弁護士法人金法律事務所

コラム

相続放棄と限定承認の違い

相続放棄と限定承認の違い

相続が発生すると、遺産をどう扱うかを決めなければなりません。
「相続放棄」と「限定承認」は、財産だけでなく借金も相続対象になる場合に重要な手段です。
どちらも相続人の負担を減らす選択肢ですが、内容や手続きには明確な違いがあります。
今回は、相続放棄と限定承認の違いをわかりやすく解説します。

相続とは何か

ひとが亡くなると、そのひとの財産や権利・義務が家族などに引き継がれます。
上記の一連の流れを「相続」といいます。
相続されるものには、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産も含まれます。
相続といえば「遺産を引き継ぐ」などポジティブなイメージがありますが、必ずしも相続人にとって有利とは限りません。

相続放棄とは

相続放棄とは、最初から「相続人ではなかった」とする方法です。
民法第915条で定められています。

相続放棄の特徴

相続放棄をすれば、プラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がずに済みます。
借金が多い場合は、相続放棄を選べば、負担を免れる可能性があります。

相続放棄の手続き

家庭裁判所に「相続の放棄の申述」をする必要があります。
手続きには期限があり、原則として「相続の開始を知ったときから3か月以内」に行わなければなりません。
相続放棄の手続きをする場合は、まず必要書類の準備をして、申述書の提出をします。
家庭裁判所の審査があり、認められれば相続放棄ができます。

相続放棄の注意点

相続放棄をすると、最初から相続人でなかったことになります。
そのため、遺産の管理や処分もできません。
また、相続放棄した場合、そのひとの次に順位が低い相続人が代わります。
たとえば亡くなったひとに配偶者と子どもがいて、子ども全員が相続放棄をした場合、次は父母(直系尊属)が相続人になります。
もし父母もすでに他界している場合は、兄弟姉妹が相続人です。
上記のように、誰かが相続放棄すると、次の順位の親族が思いがけず相続人になるケースがあります。
そのため、相続放棄をする際は、家族間で十分に相談する必要があります。

限定承認とは

限定承認とは、相続によって得た財産の範囲内で借金などを引き受ける方法です。
民法第922条で定められています。

限定承認の特徴

限定承認を選ぶと、プラスの財産があれば、それを使って借金を返済します。
借金が財産を上回っていた場合でも、自分の手持ちのお金などから追加で返済する必要はありません。
以下のようなときに選ばれます。

  • 遺産の内容がはっきりしていない
  • 不動産など売却すれば借金より高く売れる資産がある
  • 事業をしていて財産と負債が複雑に入り組んでいる
  • 相続放棄で他の親族に迷惑をかけたくない
  • 借金を含めて相続財産全体の整理を自分たちで主導したい
  • 家業を継ぐなどどうしても相続しなければならない理由がある

相続財産の範囲内で責任を負うという意味で、安全性の高い選択肢です。

限定承認の手続き

限定承認も家庭裁判所に申述書を提出して行います。
ただし相続人が複数いる場合には「全員が一緒に限定承認を申し立てる」必要があります。
期限は、相続放棄と同様に、相続開始を知ってから3か月以内です。
もし相続人に相続放棄をしたひとがいる場合、そのひとは最初から相続人でなかったものとされるため、それ以外の全員で手続きを行います。

限定承認の注意点

まず、相続財産を正確に把握する必要があります。
不動産や預貯金などの目に見える財産だけでなく、借金・ローン・個人保証などの「見えにくい債務」まで調査しなければなりません。
さらに限定承認は、相続放棄に比べて手続きが複雑です。
たとえば相続人が3人いて、そのうち1人でも反対すれば限定承認は成立しません。
財産の売却や債権者への支払いも、法令に従って進める必要があります。
さらに限定承認は、手続きに不備があると、結果的に単純承認(すべて相続)とみなされる可能性もあります。
専門知識が求められる場面も多くあるため、弁護士や司法書士などのサポートを受けるのがおすすめです。

相続放棄と限定承認の違い

以下、相続放棄と限定承認の違いを整理します。

基本的な違い

相続放棄は、「相続そのものをしない」という選択です。
一方で限定承認は、「損をしない範囲で相続する」という選択になります。

手続きの違い

相続放棄は1人でも手続きができ、内容も比較的簡単です。
一方で限定承認は、相続人全員で手続きを行う必要があり、手続きが複雑になる傾向があります。

負債への対応

相続放棄は、相続そのものをしないため、借金を一切引き継ぎません。
一方で限定承認は、財産の範囲内で借金を返済します。

相続財産の活用

相続放棄の場合、プラスの財産も一切受け取れないため、相続財産の活用は不可能です。
一方で限定承認は、財産の範囲内でマイナスを処理した後、残った分は相続できます。
両者は、似ているようで、考え方や使い方が大きく異なります。

どちらを選ぶべきか

相続放棄と限定承認は、それぞれの状況に応じて選択すべきです。
借金が明らかに多い場合は、相続放棄が無難です。
借金と財産のどちらが多いか不明な場合は、限定承認を検討するとよいでしょう。

まとめ

相続放棄はすべての財産を放棄する選択であり、借金を引き継がない代わりにプラスの財産も受け取れません。
一方で限定承認は、相続財産の範囲内で負債を支払い、残った財産を相続する方法です。
どちらを選ぶべきかは、借金と財産のバランスや家族の事情によって異なります。
もし判断に迷う場合には、弁護士などの専門家に早めに相談してみてください。

自己破産における破産管財人とは?役割を紹介

破産管財人とは?役割を紹介

自己破産を行う場合、破産管財人という役割の者が選任されることがあります。
今回は、破産管財人が選任されるケースや役割などについて解説します。

自己破産とは

自己破産とは、借金などの債務が自身の支払い能力を超えているときに、裁判所に支払い義務を免除してもらう手続きのことをいいます。
債務者が支払不能の状態にある場合に、その生活を再建させることが自己破産の目的とされています。

自己破産で破産管財人が選任されるケース

自己破産の手続きには、破産管財人が選任される管財事件と、破産管財人が選任されない同時廃止という2つの種類があります。
破産管財人が選任される管財事件となるのは、主に債務者が一定以上の財産を所有している場合です。
破産法上の基準を超える財産、たとえば、一定額以上の現金、預貯金、不動産、生命保険の解約返戻金、自動車などを債務者が所有している場合、その財産を換価し、債権者に配当する必要が生じます。
この換価や配当の手続きを行うために、破産管財人が選任されます。

