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コラムカテゴリー: 相続

相続放棄後の保存義務とは?発生するケースや終了時期を解説

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相続放棄をすれば、遺産管理からすべて解放されると考えている方は少なくありません。
しかし、改正民法では、一定の場合には、相続財産の保存義務が残ることがあります。
義務を怠ると損害賠償責任が問題となる可能性もあるため注意が必要です。
本記事では、相続放棄後の保存義務について解説します。

相続放棄後の保存義務とは

相続放棄をしても、直ちにすべての管理責任から解放されるわけではありません。
改正民法では、一定の場合に相続財産の保存義務が生じるとされています。

民法940条の保存義務の内容

改正民法では、相続放棄をした者が、放棄時に相続財産を現に占有している場合には、保存義務を負うとされています。
相続人または相続財産清算人へ財産を引き渡すまでの間、自己の財産と同一の注意をもって保存しなければなりません。
ここでいう保存とは、財産を現状のまま維持することを意味します。
積極的に運用したり、処分したりすることは含まれません。
また、保存義務は、実際に相続財産を占有している場合に問題となります。
単に相続人であったというだけで、当然に義務が発生するわけではありません。

2023年民法改正による変更点

2023年4月に施行された改正民法では、保存義務の範囲が整理されました。
改正前は、相続放棄をした者が「相続財産の管理義務」を負うとされていましたが、改正後は「現に占有している財産」に限定されることが条文上明確化されています。
これにより、相続放棄後にどの範囲まで義務を負うのかについて、従来よりも整理しやすくなっています。

保存義務が発生する具体的なケース

保存義務は、相続財産を実際に占有している場合に問題となります。
占有とは、財産を事実上支配している状態を指します。

実際に財産を占有している場合

被相続人と同居していた相続人が相続放棄した場合には、家屋や家財道具などを引き続き占有していると判断される可能性があります。
また、家を出た後でも、鍵を管理している場合や、家財をそのまま保管している場合などには、占有状態が継続していると判断されることがあります。
そのため、相続放棄をしたからといって、直ちに管理責任がなくなるとは限りません。
実際の管理状況を踏まえて判断される点に注意が必要です。

引き渡し先が決まっていない場合

相続財産を現に占有している場合には、相続人または相続財産清算人へ財産を引き渡すまで保存義務が続きます。
相続人全員が相続放棄した場合などには、相続財産清算人の選任が必要となるケースがあります。
相続財産清算人は、家庭裁判所への申立てによって選任され、相続財産の管理や清算を行います。
そのため、引き渡し先が存在しない状態では、保存義務が長期間続く場合もあります。

存義務の具体的な内容と範囲

保存義務では、何を行うべきか、逆に何をしてはいけないかを理解しておくことが重要です。

存義務として求められる行為

保存義務では、財産の現状維持に必要な最低限の管理が求められます。
具体的には、次のような対応が問題となる場合があります。

  • 建物の施錠
  • 定期的な換気
  • 必要最低限の管理対応
  • 庭木の管理
  • 雑草の除去

これらは、建物の損傷や近隣トラブルを防ぐための保存行為として評価される可能性があります。

保存義務に含まれない行為

一方で、積極的な運用や処分は保存義務に含まれません。
具体的には、次のような行為が問題となる可能性があります。

  • 不動産の売却
  • 預貯金の使用
  • 大規模なリフォーム
  • 財産の名義変更

これらの行為を行うと、法定単純承認に該当する可能性があり、相続放棄が認められなくなるリスクがあります。
そのため、保存行為と処分行為の違いを慎重に判断する必要があります。

保存義務違反のリスクと終了時期

保存義務を怠った場合には、法的責任が問題となる可能性があります。
また、義務がいつ終了するのかも理解しておくことが重要です。

保存義務を怠った場合の責任

保存義務を怠り、相続財産を毀損した場合や、放置によって近隣へ損害を与えた場合には、損害賠償責任を負う可能性があります。
具体的には、次のようなケースが問題となる場合があります。

  • 建物管理を放置し倒壊危険が生じた場合
  • 樹木が隣地へ越境した場合
  • 漏水や害虫の発生により近隣へ被害を与えた場合

相続放棄後であっても、占有状態によっては一定の責任が残る可能性があるため注意が必要です。

保存義務が終了するタイミング

保存義務は、相続人または相続財産清算人へ財産を引き渡した時点で終了します。
また、相続財産清算人の選任申立ては、利害関係人や検察官が行うことができます。
相続放棄をした者が申立人となることも可能です。
引き渡し先が確定していない場合には、義務が長期化することもあるため、早めに対応方法を検討することが重要です。

まとめ

相続放棄をしても、改正民法により、一定の場合には相続財産の保存義務が残ることがあります。
特に、被相続人と同居していた場合や、相続財産を現に占有している場合には注意が必要です。
保存義務では、財産の現状維持に必要な最低限の管理が求められます。
一方で、積極的な運用や処分を行うと、相続放棄に影響が生じる可能性もあります。
また、保存義務を怠った場合には、近隣トラブルや損害賠償責任が問題となる場合があります。
相続放棄後の対応に不安がある場合には、早い段階で弁護士へ相談し、状況に応じた対応方法を検討することが重要です。

遺産分割調停とは?準備すべき書類や流れを解説

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相続人同士で遺産の分け方について話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所の遺産分割調停を利用できます。
しかし、調停という言葉に不安を感じる方も多くいらっしゃいます。
この記事では、遺産分割調停の制度概要から申立ての流れ、必要書類、弁護士を依頼するメリットまで解説します。

遺産分割調停とは

遺産分割調停は、相続人間で遺産の分け方について協議が整わない場合に、家庭裁判所の調停委員会が間に入り、話し合いによる解決を目指す手続きです。
民法第907条では、遺産分割について共同相続人間での協議を原則としていますが、協議が整わない場合には、家庭裁判所に調停または審判を申し立てることができると定められています。
遺産分割事件については調停前置主義が採用されており、いきなり審判を申し立てても調停手続きに付されます。
調停は話し合いの場であり、調停委員が間に入って相続人全員が納得できる解決策を探る手続きです。

