られる可能性があります。

後遺障害認定の異議申し立ての流れ

異議申し立ての手続きは、請求者が新たな証拠を準備し、保険会社を通じて書類を提出し、再審査を受けるという段階を経て進められます。

書類を準備

異議申し立てを行うためには、最初の審査結果が不当であることを裏付けるための新たな書類を準備することから始めます。
最初の申請時には提出しなかったり、必要性が認識されていなかったりした資料が中心となります。
具体的には、事故後に受けてきた専門的な検査結果の画像や、新たな医師の意見書などが該当します。
単に同じ書類を提出しても結果は変わらないため、なぜ最初の判断が誤りであったのかを明確に示す資料が必要です。

後遺障害認定の異議申立書の作成

後遺障害認定の異議申立書は、審査結果に対する不服の理由や、提出する新たな証拠の内容、そして希望する等級を具体的に記載する文書です。
この書類では、医学的根拠や法的根拠に基づいて、後遺障害診断書の記載内容がなぜ不十分なのか、症状がなぜその等級に該当するのかを論理的に主張しなければなりません。
曖昧な感情論ではなく、提出する新たな証拠と症状との因果関係を明確にすることが、申立書作成において非常に重要になります。

保険会社に書類を提出

異議申立書と準備した新たな証拠書類一式を、自賠責保険を管理する損害保険料率算出機構に提出します。
通常は、加害者側の任意保険会社を経由して提出を行います。
提出後、申立書と証拠書類は損害保険料率算出機構の専門部署で審査され、再度の医学的な検討が行われます。

再審査

書類が提出されると、損害保険料率算出機構の再審査部門によって、資料の追加・変更点を含めた再検討が実施されます。
この再審査には、新たな資料の精査が必要となるため、最初の審査よりも時間を要する場合があります。
審査の結果、異議申し立てが認められれば、後遺障害の等級が変更・認定されることになります。
変更が認められなかった場合でも、再度、異なる根拠に基づいて異議申し立てを行うことが可能です。

後遺障害の異議申し立てを成功させるには?

異議申し立てを成功させるためには、単に再審査を求めるだけでなく、戦略的な準備を行うことが重要となります。

失敗した理由を分析する

最初の認定で希望する等級が得られなかった理由を、客観的に分析することが大切です。
認定機関が出した文書には、なぜその等級になったのか、または非該当となったのかの理由が記載されています。
たとえば、症状の医学的な裏付けが足りなかったのか、日常生活や労働への影響が具体的に示されていなかったのか、など、認定機関が重視した点を特定します。
この分析結果に基づき、新たな資料作成の方向性を定める必要があります。

再申請で提出する書類収集を行う

後遺障害認定の失敗理由を分析した後、不足していた証拠を補うための書類収集を行います。
画像鑑定書や、主治医以外の専門医によるセカンドオピニオンとしての意見書など、客観性と専門性の高い資料を集めることが、再審査で認められる可能性を高めることにつながります。

医師と打ち合わせる

異議申し立てを行う際には、主治医や診断書を作成する医師と密に連携を取ることが大切です。
弁護士が症状の法的な側面を医師に説明し、認定機関が求める医学的な記述を診断書や意見書に盛り込んでもらうよう、医師紹介を通じて依頼を行うことも有効な手段のひとつです。

まとめ

今回は、交通事故の後遺障害認定に不満をもった場合の対応について解説しました。
後遺障害認定の異議申し立てを認めてもらうには、失敗した理由を分析し、医療機関の協力を得て、さまざまな書類を収集しなければなりません。
自力で行うことは難しいため、弁護士に相談することをおすすめします。

債権回収を弁護士に依頼すべきケースとは?

