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コラム

遺言とは?遺言書の種類と取り扱い時の注意点を解説

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遺言者が亡くなった後に財産をどのようにするのか、自分の意思を残すことを遺言と言い、紙に書き残したものが遺言書です。
この記事では、遺言書の種類について解説します。

遺言および遺言書とは

遺言とは、遺言者の保有財産を遺された遺族にどのように引き継いでもらうのかという遺言者の意思表示であり、その意思表示を紙に書き残したものが遺言書です。
遺言書を作成するにあたって、法律では以下のことを定めています。

  • 15歳になれば遺言書は作成できる
  • 遺言書を書くときには遺言内容を理解できる能力がなければならない
  • 遺言書の種類によっては決められた書き方、書く人、保管方法でなければ無効になることがある


遺言者が亡くなると基本的に遺言書の内容に従って遺産分割するため、できるだけ詳細に書くことが望ましいです。
そのため、遺言書を残せば遺産分割する際に相続人同士の争いを未然に回避する目的としても有効です。

遺言書の種類

遺言を残す方法として遺言書には以下の3種類あり、種類によって書く人や書き方、保管方法が異なります。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言


遺言書は死後に、遺言者の意思を確実に実現させる必要があるので法律で厳格に定められており、規定に違反している場合は無効になるので注意が必要です。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者がメモ用紙などの紙に自筆で書いて保管する方法で以下の規定があります。

  • 遺言者の自筆であること
  • 遺言書の全文を手書きすること
  • 日付、氏名、押印をすること


その他に、財産目録などはパソコンで作成しても良いですし、通帳などをコピーしたものを遺言書に添付しても構いません。

ただし、財産目録が記載されている個所には遺言者の署名・押印が必要です。
用紙の両面に財産目録を記載およびコピーしている場合は、両面に署名・押印が必要となり、署名・押印がなければ財産目録として認められず、無効になる可能性があるので注意してください。
保管方法は、遺言者自身で保管するか、法務省が行っている自筆証書遺言保管制度を利用して法務省で保管してもらう方法があります。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証人に書いてもらう遺言書であり、公証役場で20年間保管してもらえます。
公正証書遺言は以下の内容を厳守しなければ無効になるので注意してください。

  • 証人が2名以上必要であること
  • 公証役場で公証人に遺言書作成を依頼すること
  • 公証人が作成した遺言書を確認して、遺言者と証人の署名・押印をすること


公正証書遺言は遺言者自身で作成するのではなく、公証人が行うので法律的にも問題のないように作成してもらえます。
また、公正証書遺言は遺言者が亡くなるまで誰も遺言書を開封できないので、偽装・改ざん・破棄といった行為から遺言書を安全に守ることができます。

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、作成した遺言書を封筒に入れて密封し、公証役場で保管してもらう遺言書です。
以下の点に注意して作成する必要があります。

  • 遺言書に遺言者の署名・押印をすること
  • 遺言書は封筒に入れて密封して、遺言書と同じ印章で封印すること
  • 公証役場で保管手続きを行うこと
  • 証人が2名以上必要であること
  • 公証人に対して証人2名以上の前で遺言者の遺言書であることを述べること
  • 公証人が作成した封紙に遺言者と証人は署名・押印すること


秘密証書遺言は遺言者の自筆である必要はなく、パソコンや第三者に依頼して作成してもらっても構いません。
また、作成後には遺言者自身が密封するため、公証人も遺言内容を知ることはできず、遺言者が亡くなるまで誰も開封できないので安全に保管できます。

遺言書を取り扱う際の注意点

遺言書の種類によっては、家庭裁判所に「検認」の申し立てを行わなければ遺言書を開封できないので注意してください。
「検認」とは、遺言書が見つかった場合、誰かに偽造や変造をされないために家庭裁判所に申し立てて、裁判官に遺言書を確認してもらう手続きです。
遺言者の死後、遺言書を開封するための検認手続きが必要になるのは以下のケースです。

  • 自筆証書遺言保管制度を利用していない自筆証書遺言
  • 秘密証書遺言


例えば、遺言者の遺品整理をしていたときに自筆証書遺言が見つかったからといって、検認手続きを行わず、発見者や遺族が勝手に開封すると罰則が科せられるので注意してください。

まとめ

今回は、遺言書の種類について解説しました。
遺言書には3種類あり、それぞれ書き方や保管方法などが異なります。
自筆証書遺言は手続きなどが必要ないので手軽に作成できますが、自筆証書遺言保管制度を利用せず、自分で保管していた場合、万が一にも認知症のような精神疾患を患うと保管場所を忘れる恐れがあります。
また、法律的にも問題のない遺言書を作成するためには、公正証書遺言を利用するか、もしくは、法律の専門家でもある弁護士に依頼してサポートしてもらうことをおすすめします。

任意整理から個人再生への切り替えは可能?

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任意整理したけれど収入が減って返済が困難になった場合に、個人再生に切り替えられないか思案している方もいらっしゃると思います。
この記事では、任意再生から個人再生への切り替えは可能なのかという疑問について解説します。

任意整理から個人再生に切り替える条件とは

任意整理から個人再生に切り替えられるのか、また、切り替えるために条件はあるのかみていきましょう。

任意整理から個人再生に切り替えられるケースもある

基本的には、任意整理から個人再生に切り替えることは可能です。
任意整理とは、裁判所が関与することなく債権者と直接交渉して返済を楽にしてもらう手続きです。
例えば、分割払いの期間延長や金額、長期的に発生する利息のカットなどについて、確実に返済できるように債権者と交渉します。

一方、個人再生は、地方裁判所に申し立てを行い、法的手続きを経て返済額を減額してもらう手続きです。
個人再生に切り替えることができれば、返済総額が減るので毎月の返済も楽になる可能性があります。

任意再生から個人再生に切り替える条件

任意整理から個人再生に切り替える際には、以下の条件をクリアする必要があります。

  • 安定した収入があること
  • 個人再生の対象となる負債総額が5,000万円以下であること


その他にも、給与所得者の場合は、給与の変動が小さいことも条件とされています。
個人再生は、裁判官に認めてもらえなければ切り替えることは不可能です。
そのため、必ず残りの借金は支払期日に遅延することなく、完済するまで払い続ける強い意思や誠実さを裁判官にアピールすることも大切なポイントです。