調停と審判の違い

調停は、裁判官1名と調停委員2名以上で構成される調停委員会が当事者双方の意見を聞きながら、合意による解決を目指す手続きです。
一方、審判は調停が不成立になった場合に自動的に移行する手続きで、裁判官が法律に基づいて遺産分割の方法を決定します。
調停では当事者全員の合意が必要ですが、審判では裁判官の判断によって分割方法が定められます。

遺産分割調停の流れ

遺産分割調停を申し立てる場合、申立先は相手方のうちの1人の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所となります。
申立書と必要書類を裁判所に提出すると、裁判所から調停期日が指定され、通常は申立てから1か月から1か月半後に第1回期日が開かれます。
調停期日は平日の日中に行われ、当事者は調停委員と交互に面談する形式で進められます。
調停が成立した場合には調停調書が作成され、この調書は確定判決と同じ効力を持ちます。
一方、調停が不成立となった場合には、自動的に審判手続きに移行します。
遺産分割調停にかかる期間は事案によって異なりますが、半年から1年程度を要する場合が多いとされています。

調停期日の進め方

調停期日では、申立人と相手方が交互に調停室に入り、調停委員と面談する形式が一般的です。
待合室は申立人と相手方で別々に用意されるため、直接顔を合わせることなく手続きを進めることができます。
1回の調停期日は通常2時間程度で、複数回の期日を重ねながら相続財産の範囲や評価額などについて話し合いを進めます。
なお、裁判手続のIT化が順次進められており、WEB会議システムを利用した調停も実施されています。

遺産分割調停に必要な書類

遺産分割調停を申し立てる際には、標準的な必要書類を準備する必要があります。
遺産分割調停申立書を作成し、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、被相続人の住民票除票または戸籍附票を添付します。
これらの書類によって、相続人の範囲と相続分を確定します。
さらに、相続財産目録を作成し、不動産については登記事項証明書、預貯金については残高証明書や通帳の写し、株式については証券会社の残高証明書などを添付します。
申立ての際には、収入印紙1200円と予納郵券が必要です。
予納郵券の金額は裁判所ごとに異なるため、提出先の家庭裁判所に事前に確認することをおすすめします。

事案により追加で必要となる書類

特別受益や寄与分を主張する場合、それらを裏付ける資料の提出が求められます。
特別受益とは、生前贈与や遺贈を受けた相続人がいる場合に、その利益を相続財産に持ち戻して計算する制度です。
生前贈与に関する契約書、贈与税申告書、振込記録などが証拠資料となります。
寄与分とは、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をした相続人が、貢献度に応じて相続分を増やすことができる制度です。
介護記録、通院付き添いの記録、事業への貢献を示す資料などが必要となる場合があります。
遺言書が存在する場合には、その写しまたは検認済証明書の添付が必要です。

遺産分割調停を弁護士に依頼するメリット

遺産分割調停を弁護士に依頼することには、法的手続きの複雑さと心理的負担を軽減するメリットがあります。
特別受益や寄与分の主張には法的な評価と計算が必要となり、相続財産目録の作成にも専門的な知識が求められます。
弁護士はこれらの法的評価を正確に行い、依頼者にとって有利な主張を組み立てることができます。
また、親族間の対立が激化している場合、冷静な第三者である弁護士が代理人となることで、直接の衝突を避けながら感情的な紛争を法的な議論へ導くことが可能となります。
調停期日への代理出席も可能なため、依頼者が毎回裁判所に出向く負担を軽減できます。

まとめ

遺産分割調停は、相続人間の協議が整わない場合に利用できる法的手続きであり、家庭裁判所の調停委員が間に入ることで冷静な話し合いが期待できます。
民法第907条および家事事件手続法に基づく手続きであり、調停前置主義により審判の前にまず調停を経る必要があります。
申立てには、被相続人と相続人の戸籍謄本、相続財産目録、不動産登記事項証明書や預貯金残高証明書などの書類準備が必要であり、収入印紙1200円と予納郵券も必要となります。
手続きには半年から1年程度の期間を要するため、早めの対応が重要です。
特別受益や寄与分の主張、感情的な対立がある場合には、弁護士を代理人とすることで法的に適切な主張が可能になり、精神的負担も軽減されます。
遺産分割でお困りの際は、弁護士へ相談することをおすすめします。

遺産分割協議がまとまらない場合はどうする?とるべき対応を解説

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相続が発生した際に、遺産をどのように分けるかを話し合う遺産分割協議は、相続手続きにおける重要な手続きです。
しかし、相続人同士の意見が対立したり、連絡の取れない相続人がいたりして、協議が難航するケースは珍しくありません。
今回は、遺産分割協議の概要や、遺産分割協議がまとまらない場合にとるべき対応について解説します。

遺産分割協議とは?

遺産分割協議とは、遺言書が存在しない場合や、遺言書に指定されていない遺産がある場合に、すべての相続人が集まって誰がどの遺産をどれだけの割合で取得するかを話し合って決定する手続きをいいます。
民法では、法定相続分という遺産分割において目安となる基準が定められています。
しかし、遺産分割協議において他の相続人の合意を得られれば、法定相続分とは異なる割合や特定の財産ごとでの分割をすることが可能です。
ただし、遺産分割協議は、必ず相続人全員が参加して合意しなければなりません。
ひとりでも反対する人がいたり、行方不明者がいたりして全員の署名・捺印が揃わない場合、遺産分割協議書を完成させることができず、不動産の名義変更や預貯金の払い戻しなどの手続きを進められなくなってしまいます。

遺産分割協議がまとまらない場合の対策

相続人間の意見が対立したり、相続人全員に連絡をとることができなかったりして遺産分割協議がまとまらない場合には、以下の対策を講じることを検討してください。

遺産分割協議がまとまらなくても期限までに相続税申告する

遺産分割協議がまとまらない場合であっても、相続税の申告は免除されません。
被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内という申告期限を過ぎてしまうと、通常通り無申告加算税や延滞税のペナルティが科せられます。
ペナルティを回避するためには、各相続人が法定相続分にしたがって遺産を取得したと仮定して計算した税額に基づき、とりあえずの相続税申告と納税を行う必要があります。
この際、申告期限後3年以内の分割見込書を税額控除の適用を受けるための書類と一緒に税務署へ提出しておきましょう。
そうすることで、後日正式に遺産分割がまとまった際に、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を遡って適用し、修正申告や更正の請求によって税金の還付を受けることができるようになります。