債権回収を弁護士に依頼すべきケースとは

企業間取引や個人間の貸し借りにおいて、売掛金や貸付金が期日通りに回収できないことは、事業の存続に関わる深刻な問題です。
債権回収は、内容証明郵便の送付といった交渉から始まりますが、債務者が支払いに応じなかったり、無視を続けたりすると、法的手段が必要になります。
この記事では、債権回収の方法と、弁護士に依頼すべきケースについて解説いたします。

債権回収の方法

債権回収とは、取引先や個人に売掛金や貸付金が期日までに支払われない場合に、その支払いを促し、最終的に代金を回収するための手続きです。
これは、事業の資金繰りを安定させ、経営リスクを回避するために不可欠です。
債権回収の方法は、大きく分けて交渉による回収と法的な手段による回収の2つがあります。
どちらを選択するかは、債務者の支払い意思や資産状況によって判断します。

交渉により回収する

債権回収の最初の、そして最も円満な手段は、債務者との交渉による回収です。
まず、電話やメールで催促することから始めます。
この段階では、相手の支払い遅延の理由を確認し、具体的な支払い予定日を取り決めることが重要です。
次に、内容証明郵便を用いることが有効です。
内容証明郵便は、いつ、どのような内容の文書を、誰が誰に送付したかを郵便局が公的に証明するものであり、単なる催促以上の強い督促の意思表示となります。
時効の完成を一時的に中断させる効果もあります。
債権の時効は、権利を行使できると知ったときから5年、権利を行使できるときから10年です。
交渉を通じて、債務者と具体的な支払い計画について合意し、それを公正証書などの文書に残すことも重要です。

法的手段により回収する

交渉による回収が困難な場合や、債務者が支払いに応じない場合は、裁判所の手続きを利用した法的な手段に移行します。
まず、裁判所に支払い督促を申し立てる方法です。
これは、裁判所書記官が債務者に支払いを命じる手続きで、簡易かつ迅速な解決を目指せます。
次に、民事調停手続きを申し立てる方法です。
調停委員が間に入り、当事者間の話し合いで和解を目指します。
訴訟よりも柔軟な解決が期待できます。
最後に、訴訟を提起する方法です。
裁判官が双方の主張や証拠を吟味し、判決を下します。
勝訴判決を得た場合、強制執行として債務者の財産を差し押さえることができます。

債権回収を弁護士に依頼すべきケース

債権回収を弁護士に依頼すべきケースは以下の通りです。

債務者が支払いに応じない

債務者が内容証明郵便による催促にもかかわらず、支払いに応じない場合や、連絡が取れない場合は、弁護士に依頼すべきです。
弁護士は、依頼者の代理人として、債務者との交渉を粘り強く行い、法的な圧力をかけることができます。
また、債務者の資産状況を調査し、回収の見込みがあるかどうかを判断してくれます。
感情的な対立を避け、冷静な話し合いを進めるためにも、弁護士に依頼した方が良いでしょう。

法的手続きによって債権回収する

支払督促、民事調停、訴訟提起、強制執行といった法的手続きによって債権回収を行う場合は、弁護士に依頼することが不可欠です。
これらの手続きは、法律や裁判所の運用に関する専門知識が必要であり、書類の作成や裁判所への出廷など、多くの時間と労力がかかります。
弁護士は、これらの手続きをすべて代行し、依頼者の負担を軽減します。
また、法的な主張を適切に行うことで、債権回収を成功させる可能性を高めます。

債権回収を弁護士に依頼するときの費用

債権回収を弁護士に依頼する際の費用は、主に着手金と成功報酬に分かれます。
着手金は、依頼時に支払う費用で、回収の成否にかかわらず発生します。
成功報酬は、実際に債権が回収できた場合に、回収額に応じて支払う費用です。
費用は、請求額の大小や、依頼内容の複雑さによって変動します。
弁護士によっては、回収の見込みが薄い場合は着手金を低く設定したり、完全成功報酬制を採用したりすることもあります。
相談無料を実施している弁護士事務所もあるため、まずは事情を相談し見積もりを出してもらいましょう。

まとめ

債権回収は、交渉から始まり、支払督促や訴訟といった法的手続きへと段階的に進みます。
債務者が支払いに応じない場合や、法的手続きを行う場合は、弁護士に依頼すべきケースと言えるでしょう。
債権回収でお困りの際は、ぜひ弁護士にご相談ください。

選択共同親権とは?単独親権とはどう違う?

選択共同親権とは?

日本では、離婚後に親権をどちらか一方の親が持つ単独親権が原則でした。
しかし、民法の改正により選択共同親権が今後導入されます。
この記事では、共同親権がどのような制度で単独親権とどう違うのか、また共同親権のメリットやデメリットについて解説いたします。

選択共同親権とは?