破産管財人のおもな役割

破産管財人が果たすべき役割は多岐にわたり、破産手続の公平性と適正性を保つために極めて重要です。
主に次のような役割があります。

  • 破産財団の管理・処分権を行使する
  • 破産財団に属する財産の調査を行い確定させる
  • 債権者へ公平な配当を行う
  • 免責に関する調査や意見陳述

それぞれ確認していきましょう。

破産財団の管理・処分権を行使する

破産管財人の主要な役割は、破産財団の管理と処分権を専属的に行使することです。
破産財団とは、破産者の財産で、破産手続の対象となるものを指します。
破産管財人は、破産財団に属する財産の占有、管理、維持を行い、その価値を減らさないように努めます。
さらに、最終的に財産を現金化する換価手続きに向けて、財産の売却や回収など、処分権を行使します。
この職務を通じて、破産管財人は債権者への配当原資を確保します。

破産財団に属する財産の調査を行い確定させる

破産管財人は、破産財団に属する財産を調査し、その範囲と価値を確定させる責任を負います。
この調査には、破産者から提出された財産目録の確認だけでなく、過去の財産隠しや不当な財産処分がなかったかについても詳しく調べることも含まれます。
必要に応じて、過去に行われた財産処分を取り消す否認権を行使したり、未完了の契約関係の整理を進めたり、役員責任の追及などを行ったりして、破産財団の増殖を目指します。

債権者へ公平な配当を行う

破産管財人は、財団の換価、つまり財産の現金化が完了した後、その現金を用いて債権者への公平な配当を実現する役割を持ちます。
具体的には、債権者から提出された届出に基づき、破産債権者の範囲や債権額を調査し、これを確定させます。
そして、法律の定める優先順位に従って、配当に関する職務を遂行します。
この配当手続きを通じて、すべての債権者が法的に平等に取り扱われることを保証します。

免責に関する調査や意見陳述

破産管財人の職務には、債務者の免責に関する調査も含まれます。
免責とは、残った借金の支払い義務を免除する手続きであり、自己破産の最終目的です。
破産管財人は、破産手続開始に至った経緯について債務者に聞き取りを行い、免責不許可事由がないかを調査します。
調査結果に基づき、免責を許可すべきかどうかについて、裁判所に対して意見を陳述します。
免責不許可事由がある場合でも、裁判所が債務者の生活再建の意欲などを考慮して免責を認める裁量免責という制度があり、破産管財人の意見はこの判断に大きな影響を与えます。

破産管財人の選任方法は?

破産管財人は、破産手続の開始決定と同時に、裁判所が選任します。
申立人が特定の人物を指名することはできません。
裁判所は、破産事件の規模や複雑性、または破産管財人の専門性を考慮して、適切な弁護士を名簿の中から選任します。
破産管財人が選任された後は、裁判所が破産管財人の職務遂行を監督し、職務の遂行が不適切であると判断された場合には、裁判所が必要に応じて解任することができます。
また、大規模な法人の破産手続など、案件が複雑な場合には、破産管財人が複数選任されることもあります。
破産管財人が複数選任される場合は、共同して職務を行うことが原則とされていますが、裁判所の許可があれば、職務分掌を定めて個別の職務を担当したり、単独で業務を執行したりすることも可能です。
このように、破産管財人の選任は裁判所の専属的な権限であり、中立性と公平性が保たれる仕組みとなっています。

まとめ

今回は自己破産における破産管財人とは何か、また役割について考えていきました。
自己破産の管財事件は、同時廃止事件に比べ、複雑な手続きや破産管財人とのやりとりが発生します。
そのため、自己破産を考えている場合には弁護士に相談することを検討してください。

交通事故の加害者が無保険だった場合の対処法

交通事故の加害者が無保険だった場合の対処法

交通事故に遭ったとき、加害者が自動車保険に入っていないケースもあります。
本来であれば、加害者の加入する任意保険によって被害者の損害は補償されます。
しかし無保険の加害者に対しては、被害者自身が別の方法で救済を求める必要があります。
今回は、交通事故の加害者が無保険だった場合の対処法を解説します。

そもそも無保険とはどういう状態か

無保険というのは、交通事故の加害者が任意保険に加入していない状態を指します。
日本では自動車を運転する場合、「自賠責保険」への加入が法律で義務付けられています。
つまり、「完全に保険がない」という状態は原則としてありません。
ただし自賠責保険だけではカバーできる範囲が限られており、被害者にとって十分な補償を受けられない可能性があります。

自賠責保険の補償内容

自賠責保険は、被害者の「人身事故」に対する最低限の補償を目的としています。
そのため、物損や車の修理代は補償されません。

  • 死亡による損害:最大3000万円
  • 後遺障害による損害:最大4000万円(等級により異なる)
  • 傷害による損害:最大120万円

重度の後遺障害や大きな治療費がかかる場合は、自賠責保険だけでは補いきれない可能性があります。

加害者が無保険だった場合の主な対処法

加害者が任意保険に入っていないとき、被害者が適切な補償を受けるためには以下のような方法があります。

  • 自分の保険を活用する
  • 自賠責保険に対して請求する
  • 自動車損害賠償保障事業を利用する
  • 加害者に対して損害賠償請求を行う

それぞれ確認していきましょう。

自分の保険を活用する

加害者に支払い能力がない場合や、交渉が難航する場合は、自身の自動車保険に含まれている「無保険車傷害保険」などの補償制度を利用するのがおすすめです。

  • 無保険車傷害保険
  • 人身傷害補償保険
  • 車両保険(対物)

無保険車傷害保険では、加害者が任意保険に未加入であり、なおかつ自賠責でも足りない場合に一定の補償が受けられます。

自賠責保険に対して請求する

加害者が加入している自賠責保険に対して、直接被害者が損害賠償を請求できます。
いわゆる「被害者請求」の制度で、加害者を通さずに保険会社に対して請求ができるのが大きな特徴です。

自動車損害賠償保障事業を利用する

加害者が自賠責保険にも加入していなかった場合、政府が運営している「自動車損害賠償保障事業(政府保障事業)」を利用する方法があります。
自動車損害賠償保障事業は、無保険車やひき逃げによって発生した事故の被害者を救済するための制度です。
補償内容は自賠責と同様で、請求の際に事故証明や治療明細などが必要です。
補償対象は、死亡・傷害による人身損害のみであり、物損は対象外となります。

加害者に対して損害賠償請求を行う

加害者に資産や収入がある場合、民事裁判などを通じて直接損害賠償請求をする方法もあります。
ただし実際に回収できるかどうかは、加害者の経済状況に大きく左右されます。
損害賠償請求をする場合は、弁護士を通じて適切な手続きを取るのが重要です。

弁護士に相談するメリット

交通事故のトラブルは、専門的な知識が必要な場面が多くあります。
加害者が無保険の場合、被害者が不利になりやすいのが現実です。
弁護士に相談するメリットとしては、以下の2つがあります。

