弁護士法人金法律事務所

コラム

相続人が行方不明の場合の対処法

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相続が発生したものの、「相続人に行方がわからないひとがいる」というケースは珍しくありません。
遺産分割協議は、基本的に相続人全員で進める必要があるため、行方不明のひとがいると探す手間がかかります。
今回は、相続人が行方不明の場合の対処法を解説します。

相続手続きに必要な「相続人全員の関与」とは

相続の場面では、遺産分割協議や不動産登記、預貯金の解約など、多くの手続きに相続人全員の関与が求められます。
「全員」とは、法定相続人全員を指します。
しかし親戚の人間関係などによっては、相続人が全員すぐに集まるとは限りません。
関与できない相続人がいれば、基本的には手続きを進められないため注意が必要です。

相続人が行方不明になる原因と事前の対策

行方不明の相続人が出る原因・背景はさまざまです。

  • 疎遠になっていた親族との連絡が取れなくなっている
  • 転居後の住所が不明になっている
  • 海外移住や長期入院などによる音信不通がある

上記の事態に備えて、被相続人自身が遺言書を作成し、遺産分割の方針を明確にするのがおすすめです。
遺言書があれば、相続人の全員合意が不要となる場合があり、行方不明者がいても相続手続きをスムーズに進められる可能性があります。

まずは行方不明者への連絡をする

相続人に行方がわからないひとがいる場合、最初のステップは、行方不明者を探すことです。
戸籍謄本(全部事項証明書)を取得して、現在登録されている住所を確認しましょう。
戸籍の附票を取り寄せれば、過去の住所履歴も追えます。
住所へ直接行くのではなく、まずは手紙などを出して様子を見ます。
内容は以下のようにするのがおすすめです。

  • 自分との関係(相続人であること)
  • 被相続人が亡くなったこと
  • 相続手続きが必要であること
  • 連絡を希望する旨と連絡先

電話をしてもらうか、直接会う約束などを取り付けて、相続に関して説明する機会を設けてください。

行方不明の相続人がいる場合に検討すべき制度

連絡が一切取れない場合は、法的手続きを用いて、相続の支障を解消する必要があります。

①不在者財産管理人の選任申立て
②失踪宣告

それぞれ確認していきましょう。

①不在者財産管理人の選任申立て

相続人が一時的に行方不明であり、「生死は確認されているが所在が不明」というケースでは、「不在者財産管理人」の選任を家庭裁判所に申し立てる方法があります。
不在者財産管理人は、行方不明者に代わって遺産分割協議などへの参加が認められています。
申立てを行えるのは、利害関係人(他の相続人など)や検察官です。
申立先は、行方不明者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
不在者財産管理人になれるのは、利害関係のない被相続人の親戚や、弁護士などの専門家です。

②失踪宣告

長期間にわたり生死不明の状態が続いている場合は、「失踪宣告」の制度を活用する方法もあります。
失踪宣告とは、一定期間以上生死不明である人物について、法律上死亡したものとみなす制度です。
失踪には「普通失踪」と「特別失踪」の2種類があり、それぞれ条件や扱いが異なります。

■普通失踪

7年以上音信不通で、生死がわからない場合です。
家庭裁判所に対して「失踪宣告の申立て」をし、裁判所による審理後、「死亡したもの」とみなされます。

■特別失踪

戦災や海難など生命に危険がある状況で行方不明になり、1年以上所在不明の場合です。
普通失踪よりも要件の緊急性・重大性が高く、期間も短縮されています。
失踪宣告後に本人の生存が判明した場合、失踪宣告は取り消され、相続に関する法律関係も遡って修正されます。
失踪宣告を選択する場合は、事前に弁護士などに相談し、状況に合った方法かどうかを慎重に検討してください。

不在者財産管理人の選任手続きの流れ

不在者財産管理人の選任には、以下のような手順が必要です。

①必要書類の提出
②裁判所による審査・選任決定
③選任後の手続き

それぞれ確認していきましょう。

①必要書類の提出

申立てには、以下のような書類が求められます。

  • 申立書
  • 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 不在者の戸籍附票
  • 財産管理人候補者の住民票または戸籍附票
  • 不在の事実を示す資料
  • 不在者の財産資料(不動産登記事項証明書、通帳コピー、残高証明書など)
  • 利害関係人が申立人の場合は利害関係を示す資料(戸籍、契約書など)

入手できない戸籍などがある場合、申立て後の追加提出も可能です。

②裁判所による審査・選任決定

家庭裁判所は提出された書類や事情をもとに、選任の可否を判断します。
必要があれば、補足資料の提出や意見聴取が求められることもあります。
裁判所が適任と認めた人物が、不在者財産管理人に選任されます。

③選任後の手続き

民法第28条によれば、不在者財産管理人が通常の管理を超える行為(遺産分割協議に参加する、財産を売却する)を行うには、家庭裁判所の許可が必要です。
不在者財産管理人本人が、不在者財産管理人を選任した家庭裁判所に対して申立てをします。

まとめ

今回は、相続人が行方不明である場合の対応方法について解説しました。
相続手続きでは相続人全員の関与が求められるため、行方不明者がいると対応が難しくなります。
その際は、不在者財産管理人の選任や失踪宣告といった制度の活用を検討してください。
状況に応じた適切な手続きに進むためにも、必要に応じて弁護士など専門家のサポートを受けるのも重要です。

個人再生をしても住宅ローンが残っている家を残せるか

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借金の返済が困難になった場合でも、すべての財産を失わずに生活の再建を図る方法が「個人再生」です。
個人再生であれば、住宅ローンが残っている家を残せる可能性があります。
今回は、住宅ローンが残っている場合でも、個人再生で自宅を残せるかどうかを解説します。

個人再生とは

個人再生とは、裁判所を通じて借金の元本を大幅に減額し、原則3年(最長5年)の分割で返済していく手続きです。
自己破産のように財産をすべて処分する必要がないため、一定の条件を満たせば、住宅などの資産を維持したまま借金の整理ができます。
同制度には、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2つがあります。
ただし基本的には前者が選択される場合がほとんどです。
なぜなら多くの場合、小規模個人再生のほうが、給与所得者等再生よりも返済額が少なくなるからです。