弁護士に交渉の代理を依頼する

相続人同士の感情的な対立が激しくなり、直接話し合うことが困難な場合には、弁護士に交渉の代理を依頼することが効果的です。

弁護士が他の相続人との連絡を代理で行うことにより、感情的な衝突が和らぎ、スムーズに合意に至りやすくなります。
弁護士は、法的な根拠に基づいた範囲で依頼人に最も有利となる分割案を提示して交渉を主導します。
また、行方が分からない相続人がいる場合や、連絡を拒絶されていて相続人全員に連絡を取ることが難しい状況においても、戸籍の調査による所在の特定や、代理人としての書面送付などによる法的なアプローチを通じて遺産分割協議を円滑に進めるサポートを行います。
将来の裁判手続きを見据えた証拠の整理や、遺産分割協議書の作成まで継続してサポートを受けられるという点も弁護士に相談するメリットです。

家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる

当事者間の話し合いや弁護士を交えた交渉でも遺産分割協議をまとめることが困難な場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるという選択肢があります。
調停では、裁判官1名と民間から選ばれた調停委員2名以上で構成される調停委員会が、相続人双方からそれぞれの主張や希望を個別に聴き取り、中立的な立場から話し合いによる解決へ向けたアドバイスや調整を行います。
裁判のように判決を下されるものではなく、あくまで話し合いを基本とした手続きですが、お互いが顔を合わせずに冷静な意見交換ができる環境が整います。
調停でも合意に至らなかった場合には自動的に審判へと移行し、裁判官が一切の事情を考慮して分割方法を決定することになります。
調停や審判の手続きには一定の時間や労力がかかるため、計画的に準備を進めることが欠かせません。
弁護士にご依頼いただければ、交渉から調停や審判に移行する場合であっても、継続してサポートを提供することが可能です。

まとめ

今回は、遺産分割協議の概要と、遺産分割協議がまとまらない場合の対応について解説しました。
遺産分割協議は、相続において遺産の分割方法を決めるための重要な手続きです。
意見が対立したり相続人に連絡がつかなかったりして遺産分割協議がまとまらない場合には、弁護士に交渉の代理を依頼することをご検討ください。
交渉でも合意に至らない場合には調停の申し立てが選択肢として挙がりますが、この場合にも、弁護士に相談することをおすすめします。

相続廃除とは?条件や方法を解説

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相続廃除は、被相続人が特定の相続人に財産を相続させたくないときに利用されます。
被相続人の意思を尊重するために、相続廃除は重要な手段となります。
今回は、相続廃除が認められる条件や相続廃除を行う方法について解説します。

相続廃除とは?

相続廃除とは、遺産を受け取る権利を持つ推定相続人の中に被相続人に対して著しい非行や虐待を行った者がいる場合に、被相続人の意思に基づいてその人の相続権を剥奪する制度のことです。
民法では、被相続人の生前の請求、あるいは遺言による意思表示によって家庭裁判所の審判を経て相続権を失わせることができる仕組みが整えられています。

相続廃除が認められる条件

相続廃除が認められるためには、民法第892条に定められた特定の事由に該当する必要があります。
具体的には、以下の条件のいずれかに該当し、かつその行為が継続的であったり、重大な背信行為であったりすることが求められます。

被相続人に対する虐待

被相続人に対する身体的な暴力や精神的な苦痛を与える行為といった虐待は、相続廃除が認められる条件のひとつです。
この場合、長年にわたって被相続人の尊厳を傷つけるような待遇が続いていることが重要視されます。

被相続人に対する重大な侮辱

被相続人に対する重大な侮辱も、相続廃除が認められる条件のひとつです。
重大な侮辱とは、被相続人の名誉や社会的評価を著しく失墜させるような行為を指します。
被相続人に対して耐え難い精神的な苦痛を与えたかどうかが判断のポイントとなります。

その他の著しい非行

虐待や侮辱以外にも、被相続人との信頼関係を破壊するような重大な不法行為や、社会的に許容されない非行がある場合には相続廃除が認められます。
具体的には以下のようなケースが想定されます。

  • 被相続人の財産を勝手に処分したり、多額の借金を肩代わりさせたりして経済的な損害を与えた場合
  • 犯罪行為によって被相続人に多大な迷惑をかけたり、服役を繰り返したりして家庭の秩序を乱した場合
  • 長期間にわたって行方不明となり、扶養の義務を全く果たさなかった場合
  • 重大な背信行為(婚姻生活を破壊するような不貞行為や、親族間での重大な詐欺など)があった場合

これらの非行は、被相続人がその相続人に財産を渡したくないと考えるのが社会通念上もっともであると認められるほど深刻なものである必要があります。

相続廃除の方法

相続廃除を行うための手続きには、被相続人が存命中に自ら行う生前廃除と、遺言によって死後に手続きを委ねる遺言廃除の2種類の方法があります。
以下でそれぞれの方法について説明します。

生前廃除

生前廃除は、被相続人が自ら家庭裁判所へ推定相続人廃除の調停または審判を申し立てる方法です。
手続きの手順は、一般的に以下のようになります。

  1. 被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立書を提出する
  2. 裁判所で調停が行われる
  3. 調停委員が間に入り、双方の言い分を聞きながら解決の道を探る
  4. 廃除を希望する被相続人の意思が固い場合、審判へと移行する
  5. 裁判所によって廃除が認められた場合、市役所などへ届け出ることで推定相続人の戸籍に相続廃除の旨が記載される