任意整理から個人再生に切り替えた方が良いケースとは

任意整理から個人再生に切り替えた方が良いケースを3つご紹介します。

債権者と合意できない場合

任意整理は債権者の合意の元で行われるため、債権者の合意がなければ任意整理は行えません。
「債権者と話し合えばどうにかなるだろう」と思って交渉してみたものの、思いのほか交渉が難航して債権者に合意してもらえない場合は、個人再生を検討した方が良いかもしれません。

借金額が予想よりも多い場合

専門家による債務調査が行われて、予想以上に借金額が多い場合は、返済額が多すぎて任意整理では返済できないかもしれません。
その場合は、個人再生に切り替えて借金総額を減額してもらった方が、確実に返済できる可能性は高いです。

任意整理したけど返済が困難な場合

一度は任意整理を行い、毎月返済していたとしても、社会情勢による物価高騰や収入の減少により、毎月返済できない場合があります。
自分の力だけではどうしようもない状況に陥り、毎月の返済額を確保できない場合は、個人再生に切り替えた方が良いかもしれません。

任意整理から個人再生に切り替えるときの注意点

任意整理から個人再生に切り替える場合は、以下の4つに注意してください。

個人再生には別途費用がかかる

任意整理から個人再生に切り替えると、個人再生の費用として別途弁護士費用がかかります。
また、任意整理の時点で弁護士などに依頼している場合は、任意整理にかかった費用とは別に個人再生にも弁護士費用が必要になるので2重の費用がかかります。
債務整理を検討する段階で、任意整理と個人再生のどちらが無理なく返済できるのか、慎重に検討しなければなりません。

連帯保証人がいる場合は迷惑がかかる

借金をしている方の中には、連帯保証人をつけている場合があります。
連帯保証人がいる状態で主債務者が個人再生に切り替えると、主債務者の返済額は減額されますが、減額された返済額は連帯保証人に請求されます。

例えば、主債務者が500万円の借金をしていた場合に個人再生に切り替えると、主債務者は100万円に減額されますが、減額された400万円は連帯保証人に請求されます。
この場合、一括請求されることがあり、連帯保証人でもまとまったお金を用意できなければ一括で支払えない可能性があります。
一括で支払えない場合は、債権者に分割払いにしてもらうなどの交渉が必要です。

個人情報が官報に掲載される

個人再生すると国が発行している「官報」に名前や住所などの個人情報が掲載されます。
官報はインターネットで誰でも閲覧できるため、家族や親族、知り合い、第三者などに個人再生したことを知られる可能性があります。
周囲に知られたくない場合は、任意整理のままで債権者と再交渉して毎月の返済額を減額してもらうなど、債権者の合意を得るしかありません。

司法書士では個人再生の申し立てはできない

任意整理を司法書士にサポートしてもらっている方もいらっしゃると思います。
司法書士では個人再生の申し立てができませんが、弁護士であれば個人再生の申し立てが可能です。
そのため、司法書士と相性が良くても、任意整理から個人再生に切り替える場合は弁護士に依頼しなければなりません。
司法書士は弁護士とのつながりを大事にしているので、個人再生する場合は弁護士を紹介してもらえます。

まとめ

今回は、任意整理から個人再生に切り替えるのは可能なのかという疑問について解説しました。
任意整理から個人再生に切り替えることは可能ですが、条件をクリアする必要があります。
債務整理を検討している方は、任意整理と個人再生のどちらにするか悩むかもしれません。
そんなときは、適切な状況判断ができる上に法律の専門家でもある弁護士に相談することをおすすめします。

後遺障害と後遺症の違いとは?等級認定を受けるメリットや審査の受け方も解説

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交通事故に遭い、むち打ちや腕が痺れて日常生活に支障が出ていても、後遺障害に認定されなければ適切な慰謝料請求はできません。
この記事では、交通事故による後遺障害と等級認定について解説します。

後遺障害とは

「後遺障害」とは、交通事故で負ったケガが「症状固定」された上に労働能力の低下もしくは喪失が認められ、さらに自動車損害賠償保障法の後遺障害等級に認定された状態です。
症状固定とは、交通事故によるケガの治療において、これ以上継続しても完治せず、将来的にも事故によるケガの症状が残る状態のことです。
そのため、後遺障害と認定されるためには、医師の診断結果だけでなく、専門機関に申請して認定してもらう必要があります。

後遺症との違い

「後遺症」とは、病気やケガの治療をしても、これ以上完治しないと診断されて身体機能に障害が残った状態です。
例えば、交通事故が原因で後遺症が残る場合でも、後遺障害等級の認定を受けなければ後遺症です。
一方、「後遺障害」は交通事故を原因とし、後遺障害等級の認定をもらえた場合に限り、後遺障害と認定されるので混同しないように注意してください。

後遺障害等級の認定とは

後遺障害等級の認定とは、障害が残った原因が交通事故だと診断された後、自動車損害賠償保障法の14等級の何等級に当てはまるのかを検証して認定してもらうことです。
後遺障害等級に該当していれば後遺障害と認定されます。

自動車損害賠償保障法における等級の種類

自動車損害賠償保障法の14等級は第1級から第14級まであり、第1級が重度の後遺障害で、等級数が増えるごとに後遺障害の症状は軽症になっていきます。
また、等級の数字が少ないほど損害賠償請求額も高額になりますが、障害の度合いも重症になるので日常生活に及ぼす影響は大きいです。
等級認定の決め方は、「後遺障害のある部位はどこなのか」を確認し、労働能力の低下、もしくは喪失の度合いを見て、等級表に記載されている内容と照らし合わせて認定します。

後遺障害等級認定の審査を受ける方法とは

認定機関で後遺障害等級の認定を受ける方法は次の2通りです。

  • 被害者請求:加害者側の自賠責保険会社を通じて申請
  • 事前請求:加害者側の任意保険会社を通じて申請


認定機関とは、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所のことです。
上記のどちらかの保険会社を通じて申請手続きを行った後、保険会社から自賠責損害調査事務所へ必要書類を提出してもらって後遺障害等級の認定を受けます。
申請方法はどちらでも自由に選べますが、手間がかかっても自分の症状などを正確に伝えて適切な等級認定を受けたいのであれば被害者請求の方がおすすめです。