個人再生(小規模個人再生)を利用するための主な条件

制度を利用するには、以下のような条件を満たしている必要があります。

①将来にわたって安定した収入があること
②借金の総額が一定以下であること
③債権者の同意があること

①と②は開始要件であり、そもそもこれを満たしていなければ申請ができません。
それぞれ確認していきましょう。

①将来にわたって安定した収入があること

再生計画に従って、継続的に返済を行うのが前提となるため、継続的または反復した収入が必要です。
たとえば、会社員・公務員・個人事業主・年金受給者などが該当します。

②借金の総額が一定以下であること

小規模個人再生の場合、「住宅ローンを除いた無担保債務が5,000万円以下」が条件です。
5,000万円を超え、減額できない場合は、自己破産を検討します。

③債権者の同意があること

厳密には、申し立てるための条件ではなく、「認可要件」です。
小規模個人再生では、提出した再生計画案に対して、債権者からの「賛成」または「反対」の意見が重要です。
反対が多いと、その計画が認められない場合があります。
ただし反対が少数であれば、「みなし同意」として、裁判所が計画を認めます。
具体的なポイントは、以下の2つです(両方満たす必要があります)。

  • 反対を出した債権者の人数が、全体の半数未満
  • 反対を出した債権者が持つ借金の金額合計が、全体の半分未満

たとえば債権者が10人いて、そのうち3人だけが反対であり、しかもその3人が持つ借金の総額が全体の半分より少なければ「債権者の同意があった」と扱われます。

住宅ローン特則とは?家を守るための特別な制度

住宅を手放さずに個人再生を進めるには、「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」と呼ばれる制度を利用します。
住宅ローン特則とは、住宅ローンの返済を続けることを条件に、自宅の処分を回避できる制度です。
ただし利用には条件があるため、早めに弁護士などの専門家へ相談し、適用可能かを確認するのが重要です。

住宅ローン特則を利用するための条件

住宅ローン特則を利用するための条件は、以下の通りです。

  • 借金が住宅取得のためのローンである
  • 住むための家である
  • 本人が持っている家である
  • 住宅に抵当権が設定されている
  • 他の抵当権が設定されていない
  • 税金の滞納による差し押さえがない
  • 代位弁済から6か月以上経っていない

それぞれ確認していきましょう。

借金が住宅取得のためのローンである

対象の借入れが、住宅購入を目的としたローンである必要があります。
リフォームローンなどでも、住宅に関係する借入れであれば、対象になる可能性があります。
判断に迷う場合は、弁護士などの専門家に相談してください。

住むための家である

自宅が「居住用」であるのが前提です。
つまり、実際に住んでいるか、住む予定の住宅に限られます。
事務所や投資用物件は対象外となりますが、店舗付き住宅であっても、住居部分が半分以上あれば認められる可能性があります。

本人が持っている家である

住宅ローン特則が使えるのは、住宅ローンを支払っている本人が、家の所有者である場合です。
共有名義の場合でも、本人が持っている持分にローンの担保が設定されていれば、利用できる可能性があります。

住宅に抵当権が設定されている

住宅ローンには、通常、抵当権が設定されています。
根抵当権でも、住宅ローンだけの担保であれば問題ありません。

他の抵当権が設定されていない

住宅ローン以外の借入れに対しても抵当権が設定されている場合、制度の利用は難しくなります。
なぜなら、他の債権者がその抵当権を使って家を差し押さえる可能性があるからです。

税金の滞納による差し押さえがない

固定資産税などの滞納で、すでに家に差押登記がされている場合、原則として制度の対象になりません。
ただし納税について分割払いの合意が取れており、支払える見込みがあれば、例外的に認められる場合もあります。

代位弁済から6か月以上経っていない

ローンを滞納すると、保証会社が代わりに支払う「代位弁済」が行われます。
その後、6か月以上経過すると住宅ローン特則は使えません。
代位弁済から6か月以内なら、「巻戻し」という対応で再生の対象にできます。

住宅ローンが残っている家を残すためのポイント

個人再生によって住宅を守るには、以下のポイントに注意してください。

  • 安定した収入があるかを確認する
  • 家計管理と支出の見直しを行う
  • ローンの内容や担保の有無を整理する
  • 弁護士への相談を検討する

特に住宅ローン特則を使う場合は、制度の細かい要件を確認しつつ、実務的な判断をする必要があります。
わからない部分があれば、弁護士などの専門家に相談してください。

まとめ

住宅ローン特則を利用すれば、自宅を残しつつ他の借金を整理できる可能性があります。
ただし、一定の条件を満たす必要があります。
無理のない返済計画を立てるためにも、専門家の力を借りて慎重に進めてください。

過失割合に納得できないときの対処法

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交通事故に遭った際、保険会社から提示される過失割合に納得できない場合があります。
そのまま受け入れると、不利な条件で示談が成立する可能性があるため注意が必要です。
今回は、提示された過失割合に納得できない場合の具体的な対応方法を解説します。

そもそも過失割合とは?

過失割合とは、交通事故における当事者それぞれの過失(注意義務違反)の程度を数値化したものです。
たとえば、過失割合が「7:3」とされた場合、7割の責任がある側がより大きな損害賠償責任を負います。
事故の状況や証拠、過去の判例などをもとに判断されるケースが多く、最終的には当事者の合意によって確定します。

過失割合に納得できない理由とは

保険会社が提示する過失割合がすべて正しいとは限りません。
以下のような理由で、納得できないと感じるケースがあります。

  • 事故状況の理解に相違がある
  • 自分に不利な証拠だけが評価されている
  • 過去の判例との整合性が取れていない
  • 保険会社が交渉を急いでいるため説明が不十分

過失割合に納得できなくても、感情的にならず、冷静に対応してください。

過失割合に納得できないときの対応手順

提示された過失割合に同意できない場合、以下のような手順で対応します。

①事故状況に関する証拠を再確認する
②保険会社に説明を求める
③意見が食い違う場合は交渉を継続する
④弁護士に相談する

それぞれ確認していきましょう。

①事故状況に関する証拠を再確認する

まずは、自分が把握している事故状況を改めて整理し、客観的な証拠を揃えてください。
たとえば、以下のような資料が役立ちます。

  • ドライブレコーダーの映像
  • 現場の写真や見取り図
  • 警察が作成した実況見分調書
  • 目撃者の証言や連絡先

過失割合に納得ができない場合、基本的に相手の保険会社と交渉することになります。
証拠の内容によっては、保険会社の判断を覆す材料となる場合もあるため、徹底的に情報収集を行いましょう。

