遺産相続の際は遺言書の内容をもとに遺産を分割します。
では、遺言書が残されたことを知らず、遺産分割協議で取り決めた後に、遺言書が見つかった場合はどうすべきなのでしょうか。
今回は、後から遺言書が見つかった場合の対処法について解説します。
遺言書に有効期限はあるのか
民法では「遺言者が死亡したときから効力を生じる」とあるだけで、その期限については定められていません。
そのため遺言者が亡くなった後、何十年も経って見つかったとしても、その遺言書は有効とされます。
遺言書が見つかった場合の対処法
遺産分割協議後に遺言書が見つかった場合、実際にはどう対処したらいいのでしょうか。
遺言書が有効か確認する
まず、その遺言書が法的に有効なものかどうかを確認します。
遺言書には以下の3種類があります。
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
- 自筆証書遺言
公正証書遺言は、公証役場の遺言検索システムですぐに見つけることができるので、遺産分割の後に見つかる可能性は低いと考えられます。
後から見つかる可能性が高いのは秘密証書遺言と自宅で保管されていた自筆証書遺言になります。
この2つは、家庭裁判所で「検認」する必要があります。
検認とは、見つかった遺言書がどんな状態であったかの確認をするもので、形状や加筆・訂正などの状態や、日付・署名などの内容を明確にするものです。
また、それと同時に遺言書の存在と内容が相続人に知らされることになります。
検認は遺言書の有効無効を判断するものではないので、有効性が疑われる場合は、弁護士などの専門家にチェックしてもらう必要があります。
遺言書が有効だった場合
遺産分割協議が終わっていても、遺言書が有効であれば、その協議は無効になります。
遺言書の内容をもとに、遺産分割を再度やり直す必要があります。
ただし、相続人全員の合意があれば、遺産分割協議を優先させることも可能です。
遺言の内容と遺産分割協議の内容にあまり違いがない場合などは、全員の合意が得られる可能性が高く、再分割しなくて済みます。
遺産分割のやり直しをしなければいけないケースとは
相続人全員の合意があっても、次のような場合は、遺産分割をやり直さなければいけません。
遺言に遺言執行者が指定されている
遺言執行人の役目は遺言を実現させることなので、指定されている場合は遺言の内容に従う必要があります。
ただし、遺言執行者からも合意を得ることができれば、分割をやり直さなくてもいい可能性があります。
遺言に法定相続人以外に遺贈することが示されていた場合
法定相続人以外に遺贈することが記されていた場合も遺産分割をやり直す必要があります。
また、遺言があることを知らずに相続放棄をしていたのに、遺言に多額の財産を譲ると書いてあった場合、相続放棄をしていても財産を受け取ることが可能です。
遺言により財産を譲るのは「遺贈」になり、遺贈の相手は法定相続人でも、それ以外でも指定することができます。
相続放棄は相続を放棄しただけで、遺贈を放棄したわけではないので、受け取ることができるのです。
この場合も、相続人の人数に変更が出るため、遺産分割のやり直しをすることになります。
遺言書を相続人が隠していた場合
遺言書の内容が自分に不利だと知った相続人の1人が遺言書をわざと隠していた場合、その相続人は民法により相続する資格を失います。
そのため、遺産分割を再度やり直す必要が出てきます。
再分割が難しい場合
遺言書の内容をもとに再分割しなくてはいけなくなった場合、それが難しいことがあります。
相続した遺産の現金をすでに使っていたり、不動産を手放していたりしたら、遺産分割協議の時点と同じ状況で再分割をすることは不可能です。
このような場合は、相続人全員が合意できるよう様々な方法を考えていく必要があります。
まとめ
今回は後から遺書が見つかった場合の対処法について解説しました。
家族が亡くなっても、すぐに遺品の整理をしないことはよくあるため、しばらくしてから遺言が見つかることも珍しくありません。
数年後などに見つかればまだしも、何十年も経ってからでは、相続人が代替わりしている可能性もあるのでトラブルが起こりやすくなります。
また、遺言書の内容によっては、相続人から不満が出ることもあるので、トラブルになりそうな場合は弁護士に相談することをおすすめします。