加害者側の自賠責保険会社に申請する場合

加害者側の自賠責保険会社に申請する場合、以下のメリット・デメリットがあります。

  • 申請に必要な書類は自分でそろえる
  • 病状や症状を正確に伝えやすいので審査対策がしやすい
  • 申請者が書類収集などをすべて行うので手間がかかる

加害者側の任意保険会社に申請する場合

加害者側の任意保険会社に申請する場合のメリットやデメリットは以下の通りです。

  • 後遺障害診断書を保険会社に提出すれば、残りの申請に必要な書類は保険会社が用意してくれる
  • 診断書のみを提出するので審査対策はできない
  • 提出書類は診断書だけなので書類収集などの手間がかからない

後遺障害等級の認定を受けるメリット

後遺障害等級の認定を受けると、2つのメリットがあります。

  • 後遺障害慰謝料
  • 後遺障害逸失利益

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、後遺障害と認定された場合のみ、入通院慰謝料とは別に加害者に請求できる慰謝料です。
障害が残った原因が交通事故であると診断されたら、後遺障害認定を受けることで少しでも多くの慰謝料を受け取れる可能性があるので経済的にもメリットがあります。

後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益とは、交通事故に遭って後遺障害が残らなれば得られるはずだった将来の給料や収入などのことです。
後遺障害逸失利益も後遺障害と認定されたときのみ請求できる損害賠償です。
そのため、交通事故に遭って後遺症が残っただけでは請求できないので、必ず後遺障害の認定を受けることをおすすめします。

まとめ

今回は、後遺障害と等級認定について解説しました。
交通事故が原因で障害が残った場合は、等級認定を受けることで後遺障害と認定されます。
後遺障害と認定されれば、通常の慰謝料や損害賠償の請求とは別に後遺障害の慰謝料と逸失利益を請求できるので経済的にもメリットがあります。
後遺障害の認定を受けるには、後遺症の原因が交通事故であることを医師に診断してもらう必要があり、必要書類の書き方や医師とのやり取りに不安のある方は交通事故を専門に扱っている弁護士に相談することをおすすめします。

業績悪化が理由の減給について会社側の法的リスクはある?

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業績悪化を理由に減給に踏み切らざるを得ない会社も少なくないと思います。
しかし、労働者の給料等の労働条件は、労働基準法等によりさまざまな法規制が設けられており、会社側がこれらの規制を無視した場合は、違法、減給が無効となる等、法的リスクを負う可能性があります。
本稿ではこうした事態を避けるために、会社側としてどのように対処したらよいのか解説します。

給料等の労働条件の決め方

給料等の労働条件は、会社と労働者間の契約により決定されます。
私人間の契約は契約自由の原則により、どのような内容でも自由に定めることができます。
そのため、減給についても、会社と労働者間で合意すれば、法的な問題は生じません。
しかし、会社と労働者の交渉力には差があり、労働者が不利な立場に立たされるのが一般的です。
そこで、労働基準法を初めとする様々な法律により法規制が設けられています。

給料等の労働条件の根拠規定

給料等の労働条件の根拠規定は主に次の4つに分けられます。

  • 労働基準法、最低賃金法等
  • 就業規則
  • 労働協約
  • 労働契約


それぞれ見ていきましょう。

労働基準法、最低賃金法等

労働基準法、最低賃金法等は、国や地方ごとの最低限の労働条件を定めたものです。
労働者の同意があったとしても、最低賃金を下回る減給は違法になります。

就業規則

就業規則は、職場の原則的な労働条件を定めたものです。
就業規則には、絶対的必要記載事項と言い、必ず記載しなければならない項目がありますが、賃金の決定方法と計算方法、支払方法、締切り、支払時期もその一つです。
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は無効とされているため、個別の労働者との交渉による減給の際も就業規則の基準を下回ることはできません(労働契約法12条)。
業規則の基準を下回る減給をするには、就業規則の変更が必要になります。

労働協約

労働協約は、職場に労働組合がある場合に、個別の労働者に代わって使用者側と交渉を行い、労働条件を定めたものです。
労働組合に加入している労働者については、労働協約が個別の労働契約に優先して適用されるため、労働協約で定めた給与基準を下回る減給は認められません(労働組合法16条)。
また、労働協約は労働組合に加入していない労働者にも拡張適用されるケースがあるため注意が必要です(労働組合法17条等)。

労働契約

労働契約は、会社と個別の労働者の間で交わされる契約です。
給料等の労働条件については自由に定めることができるため、業績悪化を理由とする減給も労働者が同意すれば可能です。

業績悪化を理由に減給する方法

業績悪化を理由に減給するためには労働契約、労働協約、就業規則のいずれかを変更する必要があります。

労働契約を変更する方法

会社の従業員数が少ない場合は、個別の労働者ごとに交渉して、労働契約を見直し、合意を得ることで減給が可能になります。
減給に関して、労働者と同意が成立したら、同意書を交わしたり、改めて、労働契約書を作り直すなど、文書を作成して、双方が署名しておくことが大切です。
ただし、労働基準法、最低賃金法等に抵触する水準まで減給することは違法なのでその点には注意が必要です。

労働協約を変更する方法

労働協約がある場合は、個別の労働契約よりも優先して適用されるため、まずは、労働協約で定めた給与水準を下げる必要があります。
労働協約の変更は、労働組合との交渉により行います。
交渉の結果、減給に関して合意に至った場合は、合意内容の文書化が必要です。
具体的には、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することが求められています(労働組合法14条)。

就業規則を変更する方法

就業規則で定めた労働条件については、原則として、労働者の不利益になる内容に変更することはできません。
不利益変更を行うためには労働者の合意が必要になる上、変更の範囲が「合理的な」範囲に留まっていなければならないものとされています(労働契約法10条)。
「合理的」であるかどうかは次の事項が判断要素となります。

  • 労働者の受ける不利益の程度
  • 労働条件の変更の必要性
  • 変更後の就業規則の内容の相当性
  • 代替措置その他関連する他の労働条件の改善状況
  • 労働組合等との交渉の経緯
  • 他の労働組合又は従業員の対応
  • 同種事項に関する一般的状況