②保険会社に説明を求める

事故状況に関する証拠を再確認できたら、実際に相手の保険会社との交渉に入ります。
過失割合の根拠があいまいな場合、保険会社に対して「どのような基準で判断されたのか」を説明してもらいます。
参照した判例や過失割合の基準(判例タイムズなど)を尋ねて、合理性を確認してください。

③意見が食い違う場合は交渉を継続する

過失割合は、双方が納得し、合意したうえで成立します。
そのため、納得できないまま合意する必要はありません。
保険会社との話し合いで、自身の主張や証拠を提示し、再評価を促してください。

④弁護士に相談する

「交渉が進展しない」「不利な内容を強く押し付けられている」と感じた場合は、交通事故に詳しい弁護士への相談を検討します。
弁護士は法律的な観点から過失割合を検討し、必要に応じて示談交渉の代理や訴訟対応も行ってくれます。

過失割合の交渉を弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼するメリットは、以下の通りです。

  • 適正な割合を主張できる
  • 保険会社の主張に対抗できる
  • 交渉ストレスを軽減できる
  • 裁判に発展しても対応できる

それぞれ詳しく解説します。

適正な割合を主張できる

過失割合の判断には、判例や事故状況に関する高度な知識が必要です。
弁護士はドライブレコーダーの映像や警察の実況見分調書などを精査して、依頼者にとって不利益にならないよう考えてくれます。
また、過去の事例や「判例タイムズ」などの基準を参考にし、適正な過失割合を主張してくれます。

保険会社の主張に対抗できる

保険会社は営利企業であるため、示談交渉では自社に有利な過失割合を提示する傾向があります。
しかし弁護士が介入すると、その場で不当な割合に対して明確な反論ができ、一方的に不利な内容を押し付けられるリスクが軽減されます。
相手側としても、弁護士が対応しているとなれば、軽視するような対応は取りにくいでしょう。

交渉ストレスを軽減できる

交通事故後は、被害者はもちろんのこと、加害者側も気が動転してさまざまなストレスを抱えます。
そうした状態で保険会社との交渉を続けると、精神的な負担がより大きくなるかもしれません。
弁護士に依頼すれば、交渉に関わる必要がなくなるため、自分の生活に集中できます。

裁判に発展しても対応できる

示談交渉で解決に至らず、最終的に裁判へ進むケースもあるかもしれません。
弁護士に依頼していれば、交渉から訴訟まで一貫してサポートを受けられます。
たとえば証拠の収集・整理、主張書面の作成、法廷での弁論なども安心して任せられます。
交通事故案件に精通した弁護士であれば、裁判例や損害算定の実務にも強いため、裁判を通じてより有利な判決を引き出せる可能性があります。

過失割合の話し合いで注意すべきポイント

今回の内容を総括する形になりますが、過失割合をめぐるやりとりでは、以下の点に注意して対応してください。

  • 感情的にならず、事実と証拠を軸に交渉する
  • 保険会社の提示にすぐに同意せず、納得できるかどうかを確認する
  • 専門家の意見を取り入れることをためらわない

一度合意すると、基本的に過失割合を後から変更するのは困難です。
示談書に署名する前に、専門家の判断も仰ぎつつ、本当に納得できる数字かどうかを判断してください。

まとめ

今回は、提示された過失割合に納得できない場合の対応方法について解説しました。
過失割合は損害賠償額に直結するため、不合理な割合を受け入れてしまうと大きな不利益を被るおそれがあります。
客観的な証拠をもとに保険会社と交渉を重ね、必要に応じて弁護士の力を借りながら、自身にとって適切な条件での解決を目指すことが重要です。

秘密保持契約(NDA)とは?ポイントや注意点など

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ビジネスの場面では、相手に機密情報を開示するケースがあります。
自社の情報が無断で第三者に漏れたり、悪用されたりしないようにするために結ばれるのが、秘密保持契約(NDA)です。
今回は、秘密保持契約(NDA)の基本的な意味や役割、注意すべき点をわかりやすく解説します。

秘密保持契約(NDA)の役割と目的

まずは、秘密保持契約(NDA)の基礎知識を確認していきましょう。

秘密保持契約(NDA)とは

NDAは、「Non-Disclosure Agreement」の頭文字を取ったもので、日本語では「秘密保持契約」と呼ばれています。
企業や個人が、商品開発・業務委託・業務提携などの前提として、相手方に情報を提供するときに締結されるのが一般的です。

秘密保持契約(NDA)の目的

秘密保持契約(NDA)の主な目的は、以下の通りです。

  • 自社のノウハウや未公開情報を守る
  • 第三者への情報流出を防ぐ
  • 万一漏洩した場合の責任範囲を明確にする

上記により、安心して情報を共有し、円滑に交渉を進めやすくなります。

秘密保持契約が使われる主な場面

秘密保持契約(NDA)は、さまざまな状況で利用されています。
たとえば新商品や新サービスの開発に関する外部との打ち合わせは、秘密保持契約(NDA)が使われる場面の典型例です。
新商品・新サービスの情報は、まだ一般には公開されていません。
自社の利益を守るためにも、秘密保持契約(NDA)の締結が重要になります。
他にも、「業務委託(IT開発、デザイン、コンサルなど)の開始前」や「M&A(企業買収や合併)の交渉過程」などでも、秘密保持契約(NDA)が活用されます。

片務契約と双務契約の違い

秘密保持契約(NDA)には、主に2つのタイプがあります。

  • 片務契約:一方だけが情報を提供し、相手に守秘義務を課す
  • 双務契約:双方が情報を提供し合い、お互いに守秘義務を負う

たとえば、受注側の会社が発注者から仕様を聞く場合には、基本的に前者が使われます。

秘密保持契約(NDA)に含めるべき主な項目

秘密保持契約(NDA)を締結する際は、以下のような項目を定めます。

  • 秘密情報の定義
  • 秘密情報の利用範囲
  • 第三者への開示禁止
  • 契約期間および秘密保持義務の存続期間
  • 違反時の対応

それぞれ確認していきましょう。

秘密情報の定義

何を「秘密情報」とするかを文書内ではっきりと示す必要があります。
たとえば、「技術情報」「営業資料」「取引先名簿」「価格情報」など、対象をできるだけ具体的に記載します。