遺言廃除

遺言廃除は、遺言書の中に特定の相続人を廃除する旨とその理由を記しておく方法です。
この場合、被相続人が亡くなった後に遺言書で指定された遺言執行者が家庭裁判所に対して廃除の申し立てを行います。
遺言執行者は被相続人の遺志を代理して裁判所とやり取りをすることになるため、遺言書の中で信頼できる弁護士などを遺言執行者に指定しておくことが重要です。
遺言廃除においても、生前廃除と同様に厳格な事実確認が行われます。

相続廃除をする際の注意点

相続廃除の利用にあたっての留意点を知らずに手続きを進めると、期待した効果が得られなかったり、親族間で予想外のトラブルに発展したりする恐れがあります。
具体的な注意点には、以下のようなものがあります。

客観的な証拠が必要

日本の裁判所は、相続権の剥奪に対して慎重な姿勢をとっています。
主観的な理由だけでは、廃除が認められることはほとんどありません。
客観的に見て家族関係が修復不可能なほど破壊されているという事実を、証拠を持って証明しなければならない点に注意が必要です。

代襲相続が発生する

相続廃除された人に子供や孫がいる場合、その子供たちが代わりに相続人となる代襲相続が発生することに注意しましょう。
その家系全体に財産を渡したくないと考えて廃除を行ったとしても、権利が移るだけという結果になる可能性があります。

まとめ

相続廃除は、財産を誰に託すかという被相続人の権利を守るための重要な制度です。
しかし裁判所で認められるためのハードルは高く、代襲相続の発生など法的な複雑さも伴います。
もし、特定の方への相続を真剣に阻止したいと考えておられるのであれば、早めに弁護士に相談し、法的な有効性を確認しながら準備を進めることを検討してください。

遺産分割協議で遺産を取得しない場合と相続放棄の違いとは?

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身内が亡くなり相続が発生した際に、受け取りの辞退を検討する場合があるかと思います。
このときの手段として、遺産分割協議の中で自分の取り分をゼロにすることと、相続放棄をするという2つの方法があります。
今回は、遺産分割協議で遺産を取得しない場合と相続放棄をする場合の違いなどについて解説します。

遺産分割協議で遺産を取得しない場合とは

遺産分割協議とは、相続人全員が集まって、亡くなった人の財産を誰にどのように配分するかを取り決める話し合いのことです。
遺産を取得しないケースは、特定の相続人が遺産を相続しないことに合意することで生じます。
この場合、遺産を取得しなくても法律上の相続人であることに変わりはありません。
したがって、家庭裁判所へ出向く必要はなく、親族間での話し合いと遺産分割協議書への署名捺印だけで完結します。

相続放棄とは

相続放棄とは、被相続人が亡くなったことを知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所に対して相続人にならないという意思表示を行う公的な手続きのことです。
家庭裁判所によって受理されると、その人は最初から相続人ではなかったものとみなされます。
相続放棄には、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内という期限が定められています。
この期間を過ぎてしまうと、原則として放棄を選択することができません。
相続放棄を行うと、本来その人が受け取るはずだった相続権は次順位の相続人へと移ります。

遺産分割協議で遺産を取得しない場合と相続放棄の違い

遺産分割協議で遺産を取得しないことを選択した場合と相続放棄をした場合の違いは、主に次の3点です。

債務に対する責任

遺産分割協議で遺産を取得しない場合と相続放棄の違いとして被相続人の残した債務に対する責任が挙げられます。
遺産分割協議で一切の遺産を取得しなかったとしても、法律上の相続人の立場であることには変わりはありません。
遺産分割協議の合意内容は、あくまで相続人間で有効となる取り決めであり、債権者にその効果は及びません。
したがって、一切遺産を取得していなかったとしても、法定相続分の割合に応じて、債務の支払い義務が生じます。
法定相続分に応じた債務の支払い義務を回避したい場合には、債権者と連絡を取り承認してもらう必要があります。
一方で、相続放棄を行っていれば、最初から相続人ではないため借金を支払う義務は発生しません。

家庭裁判所での手続きの必要性

遺産分割協議で遺産を取得しないことを選択した場合、家庭裁判所で特別な手続きを行う必要がありません。
一方、相続放棄をする場合は家庭裁判所で手続きを行う必要があります。
期限内に戸籍謄本などの身分証明書類を揃え、申立書を作成して受理されなければなりません。

遺産分割協議で遺産を取得しないか相続放棄をするかの判断

特定の親族にスムーズに遺産を相続させたい場合は、遺産分割協議で遺産を取得しないと決めることが多くなっています。
法的な手順を踏むことなく、比較的容易に手続きが進むためです。
しかし、遺産分割協議で遺産を取得しないことには、被相続人の借金が発覚した際に支払い義務を負うリスクがあります。
そのため、ご自身が遺産を継承しないことに納得されているのであれば、相続放棄をすることが賢明です。

遺産相続を辞退する際の注意点

遺産相続を辞退する際には、自身に適した手法を選択するために、以下の点に留意してください。

単純承認とみなされる行為

相続放棄を検討している間は、被相続人の財産に手をつけてはいけません。
そういった行為をした瞬間に相続放棄の権利を失うことになります。

相続放棄による返済義務の移動

自分が相続放棄をすると、次順位の親族が新たに相続人となります。
負債が理由で放棄をするのであれば、次順位の親戚に対して相続を放棄した理由を通知することが重要になります。

まとめ

今回は、遺産分割協議で遺産を取得しない場合と相続放棄の違いや、どちらの手法を選択するかの判断基準、および注意点を解説しました。
相続放棄の申立てや遺産分割協議書の作成を個人で行うことに不安を感じた際には、弁護士に相談してください。
特に、借金があるのかどうか不透明な状況では、弁護士に調査を依頼すると効率的です。

遺留分侵害額請求の手続きの流れを解説

遺留分侵害額請求の手続きの流れを解説

被相続人の兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分といって、最低限度の遺産の取り分が保障されています。
今回は、遺留分が侵害された場合の手続きの流れなどを解説します。