これらの事項を総合考慮して判断すべきとするのが判例の見解です(最判平成9年2月28日 民集 第51巻2号705頁)。
一般的には、減給の範囲は必要最小限の範囲に留めることが求められますし、減給が必要なほど、業績が悪化していると言えるのかどうかも考慮されます。

また、就業規則の変更には一定の手順があります。
具体的には次のとおりです。

  • 就業規則の変更内容につき、弁護士等の専門家を交えながら検討する
  • 労働者代表者に変更内容を示して、意見聴取を行う
  • 労働基準監督署に就業規則変更届を提出する
  • 就業規則の変更内容を労働者に周知する

まとめ

業績悪化を理由にやむを得ず減給に踏み切らざるを得ない会社もあると思いますが、減給に際しては、労働基準法、最低賃金法、労働契約法などで定めるさまざまなルールを遵守する必要があります。
労働基準法等を無視した減給は、違法、無効となってしまいますので、法規制に関して詳しくわからない場合は、弁護士等の専門家へ相談することが大切です。

離婚の際の財産分与の対象となる財産

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離婚という人生の大きな転換点では、時に様々な問題が生じます。
その中でも財産分与は、将来の生活設計や今後の生活に大きな影響を与える重要な問題です。
本稿では、離婚の際の財産分与の対象となる財産について、詳しく解説していきます。

財産分与とは

財産分与とは、離婚に際して夫婦の財産を清算し、分配することを指します。
民法第768条に規定されており、離婚後の生活の安定を図るために重要な役割を果たします。
財産分与の対象となる財産を正確に把握することは、公平な分割を実現するために不可欠です。

財産分与の対象となる財産の基本

財産分与の対象となる財産は、原則として婚姻中に夫婦が協力して得た財産(実質的共有財産)です。
ただし、個人の特有財産は対象外となります。
以下、具体的に見ていきましょう。

実質的共有財産

実質的共有財産とは、婚姻中に夫婦が協力して取得した財産を指します。
具体的には以下のようなものが含まれます。

1. 給与や賞与などの収入
2. 貯金や預金
3. 不動産(自宅やマンションなど)
4. 自動車
5. 株式や投資信託などの金融商品
6. 退職金(婚姻期間中に積み立てられた部分)
7. 生命保険の解約返戻金

これらの財産は、名義が一方にのみあったとしても、原則として分与の対象となります。

特有財産

特有財産とは、個人の所有する財産で、原則として財産分与の対象外となります。
主な特有財産は以下の通りです。

1. 婚姻前から所有していた財産
2. 婚姻中に相続や贈与で得た財産
3. 慰謝料など個人的な賠償金
4. 宝くじの当選金

ただし、特有財産であっても、婚姻中の管理や運用によって価値が増加した部分については、財産分与の対象となる可能性があります。

財産分与の対象となる具体的な財産

それでは、財産分与の対象となる具体的な財産について、詳しく見ていきましょう。

不動産

財産には様々ありますが、不動産は多くの場合で夫婦の最も大きな財産です。
自宅やマンション、投資用不動産などが対象となります。
名義が一方にあっても、婚姻中に取得したものであれば原則として分与の対象です。
ただし、ローンの残債がある場合は、その取り扱いも考慮する必要があります。

預貯金・現金

婚姻中に蓄えた預貯金や現金は、原則としてすべて分与の対象となります。
個人名義の口座であっても、婚姻中の収入や貯蓄であれば分与の対象です。
ただし、婚姻前からの貯金や相続で得た資金など、特有財産に該当するものは除外されます。

有価証券

株式、投資信託、債券などの有価証券も財産分与の対象となります。
婚姻中に購入したものであれば、名義に関わらず分与の対象です。
ただし、株価の変動など、評価額の算定には注意が必要です。

自動車・高額な動産

自動車や貴金属、美術品などの高額な動産も分与の対象となります。
これらは、購入時期や使用状況、減価償却なども考慮して評価されます。

退職金・年金

退職金や年金の取り扱いは複雑です。
まだ受給していない退職金でも、婚姻期間中に積み立てられた部分は分与の対象となる可能性があります。
厚生年金の分割制度を利用することで、年金受給権の分割も可能です。

保険

生命保険や損害保険の解約返戻金も、分与の対象となる可能性があります。
特に、解約返戻金の高い養老保険などは要注意です。

財産分与の対象とならない財産

前述の特有財産の他にも、以下のようなものは原則として財産分与の対象となりません。

1. 婚姻費用として既に消費された財産
2. 離婚後の生活費として必要な財産(一定の範囲内)
3. 職業に必要な道具類(医師の医療器具など)
4. 慰謝料請求権(別途請求が可能)

財産分与の方法と注意点

財産分与の方法には、現物分与と金銭分与があります。
どちらを選択するかは、財産の性質や両者の意向によって決まります。

現物分与

不動産や自動車などを、そのまま分割する方法です。
例えば、マンションの共有持分を分割するなどが該当します。

金銭分与

財産を換価して金銭で分割する方法です。
流動性が高く、清算が明確になるメリットがあります。
財産分与を行う際は、以下の点に注意が必要です。

  • 正確な財産評価:公平な分割のためには、財産の正確な評価が不可欠です。
  • 税金の考慮:不動産や株式の譲渡には、譲渡所得税などが発生する可能性があります。
  • 将来の生活設計:単に金額だけでなく、離婚後の生活を見据えた分割が重要です。
  • 専門家の助言:複雑なケースでは、弁護士や税理士など専門家の助言を得ることが賢明です。

まとめ

離婚の際の財産分与の対象となる財産について解説しました。
対象となる財産の範囲は広く、また個々のケースによって判断が分かれることもあります。
納得できる財産分与を実現するために、専門家のアドバイスを受けながら、慎重に進めていくことをおすすめします。

後から遺書書が見つかった場合の対処法

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遺産相続の際は遺言書の内容をもとに遺産を分割します。
では、遺言書が残されたことを知らず、遺産分割協議で取り決めた後に、遺言書が見つかった場合はどうすべきなのでしょうか。
今回は、後から遺言書が見つかった場合の対処法について解説します。

遺言書に有効期限はあるのか

民法では「遺言者が死亡したときから効力を生じる」とあるだけで、その期限については定められていません。
そのため遺言者が亡くなった後、何十年も経って見つかったとしても、その遺言書は有効とされます。