秘密情報の利用範囲

開示された情報を、どの目的に限定して使用するのかを明示します。
通常は「本契約に基づく検討目的の範囲内に限る」などの表現が使われます。

第三者への開示禁止

秘密情報を、契約相手以外の第三者に漏らさない義務について定めます。
例外的に、外部の専門家(弁護士、税理士など)に開示する場合の取り扱いもここで規定します。

契約期間および秘密保持義務の存続期間

契約が終了した後も秘密保持義務を続ける期間を設定します。
たとえば「契約終了後も3年間義務が続く」といった定めが一般的です。
秘密情報の性質から、「契約終了後も存続する」など、期間の定めがない場合もあります。

違反時の対応

もし秘密情報が漏洩した場合に、どのような対応になるかをあらかじめ記載します。
基本的には、損害賠償と差止請求の2つです。

秘密保持契約の注意点

秘密保持契約(NDA)はシンプルな契約書に見えても、内容次第ではトラブルにつながる可能性があります。
以下の点には特に注意が必要です。

  • 秘密情報の範囲があいまい
  • 情報の管理方法が明記されていない
  • 違反時の対応が不明確

それぞれ確認していきましょう。

秘密情報の範囲があいまい

秘密保持契約では、「何が秘密か」を明確に定めるのが前提です。
しかし実務では、「秘密情報とは一般に知られていない情報を指す」など、抽象的な表現で済まされるケースが少なくありません。
範囲がぼんやりしていると、情報を受け取った側は「これは秘密なのかどうか」が判断しにくくなります。
「製品の仕様書」「原価データ」「販売戦略」「顧客リスト」のように明記して、情報管理の線引きをわかりやすくしてください。

情報の管理方法が明記されていない

秘密情報は、受け取った側が適切に管理しなければ意味がありません。
ところが、契約書に管理方法の具体的な指示が書かれていないケースも多く見受けられます。
「コピー・複製の取り扱いはどうなるのか」「返還・廃棄はどうするか」など、具体的な部分を決めて、合意を得てください。
管理ルールがなければ、「不用意に社内で共有されていた」「個人のPCに保存されていた」などの形で漏洩リスクが高まります。

違反時の対応が不明確

「違反があった場合は別途協議する」とだけ書かれていると、実際に問題が起きた際に話し合いが難航しやすくなります。
リスク管理のポイントは以下の3つです。

  • 違反によって損害が出た場合に損害賠償を請求するかどうか
  • 損害額の上限を設けるかどうか
  • 裁判ではなく仲裁や調停で解決するか

できるだけ具体的に定めましょう。

まとめ

秘密保持契約(NDA)は、取引を始める前の段階で結ばれるケースが多く、信頼関係を築くうえでも重要な意味を持ちます。
形式だけの契約にせず、自社の情報を適切に守れる内容かどうかを確認してから締結してください。
法的にわからない部分があれば、弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。

離婚調停を有利に進めるためのポイント

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夫婦間の話し合いだけでは離婚の条件がまとまらないとき、家庭裁判所での「離婚調停」を選ぶ方法があります。
とはいえ、調停の場では感情的になりやすく、冷静な判断を欠いて不利な結果につながる可能性もあります。 
今回は、離婚調停を少しでも有利に進めるために押さえておきたいポイントを解説します。

離婚調停とは

離婚調停は、家庭裁判所で行う法的な手続きです。 
夫婦双方の話し合いを、裁判官と調停委員の立ち会いのもとで進める形式となります。

離婚調停の流れ

離婚調停の流れは、以下の通りです。

①申立書および必要書類の提出
②初回の調停期日の通知
③調停
④調停調書の作成・調停の終了

それぞれ確認していきましょう。

①申立書および必要書類の提出

まずは、家庭裁判所に調停申立書と必要書類を提出します。
提出先は、相手方(配偶者)の住所地を管轄する家庭裁判所です。

②初回の調停期日の通知

申立てを受けた裁判所は、調整後に初回の調停期日を指定し、当事者双方に通知します。
調停は裁判所が開廷している時間、つまり平日の昼間に行われるのが原則です。
仕事や育児があっても、都合を調整して出席しなければなりません。

③調停

調停当日は、夫婦が別々の待合室で待機し、交互に調停委員と話すのが一般的です。
いわゆる「非対面方式」であり、相手と直接顔を合わせずに話ができるため、冷静なやりとりがしやすくなります。
調停委員2名(男女1名ずつが多い)と、家庭裁判所の裁判官が対応するのが基本です。
まずは申立人から意見を聞き、次に相手方の意見を確認するという流れで話が進みます。
調停委員は中立の立場から、事実関係や希望条件を整理し、妥協点を探ります。

④調停調書の作成・調停の終了

複数回の期日を重ね、双方が合意に達すれば「調停調書」が作成されます。
調停調書は、裁判所が作成する正式な文書です。
確定判決と同じ効力を持つため、離婚届を提出せずに離婚が成立します。
一方で、意見が折り合わず合意に至らない場合には、調停は不成立となります。
上記の場合、家庭裁判所が職権で判断を下す「審判」に進むか、あるいは当事者が改めて「離婚訴訟」を起こします。

離婚調停を有利に進めるためのポイント

離婚調停を有利に進めるためには、以下のポイントを意識してください。

  • 事前に目的と優先順位を明確にする
  • 証拠や資料を準備する
  • 調停委員には丁寧に接する
  • 調停の記録は自分でも残す
  • 調停中の言動には注意する

それぞれ確認していきましょう。

事前に目的と優先順位を明確にする

調停を始める前に、自分が「何を一番重視するのか」を整理するのが重要です。 
「親権を得たい」「養育費を確実に取り決めたい」など、希望内容を紙に書き出します。
すべてを主張すると対立が激しくなるため、譲れない点と妥協できる点の線引きをすると、より柔軟に交渉を進めやすくなります。

証拠や資料を準備する

主張を裏付けるためには、客観的な証拠が欠かせません。 
以下のような資料を整理すると効果的です。

  • DVやモラハラの証拠(録音データ、LINE、診断書など) 
  • 夫婦共有財産の資料(通帳、不動産登記簿など) 
  • 収入を示す資料(源泉徴収票、給与明細など) 
  • 子どもの養育状況に関する記録(学校の連絡帳、写真など)

調停委員はあくまでも第三者として関与する存在であり、一方に肩入れするわけではありません。
しかし当然、人間としての好感や嫌悪感を抱くのも事実です。
調停委員たちの心証を良くするのも、調停を有利に進めるうえで重要です。