遺留分侵害額請求とは

遺留分侵害額請求とは、贈与や遺贈により自己の遺留分を侵害された場合に、その侵害額に相当する金銭の支払いを求める権利です。
遺留分侵害額請求権には時効があり、遺留分権利者が相続の開始を知り、かつ、遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから1年間行使しない場合、時効によって消滅します。
また、相続開始の時から10年を経過した場合も、権利が消滅します。

遺留分侵害額請求の流れ

遺留分侵害額請求を行う場合、次のような流れで手続きを行います。

①遺言や生前贈与の確認を行う

遺留分を請求する場合、遺言書を確認し、ご自身の遺留分を誰がどの程度侵害していることを特定する必要があります。
また、遺言書だけでなく、被相続人が生前に行っていた贈与についても確認が必要です。
遺留分を算定する際には、原則として、相続開始前の1年間にされた贈与が対象となります。
ただし、相続人に対する贈与については、相続開始から遡って10年間にされたものであれば、遺留分侵害額を算定する際の基礎財産に含まれます。
したがって、まずは遺言書や、遡って10年間の生前贈与の記録を収集し、ご自身の遺留分が具体的にどれだけ侵害されているのかを正確に計算する必要があります。
この計算には、専門的な知識が必要となるため、弁護士に相談して進めることを検討してください。

②遺留分を侵害した者に請求の意思表示を行う

遺留分の侵害額が確定したら、その遺留分を侵害している者に対して、金銭の支払いを請求する意思表示を行います。
遺留分の権利を行使するためには、侵害された方の意思表示がなければ効力を生じません。
口頭での意思表示でも法的には有効ですが、後の水掛け論を避けるため、書面による意思表示を行った方が良いといえるでしょう。
遺留分の請求をしても相手方から返事がないような場合には、配達証明付きの内容証明郵便を送付してください。
これにより、いつ、どのような内容の意思表示を行ったかという証拠を残すことができます。

③遺留分を侵害した者と話し合いを行う

遺留分侵害額請求に相手方が応じた場合には、話し合いによって解決を目指すことになります。
算定した侵害額の根拠を示し、支払い方法や支払い期限などについて当事者間で合意を目指します。
話し合いがまとまり、遺留分を侵害した者から実際に金銭の支払いを受ければ、この段階で遺留分の請求は完了となります。
なお、話し合いにより合意した場合でも、遺留分の支払いが分割になったり、合意した日から払い込みの日まで期間が開く場合には、未払いを防ぐために強制執行のできる公正証書で合意書を作成するといいでしょう。

④遺留分侵害額調停を行う

話し合いによって合意が得られない場合や、相手が話し合いに応じようとしない場合は、家庭裁判所に遺留分侵害額調停を申し立てます。
調停では、裁判官と調停委員が間に入り、当事者双方の主張を聞きながら、合意による解決を目指して調整を行います。
調停はあくまで話し合いの場であるため、双方が納得できる和解案が見つかれば解決となりますが、相手方が頑なに請求を拒否したり、請求額について折り合いがつかなかったりした場合は、調停は不成立となり終了します。

⑤裁判で争う

遺留分侵害額請求調停が不成立に終わった場合は、最終手段として遺留分侵害額請求訴訟を地方裁判所に提起し、裁判で決着をつけることになります。
裁判では、双方の主張と提出された証拠に基づき、裁判官が遺留分侵害の有無や正確な侵害額を判断し、判決を下します。
判決は法的な拘束力を持つため、判決が確定すれば相手方はその判決に従って金銭を支払う義務を負います。

遺言自体の有効性を争うとき

遺留分侵害額請求の手続きを進める中で、遺言書の内容自体がおかしいと感じたり、被相続人の最終的な意思ではなかったのではないかという疑念が生じたりすることがあります。
たとえば、被相続人が認知症などで判断能力を欠いていたときに作成された遺言書であったり、形式的な要件を満たしていない遺言書であったりする場合です。
このようなときには、遺言無効訴訟を提起するという方法もあります。
遺言無効訴訟は、遺言書が法律上有効ではないことを裁判所に認めてもらうための手続きです。
遺言書が無効と認められれば、その遺言書に基づく遺贈はなかったことになり、遺産分割協議によって分割方法を決めることになります。

まとめ

今回は、遺留分侵害請求の手続きの流れや、遺言自体の有効性を争うときなどの解説をしました。
相続の問題は、家族関係を壊しかねないトラブルに発展することがあります。
火種が小さいうちであれば、不利益を最小限に抑えられる可能性があるため、お困りの方は弁護士にご相談ください。

相続手続きの後に借金が発覚した場合の対処法

相続手続きの後に借金が発覚した場合の対処法

相続手続きが完了した後に、被相続人の借金が突然明らかになることがあります。
この場合、相続人はその借金をどうすればよいのでしょうか。
借金が発覚したタイミングによっては、とるべき対応が大きく異なり、対応を誤ると、自身が借金を背負ってしまうリスクがあります。
この記事では、被相続人に借金がある場合の一般的な対処法から、相続手続き後に借金が発覚した場合の対処法までを解説いたします。

被相続人に借金がある場合の一般的な対処法

被相続人に借金などの負債がある場合、相続人はその負債を背負うリスクに直面します。
借金のリスクを回避し、自身の財産を守るためには、法律で定められたいくつかの対処法を選択する必要があります。
主な対処法としては、負債を一切引き継がない相続放棄と、プラスの財産の範囲内で負債を引き継ぐ限定承認があります。
これらの手続きは、原則として相続が開始したことを知った日から3カ月以内に行う必要があります。

相続放棄

相続放棄とは、家庭裁判所に申述することで、被相続人の遺産を一切受け継がないという意思表示をする手続きです。
この手続きが受理されると、その人は最初から相続人ではなかったものとみなされます。
相続放棄は、借金などのマイナスの財産だけでなく、預貯金や不動産といったプラスの財産もすべて引き継がないという包括的な効力があります。
これにより、相続人は、被相続人の負債を相続する義務から解放されます。
負債が明らかに資産を上回っている場合、有効な対処法となります。

限定承認

限定承認とは、相続したプラスの財産の範囲内でのみ、借金などのマイナスの財産を弁済するという条件付きの相続方法です。
この方法を選べば、もし借金が遺産を上回ったとしても、相続人が自身の固有の財産から超過分を支払う義務はありません。
限定承認は、相続財産の総額が不明確で、プラスとマイナスのどちらが多いか判断できない場合に有効な選択肢です。

相続手続き後に借金が発覚した場合に相続放棄や限定承認はできる?

