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コラムカテゴリー: 相続

弁護士に相続人の調査を依頼するメリット

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相続が発生したとき、すべての相続人を把握しなければ手続きを進められません。
相続人の調査は自ら行うこともできますが、専門家へ依頼することも可能です。
この記事では、相続人の調査を弁護士へ依頼するメリットについて解説します。

相続人の調査とは

相続税の計算や、相続した不動産の名義変更をする際には、相続人を把握しておく必要があります。
相続人の人数によって相続税の基礎控除額が変わったり、相続登記の際に相続人全員の書類が必要になったりするためです。

相続人に該当する人

故人の財産を相続できる人は法律によって決められています。
遺言書がない限り、故人の配偶者と子どもが法定相続人です。
故人に子どもがいない場合は、故人の両親や祖父母が故人の配偶者とともに相続人になります。
両親などもいない場合には、故人の兄弟姉妹が相続人になります。

相続人の調査方法

相続人の調査は、故人の出生時から亡くなったときまでの戸籍謄本を途切れることなく調べる方法で行います。
これにより、故人に生き別れた子どもや認知した子ども、養子などがいないか確認できます。
戸籍は引っ越しや結婚などによって新しく作られることがあるため、故人の生活スタイルによっては調べる戸籍謄本の数が非常に多くなります。

相続人調査を弁護士に依頼するメリット

相続人の調査を弁護士へ依頼することで、手間をかけず、正確に調査できます。
手続きが進んだあとに新たな相続人が現れると、手続きを最初からやり直さなければいけなくなります。
見落としがないよう、調査は慎重に行わなければいけません。

もれなく正確に調査できる

弁護士に依頼することで、相続人の見落としを防げます。
調査に慣れていないと、戸籍に記載された養子縁組や認知の表記を見落としてしまうことがあります。
戸籍に記載される内容の一部は、戸籍を新しくした際に記載されなくなります。
一度見落としてしまうとその後も見落としたままになってしまうため、専門家へ依頼すると安心です。

とくにデジタル化される前の戸籍は、現在の戸籍と形式が違ったり、手書きで作成されたりと、読み解くことが簡単ではありません。
さらに市町村合併により、古い戸籍の所在地がなくなっている可能性もあります。
弁護士であればそのような戸籍も探し出し、正しく読み解くことが可能です。

手間のかかる手続きを代行してもらえる

弁護士が手続きを代行することで、相続人の方々は時間を有効活用できます。
身近な方が亡くなると、相続だけでなくさまざまな対応が必要になります。
第三者に任せられる手続きを第三者へ任せることで、相続人の負担を軽減できます。
故人や相続人の戸籍謄本は誰でも取得できるわけではありませんが、弁護士であれば職務に必要な範囲内で取得できます。

相続人をすべて調査したあとは、法定相続情報一覧図を作成しておくと、相続に関するさまざまな手続きに役立ちます。
法定相続情報一覧図の作成も弁護士へ依頼することが可能です。
相続人自ら作成することも可能ですが、相続人の数が多いと手間がかかります。
記載内容に不足があると相続の手続きに利用できないこともあるため、弁護士に依頼すると安心です。

トラブルに発展したとき、スムーズに対応を依頼できる

財産が多い場合や、不動産など分けることが難しい財産がある場合、相続の手続きを進める過程でトラブルが発生することもあります。
トラブルを個人間で解決することは難しく、弁護士に解決を依頼した方が良いケースも少なくありません。
相続手続きの初期段階から弁護士に依頼しておくことで、トラブルが発生した際にすぐに対応できます。

たとえば遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分け方を決定します。
このとき不動産のような分割しにくい財産があると、協議が難航することもあります。
遺産の適正な分け方を判断することは難しく、分け方に納得できない相続人が現れると、協議はまとまりません。
協議をまとめるためには交渉が必要ですが、直接交渉すると、その後の親族関係に影響を与えてしまうこともあります。
このようなときに弁護士に対応を依頼することで、弁護士を代理人として法的な根拠をもとに交渉可能です。
トラブルが深刻化してからではなく、早めに依頼すると、こじれる前に対応できます。