  • 法律的なサポートが受けられる
  • 慰謝料請求の可能性を探れる

それぞれ解説します。

法律的なサポートが受けられる

弁護士は、法律のことだけではなく、関連する制度の内容も熟知しています。
弁護士に相談すれば、どの制度を使えばよいか、どこに請求するべきかといったアドバイスを受けられます。
また、加害者との交渉や裁判手続きの代理も可能です。

慰謝料請求の可能性を探れる

無保険の加害者でも、事故の内容や被害の程度によっては、慰謝料の請求が認められる場合があります。
その可否や見込み額に関しても、弁護士の判断を仰げます。

事故後にやるべきことの流れ

加害者が無保険と判明した場合、冷静に行動するのが重要です。
以下のような手順を参考にして対処を進めてください。

①警察への通報と事故証明の取得
②加害者の身元確認と保険状況の把握
③医療機関での受診と診断書の取得
④保険会社や弁護士への相談

それぞれのステップを解説します。

①警察への通報と事故証明の取得

まず、事故の発生直後には必ず警察に連絡し、事故証明を取得します。
証明がないと、自賠責保険や政府保障事業の請求ができません。

②加害者の身元確認と保険状況の把握

加害者の氏名・住所・連絡先の確認に加え、保険加入の有無や契約内容を確認しましょう。
保険証券や加入証明書などがあるとスムーズです。

③医療機関での受診と診断書の取得

事故直後は痛みがなくても、数日後に症状が出るケースがあります。
必ず医療機関を受診し、診断書などを取得しましょう。

④保険会社や弁護士への相談

自身の加入している保険会社に連絡し、補償内容の確認と利用可能な制度を相談します。
加害者との話し合いが難航する場合や、請求内容が複雑な場合は、弁護士の力を借りるのがおすすめです。

まとめ

今回は、交通事故の加害者が無保険だった場合の対処法について解説しました。
加害者が任意保険に加入していないと、被害者が必要な補償を受けにくくなる可能性があります。
対処法としては、自賠責保険の被害者請求や政府保障事業、自身の保険を活用するなど複数の救済手段があります。
法的な手続きが必要な場合は、弁護士などの専門家に相談してください。

労働条件の不利益変更の実施方法と注意点

労働条件の不利益変更の実施方法と注意点

会社経営では、経済状況の悪化などの理由で、労働者の労働条件を見直す場面もあります。
しかし労働条件を、労働者にとって不利な内容に変更する場合、法的な制約や注意点が数多く存在します。
今回は、労働条件の不利益変更の実施方法と、その際に企業が注意すべきポイントを解説します。

労働条件の「不利益変更」とは何か

労働条件の「不利益変更」とは、労働者にとって今までよりも悪い内容へと変更されることを意味します。
具体的には、給料の引き下げや勤務時間の延長、休暇制度の変更などです。
不利益変更は、労働者の生活や権利に大きく影響するため、法律的な観点からも慎重な対応が必要です。

不利益変更の実施方法

不利益変更の実施方法は、以下の通りです。

  • 労働者からの個別合意を得る
  • 労働組合との包括的合意を図る
  • 就業規則の改定をする

それぞれ簡単に解説します。

労働者からの個別合意を得る

まず、不利益変更をそれぞれの労働者と話し合い、書面による同意を得るのが原則です。
トラブルを避けるため、内容や減額の程度が明記された同意書を交わします。

労働組合との包括的合意を図る

会社に労働組合がある場合は、締結された労働協約により適用できる場合があります。
労働協約で定めた場合は、組合員には当然に適用され、非組合員にも就業規則と同様の効力が及ぶ可能性があります(組合員数が事業場労働者の4分の3以上の場合)。

就業規則の改定をする

合意が得られない場合や、多数の社員に適用したい場合は、前述のように就業規則を変更する方法があります。
ただし、「合理的な理由」が必要です。
就業規則を変更した後は、労働者が新しいルールを「見て知れる状態」にしなければなりません。
具体的には書面で配布するか、社内の見やすい場所に掲示するか、電子媒体で保存して閲覧可能にする方法が認められています。

合理的な理由として認められる基準

就業規則の改定に関して、合理的な理由として認められるかどうかは、以下の4つが基準となります。

  • 労働者の合意が得られているか
  • どれくらいの不利益があるか
  • 変更の必要性があるか
  • 代わりの対応や配慮がなされているか

企業が一方的に就業規則を変更しても、これらの要素を満たさなければ、法的に無効とされる可能性があります。
それぞれ確認していきましょう。

労働者の合意が得られているか

労働条件の不利益変更では、労働組合や労働者の多数から合意を得ているかどうかが重要な判断要素です。
会社側があらかじめ丁寧に説明を行い、多くの労働者が同意している場合には、変更が合理的と認められる可能性が高まります。
一方で労働者の大半が反対している場合は、たとえ就業規則を改正しても、その変更の正当性や有効性が疑問視されます。

どれくらいの不利益があるか

変更によってどれほど労働者が不利になるかも、大きな判断材料です。
たとえば基本給の大幅な減額や長時間労働など、生活に大きな影響が出るような変更だと、合理性が認められにくくなります。

変更の必要性があるか

変更しなければ会社の運営が困難になるような事情がある場合には、必要性があると評価されやすくなります。
一方で、特に理由がなく変更するようなケースだと、合理性が認められにくくなります。

代わりの対応や配慮がなされているか

不利益を受ける労働者に対して、会社がどれだけ代替案や補償などの配慮をしているかも重要です。
「給料が下がる代わりに特別手当を支給する」「勤務時間の変更に応じて通勤手当を増やす」などの対応があれば、合理性が認められやすくなります。

不利益変更の実施に関する注意点

企業が法的な手続きを無視して労働条件を変更した場合、行政指導や民事訴訟など、さまざまなリスクを抱えます。

  • 直接的な金銭的リスク
  • 職場環境や労働者の信頼への悪影響
  • 企業の信用失墜のリスク

違法な不利益変更がどのような結果を招くかを整理して解説します。

直接的な金銭的リスク

就業条件を正当な理由や手続きなしに下げた場合、労働者から民事訴訟を起こされる可能性があります。
裁判で変更が無効と認められた場合、企業は本来支払うべきだった金額との差額を補填しなければなりません。
給与の減額が問題になったケースでは、減額分の全額をさかのぼって支払うよう命じられる可能性もあります。
上記のような訴訟が複数の労働者から同時に起きれば、会社にとって大きな負担となります。

職場環境や労働者の信頼への悪影響

不利益変更は、仮に裁判に発展しなくても、労働者の不満を生み出す可能性もあります。
最も顕著なのが、労働者の士気の低下です。
「自分たちは軽く扱われている」と感じ、仕事に対する意欲が薄れて、生産性が下がるケースも少なくありません。
企業の対応に不信感を抱いた労働者が退職を選ぶ可能性もあります。