調停委員には丁寧に接する

調停の進行役を担うのが調停委員です。 
調停委員に対して高圧的な態度を取ると、話し合いが進まず、結果的に自分に不利な展開になる可能性があります。 
たとえ相手側の主張に納得できない場面でも、礼儀ある対応を心がけましょう。

調停の記録は自分でも残す

調停は複数回にわたって行われるのが一般的です。
自分自身でも、できる限り毎回のやりとりを記録してください。
調停の内容をノートにまとめたり、話し合いで合意した内容を書き留めたりすれば、次回以降の方針が立てやすくなります。
相手側の主張が変わったときにも、過去の記録があれば主張の矛盾を指摘できるかもしれません。

調停中の言動には注意する

調停の場だけでなく、その前後の言動にも注意が必要です。 
たとえばSNSで相手を非難するような投稿をしたり、感情的なLINEを送ったりすると、その内容が調停に持ち出される可能性があります。
子どもが関わる離婚の場合、親としてのふるまいも評価の対象になるため、節度ある行動が求められます。

弁護士に依頼すべきかの判断ポイント

離婚調停は自分だけでも対応可能ですが、状況によっては弁護士への依頼を検討する価値があります。
たとえば、以下のようなケースです。

  • 相手が弁護士を立てている
  • 複雑な財産分与や借金問題がある
  • DVや精神的虐待を受けている
  • 親権や面会交流について争いがある
  • 精神的に不安定で自分では交渉が難しい

弁護士に依頼すれば、調停への同行だけでなく書類作成や主張の整理も任せられるため、心理的な負担が軽くなります。

まとめ

調停は法的な手続きでありながら、個人のふるまいなどで結果が変わる可能性もあります。 
証拠の整理を徹底し、当日は冷静な対応を心がけてください。
自分だけで対応できない場合は、早めに弁護士へ相談するのがおすすめです。

無効にならない自筆証書遺言の書き方

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相続の際に故人の意思を反映させるには、遺言書の作成が有効です。
遺言書には自筆証書遺言や公正証書遺言などがあり、手軽に作成できるものは自筆証書遺言です。
この記事では、自筆証書遺言の正しい書き方を解説します。

自筆証書遺言

遺言をのこす方が自ら記述したものが自筆証書遺言です。
自宅でお金をかけず手軽に作成できるため、多くの方が利用しています。
しかし形式に厳格な決まりがあり、守られていない場合には無効となるリスクもあります。

相続が発生した際に効力を発動させるには、家庭裁判所による検認手続きが必要です。
検認手続きを受けずに開封してしまうと、5万円以下の過料を科せられる可能性もあるため注意してください。

自筆証書遺言書保管制度

遺言書は自宅で管理する以外に、法務局にて保管することも可能です。
数千円の費用がかかりますが、制度に申し込むことで、紛失や改ざんなどのリスクを減らせます。

さらに申し込み時に対象者を指定しておくと、遺言者が亡くなった際に保管の旨を対象者へ通知できます。
これにより自身の死後、遺言書が発見されないリスクを減らせます。
またこの制度を利用すると、検認手続きを受けずに相続の手続きを進められるメリットもあります。
ただし、申し込み時に遺言書の内容が有効かどうかは確認してもらえません。
自ら責任をもって有効な遺言書を作成してください。

自筆証書遺言の書き方

書き方には決まりがあり、守らなければ場合は無効になります。
有効となる要件は次の通りです。

  • 内容全文、日付、氏名を自筆する
  • 押印する
  • 訂正時は二重線を引いて訂正印を押し、余白に変更した旨と署名を記す

また、法務局にて保管してもらうには、以下の決まりを守らなければいけません。

  • A4サイズの読みやすい色の用紙で作成(罫線入りでも可)
  • 片面のみに記述
  • 上5mm、下10mm、左20mm、右5mmの余白を確保
  • ページ番号を付ける
  • ページをとじ合わせない

遺言者が自筆で作成しなければいけない

自筆証書遺言は、遺言者本人がすべてを自筆で記述しなければならず、パソコンによる記述は認められません。
鉛筆書きでも法的には問題ありませんが、消えてしまうリスクや改ざんされてしまうリスクもあるため、ボールペンなどを使用すると安心です。

日付は、年月日を具体的に記述します。
たとえば「令和〇年〇月吉日」といった記載は具体的な日付がわからないため無効です。
文字や内容を書き間違えてしまった場合は、二重線で訂正し、訂正印を押します。
正しい言葉を記述したあと、余白などに「(項目番号)中、〇字削除、〇字追加」と記述し、署名してください。

ただし、財産目録はパソコンでの作成が認められています。
そのほか、不動産の登記簿謄本や通帳のコピーなどを添付することも可能です。
コピーを添付する際は、内容がはっきりと読み取れるよう、鮮明な画像でなければいけません。
自筆していないページには、全ページに署名と押印が必要です。

表現に注意する

記述する際には、表現に注意が必要です。
誰にどの財産を相続させるのか、人物と財産を特定してわかりやすく記載しなければいけません。
あいまいな表現をしてしまうと特定できなかったり、読んだ人によって解釈が異なったりするリスクがあります。

たとえば不動産は、登記簿謄本通りに記述します。
同一住所に複数の家屋が建っていることもあり、住所だけでは具体的に特定できない可能性があるためです。
また、相続させる意味合いで「家を任せる」などと記述しても、遺言者の意図通りに解釈されない可能性があります。
とくに内容に不満のある相続人がいる場合、そのような文言から「内容が正確に理解できないから無効だ」と主張されることもあります。
明確に記述してください。

保管制度を利用するときの注意点

保管制度にはルールがあり、たとえ遺言書の決まりを守っていても制度のルールを守れていない場合には保管してもらえません。
用紙には上下左右に余白を作らなければいけませんが、その余白に1文字でもはみ出して記載してしまった場合、書き直しが必要になります。
各ページにページ番号を記載する際には、総ページ数もわかるように記載します。
保管している間に文字が消えてしまわないよう、消えるボールペンは使用しないよう注意してください。