まとめ

この記事では、相続人の調査を弁護士に依頼するメリットについて解説しました。
相続人の調査は自分で行うことも可能ですが、手間がかかったり、見落としが発生したりすることもあります。
しかし弁護士に依頼することで、限られた時間の中で正確に調査することが可能です。
とくに故人に離婚歴があったり、引っ越しが多かったりする場合には、弁護士に依頼すると安心です。
弁護士には相続人の調査だけでなく、相続にまつわるさまざまなトラブルの相談も可能です。
相続の問題は弁護士までご相談ください。

相続人調査は自分でできるの?手順と注意点

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相続が発生したときには、相続人の調査が必要です。
たとえ相続人をすべて把握しているつもりでいても、被相続人に生き別れた子どもや養子がいることもあります。
この記事では、相続人の調査を自分で行うときの手順と注意点を解説します。

相続人調査

相続が発生した際には、相続人に該当する人をすべて把握するため、調査を行わなければいけません。
相続税額の計算や、相続財産の分割について協議する際に、すべての法定相続人を把握しておく必要があるためです。

相続人を把握する必要性

相続税には基礎控除があり、その額は法定相続人の数によって変わります。
法定相続人が多いほど控除額は大きくなり、納めるべき相続税額が低くなります。
遺産の分割について相続人同士で協議する際には、法定相続人全員が協議に参加する必要があります。
全員が参加していない協議は無効となり、再度全員で協議を行わなければいけません。
さらに被相続人の所有していた不動産の名義変更を行うときや、預金の払い戻しを受ける際にも、相続人全員の同意を得る必要があります。

存在を知らなかった相続人が発覚することもある

すべての相続人を把握しているつもりでいても、実際に調査を行うと、認識していなかった相続人に気付くことがあります。
たとえば被相続人に離婚歴があり、元配偶者との間に子どもがいた場合、たとえその子どもと連絡を取っていなかったとしても、その子どもは法定相続人になります。
そのほか、認知した子や、養子縁組した子どもも法定相続人です。
相続調査では、こうした相続人を漏れなく把握しなければいけません。

相続人の調査と注意点

相続人の調査は、被相続人が生まれてから亡くなるまでの、戸籍をすべて調べる方法で行います。
戸籍は結婚や離婚、引っ越しの際に新しく作成されることがあります。
新しい戸籍が作成されたとき、前の戸籍に記載されていた内容の一部が記載されなくなることもあるため、調査の際には全戸籍を途切れることなく確認しなければいけません。
調査は弁護士などへ依頼することも可能ですが、相続人ご自身で行うことも可能です。

調査方法

優先的に法定相続人となるのは、配偶者と被相続人の子どもです。
そのため、まずは被相続人に子どもがいないか確認しなければいけません。
子どもがいない場合には被相続人の親や祖父母が、親・祖父母がいない場合は兄弟姉妹が、被相続人の配偶者と共に相続人になります。

調査は、被相続人の最後の戸籍から出生時の戸籍までを、途切れることなくさかのぼる方法で行います。
まず、被相続人の最後の本籍地にある役場で戸籍を取得します。
取得した戸籍には、そのひとつ前の戸籍の情報が記載されています。
その情報をもとに、ひとつ前の戸籍を取り寄せることが可能です。
これを繰り返し、故人の出生時の戸籍までさかのぼります。
すべての戸籍を取り寄せ、子どもや養子がいないか確認することで、相続人を特定できます。

調査の際には相続人を見落とさないよう注意する

調査において大切なことは、相続人を見落とさないことです。
そのためには、戸籍を正しく読み解く必要があります。

現在の戸籍は電子的に作成されていますが、古い戸籍(原戸籍)は手書きで作成されているものもあります。
記載内容や形式も現在の戸籍と異なっている部分があるため、丁寧に読み解かなければいけません。
市町村合併などにより、戸籍に記載されている「ひとつ前の本籍地」の市町村が消滅していることもあります。
戸籍を取り寄せる際は、合併後の市町村を探し出し、対応してください。