企業の信用失墜のリスク

不当な対応が外部に漏れると、企業としてのイメージも悪くなります。
採用や取引先との関係にも悪影響が及ぶかもしれません。
一度失われた信用を取り戻すには、時間もコストもかかります。
経営上やむを得ない場合もありますが、対応を誤ると企業に大きな悪影響が出る可能性があるため注意が必要です。

まとめ

今回は、労働条件の不利益変更の実施方法や注意点を解説しました。
労働条件の見直しは、会社の存続や業務改善のために必要となる場合もあります。
しかし労働者の生活に直接関わるため、慎重に進めるべき問題です。
不利益変更に関して不安な点があれば、弁護士などの専門家にいち早く相談してください。

養育費の取り決めを公正証書にすべき理由と手続きの流れ

養育費の取り決めを公正証書にすべき理由と手続きの流れ

離婚をした後、子どもの将来を考える際に重要になるのが「養育費」です。
とはいえ、口約束だけで養育費を決めてしまうケースも少なくありません。
今回は、養育費の取り決めを公正証書にしておくべき理由と、その手続きの流れを解説します。

養育費とは

養育費とは、子どもが社会的・経済的に自立するまでに必要な費用です。
離婚した後も、親には子どもを育てる責任があります。
どちらか一方が子どもを引き取った場合、もう一方の親が養育費を支払う義務があります。
養育費に含まれるのは、以下のような費用です。

  • 食費、衣類、住居費などの日常生活費
  • 医療費や通院費用
  • 保育園や学校などの教育費
  • 習い事や塾などの課外活動費

子どもの年齢や進学希望によって必要な金額は変わります。
そのため、将来も視野に入れ、十分に話し合うのが大切です。

口約束では不十分な理由

養育費の支払いに関して、離婚の際に話し合って決めても、文書にしなかったり口約束だけだったりするケースがあります。
しかし文書化しないと、さまざまなリスクがあります。

  • 支払いが滞るリスクが高い
  • 証拠が残らない
  • 子どもが不利益を受ける

それぞれ確認していきましょう。

支払いが滞るリスクが高い

養育費の取り決めが口頭だけだった場合、支払いが止まっても法的に強制できません。
仮に一度は約束を守っても、再婚や転職、収入の変化などを理由に支払いをやめる可能性があります。

証拠が残らない

「養育費を支払う」と口約束をしても、文書がなければ後からその約束を証明できません。
仮に裁判になった場合、証拠がないと養育費を請求するのが難しくなるリスクがあります。

子どもが不利益を受ける

養育費の支払いが止まると、子どもの生活や教育環境に直接的な影響を与える可能性があります。
必要なサポートが受けられず、将来の進路が制限されることも考えられます。
養育費の取り決めは、強制執行が可能な「公正証書(強制執行認諾文言付き)」として残すのが重要です。

公正証書とは

公正証書とは、公証役場で公証人が作成する、法的な効力を持つ文書です。
離婚の際に養育費や面会交流、財産分与などを取り決める場合、公正証書を作成するのが推奨されます。
特に重要なのが、「強制執行認諾文言」が付いた公正証書です。
養育費の不払いが起きた場合、訴訟を経ずに、裁判所を通じて差し押さえの手続きができます。

公正証書を作成する手続きの流れ

公正証書を作成するには、一定の手順があります。

①内容の合意
②必要書類の準備
③公証役場に相談・予約
④作成・署名
⑤正本・謄本の受け取り

それぞれのステップを確認します。

①内容の合意

まず、養育費の金額、支払い方法、支払期間などの詳細について、当事者同士で合意します。
以下のポイントを話し合っておくと安心です。

  • 毎月の支払金額
  • 支払日
  • 支払い方法
  • 支払いの終了時期
  • 将来的に収入が変動した場合の対応

必要に応じて、弁護士や行政書士への相談も検討してください。

②必要書類の準備

次に、公証役場に提出する書類を準備します。

  • 離婚協議書(養育費の内容が記載されたもの)
  • 身分証明書
  • 戸籍謄本
  • 不動産の登記簿謄本
  • 固定資産税納税通知書もしくは固定資産評価証明書

年金分割も行う場合や、代理人に依頼する場合などで、内容が若干異なります。

③公証役場に相談・予約

公正証書の作成は、原則として公証役場で行います。
事前に電話などで予約を取り、必要書類や内容を確認しましょう。
不明点がある場合には、相談に応じてもらえるケースもあります。

④作成・署名

公証人の面前で内容を確認し、問題がなければ当事者が署名・押印を行います。
公正証書が完成し、法的効力が生じます。
なお公正証書の手数料は、取り決める金額によって異なるため、事前に確認してください。

⑤正本・謄本の受け取り

公正証書の原本、正本、謄本の違いは以下の通りです。

種類説明
原本大元の書類。公証役場に保管されるため、当事者は持ち帰れない
正本原本をもとにして作成される「正規の写し」。原本とまったく同じ内容で、法的な効力がある
謄本証拠や参考資料として使うためのコピー。法的な強制力はない

公正証書が完成すると、正本と謄本が発行されます。
養育費などで将来の強制執行に備えるなら、「正本」は必須です。
内容を確認したり保管したりするために「謄本」も持っておくと安心です。
特に養育費など継続的なお金の支払いがある場合は、正本を適切に保管してください。

公正証書の内容の見直しはできるのか

公正証書は、「一度作成したら永久にそのまま使い続けなければならない」というわけではありません。
子どもの成長や親の収入状況の変化など、環境の変化によって、養育費の内容を見直す必要が出てくる場合もあります。
当事者同士が合意すれば、公正証書の内容の変更が可能です。
ただし、口頭での約束やメモ書きだけでは、法的効力を持ちません。
変更内容について新たに修正後の合意書を作成し、それをもとに公正証書を再作成する必要があります。

まとめ

今回は、養育費の取り決めを公正証書にするべき理由と、手続きの流れを解説しました。
公正証書にすれば、養育費の支払いに法的な裏付けを持たせられます。
作成には一定の手間・費用がかかりますが、長期的に見ると安心して子育てを進めるための大切な備えになります。
不安があれば、弁護士や司法書士などの専門家に相談してください。

相続人が行方不明の場合の対処法

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相続が発生したものの、「相続人に行方がわからないひとがいる」というケースは珍しくありません。
遺産分割協議は、基本的に相続人全員で進める必要があるため、行方不明のひとがいると探す手間がかかります。
今回は、相続人が行方不明の場合の対処法を解説します。