また、署名は戸籍通りの文字を用いなければいけません。
申し込み時に本人確認をする都合上、公的資料と署名が一致している必要があるためです。

まとめ

この記事では自筆証書遺言の正しい書き方について解説しました。
有効となるには要件があり、日付を含め全文を自筆で記載し、署名・押印しなければいけません。
財産目録はパソコンでも作成できますが、全ページに署名と押印が必要です。
また保管制度を利用するためには、それに応じた決まりを守る必要があります。
無効にならないよう、作成時には弁護士へご相談ください。

個人再生のメリットとは

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返さなければいけない借金の額が増えていくと、生活を維持することが難しくなります。
生活を立て直すには、一度借金を整理する必要があるかもしれません。
この記事では、個人再生のメリットについて解説します。

債務整理の種類

現在抱えている借金の返済負担を軽くする仕組みが債務整理です。
債務整理には次の3つの種類があります。

  • 任意整理
  • 個人再生
  • 自己破産

任意整理は整理したい借金を選んで手続きできる方法です。
お金を貸してくれた人(債権者)と直接交渉し、将来的に発生する利息を免除してもらえるようお願いします。
交渉に応じてもらえない場合には利用できません。
個人再生と自己破産はともに裁判所の許可のもと、返済すべき借金そのものを減らす手続きです。
個人再生は安定した収入がある場合に利用でき、借金を大幅に減額してもらい、3~5年かけて返済していきます。
自己破産は必要最低限以外の財産を手放し、ほとんどの借金の返済を免除してもらう手続きです。

個人再生の特徴とメリット

個人再生は住宅ローンを除いた借金の総額が5,000万円以下であり、現状では全額返済することが困難な場合に利用できます。
安定した収入があり、減額後に残った借金を返済していけることが条件です。
借金が高額すぎる場合や、減額しても返済しきれない場合は利用できません。
個人再生には次のようなメリットがあります。

  • 借金を大幅に減額できる
  • 自宅などの財産を手放さずに済む
  • 職業の制限がない
  • 浪費やギャンブルによる借金でも利用できる

借金を大幅に減額できる

裁判所へ返済計画案を提出し、それを認めてもらうことで、返済するべき借金の額を減額できます。
返済計画案は収入や所有している財産、負債額などから決定します。
個人再生には最低限返済しなければいけない金額が決まっており、負債額が100万円未満の場合は全額返済しなければいけません。
負債額が500万円を超え1,500万円以下の場合には、負債額の5分の1が返済額です。
1,500万円を超え3,000万円以下の場合は、300万円を返済していきます。

高額な財産を所有している場合には、所有財産を売却した場合に得られる金額に応じて、返済すべき額が決まります。
所有財産には預貯金だけでなく、不動産や家財道具、保険の解約返戻金なども含まれます。
高額な財産を所有している場合や収入が多い場合には、返済すべき額も高額になりますが、それでも返済負担は大きく軽減されることが一般的です。

財産を手放さずに済む

借金そのものを減らす仕組みとして、個人再生のほかに自己破産もあります。
ただし自己破産を行うと、生活に必要な最低限の財産以外はすべて差し押さえられてしまい、手元に残せません。
しかし個人再生は財産を差し押さえられず、手元に残すことが可能です。

とくに自動車やパソコンなどは差し押さえられると生活が不便になり、手続き後の生活に悪影響を与えます。
また20万円以上の払戻金がある保険は財産とみなされ、自己破産時には解約させられる可能性があります。
一方、個人再生は生活を守りながら借金を減らせるため、その後も生活しやすくなることがメリットです。

自宅を残すことも可能

個人再生を利用すると、ローン完済後の自宅だけでなく、ローン返済中の自宅も手元に残せます。
通常、購入した住宅は住宅ローンの担保になっていることが一般的です。
債務整理を行うと、本来であれば住宅ローンの債権者に対しても借金減額の手続きを取ることになり、債権者によって担保となっている住宅を差し押さえられるはずです。
しかし個人再生には住宅ローン特則があり、住宅ローンの返済をこれまで通り続けることでその住宅に住み続けられます。
ただし住宅ローン特則にはさまざまな要件があるため、利用時には確認が必要です。

職業の制限がない

自己破産には手続き中に就けない職業がありますが、個人再生には職業や資格の制限はありません。
自己破産手続き中は弁護士や税理士などの士業のほか、生命保険の募集や警備員などの仕事ができません。
このような方々が債務整理によって大幅に借金を減額したい場合、個人再生を選択する必要があります。

浪費やギャンブルによる借金でも利用できる

自己破産する場合、借金を作ってしまった理由がギャンブルや浪費の場合には、借金返済の免除が認められません。
しかし個人再生を行う場合、借金の理由は問われず、ギャンブルや浪費による借金であっても手続き可能です。
自己破産が認められない状況の方は、個人再生を検討してください。

まとめ

この記事では個人再生を利用するメリットについて解説しました。
債務整理の一種である個人再生は、任意整理よりも大幅に返済を楽にでき、自己破産のように財産を差し押さえられる心配もありません。
とくに住宅を手元に残せるため、これまでの生活を維持しながら借金を減らすことが可能です。
ただし個人再生を利用するには、裁判所に返済計画を認めてもらわなければいけません。
個人再生をお考えの方は、弁護士までご相談ください。

電動キックボードでの事故を未然に防ぐには

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電動キックボードは手軽に利用でき、便利な乗り物です。
しかし公道を走る場合には歩行者や自動車などと事故を起こす可能性もあり、安全には気をつけて乗車しなければいけません。
この記事では、電動キックボード利用時の事故を未然に防ぐために必要なことを解説します。

電動キックボード

道路交通法上、電動キックボードは車両に該当します。
運転する電動キックボードの種類によって原付免許が必要な場合と不要な場合があり、不要な車種は16歳以上であれば誰でも運転可能です。
どちらの場合も、交通ルールを守って運転する必要があります。
原付免許を必要とする車種は車道のみ走行可能ですが、免許不要の車種は自転車道も走行できます。
さらに一定の条件を満たした場合、歩道を走行できる場合もあります。

電動キックボードで起こりやすい事故

電動キックボード利用中は単独事故を起こしたり、歩行者や自動車などと接触事故を起こしたりすることがあります。
電動キックボードはタイヤが小さく、路面の影響を受けやすい構造です。
立ったまま利用するため重心も高くなり、異物や体重移動によって転倒しやすくなります。
歩道走行中にバランスを崩すと、通行人に危害を加えてしまう恐れもあります。
車道走行中には自動車の左折時に巻き込まれたり、ほかの軽車両と接触したりといった事故を起こすこともあります。