選択共同親権とは、2024年5月に成立した改正民法によって導入される新しい制度です。
父母が離婚した後も、父母の協議によって、親権を共同で持つか、または従来の単独親権とするかを選択できるようになります。
これにより、離婚後も父母双方が、子どもの養育や教育、医療などに関する重要な事柄について共同で決定する権限を持つことになります。
この制度の目的は、離婚後も父母が協力して子育てに関わる環境を整備し、子どもの利益を最大限に守ることにあります。
父母が合意できない場合は、家庭裁判所が子の利益を考慮して親権を定めることになります。

選択共同親権はいつ施行される?

選択共同親権を導入する改正民法は、2024年5月に成立しました。
この改正法は、公布の日から2年以内に施行されることが定められています。
したがって、具体的な施行日はまだ確定していませんが、遅くとも2026年5月24日までには施行される予定です。

単独親権との違い

単独親権とは、離婚後に父母のどちらか一方のみが親権を持ち、その親が単独で子どもの監護、教育、財産管理といったすべての親権を行使する制度です。
これに対し、選択共同親権は、親権を父母双方が共同で持つため、離婚後も父母2人が協力して重要な事柄を決定します。
単独親権では、親権を持たない親は、財産管理や監護などにおける法律行為の代理権・同意見を持ちません。
共同親権では、離婚後も父母の双方が子どもの成長に責任を持ち続けることになります。

選択共同親権のメリット

選択共同親権は、子どもの養育環境や父母の関係性に多くのメリットをもたらします。

離婚時の親権を巡る対立が緩和される

離婚時において、親権をどちらが持つかを巡る争いは、夫婦間の対立を激化させる大きな原因でした。
選択共同親権が導入されることで、親権を共同で持つという選択肢ができるため、親権をめぐる激しい争いが緩和されることが期待されます。
どちらか一方が親権を失うという認識が薄れることで、冷静な話し合いが進みやすくなります。

親子間の交流が増える

共同親権となることで、両親がともに子どもの養育に関する意思決定に関与できるようになります。
これにより、単独親権の場合に親権を持つことができなかった親が、子どもの生活や教育に積極的に関わる機会が増え、親子間の交流が増加することが期待されます。
子どもが両親から愛情とサポートを受けやすくなるという利点があります。

選択共同親権のデメリット

一方で選択共同親権はメリットばかりではありません。
ここからは選択共同親権のデメリットを見ていきましょう。

共同親権者がもめる可能性がある

共同親権では、子どもの進学や医療など、重要な事柄について父母双方が合意する必要があります。
しかし、離婚後も父母間の対立が残っている場合、意見が対立し、重要な意思決定が滞る可能性があります。
父母の協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に申し立てて判断を仰ぐことになります。

離婚後も父母同士で関わる必要がある

共同親権を選択した場合、離婚後も子どもの養育に関する協議のために、父母同士で継続的に連絡を取り、意思疎通を図る必要があります。
これは、離婚によって相手と関わりたくないと考えている一方の親にとって、精神的な負担となる可能性があります。
協力関係が築けない場合、共同親権の運用が困難になります。

共同親権を選択できないケース

改正民法で共同親権が導入されても、特定の状況下では共同親権を選択できず、単独親権となる場合があります。
共同親権を選択できないケースとして、虐待やDVが挙げられます。
父母の一方から子に対する身体的虐待やネグレクトなど、子の心身に有害な影響を及ぼす言動のおそれが認められる場合、子の安全確保が不可能となるため、共同親権は選択できません。
また、父母の一方から他方の配偶者への暴行、脅迫、暴言といったDVのおそれが認められる場合も、単独親権となります。
DVの存在は、父母間で冷静な協議を行うことが困難であると判断されるためです。
これらの状況では、たとえ父母が共同親権を望んでも、裁判所は子の利益を害すると判断し、単独親権を命じることが義務付けられています。

まとめ

選択共同親権は、離婚後も父母の協議により共同で親権を持つことができる新しい制度です。
親権争いの緩和や親子交流の増加といったメリットがある一方で、父母間での対立継続や、離婚後も関わり続ける必要があるといったデメリットもあります。
離婚トラブルでお困りの際は、ぜひ弁護士にご相談ください。

  • Search

  • カテゴリー一覧