相続手続きに必要な「相続人全員の関与」とは

相続の場面では、遺産分割協議や不動産登記、預貯金の解約など、多くの手続きに相続人全員の関与が求められます。
「全員」とは、法定相続人全員を指します。
しかし親戚の人間関係などによっては、相続人が全員すぐに集まるとは限りません。
関与できない相続人がいれば、基本的には手続きを進められないため注意が必要です。

相続人が行方不明になる原因と事前の対策

行方不明の相続人が出る原因・背景はさまざまです。

  • 疎遠になっていた親族との連絡が取れなくなっている
  • 転居後の住所が不明になっている
  • 海外移住や長期入院などによる音信不通がある

上記の事態に備えて、被相続人自身が遺言書を作成し、遺産分割の方針を明確にするのがおすすめです。
遺言書があれば、相続人の全員合意が不要となる場合があり、行方不明者がいても相続手続きをスムーズに進められる可能性があります。

まずは行方不明者への連絡をする

相続人に行方がわからないひとがいる場合、最初のステップは、行方不明者を探すことです。
戸籍謄本(全部事項証明書)を取得して、現在登録されている住所を確認しましょう。
戸籍の附票を取り寄せれば、過去の住所履歴も追えます。
住所へ直接行くのではなく、まずは手紙などを出して様子を見ます。
内容は以下のようにするのがおすすめです。

  • 自分との関係(相続人であること)
  • 被相続人が亡くなったこと
  • 相続手続きが必要であること
  • 連絡を希望する旨と連絡先

電話をしてもらうか、直接会う約束などを取り付けて、相続に関して説明する機会を設けてください。

行方不明の相続人がいる場合に検討すべき制度

連絡が一切取れない場合は、法的手続きを用いて、相続の支障を解消する必要があります。

①不在者財産管理人の選任申立て
②失踪宣告

それぞれ確認していきましょう。

①不在者財産管理人の選任申立て

相続人が一時的に行方不明であり、「生死は確認されているが所在が不明」というケースでは、「不在者財産管理人」の選任を家庭裁判所に申し立てる方法があります。
不在者財産管理人は、行方不明者に代わって遺産分割協議などへの参加が認められています。
申立てを行えるのは、利害関係人(他の相続人など)や検察官です。
申立先は、行方不明者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
不在者財産管理人になれるのは、利害関係のない被相続人の親戚や、弁護士などの専門家です。

②失踪宣告

長期間にわたり生死不明の状態が続いている場合は、「失踪宣告」の制度を活用する方法もあります。
失踪宣告とは、一定期間以上生死不明である人物について、法律上死亡したものとみなす制度です。
失踪には「普通失踪」と「特別失踪」の2種類があり、それぞれ条件や扱いが異なります。

■普通失踪

7年以上音信不通で、生死がわからない場合です。
家庭裁判所に対して「失踪宣告の申立て」をし、裁判所による審理後、「死亡したもの」とみなされます。

■特別失踪

戦災や海難など生命に危険がある状況で行方不明になり、1年以上所在不明の場合です。
普通失踪よりも要件の緊急性・重大性が高く、期間も短縮されています。
失踪宣告後に本人の生存が判明した場合、失踪宣告は取り消され、相続に関する法律関係も遡って修正されます。
失踪宣告を選択する場合は、事前に弁護士などに相談し、状況に合った方法かどうかを慎重に検討してください。

不在者財産管理人の選任手続きの流れ

不在者財産管理人の選任には、以下のような手順が必要です。

①必要書類の提出
②裁判所による審査・選任決定
③選任後の手続き

それぞれ確認していきましょう。

①必要書類の提出

申立てには、以下のような書類が求められます。

  • 申立書
  • 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 不在者の戸籍附票
  • 財産管理人候補者の住民票または戸籍附票
  • 不在の事実を示す資料
  • 不在者の財産資料(不動産登記事項証明書、通帳コピー、残高証明書など)
  • 利害関係人が申立人の場合は利害関係を示す資料(戸籍、契約書など)

入手できない戸籍などがある場合、申立て後の追加提出も可能です。

②裁判所による審査・選任決定

家庭裁判所は提出された書類や事情をもとに、選任の可否を判断します。
必要があれば、補足資料の提出や意見聴取が求められることもあります。
裁判所が適任と認めた人物が、不在者財産管理人に選任されます。

③選任後の手続き

民法第28条によれば、不在者財産管理人が通常の管理を超える行為(遺産分割協議に参加する、財産を売却する)を行うには、家庭裁判所の許可が必要です。
不在者財産管理人本人が、不在者財産管理人を選任した家庭裁判所に対して申立てをします。

まとめ

今回は、相続人が行方不明である場合の対応方法について解説しました。
相続手続きでは相続人全員の関与が求められるため、行方不明者がいると対応が難しくなります。
その際は、不在者財産管理人の選任や失踪宣告といった制度の活用を検討してください。
状況に応じた適切な手続きに進むためにも、必要に応じて弁護士など専門家のサポートを受けるのも重要です。

個人再生をしても住宅ローンが残っている家を残せるか

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借金の返済が困難になった場合でも、すべての財産を失わずに生活の再建を図る方法が「個人再生」です。
個人再生であれば、住宅ローンが残っている家を残せる可能性があります。
今回は、住宅ローンが残っている場合でも、個人再生で自宅を残せるかどうかを解説します。

個人再生とは

個人再生とは、裁判所を通じて借金の元本を大幅に減額し、原則3年(最長5年)の分割で返済していく手続きです。
自己破産のように財産をすべて処分する必要がないため、一定の条件を満たせば、住宅などの資産を維持したまま借金の整理ができます。
同制度には、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2つがあります。
ただし基本的には前者が選択される場合がほとんどです。
なぜなら多くの場合、小規模個人再生のほうが、給与所得者等再生よりも返済額が少なくなるからです。

個人再生(小規模個人再生)を利用するための主な条件

制度を利用するには、以下のような条件を満たしている必要があります。

①将来にわたって安定した収入があること
②借金の総額が一定以下であること
③債権者の同意があること

①と②は開始要件であり、そもそもこれを満たしていなければ申請ができません。
それぞれ確認していきましょう。

①将来にわたって安定した収入があること

再生計画に従って、継続的に返済を行うのが前提となるため、継続的または反復した収入が必要です。
たとえば、会社員・公務員・個人事業主・年金受給者などが該当します。

②借金の総額が一定以下であること

小規模個人再生の場合、「住宅ローンを除いた無担保債務が5,000万円以下」が条件です。
5,000万円を超え、減額できない場合は、自己破産を検討します。

③債権者の同意があること

厳密には、申し立てるための条件ではなく、「認可要件」です。
小規模個人再生では、提出した再生計画案に対して、債権者からの「賛成」または「反対」の意見が重要です。
反対が多いと、その計画が認められない場合があります。
ただし反対が少数であれば、「みなし同意」として、裁判所が計画を認めます。
具体的なポイントは、以下の2つです(両方満たす必要があります)。