電動キックボードでの事故を防ぐために必要なこと

事故を防ぐために一番重要なことは、交通ルールを守ることです。
近年シェアサービスが充実し、免許不要で手軽に利用できるようになった反面、交通ルールを十分に理解しないまま乗車してしまうケースも少なくありません。
まずは交通ルールを正しく把握し、安全に乗車してください。

重要な交通ルール

免許がなくても利用できる電動キックボードですが、交通ルールに違反した場合は罰則を受けます。
たとえば電動キックボードは車両の一種であり、飲酒運転はできません。
お酒を飲んだ時には利用しないでください。
飲酒運転の罰則は厳しく、5年以下の拘禁刑、または100万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

走行できる場所にも決まりがあります。
電動キックボードは原則として道路の一番左側を走行しなければいけません。
そこがたとえ左折レーンであったとしても、そのレーンの左端を走行し、そのまま直進していきます。
一時停止の標識がある場所では停止線の手前で停止し、左右を確認します。
信号や標識などを見落とさないよう注意してください。

また、右折したい場合は二段階右折という方法で右折します。
車道の右折レーンに入って一度に右折するのではなく、交差点を2回に分けて横断し、右折する方法です。
まずは交差点を直進して1回目の横断をします。
その後進路を右に変え、交差点を直進することで2回目の横断をし、右折完了となります。

歩道や横断歩道でのルール

一部の車両では歩道を走行できますが、どのような歩道でも自由に走行できるわけではありません。
走行できるのは、自転車での通行が認められている歩道のみです。
さらに、最高時速が時速6km以下となる機能を利用し、最高速度表示灯を点滅させながら走行しなければいけません。
走行中、標識に従う際には、自転車や軽車両に対する標識を確認します。
歩道を走行する際には歩行者を優先し、通行を妨害するような走行をしてはいけません。

歩道を走行できない車種で歩道や横断歩道を利用したい場合は、キックボードから降り、手で押して歩いてください。
手で押して歩いている間は歩行者扱いになります。

その他のルールや気を付けるべきこと

上記以外にも沢山の交通ルールが存在します。
たとえば電動キックボードの定員は1人であり、2人乗りはできません。
車両を運転する際には安全に配慮する必要があり、危険な行為は禁止です。
スマホを見ながらの運転や、傘を差しながらの運転はいけません。
もっとも、雨天時の利用は法律違反ではありませんが、路面の影響を受けやすいため、事故を防ぐためにも雨天時は運転しない方が安心です。

走行時にイヤホンなどを利用することも危険です。
イヤホンなどで耳をふさぎ外部の音を遮断していると、背後から接近する車に気づけず事故につながる恐れがあります。
都道府県ごとの条例で禁止されていることもあるため、音楽を聴きながらの運転は避けてください。

まとめ

この記事では電動キックボードでの事故を未然に防ぐために必要なことを解説しました。
事故を防ぐには、交通ルールを守ることが大切です。
電動キックボードは自転車などと同じように扱われ、ルールを守らない場合には罰金などを科される可能性もあります。
ただし、どれだけ正しく利用していても、事故のリスクがゼロになるわけではありません。
電動キックボード利用時に事故を起こしてしまった場合には、弁護士までご相談ください。

雇用契約書や労働条件通知書を作成する際の注意点

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雇用契約を結ぶ際、雇用契約書と労働条件通知書は兼用が可能です。
ただし労働条件通知書の作成には法的な決まりがあるため、兼用する場合には適切に要件を満たすよう注意しなければいけません。
この記事では、雇用契約書と労働条件通知書の作成で気を付けるべきことを解説します。

雇用契約

労働者が企業に使用されて労働し、その対価として報酬を得る契約が雇用契約です。
雇用契約を結ぶことで、長時間労働の抑制や社会保険の加入など、労働者として法的に保護を受けられます。
契約を結ぶときには、その内容を明らかにするため契約書を作成することが一般的です。

雇用契約書

雇用主と労働者の間で雇用契約を結んだことを証明する書類が雇用契約書です。
雇用契約は口頭でも結ぶことができ、必ずしも書面にする必要はありません。
しかし口頭だけではトラブルになることもあるため、契約書を作成し、署名押印しておくことが大切です。
同時に雇用主には、労働者に対して労働条件を明示する義務があります。
このとき、雇用契約書に法で定められた通知内容を記載することで、労働条件通知書を兼ねることも可能です。

労働条件通知書

労働条件通知書とは、労働者へ明示しなければならない労働条件などを記載した書類です。
交付が義務付けられており、記載しなければならない内容も法的に決まっています。
書かなければいけない内容は次の通りです。

  • 労働契約期間
  • 就業場所
  • 業務内容
  • 始業・終業の時刻
  • 残業の有無
  • 休憩や休日について
  • 賃金について
  • 退職や解雇について

そのほか、交代制の場合はそのルールや、有期契約の場合には更新などについても記載しなければいけません。
就業場所や業務内容が変更になる可能性がある場合にも、その内容を記載します。
また、パートやアルバイトの方には別途記載しなければいけない内容もあります。
明示義務を果たしていない場合、30万円以下の罰金が科せられる可能性があるため注意が必要です。

作成時の注意点

トラブルを発生させず、また万が一トラブルが発生した際にも速やかに解決させるため、契約書や通知書の作成は重要です。
必要な内容を漏れなく記載し、不備のないように作成しなければいけません。

内容が有効であるよう注意する

たとえば時間外労働に対する割増賃金を支払わないなど、労働基準法に違反した内容を記載してはいけません。
そのような内容を記載した契約書に署名や押印していた場合でも、その契約は無効になります。
また労働条件通知書に記載した内容が実際の条件と異なっている場合には、労働者は即時に契約を解除することが可能です。
経営に大きな影響を与える可能性があるため、注意して作成しなければいけません。

また、就業規則と雇用契約書の内容が異なっていた場合には、就業規則の内容が優先されます。
ただし雇用契約書の内容の方が労働者にとって有利な条件であった場合、雇用契約書の内容が優先されることもあります。
とくに契約更新時などは以前の契約書のまま手続きを進めるのではなく、現在の就業規則や法律に合っているか確認が必要です。