遺言書が見つかった場合の対処法

遺産分割協議後に遺言書が見つかった場合、実際にはどう対処したらいいのでしょうか。

遺言書が有効か確認する

まず、その遺言書が法的に有効なものかどうかを確認します。
遺言書には以下の3種類があります。

  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言
  • 自筆証書遺言


公正証書遺言は、公証役場の遺言検索システムですぐに見つけることができるので、遺産分割の後に見つかる可能性は低いと考えられます。
後から見つかる可能性が高いのは秘密証書遺言と自宅で保管されていた自筆証書遺言になります。
この2つは、家庭裁判所で「検認」する必要があります。

検認とは、見つかった遺言書がどんな状態であったかの確認をするもので、形状や加筆・訂正などの状態や、日付・署名などの内容を明確にするものです。
また、それと同時に遺言書の存在と内容が相続人に知らされることになります。
検認は遺言書の有効無効を判断するものではないので、有効性が疑われる場合は、弁護士などの専門家にチェックしてもらう必要があります。

遺言書が有効だった場合

遺産分割協議が終わっていても、遺言書が有効であれば、その協議は無効になります。
遺言書の内容をもとに、遺産分割を再度やり直す必要があります。
ただし、相続人全員の合意があれば、遺産分割協議を優先させることも可能です。
遺言の内容と遺産分割協議の内容にあまり違いがない場合などは、全員の合意が得られる可能性が高く、再分割しなくて済みます。

遺産分割のやり直しをしなければいけないケースとは

相続人全員の合意があっても、次のような場合は、遺産分割をやり直さなければいけません。

遺言に遺言執行者が指定されている

遺言執行人の役目は遺言を実現させることなので、指定されている場合は遺言の内容に従う必要があります。
ただし、遺言執行者からも合意を得ることができれば、分割をやり直さなくてもいい可能性があります。

遺言に法定相続人以外に遺贈することが示されていた場合

法定相続人以外に遺贈することが記されていた場合も遺産分割をやり直す必要があります。
また、遺言があることを知らずに相続放棄をしていたのに、遺言に多額の財産を譲ると書いてあった場合、相続放棄をしていても財産を受け取ることが可能です。
遺言により財産を譲るのは「遺贈」になり、遺贈の相手は法定相続人でも、それ以外でも指定することができます。
相続放棄は相続を放棄しただけで、遺贈を放棄したわけではないので、受け取ることができるのです。
この場合も、相続人の人数に変更が出るため、遺産分割のやり直しをすることになります。

遺言書を相続人が隠していた場合

遺言書の内容が自分に不利だと知った相続人の1人が遺言書をわざと隠していた場合、その相続人は民法により相続する資格を失います。
そのため、遺産分割を再度やり直す必要が出てきます。

再分割が難しい場合

遺言書の内容をもとに再分割しなくてはいけなくなった場合、それが難しいことがあります。
相続した遺産の現金をすでに使っていたり、不動産を手放していたりしたら、遺産分割協議の時点と同じ状況で再分割をすることは不可能です。
このような場合は、相続人全員が合意できるよう様々な方法を考えていく必要があります。

まとめ

今回は後から遺書が見つかった場合の対処法について解説しました。
家族が亡くなっても、すぐに遺品の整理をしないことはよくあるため、しばらくしてから遺言が見つかることも珍しくありません。
数年後などに見つかればまだしも、何十年も経ってからでは、相続人が代替わりしている可能性もあるのでトラブルが起こりやすくなります。
また、遺言書の内容によっては、相続人から不満が出ることもあるので、トラブルになりそうな場合は弁護士に相談することをおすすめします。

2回目の自己破産は可能?条件や注意点を解説

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1回でも自己破産した人は、2回目も自己破産できるのか気になると思います。
結論から言えば、2回目の自己破産は可能ですが、2回目になると条件が加わり、その条件や1回目よりも厳しい審査をクリアしなければ自己破産はできません。
この記事では、2回目の自己破産の条件や注意点について解説します。

2回目の自己破産はできる

自己破産は倒産法の一つでもある「破産法」で定められており、2回目でも自己破産はできます。
ただし、1回目に行われた免責の審査よりも2回目の方が条件も加わって審査も厳しくなります。

2回目の自己破産ができる2つの条件

2回目以降の条件について解説します。

前回の自己破産から7年以上経過していること

1回目の自己破産(免責許可の決定の確定日)から7年以上経過していないと2回目の自己破産はできません。
破産法では、破産者に対して免責許可が確定した日から7年以内に免責許可の申立てがあった場合、2回目の免責を許可できないと定められています。

(参考先:e-eov法令検索 破産法第252条第1項10号イ(免責許可の決定の要件等)

2回目の自己破産の原因は前回と違うこと

2回目の自己破産の原因が前回と同じ場合には、反省していないとみなされるので免責が認められにくい可能性があります。

2回目の自己破産をするときの注意点

2回目の自己破産では、処分する財産がなければ「同時廃止」になる可能性があり、処分する財産があれば「管財事件」になります。

管財事件とは、裁判所が選任した破産管財人が、自己破産の申立てを行った人の財産を清算して債権者への弁済や配当にすることです。    
破産管財人は財産の調査や管理、処分を行う費用が発生するため、1回目より手続きの費用が高くなり、期間も長くなる傾向にあります。

免責許可を認める判断基準

2回目の自己破産をするときに免責許可を認める判断基準について解説します。

2回目の自己破産は自分ではどうすることもできない事情がある

2回目の自己破産をするときには、自分ではどうすることもできなかった事情や完済するために行った努力を裁判所や弁護士に伝えると免責が認められる可能性があります。

2回目の自己破産を真面目に反省している

自己破産が2回目になると、1回目の反省ができていないと判断されかねないので、深く反省しているという誠実な態度で手続きや調査には協力しましょう。
もし、不誠実な態度や管財人などの調査を妨害するような行為を行った場合には、免責が認められにくくなるので注意してください。

免責許可されないケース

免責許可されないケースとは、免責不許可事由(免責しがたい理由)に該当する場合であり、財産を不当に処分するような行為のことを指します。
免責不許可事由の中でも、特にギャンブルで自己破産する場合には、2回目の免責は認めらない可能性が非常に高いです。
ただし、やむを得ない事情により生活に困窮して借金した結果、自己破産するしかない場合には免責が認められる可能性があります。