また、戸籍に記載されている情報を見落とさないことも重要です。
たとえば子どもを認知したとき、戸籍の身分事項欄には認知した事実が記載されます。
その後、本籍地を移すなど新しい戸籍を作成した際には、認知の情報が記載されなくなります。
しかし記載がなくなっても、認知した子どもがいる事実は変わりません。
忘れずに相続人に含める必要があります。

代襲相続に注意する

被相続人に子どもがおり、その子どもが先に亡くなっている場合は、子どもの子ども(被相続人の孫)が親の代わりに相続人になります。
これを代襲相続といいます。

代襲相続が発生している場合、相続の手続きを行ううえで、亡くなった子どもの出生時から亡くなるまでの戸籍も必要です。
亡くなった子どもの子ども全員が代襲相続人となるため、被相続人の相続人調査と同じように、戸籍から相続人に間違いがないことを示さなければいけません。

まとめ

この記事では、相続人調査を行うときの方法と注意点について解説しました。
相続人調査は、被相続人の出生時から亡くなるまでの戸籍をすべて調べる方法で行います。
また、相続人ご自身での調査も可能です。
しかし故人が結婚や離婚、引っ越しなどを繰り返していた場合、調査する戸籍も多くなり、手間や時間がかかります。
迅速かつ正確に相続人調査を行うには、弁護士などの専門家までご相談ください。

家族に遺産を相続させたくない場合の対処法を詳しく解説

相続

家族関係の悪化や遺産を特定の人に譲りたいなど、さまざまな理由から家族に遺産を相続させたくないと考える方もいらっしゃるかもしれません。
遺産相続における基本的な法律の知識を得ることで、どのような方法を選ぶべきか、自身の望む相続を実現する方法がわかります。
本記事では、家族に遺産を相続させたくない場合の対処法について、具体的な手段を取り上げながら解説します。

相続の基本と家族の法定相続権

まず初めに、相続の基本となる家族の法定相続権について説明します。

家族には一定の相続権がある

結論から言うと、遺産を相続させたくないからと言って、一方的にその人の相続権を奪うことはできません。
なぜなら、家族には一定の相続権があるからです。
民法では、亡くなった人(被相続人)の財産を相続できる人が定められており、この相続権を持つ人(法定相続人)は配偶者、子、親、被相続人の兄弟姉妹と規定されています。
また、相続権には優先順位があり、常に相続人となる配偶者以外では第1順位として子が優先され、次に親、兄弟姉妹と続きます。
相続制度は、被相続人の意思を尊重する一方で、相続人の生活を保障するという目的も兼ね備えているため、被相続人が一方的に相続人の相続権を奪うことはできません。

遺留分を侵害することはできない

遺留分とは、民法で定められた相続財産の一部を、法定相続人(兄弟姉妹を除く)が最低限相続できる割合です。
これは遺族の生活を保障するために定められた制度で、仮に長男に一銭も相続させたくないと考えたとしても、最低限保障されている遺留分を侵害することはできません。

遺産を家族に相続させたくない場合の対処法

それでは、具体的に遺産を家族に相続させたくない場合の対処法について1つずつ解説していきます。

遺言書を作成する

遺言書は、財産をどのように分配するか自身の意思を明示するもので、民法上では相続人に含まれない内縁関係の人、血縁関係のない人などに遺産を分配することができます。
これを遺言相続と呼び、遺言書が存在する場合は法定相続分に優先して記載の割合で分配されるため、相続させたくない相手には相続をしない旨を明示することができます。
ただし、先述した通り法定相続人(兄弟姉妹を除く)には遺留分が認められているため、遺留分侵害請求を申し立てられれば、全く相続させないということはできません。
あらかじめ、遺留分に相当する額を相続するとしておくことが有効でしょう。

生前贈与を活用する

生前贈与としての遺贈(遺言書によって財産を相続人以外の個人や団体に譲り渡すこと)や死因贈与(贈与者が死亡したときに財産を特定の人へ渡すこと)により、遺産を第三者などに譲り渡す方法もあります。
ただし、遺言相続の場合と同様、法定相続人には遺留分が認められているため、兄弟姉妹を除く法定相続人の相続分を完全にゼロとすることはできません。