  • 反対を出した債権者の人数が、全体の半数未満
  • 反対を出した債権者が持つ借金の金額合計が、全体の半分未満

たとえば債権者が10人いて、そのうち3人だけが反対であり、しかもその3人が持つ借金の総額が全体の半分より少なければ「債権者の同意があった」と扱われます。

住宅ローン特則とは?家を守るための特別な制度

住宅を手放さずに個人再生を進めるには、「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」と呼ばれる制度を利用します。
住宅ローン特則とは、住宅ローンの返済を続けることを条件に、自宅の処分を回避できる制度です。
ただし利用には条件があるため、早めに弁護士などの専門家へ相談し、適用可能かを確認するのが重要です。

住宅ローン特則を利用するための条件

住宅ローン特則を利用するための条件は、以下の通りです。

  • 借金が住宅取得のためのローンである
  • 住むための家である
  • 本人が持っている家である
  • 住宅に抵当権が設定されている
  • 他の抵当権が設定されていない
  • 税金の滞納による差し押さえがない
  • 代位弁済から6か月以上経っていない

それぞれ確認していきましょう。

借金が住宅取得のためのローンである

対象の借入れが、住宅購入を目的としたローンである必要があります。
リフォームローンなどでも、住宅に関係する借入れであれば、対象になる可能性があります。
判断に迷う場合は、弁護士などの専門家に相談してください。

住むための家である

自宅が「居住用」であるのが前提です。
つまり、実際に住んでいるか、住む予定の住宅に限られます。
事務所や投資用物件は対象外となりますが、店舗付き住宅であっても、住居部分が半分以上あれば認められる可能性があります。

本人が持っている家である

住宅ローン特則が使えるのは、住宅ローンを支払っている本人が、家の所有者である場合です。
共有名義の場合でも、本人が持っている持分にローンの担保が設定されていれば、利用できる可能性があります。

住宅に抵当権が設定されている

住宅ローンには、通常、抵当権が設定されています。
根抵当権でも、住宅ローンだけの担保であれば問題ありません。

他の抵当権が設定されていない

住宅ローン以外の借入れに対しても抵当権が設定されている場合、制度の利用は難しくなります。
なぜなら、他の債権者がその抵当権を使って家を差し押さえる可能性があるからです。

税金の滞納による差し押さえがない

固定資産税などの滞納で、すでに家に差押登記がされている場合、原則として制度の対象になりません。
ただし納税について分割払いの合意が取れており、支払える見込みがあれば、例外的に認められる場合もあります。

代位弁済から6か月以上経っていない

ローンを滞納すると、保証会社が代わりに支払う「代位弁済」が行われます。
その後、6か月以上経過すると住宅ローン特則は使えません。
代位弁済から6か月以内なら、「巻戻し」という対応で再生の対象にできます。

住宅ローンが残っている家を残すためのポイント

個人再生によって住宅を守るには、以下のポイントに注意してください。

  • 安定した収入があるかを確認する
  • 家計管理と支出の見直しを行う
  • ローンの内容や担保の有無を整理する
  • 弁護士への相談を検討する

特に住宅ローン特則を使う場合は、制度の細かい要件を確認しつつ、実務的な判断をする必要があります。
わからない部分があれば、弁護士などの専門家に相談してください。

まとめ

住宅ローン特則を利用すれば、自宅を残しつつ他の借金を整理できる可能性があります。
ただし、一定の条件を満たす必要があります。
無理のない返済計画を立てるためにも、専門家の力を借りて慎重に進めてください。

過失割合に納得できないときの対処法

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交通事故に遭った際、保険会社から提示される過失割合に納得できない場合があります。
そのまま受け入れると、不利な条件で示談が成立する可能性があるため注意が必要です。
今回は、提示された過失割合に納得できない場合の具体的な対応方法を解説します。

そもそも過失割合とは?

過失割合とは、交通事故における当事者それぞれの過失(注意義務違反)の程度を数値化したものです。
たとえば、過失割合が「7:3」とされた場合、7割の責任がある側がより大きな損害賠償責任を負います。
事故の状況や証拠、過去の判例などをもとに判断されるケースが多く、最終的には当事者の合意によって確定します。

過失割合に納得できない理由とは

保険会社が提示する過失割合がすべて正しいとは限りません。
以下のような理由で、納得できないと感じるケースがあります。

  • 事故状況の理解に相違がある
  • 自分に不利な証拠だけが評価されている
  • 過去の判例との整合性が取れていない
  • 保険会社が交渉を急いでいるため説明が不十分

過失割合に納得できなくても、感情的にならず、冷静に対応してください。

過失割合に納得できないときの対応手順

提示された過失割合に同意できない場合、以下のような手順で対応します。

①事故状況に関する証拠を再確認する
②保険会社に説明を求める
③意見が食い違う場合は交渉を継続する
④弁護士に相談する

それぞれ確認していきましょう。

①事故状況に関する証拠を再確認する

まずは、自分が把握している事故状況を改めて整理し、客観的な証拠を揃えてください。
たとえば、以下のような資料が役立ちます。

  • ドライブレコーダーの映像
  • 現場の写真や見取り図
  • 警察が作成した実況見分調書
  • 目撃者の証言や連絡先

過失割合に納得ができない場合、基本的に相手の保険会社と交渉することになります。
証拠の内容によっては、保険会社の判断を覆す材料となる場合もあるため、徹底的に情報収集を行いましょう。

②保険会社に説明を求める

事故状況に関する証拠を再確認できたら、実際に相手の保険会社との交渉に入ります。
過失割合の根拠があいまいな場合、保険会社に対して「どのような基準で判断されたのか」を説明してもらいます。
参照した判例や過失割合の基準(判例タイムズなど)を尋ねて、合理性を確認してください。

③意見が食い違う場合は交渉を継続する

過失割合は、双方が納得し、合意したうえで成立します。
そのため、納得できないまま合意する必要はありません。
保険会社との話し合いで、自身の主張や証拠を提示し、再評価を促してください。

④弁護士に相談する

「交渉が進展しない」「不利な内容を強く押し付けられている」と感じた場合は、交通事故に詳しい弁護士への相談を検討します。
弁護士は法律的な観点から過失割合を検討し、必要に応じて示談交渉の代理や訴訟対応も行ってくれます。