相続手続き後や、相続が開始したことを知ってから3カ月の熟慮期間を過ぎた後では、原則として相続放棄や限定承認はできません。
また、熟慮期間内であっても、すでに被相続人の預貯金を使ったり、不動産を売却したりといった相続財産の処分行為を行っている場合も、単純承認とみなされます。
これらの事由を満たしていると、借金もすべて承継したことになり、相続放棄や限定承認は不可能となります。
ただし、処分行為を行っていない場合、熟慮期間を過ぎたとしても相続放棄が認められる可能性があります。

相続手続き後に借金が発覚した場合の対処法

単純承認が成立した後で借金が発覚した場合、相続放棄や限定承認はできないため、それ以外の対応を取る必要があります。

借金を返済する

単純承認が成立すると、借金を含めてすべての権利義務を承継したことになります。
そのため、相続人は自己の財産から借金を返済しなければなりません。
相続人が複数いる場合は、法定相続分に応じて借金を承継するため、承継した分の借金を返済します。

借金の消滅時効を援用する

被相続人の借金であっても、その借金が消滅時効にかかっている可能性があります。
借金の時効は、原則として債権者が権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年で成立します。
時効が成立している場合、相続人は債権者に対して時効の援用を行うことで、借金の支払い義務を免れることができます。
時効の中断事由がないかを慎重に確認する必要があります。

任意整理を行う

借金の総額が、自力での返済が困難な水準であれば、任意整理を検討します。
任意整理は、裁判所を介さずに、弁護士が債権者と直接交渉し、将来の利息をカットしてもらったり、返済期間を延長してもらったりして、月々の返済額を減らす手続きです。
これにより、無理のない返済計画を立て直すことができます。

自己破産や個人再生を行う

借金があまりにも多額で、任意整理でも解決が難しい場合は、自己破産や個人再生といった裁判所を介した債務整理手続きを検討します。
自己破産は、借金の全額免除を目指す最終手段であり、個人再生は、借金を大幅に減額しつつ、マイホームなどの資産を残せる可能性がある手続きです。

まとめ

被相続人に借金がある場合、相続放棄や限定承認という方法で対処できますが、相続手続き後に借金が発覚した場合、原則としてこれらの手続きはできません。
その場合は、借金の消滅時効の援用や、任意整理、自己破産といった債務整理手続きによって、借金問題の解決を目指すことになります。
相続トラブルでお困りの際は、ぜひ弁護士にご相談ください。

相続放棄と限定承認の違い

相続放棄と限定承認の違い

相続が発生すると、遺産をどう扱うかを決めなければなりません。
「相続放棄」と「限定承認」は、財産だけでなく借金も相続対象になる場合に重要な手段です。
どちらも相続人の負担を減らす選択肢ですが、内容や手続きには明確な違いがあります。
今回は、相続放棄と限定承認の違いをわかりやすく解説します。

相続とは何か

ひとが亡くなると、そのひとの財産や権利・義務が家族などに引き継がれます。
上記の一連の流れを「相続」といいます。
相続されるものには、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産も含まれます。
相続といえば「遺産を引き継ぐ」などポジティブなイメージがありますが、必ずしも相続人にとって有利とは限りません。

相続放棄とは

相続放棄とは、最初から「相続人ではなかった」とする方法です。
民法第915条で定められています。

相続放棄の特徴

相続放棄をすれば、プラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がずに済みます。
借金が多い場合は、相続放棄を選べば、負担を免れる可能性があります。

相続放棄の手続き

家庭裁判所に「相続の放棄の申述」をする必要があります。
手続きには期限があり、原則として「相続の開始を知ったときから3か月以内」に行わなければなりません。
相続放棄の手続きをする場合は、まず必要書類の準備をして、申述書の提出をします。
家庭裁判所の審査があり、認められれば相続放棄ができます。

相続放棄の注意点

相続放棄をすると、最初から相続人でなかったことになります。
そのため、遺産の管理や処分もできません。
また、相続放棄した場合、そのひとの次に順位が低い相続人が代わります。
たとえば亡くなったひとに配偶者と子どもがいて、子ども全員が相続放棄をした場合、次は父母(直系尊属)が相続人になります。
もし父母もすでに他界している場合は、兄弟姉妹が相続人です。
上記のように、誰かが相続放棄すると、次の順位の親族が思いがけず相続人になるケースがあります。
そのため、相続放棄をする際は、家族間で十分に相談する必要があります。

限定承認とは

限定承認とは、相続によって得た財産の範囲内で借金などを引き受ける方法です。
民法第922条で定められています。

限定承認の特徴

限定承認を選ぶと、プラスの財産があれば、それを使って借金を返済します。
借金が財産を上回っていた場合でも、自分の手持ちのお金などから追加で返済する必要はありません。
以下のようなときに選ばれます。

  • 遺産の内容がはっきりしていない
  • 不動産など売却すれば借金より高く売れる資産がある
  • 事業をしていて財産と負債が複雑に入り組んでいる
  • 相続放棄で他の親族に迷惑をかけたくない
  • 借金を含めて相続財産全体の整理を自分たちで主導したい
  • 家業を継ぐなどどうしても相続しなければならない理由がある

相続財産の範囲内で責任を負うという意味で、安全性の高い選択肢です。

限定承認の手続き

限定承認も家庭裁判所に申述書を提出して行います。
ただし相続人が複数いる場合には「全員が一緒に限定承認を申し立てる」必要があります。
期限は、相続放棄と同様に、相続開始を知ってから3か月以内です。
もし相続人に相続放棄をしたひとがいる場合、そのひとは最初から相続人でなかったものとされるため、それ以外の全員で手続きを行います。