家族信託を活用する

家族信託とは、信託法に基づいて信頼できる家族に財産を託し、老後の生活や介護に必要な資金を管理するなどの目的に応じて財産を運用、処分を任せる制度です。
自分が亡くなったときに財産を受け継ぐ人を指定することができるだけではなく、遺言相続とは異なり、さらに次の相続先を指定しておくことも可能です。
たとえば、自身が死亡した際は財産を後妻へ相続させ、後妻が亡くなった後は前妻との間に生まれた息子に引き継がせるようにすれば、自分とは血縁関係のない後妻の家族などに財産を渡さずに済みます。
ただし、家族信託で設定された受益権が遺留分に含まれることがあります。
財産を預ける人を「委託者」、預かる人を「受託者」と呼び、委託者は信託財産から利益を受け取る「受益権」を有しますが、受益権を委託者ではない人に設定するとみなし相続財産と判断され、著しく金額が大きい場合には遺留分の計算に含めなければならない可能性があります。

相続人を廃除する

遺産を相続させたくない相続人の相続権を奪う方法として、相続廃除という方法があります。
ただし、この方法は家庭差番所への申し立てによって強制的に相続権をはく奪する制度なので、次のような要件を満たす必要があります。

・被相続人に対して虐待をした
・被相続人に対して重大な侮辱を加えた
・被相続人の財産を不当に処分した

したがって、「長男は自分の面倒をみてくれないから相続させたくない」といった程度の理由では相続廃除することはできません。
相続廃除を行うには生前に家庭裁判所へ申し立てる方法と、遺言に記載しておき、遺言執行者によって申し立てを行う方法とがあります。

まとめ

遺産を家族に相続させたくない場合の方法について解説しました。
遺産相続に関するトラブルを防ぐために、相続についての基本的な知識を身につけ、早めの対策をとることが重要です。
自分の意向を実現するために適切な手段を選ぶ必要がありますが、必要に応じて弁護士などの専門家に相談することでスムーズな相続を行うことができるのではないでしょうか。

代襲相続が発生するタイミングとは?条件や注意点を徹底解説

相続

昨今、高齢化や家族構成の変化により、代襲相続が関わるケースが増えています。
相続における「代襲相続」とは、財産を相続するべき人が相続の開始前に死亡した場合、代わりにその相続人の子や孫が財産を相続する制度です。
本記事では、代襲相続が発生する具体的なタイミングや条件、注意点について解説します。

代襲相続とは

代襲相続とは亡くなった人(被相続人)の財産を相続するはずだった人(法定相続人)が先に死亡している場合、または何らかの理由により相続する権利を失っている場合に、その財産を相続するはずだった人の子(被相続人の孫)が代わって相続する仕組みです。
民法に基づいた制度であり、法定相続人に代わって相続権を継承します。

代襲相続が発生するタイミング

代襲相続が発生するタイミングとして、以下の3つの場合があります。

  1. 被相続人の子が死亡している場合
  2. 被相続人の兄弟姉妹が死亡している場合
  3. 法定相続人が欠格または廃除された場合

1.被相続人の子が死亡している場合

相続順位として第1順位である被相続人の子(法定相続人)が相続開始前に死亡していた場合、その法定相続人の子や孫が財産を代襲相続します。
たとえば、被相続人が死亡した時点で長男がすでに死亡していた場合は、長男の子や孫が代襲相続人となります。
死亡した相続人の子や孫(直系卑属)については何代でも代襲相続が発生し、仮に死亡した相続人の孫が亡くなっていた場合は、そのまた子である相続人のひ孫が代襲相続することになります。

2.被相続人の兄弟姉妹が死亡している場合

被相続人に配偶者や子がなく、相続順位として第2順位である父母も他界していた場合、第3順位である兄弟姉妹が相続人となりますが、その兄弟姉妹も死亡していた場合はその子(被相続人の甥姪)が代襲相続人となります。
ただし、直系卑属の場合と異なり、兄弟姉妹の子に関しては何代も代襲相続が続くわけではなく、被相続人の甥姪が死亡していた場合は代襲相続は発生しません。