2回目の自己破産ができないときの対処法

2回目の自己破産ができなときには以下の対処法があるので解説します。

  • 即時抗告
  • 個人再生
  • 債権者と直接交渉

即時抗告

即時抗告とは、地方裁判所が下した免責不許可の決定(自己破産できないこと)に対して、最高裁判所に異議を申立てることであり、期限は免責不許可が決定してから1週間以内です。
ただし、自己破産の原因が免責不許可事由に当てはまっている場合には、異議を申立てても決定が覆る確率は低いので注意してください。

個人再生の申立て

個人再生とは、自己破産と同様に裁判所に申立てて債務を減らしてもらうことであり、債務とは、特定の人に金銭を払ったり物を渡したりする法律上の義務です。
また、民事再生法では、次のように定められています。

「個人である債務者のうち、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあり、かつ、再生債権の総額が五千万円を超えないものは、再生手続きを行うことを求められる」

(引用先:民事再生法 第1節 小規模個人再生 第221条第1項

自己破産では、免責許可が決定すれば債務はすべて免除されますが、個人再生の場合は債務の一部は残るので返済する必要があります。

任意整理で債権者と直接交渉する

任意整理は自己破産とは異なり、裁判所を通さない代わりに弁護士などを介して債務者と債権者が直接話し合って債務者の債務を整理します。

まとめ

今回は、2回目の自己破産は可能なのか、条件や注意点について解説しました。
2回目の自己破産は可能ですが、1回目の自己破産から7年以上経過していることや、債権者や周囲に対して迷惑をかけることに対する深い反省を態度で示す必要があります。
もし、2回目の自己破産でお悩みの方は、法律の専門家でもある弁護士に相談することをおすすめします。

交通事故の示談を弁護士に依頼するメリットについて解説

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交通事故が起こると示談交渉を行いますが、本人の代わりに保険会社の担当者同士で話し合い、過失割合を決めて示談交渉を成立させることが一般的です。
この記事では、交通事故の示談を弁護士に依頼したときのメリットについて解説します。

交通事故の示談交渉を弁護士に依頼する7つのメリット

交通事故が発生すると一般的には当事者、もしくは、加入している保険会社が当事者の代わりに示談交渉を行いますが、弁護士に依頼した方が良いメリットを7つ解説します。

慰謝料が増額(妥当な額)になる可能性が高い

弁護士に依頼すると、算定基準の一つである「弁護士基準」で慰謝料を計算し、相手に対して請求するので増額(妥当な額)になる可能性が高いです。
慰謝料の算定基準には次の3種類があります。

  • 自賠責基準:国土交通大臣及び内閣総理大臣が定める支払い基準
  • 任意保険基準:相手側の任意保険会社が算出する際に用いる支払い基準
  • 弁護士基準:交通事故裁判の判例から導き出された算定基準

(参考先:e-eov法令検索 自動車損害賠償保障法 第16条の3(支払基準)

上記3種類の慰謝料の額は、自賠責基準が一番低く、次に任意保険基準、最も高額なのは弁護士基準です。
そのため、任意保険会社より弁護士に依頼した方が高い慰謝料(本来、受け取るべき金額)を請求できる可能性があります。
また、交通事故で請求できる慰謝料は次の3種類です。

  • 入通院慰謝料:入通院にかかった費用とケガを負った精神的な苦痛に対する賠償金
  • 後遺障害慰謝料:後遺障害による精神的な苦痛に対する賠償金
  • 死亡慰謝料:事故の被害者が死亡した事による精神的な苦痛に対する賠償金

面倒な示談交渉や手続きをすべて任せられる

事故に遭った被害者は、事故が発生してから示談成立まで相手側の保険会社と何度もやり取りをするのでストレスを感じます。
ストレスの原因は相手側保険会社の担当者の対応にあり、弁護士に依頼すれば、示談交渉での面倒なやり取りや必要な手続きなど、すべてを任せられるのでストレスを軽減できます。

適切な後遺障害認定を受けられる

交通事故が原因で体が不自由になった場合には、医師の診断を受けて後遺障害認定を受ける必要があります。
また、後遺障害は日常生活が起因している後遺症とは異なり、交通事故が起因している場合に認定されます。
後遺症と後遺障害の違いは次の通りです。

  • 後遺症:医師の治療を受けたが完治せず、回復できない心身または精神上の症状
  • 後遺障害:交通事故が原因であると認定され、自動車損害賠償補償法施行令の等級に該当する症状

(参考先:e-eov法令検索 自動車損害賠償保障法施行令 別表第1(第2条関係)、別表第2(第2条関係)

弁護士に依頼すれば、交通事故の当事者が不利にならないように診断書を精査し、記入漏れや不備の確認ができるので適切な後遺障害認定を受けられます。

正当な過失割合を主張できる

過失割合とは、交通事故の責任が加害者側と被害者側でそれぞれの過失がどのくらいあるのか割合で示したものです。
被害者の過失割合が減れば慰謝料を多くもらえるので、できるだけ過失割合を減らすための交渉が必要です。
被害者1人で行うのは困難ですが、弁護士に依頼すれば上記の書類収集や過去の判例を基に、事故状況を詳細に分析できるので正当な過失割合を主張できます。

保険会社に主張を受け入れてもらいやすく慰謝料を早く受け取れる

弁護士が交渉すれば主張を受け入れてもらいやすくなり、示談交渉もスムーズに進むので結果的に慰謝料も早く受け取れる可能性があります。

適正な休業損害を受け取れる

休業損害とは、交通事故のケガが原因で休業したことにより、収入が減ったことに対する補償です。
休業補償も慰謝料と同様に用いる算定基準によって金額が異なります。
そのため、弁護士に依頼した方が弁護士基準で算定してもらえるので、実態に見合った適正な休業損害の金額を受け取れる可能性があります。

加害者側が任意保険を使えないときでも適正に対応してもらえる

損害保険料率算出機構が発行している2023年3月末の統計によると、任意自動車保険の加入者数は全国で75.2%(対人賠償の普及率)となっており、5人のうち1人は任意保険に未加入です。