相対的明示事項に注意する

労働条件通知書には必ず書かなければいけない内容のほか、該当する場合のみ明示が義務付けられている内容が存在します。
具体的には次の内容です。

  • 退職手当に関する内容
  • 賞与や手当について
  • 最低賃金額について
  • 食費や作業用品費
  • 安全や衛生について
  • 職業訓練
  • 災害補償、疾病扶助
  • 表彰や制裁
  • 休職について

必要に応じて忘れずに明示するよう注意してください。

テンプレートをそのまま使用しない

インターネット上にはさまざまな雇用契約書や労働条件通知書のテンプレートが存在します。
しかしそれらをそのまま使用すると、企業の実態に合わない内容になってしまう恐れがあり、トラブル発生のリスクが高まります。
テンプレートを使用する際には、実際の契約に合わせて内容を適切に作り変えなければいけません。
とくに正社員や契約社員、パートなど雇用形態が異なる場合には、それぞれ異なる内容について記載義務があるため注意が必要です。

また、テンプレートに記載されていない内容であっても、企業の実情に合わせて記載するべき内容が存在する可能性もあります。
記載漏れを防ぐため、テンプレートを使用する場合であっても、法律の専門家などに相談しながら作成すると安心です。

まとめ

この記事では、雇用契約書や労働条件通知書を作成するうえでの注意点を解説しました。
労働契約を結ぶ際には労働条件の通知が義務付けられており、決められた内容を通知していない場合には違法となる可能性もあります。
また、記載内容が労働基準法に違反している場合や就業規則と異なる場合には、無効となることもあります。
作成時には社内に存在する規則や法的な観点をもとに、適切に作成しなければいけません。
雇用契約書などの作成の際には、弁護士までご相談ください。

離婚時に不動産を財産分与する際の注意点

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離婚する際には、通常、夫婦で協力して築き上げた財産を夫婦間で公平に分配します。
このとき不動産があり、なおかつ住宅ローンが残っている場合には、分配が複雑になります。
この記事では、不動産を財産分与する際の注意点を解説します。

財産分与とは

財産分与とは、夫婦の共有財産を清算することです。
原則として、夫婦間で2分の1ずつ分配します。
たとえ夫婦どちらかの単独名義の財産であったとしても、夫婦の協力のもと築いてきた財産は共有財産です。
婚姻期間中に蓄えた預貯金や購入した不動産も共有財産となります。
現金はそのまま分配できますが、現金以外の財産は評価額などを参考にして分配しなければいけません。
現物をそのまま分けるほか、売却したのち現金を分配する方法もあります。

不動産の財産分与

不動産は夫婦の共有財産のうち、非常に大きな価値を持つものです。
通常、どちらかが住み続けたり、売却して売却益を分配したりする方法をとります。
どちらの場合でも、財産分与の際には、まず不動産の価値を把握しなければいけません。
このとき、住宅ローンの有無も考慮する必要があります。

不動産評価額

不動産の評価は売買時の時価で判断することが一般的です。
不動産業者に依頼し、査定してもらうことで判断できます。
住宅ローンが残っている場合には、評価額からローンを差し引くことで不動産の価値を算出します。
たとえば評価額1,500万円の不動産があり、住宅ローンが1,000万円残っている場合には、財産分与におけるその不動産の価値は500万円となります。

ただし状況によっては、不動産評価額よりも住宅ローンの方が高額になっていることもあります。
評価額1,500万円の不動産の住宅ローン残高が2,000万円だった場合、たとえ住宅を売却しても借金が500万円残ります。
財産分与において、売却後もローンが残ってしまう不動産の価値は0円とみなされることが一般的です。
この場合、価値のない不動産は財産分与の対象として取り扱わず、ローンの名義人がそのまま不動産を所有し、ローンを返済していく方法をとることがあります。

売却して得た金銭を分配する

財産分与の際に不動産を売却する場合には、ローンを完済しているか、ローンよりも評価額が高額であることが前提となります。
不動産には抵当権が設定されており、ローンを完済することが売却の条件になるためです。
ローンを完済している場合は売却して得た金銭をそのまま分配します。
ローンが残っている場合には、売却益でローンを完済したのち、余った売却益を分けます。

ただし、評価額よりもローンの方が高額であっても、どうしても売却したいケースも存在します。
所有している住宅が離婚後の生活に合わない場合には、その不動産を所有し、ローンの返済を続けていくことは大きな負担です。
このようなとき、売却益だけでは返済しきれない分は、自己資金でまかなうことも可能です。
そのほか、任意売却という方法であれば、ローンを完済できない場合でも売却できます。
ただし任意売却後は信用情報に傷がつき、数年間は借り入れが困難になるため注意が必要です。

夫婦のどちらかが所有し住み続ける

夫婦のどちらかが不動産を所有し続ける場合には、家を出ていく側に金銭など同じ価額分の財産を渡すことで公平に分配できます。
ローンを完済している場合、相手に渡す金額が高くなりやすいため注意が必要です。

ローンが残っている場合には、ローンの名義人と住み続ける人が同じかどうかで対応が異なります。
ローンの名義人と暮らす人が同一の場合、そのまま生活を続けることが可能です。
しかしローンの名義人ではない人が住み続けたい場合には、ローンの名義を変更して自身が不動産を取得するか、所有者に対し賃貸契約を結んだり使用許可を得たりする必要があります。
なお、ローンの名義変更は銀行などの許可を得なければならず、安定した収入が必要です。

ペアローンを組んでいた場合

ペアローンとは、ひとつの不動産に対し夫婦がそれぞれ別の住宅ローンを組む方法です。
不動産は共有名義となり、それぞれの出資割合に応じた持ち分を所有します。
離婚後もどちらかが所有し続けたい場合には、ローンを一本化し、単独名義にすることが理想です。

離婚後も共有名義のまま、お互いが自身の持ち分を所有し続けることは可能ですが、売却時には相手の同意を得なければいけないなど、手続きが複雑になります。
後々のトラブルを避けるため、ローンの一本化が難しい場合には売却を検討することもあります。

まとめ

この記事では不動産の財産分与について解説しました。
財産分与の方法としては、売却して得た金銭を公平に分配するか、片方が不動産を取得し、もう片方には金銭などほかの財産で清算する方法があります。
住宅ローンが残っている場合には、評価額とローン残高のどちらが高額かによって対応が変わります。
そのほか、条件により適切な財産分与の方法は異なります。
離婚をお考えの際は、弁護士までご相談ください。

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