限定承認の注意点

まず、相続財産を正確に把握する必要があります。
不動産や預貯金などの目に見える財産だけでなく、借金・ローン・個人保証などの「見えにくい債務」まで調査しなければなりません。
さらに限定承認は、相続放棄に比べて手続きが複雑です。
たとえば相続人が3人いて、そのうち1人でも反対すれば限定承認は成立しません。
財産の売却や債権者への支払いも、法令に従って進める必要があります。
さらに限定承認は、手続きに不備があると、結果的に単純承認(すべて相続)とみなされる可能性もあります。
専門知識が求められる場面も多くあるため、弁護士や司法書士などのサポートを受けるのがおすすめです。

相続放棄と限定承認の違い

以下、相続放棄と限定承認の違いを整理します。

基本的な違い

相続放棄は、「相続そのものをしない」という選択です。
一方で限定承認は、「損をしない範囲で相続する」という選択になります。

手続きの違い

相続放棄は1人でも手続きができ、内容も比較的簡単です。
一方で限定承認は、相続人全員で手続きを行う必要があり、手続きが複雑になる傾向があります。

負債への対応

相続放棄は、相続そのものをしないため、借金を一切引き継ぎません。
一方で限定承認は、財産の範囲内で借金を返済します。

相続財産の活用

相続放棄の場合、プラスの財産も一切受け取れないため、相続財産の活用は不可能です。
一方で限定承認は、財産の範囲内でマイナスを処理した後、残った分は相続できます。
両者は、似ているようで、考え方や使い方が大きく異なります。

どちらを選ぶべきか

相続放棄と限定承認は、それぞれの状況に応じて選択すべきです。
借金が明らかに多い場合は、相続放棄が無難です。
借金と財産のどちらが多いか不明な場合は、限定承認を検討するとよいでしょう。

まとめ

相続放棄はすべての財産を放棄する選択であり、借金を引き継がない代わりにプラスの財産も受け取れません。
一方で限定承認は、相続財産の範囲内で負債を支払い、残った財産を相続する方法です。
どちらを選ぶべきかは、借金と財産のバランスや家族の事情によって異なります。
もし判断に迷う場合には、弁護士などの専門家に早めに相談してみてください。

相続人が行方不明の場合の対処法

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相続が発生したものの、「相続人に行方がわからないひとがいる」というケースは珍しくありません。
遺産分割協議は、基本的に相続人全員で進める必要があるため、行方不明のひとがいると探す手間がかかります。
今回は、相続人が行方不明の場合の対処法を解説します。

相続手続きに必要な「相続人全員の関与」とは

相続の場面では、遺産分割協議や不動産登記、預貯金の解約など、多くの手続きに相続人全員の関与が求められます。
「全員」とは、法定相続人全員を指します。
しかし親戚の人間関係などによっては、相続人が全員すぐに集まるとは限りません。
関与できない相続人がいれば、基本的には手続きを進められないため注意が必要です。

相続人が行方不明になる原因と事前の対策

行方不明の相続人が出る原因・背景はさまざまです。

  • 疎遠になっていた親族との連絡が取れなくなっている
  • 転居後の住所が不明になっている
  • 海外移住や長期入院などによる音信不通がある

上記の事態に備えて、被相続人自身が遺言書を作成し、遺産分割の方針を明確にするのがおすすめです。
遺言書があれば、相続人の全員合意が不要となる場合があり、行方不明者がいても相続手続きをスムーズに進められる可能性があります。

まずは行方不明者への連絡をする

相続人に行方がわからないひとがいる場合、最初のステップは、行方不明者を探すことです。
戸籍謄本(全部事項証明書)を取得して、現在登録されている住所を確認しましょう。
戸籍の附票を取り寄せれば、過去の住所履歴も追えます。
住所へ直接行くのではなく、まずは手紙などを出して様子を見ます。
内容は以下のようにするのがおすすめです。

  • 自分との関係(相続人であること)
  • 被相続人が亡くなったこと
  • 相続手続きが必要であること
  • 連絡を希望する旨と連絡先

電話をしてもらうか、直接会う約束などを取り付けて、相続に関して説明する機会を設けてください。

行方不明の相続人がいる場合に検討すべき制度

連絡が一切取れない場合は、法的手続きを用いて、相続の支障を解消する必要があります。

①不在者財産管理人の選任申立て
②失踪宣告

それぞれ確認していきましょう。

①不在者財産管理人の選任申立て

相続人が一時的に行方不明であり、「生死は確認されているが所在が不明」というケースでは、「不在者財産管理人」の選任を家庭裁判所に申し立てる方法があります。
不在者財産管理人は、行方不明者に代わって遺産分割協議などへの参加が認められています。
申立てを行えるのは、利害関係人(他の相続人など)や検察官です。
申立先は、行方不明者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
不在者財産管理人になれるのは、利害関係のない被相続人の親戚や、弁護士などの専門家です。

②失踪宣告

長期間にわたり生死不明の状態が続いている場合は、「失踪宣告」の制度を活用する方法もあります。
失踪宣告とは、一定期間以上生死不明である人物について、法律上死亡したものとみなす制度です。
失踪には「普通失踪」と「特別失踪」の2種類があり、それぞれ条件や扱いが異なります。

■普通失踪

7年以上音信不通で、生死がわからない場合です。
家庭裁判所に対して「失踪宣告の申立て」をし、裁判所による審理後、「死亡したもの」とみなされます。

■特別失踪

戦災や海難など生命に危険がある状況で行方不明になり、1年以上所在不明の場合です。
普通失踪よりも要件の緊急性・重大性が高く、期間も短縮されています。
失踪宣告後に本人の生存が判明した場合、失踪宣告は取り消され、相続に関する法律関係も遡って修正されます。
失踪宣告を選択する場合は、事前に弁護士などに相談し、状況に合った方法かどうかを慎重に検討してください。

不在者財産管理人の選任手続きの流れ

不在者財産管理人の選任には、以下のような手順が必要です。

①必要書類の提出
②裁判所による審査・選任決定
③選任後の手続き

それぞれ確認していきましょう。

①必要書類の提出

申立てには、以下のような書類が求められます。

  • 申立書
  • 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 不在者の戸籍附票
  • 財産管理人候補者の住民票または戸籍附票
  • 不在の事実を示す資料
  • 不在者の財産資料(不動産登記事項証明書、通帳コピー、残高証明書など)
  • 利害関係人が申立人の場合は利害関係を示す資料(戸籍、契約書など)