(参考先:損害保険料率算出機構 自動車保険の概要 第19表 任意自動車保険 都道府県別普及率表(2023年3月末)

加害者が任意保険に未加入だった場合、自賠責保険の支払い限度額を超過した金額(慰謝料など)に関しては本人に対して請求します。
弁護士に依頼すれば、たとえ加害者側が任意保険に未加入でも損害賠償手続きなど、面倒な示談交渉を任せられます。
また、加害者側が請求に応じない場合には、弁護士であれば民事訴訟にも対応してもらえます。

まとめ

今回は交通事故で示談を弁護士に依頼するメリットについて解説しました。
交通事故の示談交渉は、加入している保険会社同士が行うのが一般的ですが、弁護士に依頼すれば、相手側が提示した金額より高額の慰謝料を請求できる可能性があります。
そのため、交通事故の示談交渉を保険会社だけに任せるのではなく、状況によっては弁護士に依頼する方が保険会社以上のメリットを期待できる可能性があるので、まずは弁護士に相談してみましょう。

業務委託契約で起こりやすいトラブルや注意点について

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これまでの業務を改善するため、活性化・効率化を目指して業務委託契約を導入する企業が増えています。
しかし業務委託契約における大きなメリットがある反面、トラブルも増加しています。
本稿では業務委託契約を行うことによるメリット・デメリットと、トラブルや注意点について解説します。

業務委託を行うことによるメリット

業務委託契約を行うことによるメリットは以下の通りです。

  • 生産性の向上
  • 人件費の削減
  • 専門性の高い知識やスキルが必要な業務の委託ができる

生産性の向上

業務委託によっていつでも必要な人材を必要なタイミングで、必要な場所へと配置することができます。
それにより業務の効率化を図ることができ、生産性の向上へとつながるのです。

人件費の削減

業務委託にすると、人材確保のために行う人材採用や教育などの人件費を削減することができます。

専門性の高い知識やスキルが必要な業務の委託ができる

専門性の高い知識が必要な場合に、委託契約の人材に必要な業務を任せることができます。
自社で対応が難しい専門的な知識も業務委託契約によって活用は可能です。

業務委託のデメリット

業務委託のデメリットは次の通りです。

  • 社内に知識やスキルが蓄積しない
  • 業務品質の均一化が難しい

社内に知識やスキルが蓄積しない

業務委託によって仕事が完結してしまった場合には、社内で知識やスキル、経験などが蓄積されないため、企業としての能力がいつまでも育ちません。
従業員の活用もあわせて考える必要があります。

業務品質の均一化が難しい

業務委託は委託者と受託者に使用関係がないため委託者の方から直接指示することができにくく、作業現場での作業の品質管理や維持ができません。
そのため業務品質の均一化が難しいのがデメリットとなっています。

業務委託で起こる可能性のあるトラブル

業務委託で起こる可能性のあるトラブルを紹介します。

コンプライアンス違反や不正

業務委託の場合は雇用契約ではないため会社への愛着も乏しくなりがちで、コンプライアンス違反や時には不正などを引き起こしてしまうことがあります。
できれば委託者と受託者で信頼関係を構築するため、積極的なコミュニケーションをとるなどの対策が必要です。

契約不履行と成果物の納品遅れ

業務委託契約で請負契約の場合によくあるのが、契約の途中で音信不通になってしまったり期限通りに納品がされなかったりする場合です。
納品物の修正に対応してくれるかどうかも契約時に確認しておく必要があります。

再委託によって業務品質の低下懸念

再委託というのは、受託者が委託業務を第三者に依頼することです。
再委託は委託者と下請けの連絡やコミュニケーションが取りにくいため、完成する業務の品質が低下してしまう可能性があります。

報酬に関して認識が違う場合

報酬に関しては金銭的な問題であることから深刻なトラブルに発展する可能性が高いため、特に注意が必要です。
報酬の支払い日の管理、成果物の合格基準、また認識の相違などがあります。

契約を解除したことによる損害賠償

業務委託を自己都合で一方的な解除をする場合もトラブルに発展する可能性があります。
場合によっては違約金や損害賠償額を請求する場合もあります。

契約内容の理解不足している場合の偽装請負

偽装請負というのは、業務委託契約の締結をしているのに委託者が受託者へ直接指揮命令を行っている状態のことです。
業務委託契約を締結している状態で指揮命令を行うのは違法になる場合があります。
契約内容をよく確認し内容を正しく理解しておくことが大事です。

情報セキュリティ甘さによる情報漏えい

情報のセキュリティの甘さが引き起こす情報漏えいには要注意です。
業務委託によって受託者が故意に情報を窃取したり、過失によって発生する情報漏えいなどもあります。
社内の情報漏えいは重大な信用失墜となりますので、十分な対策を行う必要があります。

業務委託に関する注意点

業務委託をすることで注意する点は次の通りです。

必要事項を契約時点で取り決めておく

委託者は受託者との間で業務委託契約を行う場合、契約のなかに必要なことをすべて細かく取り決めておくことが大事です。
お互い納得のうえで契約を交わすことでトラブルは減少します。
業務委託契約書に明記すべき項目は次の通りです。

  • 報酬
  • 契約期間
  • 報酬の支払い条件
  • 成果物の権利
  • 再委託について
  • 禁止事項
  • 損害賠償について、など

高い意識で法律を守る

法律に対する意識を高く持つようにします。
法律を守るのは当然のことですが、お互いしっかりと認識して法律違反をしないようにしましょう。

信頼できる相手と契約する

業務委託契約は信頼関係がとても重要なポイントです。
信頼できる相手であれば問題はないわけです。
しかし知人でもなければ信頼できる人であるかどうかは判断しづらいところです。

  • 契約をする前に入念に面接などを行いしっかりと話し合う
  • 信頼できる仲介サービスを利用する
  • 信頼できる人物からの紹介をしてもらう


以上のことに注意し、信頼できる相手と契約をするよう心がけましょう。

条件を途中で変更する場合は変更契約書をつくる必要がある

業務委託の契約中に内容に変更があった場合には、必ず変更契約書を作成するようにします。
あとでトラブルにならない、またはトラブルになったときの証拠品として契約書は必要となります。