3.相続人が欠格または廃除された場合

欠格または廃除とは、ともに相続する権利を失った状態のことを指しますが、相続欠格は遺産を不正に入手するための不法行為や犯罪などがあった場合に強制的に相続権をはく奪された状態を言い、相続廃除については、被相続人を虐待したなどの非行があった場合に、家庭裁判所へ申し立てることによって相続権をはく奪された状態を指します。
このように、相続する権利を失った相続人がいた場合でも、本来の相続人の子などが代襲相続の対象となることがあります。

代襲相続で知っておくべき注意点

ここからは、代襲相続で知っておくべき注意点について説明します。

相続人が相続放棄した場合には代襲相続は発生しない

相続放棄とは、相続人が自ら財産を相続する権利を放棄するものであり、被相続人が借金などの負債を抱えていた場合は、その負債を引き継がないよう相続放棄を選択することができます。
財産を相続するはずであった人が生前に相続放棄していた場合、初めから相続人ではないとみなされるため、相続放棄をした人に子がいたとしても代襲相続は発生しません。

配偶者の連れ子は代襲相続の対象にならない

通常の相続では被相続人の配偶者は常に相続人となりますが、代襲相続は被相続人の直系卑属や甥姪が対象範囲です。
被相続人が再婚した相手に連れ子がいたとしても、連れ子との間に自動的に戸籍上の親子関係が生じるわけではないため、代襲相続の権利はありません。
ただし、その連れ子が養子縁組により被相続人と戸籍上の親子関係がある場合は、この限りではありません。

代襲相続と法定相続分

法定相続分とは、民法で定められているそれぞれの相続人が取得する相続財産の割合です。
代襲相続が発生した場合でも、通常の相続と同様に財産を相続するはずだった人の法定相続分を引き継ぎます。
たとえば、死亡した長男に子が2人いる場合、長男の相続分を2人で分割することになります。
ただし、遺言書がある場合はその内容が優先されるため、内容次第では代襲相続の発生が制限される可能性があります。

まとめ

代襲相続が発生するタイミングについて、条件や注意点を中心に解説しました。
代襲相続は、相続における重要な仕組みであり、条件や対象者を正確に理解することが求められます。
トラブルを防ぐためには、代襲相続の対象者や相続分を明確にする必要がありますが、法的な知識を必要するため、専門家への相談を活用して適切に対応することが望ましいでしょう。
代襲相続に関して不安なことがある場合は、早めに弁護士へ相談することもおすすめです。

孫に自己の財産を相続などにより渡す方法を解説

相続

自己の財産を孫に譲り渡したいというニーズがある場合があります。
しかし、遺産相続や贈与に関する手続きは法律や税制の影響を受けるため、事前の計画が欠かせません。
そこで、本記事では、孫に財産を相続などにより渡す方法を具体的に説明し、それに伴う注意点を詳しく解説します。

孫への遺産相続

孫に財産を譲り渡す手段として、孫への遺産相続があげられます。
孫への遺産相続は、さまざまな手段を用いて実現することができます。
以下が、孫へ遺産を相続する方法です。

遺言書による指定

孫へ遺産を相続する方法として、遺言において、財産の受取人を孫とする方法があげられます。
遺言書で孫を受取人に指定することが、孫に直接遺産を相続させる最も確実な方法です。
遺言書を作成することで、通常の法定相続人(配偶者や子)を介さずに孫を受取人として指定できます。
しかし、法定相続人が存在する場合は、法定相続分の遺留分を侵害しないような態様で、遺言を作成する必要があります。
遺留分は、法定相続人の相続分の3分の1もしくは2分の1です。
仮に、遺留分を侵害する態様で遺言を作成してしまうと、法定相続人から遺留分侵害請求をされてしまい、せっかく渡した財産の一部が法定相続人の元へ渡ってしまうからです。