過失割合の交渉を弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼するメリットは、以下の通りです。

  • 適正な割合を主張できる
  • 保険会社の主張に対抗できる
  • 交渉ストレスを軽減できる
  • 裁判に発展しても対応できる

それぞれ詳しく解説します。

適正な割合を主張できる

過失割合の判断には、判例や事故状況に関する高度な知識が必要です。
弁護士はドライブレコーダーの映像や警察の実況見分調書などを精査して、依頼者にとって不利益にならないよう考えてくれます。
また、過去の事例や「判例タイムズ」などの基準を参考にし、適正な過失割合を主張してくれます。

保険会社の主張に対抗できる

保険会社は営利企業であるため、示談交渉では自社に有利な過失割合を提示する傾向があります。
しかし弁護士が介入すると、その場で不当な割合に対して明確な反論ができ、一方的に不利な内容を押し付けられるリスクが軽減されます。
相手側としても、弁護士が対応しているとなれば、軽視するような対応は取りにくいでしょう。

交渉ストレスを軽減できる

交通事故後は、被害者はもちろんのこと、加害者側も気が動転してさまざまなストレスを抱えます。
そうした状態で保険会社との交渉を続けると、精神的な負担がより大きくなるかもしれません。
弁護士に依頼すれば、交渉に関わる必要がなくなるため、自分の生活に集中できます。

裁判に発展しても対応できる

示談交渉で解決に至らず、最終的に裁判へ進むケースもあるかもしれません。
弁護士に依頼していれば、交渉から訴訟まで一貫してサポートを受けられます。
たとえば証拠の収集・整理、主張書面の作成、法廷での弁論なども安心して任せられます。
交通事故案件に精通した弁護士であれば、裁判例や損害算定の実務にも強いため、裁判を通じてより有利な判決を引き出せる可能性があります。

過失割合の話し合いで注意すべきポイント

今回の内容を総括する形になりますが、過失割合をめぐるやりとりでは、以下の点に注意して対応してください。

  • 感情的にならず、事実と証拠を軸に交渉する
  • 保険会社の提示にすぐに同意せず、納得できるかどうかを確認する
  • 専門家の意見を取り入れることをためらわない

一度合意すると、基本的に過失割合を後から変更するのは困難です。
示談書に署名する前に、専門家の判断も仰ぎつつ、本当に納得できる数字かどうかを判断してください。

まとめ

今回は、提示された過失割合に納得できない場合の対応方法について解説しました。
過失割合は損害賠償額に直結するため、不合理な割合を受け入れてしまうと大きな不利益を被るおそれがあります。
客観的な証拠をもとに保険会社と交渉を重ね、必要に応じて弁護士の力を借りながら、自身にとって適切な条件での解決を目指すことが重要です。

秘密保持契約(NDA)とは?ポイントや注意点など

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ビジネスの場面では、相手に機密情報を開示するケースがあります。
自社の情報が無断で第三者に漏れたり、悪用されたりしないようにするために結ばれるのが、秘密保持契約(NDA)です。
今回は、秘密保持契約(NDA)の基本的な意味や役割、注意すべき点をわかりやすく解説します。

秘密保持契約(NDA)の役割と目的

まずは、秘密保持契約(NDA)の基礎知識を確認していきましょう。

秘密保持契約(NDA)とは

NDAは、「Non-Disclosure Agreement」の頭文字を取ったもので、日本語では「秘密保持契約」と呼ばれています。
企業や個人が、商品開発・業務委託・業務提携などの前提として、相手方に情報を提供するときに締結されるのが一般的です。

秘密保持契約(NDA)の目的

秘密保持契約(NDA)の主な目的は、以下の通りです。

  • 自社のノウハウや未公開情報を守る
  • 第三者への情報流出を防ぐ
  • 万一漏洩した場合の責任範囲を明確にする

上記により、安心して情報を共有し、円滑に交渉を進めやすくなります。

秘密保持契約が使われる主な場面

秘密保持契約(NDA)は、さまざまな状況で利用されています。
たとえば新商品や新サービスの開発に関する外部との打ち合わせは、秘密保持契約(NDA)が使われる場面の典型例です。
新商品・新サービスの情報は、まだ一般には公開されていません。
自社の利益を守るためにも、秘密保持契約(NDA)の締結が重要になります。
他にも、「業務委託(IT開発、デザイン、コンサルなど)の開始前」や「M&A(企業買収や合併)の交渉過程」などでも、秘密保持契約(NDA)が活用されます。

片務契約と双務契約の違い

秘密保持契約(NDA)には、主に2つのタイプがあります。

  • 片務契約:一方だけが情報を提供し、相手に守秘義務を課す
  • 双務契約:双方が情報を提供し合い、お互いに守秘義務を負う

たとえば、受注側の会社が発注者から仕様を聞く場合には、基本的に前者が使われます。

秘密保持契約(NDA)に含めるべき主な項目

秘密保持契約(NDA)を締結する際は、以下のような項目を定めます。

  • 秘密情報の定義
  • 秘密情報の利用範囲
  • 第三者への開示禁止
  • 契約期間および秘密保持義務の存続期間
  • 違反時の対応

それぞれ確認していきましょう。

秘密情報の定義

何を「秘密情報」とするかを文書内ではっきりと示す必要があります。
たとえば、「技術情報」「営業資料」「取引先名簿」「価格情報」など、対象をできるだけ具体的に記載します。

秘密情報の利用範囲

開示された情報を、どの目的に限定して使用するのかを明示します。
通常は「本契約に基づく検討目的の範囲内に限る」などの表現が使われます。

第三者への開示禁止

秘密情報を、契約相手以外の第三者に漏らさない義務について定めます。
例外的に、外部の専門家(弁護士、税理士など)に開示する場合の取り扱いもここで規定します。

契約期間および秘密保持義務の存続期間

契約が終了した後も秘密保持義務を続ける期間を設定します。
たとえば「契約終了後も3年間義務が続く」といった定めが一般的です。
秘密情報の性質から、「契約終了後も存続する」など、期間の定めがない場合もあります。

違反時の対応

もし秘密情報が漏洩した場合に、どのような対応になるかをあらかじめ記載します。
基本的には、損害賠償と差止請求の2つです。

秘密保持契約の注意点

秘密保持契約(NDA)はシンプルな契約書に見えても、内容次第ではトラブルにつながる可能性があります。
以下の点には特に注意が必要です。

  • 秘密情報の範囲があいまい
  • 情報の管理方法が明記されていない
  • 違反時の対応が不明確

それぞれ確認していきましょう。

秘密情報の範囲があいまい

秘密保持契約では、「何が秘密か」を明確に定めるのが前提です。
しかし実務では、「秘密情報とは一般に知られていない情報を指す」など、抽象的な表現で済まされるケースが少なくありません。
範囲がぼんやりしていると、情報を受け取った側は「これは秘密なのかどうか」が判断しにくくなります。
「製品の仕様書」「原価データ」「販売戦略」「顧客リスト」のように明記して、情報管理の線引きをわかりやすくしてください。