条件によっては業務委託ではなく雇用契約として扱われる

専属性があったり勤務時間の指定などにより、業務委託に使用従属性があると認められた場合には「雇用」としてみなされることがあります。
雇用契約となるとさまざまな部分に影響がでてきてしまうため要注意です。

まとめ

業務委託契約のメリット・デメリットを把握し、トラブルになった事例についてよく確認し前もって対策を講じておくことが大事です。
契約書についても必要だと思われることは契約書に記述しお互い納得のうえで締結をするようにします。
業務委託契約はトラブルの発生することが多く解決が難しいことから、できれば早めに弁護士へご相談されることをおすすめします。

離婚協議書は公正証書として残すべき?メリットと作成方法

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離婚協議書は離婚に合意した旨を定めた契約書のことで、離婚協議書を公正証書にすることで法的な拘束力を持たせることができます。
離婚後にトラブルとなった場合に、離婚協議書を公正証書にしておけば養育費の支払いが途絶えても対抗するための強力な証拠となります。
本稿では離婚協議書を公正証書として残すことのメリットとデメリット、そして作成方法について解説いたします。

公正証書とは

公正証書というのは法的な効果を持たせた書面を証明する文書のことで、公証人が行為者の依頼に基づいて作成するものです。
例えば養育費などの支払いについての取り決めを離婚協議書へ記載しているのに、約束を守ってくれないような場合に強制的に実行させることができます。

公正証書の効力は?

離婚協議書はあくまでも契約書に過ぎないので、書かれてある内容について相手が守らなかったとしても強制的に実行してもらうのは困難です。
公正証書は夫婦揃って公証役場に行き話し合いをしながら公証人が作成してくれます。
そのため記載された内容に強制執行できる文言がある場合には、内容に違反があれば強制執行することができます。

公正証書の作り方

公正証書は、公証役場に足を運んだからといって、すぐに作れるわけではないので注意しましょう。
具体的には以下の手順で作成を進めます。

  1. 公証役場へ足を運び、公正証書を作成するための、担当公証人を割り当ててもらう
  2. 担当公証人に、作成内容を伝え、詳細な記載内容の協議する
  3. 公証人が、協議内容を下に公正証書案を作成
  4. 依頼者が公正証書案の内容を確認する
  5. 依頼者と担当公証人で公正証書作成日時を確定させる。身分証明書や実印などの必要書類を持参し、公正証書を作成する

公正証書の作成費用

離婚協議書を公正証書にする場合の費用は、書面に記入した養育費や慰謝料の額などを合計した金額によって変わります。

日本公証人連合会

公正証書のメリット

離婚協議書を公正証書にしておけば、離婚したあとにトラブルが起こっても未然に防ぐことが可能となります。
具体的なメリットは次の通りです。

  • 証拠としての能力が高い
  • 強制執行することができる
  • 紛失しても原本は残っている

証拠としての能力が高い

公正証書は夫婦が揃って公証役場に行き、公証人に作ってもらいます。
当事者の夫婦が揃っているために内容に食い違いが起こることは基本的にはないはずです。
また当事者でない第三者の立場である公証人が作りますので、客観的に証拠能力の高いものです。

強制執行することができる

もし相手が約束を守らなかった場合には、強制執行することができます。
公正証書がなく離婚協議書だけの場合は、裁判所の手続きが必要になります。
しかし、公正証書の場合は裁判は不要で強制的に約束を実行させることができます。

原本がなくならない

離婚協議書を公正証書にする場合には、作った書面は保存しなければいけません。
もし紛失してしまった場合でも、依頼した公証役場には原本が保存されてありますので再取得することはできます。

デメリット

離婚協議書を公正証書にするのにデメリットは次の通りです。

費用がかかる

公証役場で公正証書にしてもらうには料金が発生します。
離婚協議書に記載されている養育費や慰謝料などの金額によって料金は変わります。
金額が高ければその分の費用も高くなるため大きな出費へと繋がります。

公証人とやりとりしなければいけない

公証役場に夫婦二人で赴いて公正証書を作成してもらいますが、離婚協議書の素案自体は夫婦で合意内容をまとめる必要があります。
素案を作成したうえで、具体的にどのような内容を公正証書とするのか公証人とやり取りをしなければなりません。

公正証書は離婚後にも作成できる?

公正証書は離婚後でも作成することは可能です。
一般的には離婚前に夫婦揃って公証役場で話し合いをしながら作成をします。
離婚が成立したあとでも公正証書の作成が可能ですが、一旦別れたあとで再び顔を合わせるのは抵抗のある人も多く難しいです。

公正証書の作成の流れ

公正証書の作成の流れは次の通りです。

  • 夫婦で話し合いを行う

    夫婦間で話し合いをして公正証書に記載する内容を決めていきます。

  • 離婚公正証書の原案を作成
  • 公証役場で事前に協議を行う

    原案ができたら公証役場で作成を依頼します。

  • 作成日の予約
  • 公証役場に訪問


予約した日に夫婦揃って公証役場へ赴きます。
この時、それぞれ本人確認書類を持参します。

  • 離婚公正証書の完成


公証人の面前にて離婚公正証書の読み合わせを行います。
その上で当事者が署名・捺印をして手数料を支払い公正証書を受け取ったら終了です。
公正証書の作成には、公証役場で申し込みを行ってから約2週間程度かかることを想定しておくといいでしょう。

公正証書作成に必要な書類

公正証書を作成する際に必要な書類は次の通りです。

  • 戸籍謄本


離婚前の場合は、家族全員が記載されたもの
離婚済みの場合は、それぞれの離婚後の戸籍謄本

  • 離婚協議書
  • 不動産の登記簿謄本「および固定資産税納税通知書


不動産の所有権を相手方に移す場合必要となるものです。

  • 年金分割のための年金手帳等


年金分割をする場合、当事者の年金番号を公正証書に記載するため年金番号がわかる資料が必要となります。

  • その他


車検証、保険契約証等

まとめ

離婚というのは相手のいることでトラブルになりやすい手続きとなります。
スムーズにいけば問題ありませんが、相手が離婚に応じない、約束を守らない、姿を消してしまったなどのトラブルにより離婚自体が進まないこともあります。
そんなときには早めに弁護士へご相談されることをおすすめします。

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