入手できない戸籍などがある場合、申立て後の追加提出も可能です。

②裁判所による審査・選任決定

家庭裁判所は提出された書類や事情をもとに、選任の可否を判断します。
必要があれば、補足資料の提出や意見聴取が求められることもあります。
裁判所が適任と認めた人物が、不在者財産管理人に選任されます。

③選任後の手続き

民法第28条によれば、不在者財産管理人が通常の管理を超える行為(遺産分割協議に参加する、財産を売却する)を行うには、家庭裁判所の許可が必要です。
不在者財産管理人本人が、不在者財産管理人を選任した家庭裁判所に対して申立てをします。

まとめ

今回は、相続人が行方不明である場合の対応方法について解説しました。
相続手続きでは相続人全員の関与が求められるため、行方不明者がいると対応が難しくなります。
その際は、不在者財産管理人の選任や失踪宣告といった制度の活用を検討してください。
状況に応じた適切な手続きに進むためにも、必要に応じて弁護士など専門家のサポートを受けるのも重要です。

無効にならない自筆証書遺言の書き方

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相続の際に故人の意思を反映させるには、遺言書の作成が有効です。
遺言書には自筆証書遺言や公正証書遺言などがあり、手軽に作成できるものは自筆証書遺言です。
この記事では、自筆証書遺言の正しい書き方を解説します。

自筆証書遺言

遺言をのこす方が自ら記述したものが自筆証書遺言です。
自宅でお金をかけず手軽に作成できるため、多くの方が利用しています。
しかし形式に厳格な決まりがあり、守られていない場合には無効となるリスクもあります。

相続が発生した際に効力を発動させるには、家庭裁判所による検認手続きが必要です。
検認手続きを受けずに開封してしまうと、5万円以下の過料を科せられる可能性もあるため注意してください。

自筆証書遺言書保管制度

遺言書は自宅で管理する以外に、法務局にて保管することも可能です。
数千円の費用がかかりますが、制度に申し込むことで、紛失や改ざんなどのリスクを減らせます。

さらに申し込み時に対象者を指定しておくと、遺言者が亡くなった際に保管の旨を対象者へ通知できます。
これにより自身の死後、遺言書が発見されないリスクを減らせます。
またこの制度を利用すると、検認手続きを受けずに相続の手続きを進められるメリットもあります。
ただし、申し込み時に遺言書の内容が有効かどうかは確認してもらえません。
自ら責任をもって有効な遺言書を作成してください。

自筆証書遺言の書き方

書き方には決まりがあり、守らなければ場合は無効になります。
有効となる要件は次の通りです。

  • 内容全文、日付、氏名を自筆する
  • 押印する
  • 訂正時は二重線を引いて訂正印を押し、余白に変更した旨と署名を記す

また、法務局にて保管してもらうには、以下の決まりを守らなければいけません。

  • A4サイズの読みやすい色の用紙で作成(罫線入りでも可)
  • 片面のみに記述
  • 上5mm、下10mm、左20mm、右5mmの余白を確保
  • ページ番号を付ける
  • ページをとじ合わせない

遺言者が自筆で作成しなければいけない

自筆証書遺言は、遺言者本人がすべてを自筆で記述しなければならず、パソコンによる記述は認められません。
鉛筆書きでも法的には問題ありませんが、消えてしまうリスクや改ざんされてしまうリスクもあるため、ボールペンなどを使用すると安心です。

日付は、年月日を具体的に記述します。
たとえば「令和〇年〇月吉日」といった記載は具体的な日付がわからないため無効です。
文字や内容を書き間違えてしまった場合は、二重線で訂正し、訂正印を押します。
正しい言葉を記述したあと、余白などに「(項目番号)中、〇字削除、〇字追加」と記述し、署名してください。

ただし、財産目録はパソコンでの作成が認められています。
そのほか、不動産の登記簿謄本や通帳のコピーなどを添付することも可能です。
コピーを添付する際は、内容がはっきりと読み取れるよう、鮮明な画像でなければいけません。
自筆していないページには、全ページに署名と押印が必要です。

表現に注意する

記述する際には、表現に注意が必要です。
誰にどの財産を相続させるのか、人物と財産を特定してわかりやすく記載しなければいけません。
あいまいな表現をしてしまうと特定できなかったり、読んだ人によって解釈が異なったりするリスクがあります。

たとえば不動産は、登記簿謄本通りに記述します。
同一住所に複数の家屋が建っていることもあり、住所だけでは具体的に特定できない可能性があるためです。
また、相続させる意味合いで「家を任せる」などと記述しても、遺言者の意図通りに解釈されない可能性があります。
とくに内容に不満のある相続人がいる場合、そのような文言から「内容が正確に理解できないから無効だ」と主張されることもあります。
明確に記述してください。

保管制度を利用するときの注意点

保管制度にはルールがあり、たとえ遺言書の決まりを守っていても制度のルールを守れていない場合には保管してもらえません。
用紙には上下左右に余白を作らなければいけませんが、その余白に1文字でもはみ出して記載してしまった場合、書き直しが必要になります。
各ページにページ番号を記載する際には、総ページ数もわかるように記載します。
保管している間に文字が消えてしまわないよう、消えるボールペンは使用しないよう注意してください。

また、署名は戸籍通りの文字を用いなければいけません。
申し込み時に本人確認をする都合上、公的資料と署名が一致している必要があるためです。

まとめ

この記事では自筆証書遺言の正しい書き方について解説しました。
有効となるには要件があり、日付を含め全文を自筆で記載し、署名・押印しなければいけません。
財産目録はパソコンでも作成できますが、全ページに署名と押印が必要です。
また保管制度を利用するためには、それに応じた決まりを守る必要があります。
無効にならないよう、作成時には弁護士へご相談ください。

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