情報の管理方法が明記されていない

秘密情報は、受け取った側が適切に管理しなければ意味がありません。
ところが、契約書に管理方法の具体的な指示が書かれていないケースも多く見受けられます。
「コピー・複製の取り扱いはどうなるのか」「返還・廃棄はどうするか」など、具体的な部分を決めて、合意を得てください。
管理ルールがなければ、「不用意に社内で共有されていた」「個人のPCに保存されていた」などの形で漏洩リスクが高まります。

違反時の対応が不明確

「違反があった場合は別途協議する」とだけ書かれていると、実際に問題が起きた際に話し合いが難航しやすくなります。
リスク管理のポイントは以下の3つです。

  • 違反によって損害が出た場合に損害賠償を請求するかどうか
  • 損害額の上限を設けるかどうか
  • 裁判ではなく仲裁や調停で解決するか

できるだけ具体的に定めましょう。

まとめ

秘密保持契約(NDA)は、取引を始める前の段階で結ばれるケースが多く、信頼関係を築くうえでも重要な意味を持ちます。
形式だけの契約にせず、自社の情報を適切に守れる内容かどうかを確認してから締結してください。
法的にわからない部分があれば、弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。

離婚調停を有利に進めるためのポイント

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夫婦間の話し合いだけでは離婚の条件がまとまらないとき、家庭裁判所での「離婚調停」を選ぶ方法があります。
とはいえ、調停の場では感情的になりやすく、冷静な判断を欠いて不利な結果につながる可能性もあります。 
今回は、離婚調停を少しでも有利に進めるために押さえておきたいポイントを解説します。

離婚調停とは

離婚調停は、家庭裁判所で行う法的な手続きです。 
夫婦双方の話し合いを、裁判官と調停委員の立ち会いのもとで進める形式となります。

離婚調停の流れ

離婚調停の流れは、以下の通りです。

①申立書および必要書類の提出
②初回の調停期日の通知
③調停
④調停調書の作成・調停の終了

それぞれ確認していきましょう。

①申立書および必要書類の提出

まずは、家庭裁判所に調停申立書と必要書類を提出します。
提出先は、相手方(配偶者)の住所地を管轄する家庭裁判所です。

②初回の調停期日の通知

申立てを受けた裁判所は、調整後に初回の調停期日を指定し、当事者双方に通知します。
調停は裁判所が開廷している時間、つまり平日の昼間に行われるのが原則です。
仕事や育児があっても、都合を調整して出席しなければなりません。

③調停

調停当日は、夫婦が別々の待合室で待機し、交互に調停委員と話すのが一般的です。
いわゆる「非対面方式」であり、相手と直接顔を合わせずに話ができるため、冷静なやりとりがしやすくなります。
調停委員2名(男女1名ずつが多い)と、家庭裁判所の裁判官が対応するのが基本です。
まずは申立人から意見を聞き、次に相手方の意見を確認するという流れで話が進みます。
調停委員は中立の立場から、事実関係や希望条件を整理し、妥協点を探ります。

④調停調書の作成・調停の終了

複数回の期日を重ね、双方が合意に達すれば「調停調書」が作成されます。
調停調書は、裁判所が作成する正式な文書です。
確定判決と同じ効力を持つため、離婚届を提出せずに離婚が成立します。
一方で、意見が折り合わず合意に至らない場合には、調停は不成立となります。
上記の場合、家庭裁判所が職権で判断を下す「審判」に進むか、あるいは当事者が改めて「離婚訴訟」を起こします。

離婚調停を有利に進めるためのポイント

離婚調停を有利に進めるためには、以下のポイントを意識してください。

  • 事前に目的と優先順位を明確にする
  • 証拠や資料を準備する
  • 調停委員には丁寧に接する
  • 調停の記録は自分でも残す
  • 調停中の言動には注意する

それぞれ確認していきましょう。

事前に目的と優先順位を明確にする

調停を始める前に、自分が「何を一番重視するのか」を整理するのが重要です。 
「親権を得たい」「養育費を確実に取り決めたい」など、希望内容を紙に書き出します。
すべてを主張すると対立が激しくなるため、譲れない点と妥協できる点の線引きをすると、より柔軟に交渉を進めやすくなります。

証拠や資料を準備する

主張を裏付けるためには、客観的な証拠が欠かせません。 
以下のような資料を整理すると効果的です。

  • DVやモラハラの証拠(録音データ、LINE、診断書など) 
  • 夫婦共有財産の資料(通帳、不動産登記簿など) 
  • 収入を示す資料(源泉徴収票、給与明細など) 
  • 子どもの養育状況に関する記録(学校の連絡帳、写真など)

調停委員はあくまでも第三者として関与する存在であり、一方に肩入れするわけではありません。
しかし当然、人間としての好感や嫌悪感を抱くのも事実です。
調停委員たちの心証を良くするのも、調停を有利に進めるうえで重要です。

調停委員には丁寧に接する

調停の進行役を担うのが調停委員です。 
調停委員に対して高圧的な態度を取ると、話し合いが進まず、結果的に自分に不利な展開になる可能性があります。 
たとえ相手側の主張に納得できない場面でも、礼儀ある対応を心がけましょう。

調停の記録は自分でも残す

調停は複数回にわたって行われるのが一般的です。
自分自身でも、できる限り毎回のやりとりを記録してください。
調停の内容をノートにまとめたり、話し合いで合意した内容を書き留めたりすれば、次回以降の方針が立てやすくなります。
相手側の主張が変わったときにも、過去の記録があれば主張の矛盾を指摘できるかもしれません。

調停中の言動には注意する

調停の場だけでなく、その前後の言動にも注意が必要です。 
たとえばSNSで相手を非難するような投稿をしたり、感情的なLINEを送ったりすると、その内容が調停に持ち出される可能性があります。
子どもが関わる離婚の場合、親としてのふるまいも評価の対象になるため、節度ある行動が求められます。

弁護士に依頼すべきかの判断ポイント

離婚調停は自分だけでも対応可能ですが、状況によっては弁護士への依頼を検討する価値があります。
たとえば、以下のようなケースです。

  • 相手が弁護士を立てている
  • 複雑な財産分与や借金問題がある
  • DVや精神的虐待を受けている
  • 親権や面会交流について争いがある
  • 精神的に不安定で自分では交渉が難しい

弁護士に依頼すれば、調停への同行だけでなく書類作成や主張の整理も任せられるため、心理的な負担が軽くなります。

まとめ

調停は法的な手続きでありながら、個人のふるまいなどで結果が変わる可能性もあります。 
証拠の整理を徹底し、当日は冷静な対応を心がけてください。
自分だけで対応できない場合は、早めに弁護士へ相談するのがおすすめです。

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