孫と養子縁組を行う

次に、孫へ遺産を相続する方法として、孫と養子縁組を行う方法があります。
養子は、法律上親子関係を結ぶ制度です。
したがって、孫と養子縁組をすることにより、法律上、孫と親子関係になります。
そして、子は、配偶者と並んで、優先的に相続人となるため、孫と養子縁組することにより、孫を第一順位の相続人とすることができます。
しかし、孫を養子にすることにより、税制上の負担が生ずるため、注意が必要です。

その他の孫に財産を渡す方法

相続以外で孫に財産を渡す方法として、以下の方法があります。

生前贈与

生前贈与は、その名の通り、生きている間に孫に金銭を贈与する方法です。
生前贈与は、年間110万円まで相続税がかからないため、前々から計画的に行うことにより、効率よく孫に財産を渡すことができます。

教育資金贈与の非課税制度

教育資金贈与の非課税制度は、その名の通り、教育資金として、金銭を贈与する方法です。
祖父母が孫に対して教育資金を贈与する場合、1500万円まで非課税となります。
この制度を利用することで、教育費を孫に贈与しながら節税効果も得られます。

孫に財産を渡す際の注意点

孫に財産を渡す方法はさまざまありますが、これらの手段を使う際には注意点もあります。
注意点は以下の通りです。

税金の負担

孫に財産を渡す際の注意点として、税金の負担を考慮する点が挙げられます。
贈与や相続には、適切に計画しないと高額な税金が発生する可能性があり、かえって孫の負担になる場合があります。
したがって、あらかじめ、税金負担について考慮する必要があります。

遺留分の侵害

遺留分とは、相続の場合に、法定相続人を保護するために、相続財産の一定額を保証する制度をさします。
具体的な遺留分は、直系尊属のみが相続人である場合は相続財産の3分の1、その他の場合は2分の1に、各自の相続割合を乗じて算出します。
孫を受取人に指定する場合、他の法定相続人(配偶者や子)が遺留分侵害額請求を行うリスクがあります。
遺留分侵害請求がされると、孫に渡した財産が他の相続人に渡ることに加え、法定相続人と孫とのトラブルに発展しかねません。
したがって、遺言により財産を孫に渡す場合は、他の相続人を考慮した内容にする必要があります。

弁護士のアドバイスを受ける

孫に財産を渡す際には弁護士に相談するべきであるといえます。
弁護士に相談することで、法的トラブルを回避し、最適な方法で財産を移転できる可能性が高まります。
特に、相続関連の法律は複雑なため、より慎重に手続きを進めるには、弁護士からのアドバイスを受けるべきであるといえます。

まとめ

本記事では、孫に自己の財産を相続などにより渡す方法を解説しました。
自己の財産を孫に渡す方法はさまざまありますが、それぞれ注意点もあります。
したがって、孫への財産移転を検討している方は、弁護士に相談し、手続きを進めることをおすすめします。

特別受益とは?持ち戻しや計算方法について

特別受益

特別受益とは、相続において一部の相続人が亡くなった人から特別な利益を受けていた場合、その相続人が受けた利益のことを指します。
特別受益は相続財産の公平な分配を目的としたものですが、特別受益があった場合は遺産分割においてどのように計算したら良いのでしょうか。
本記事では、特別受益の概念や持ち戻しのルール、計算方法について詳しく解説します。

特別受益とは

特別受益とは、相続人の中に被相続人から住宅購入資金の援助や不動産の贈与など、多額の生前贈与を受けた者(特別受益者)がいる場合、その相続人が受けた贈与などの利益のことを指します。
利益を受けた相続人は先んじて相続分を受け取ったとして、その特別受益分を相続財産に加算した上で、改めて各相続人の相続分を算出します。
これを「特別受益の持戻し」と言います。
なお、特別受益は遺産分割において公平な分配を目的とするものなので、他の相続人も同じような利益を受けている場合には、その利益は特別受益として扱われないことがあります。

特別受益は相続人への贈与が対象

特別受益として持ち戻しの対象となる贈与は、被相続人から相続人への贈与のみです。
相続人の配偶者や子などに対して贈与があったことにより、間接的にその相続人が利益を得ていたとしても特別受益には該当しません。

特別受益に該当するもの

それでは、具体的に特別受益に該当するものには何があるのでしょうか。
実はその判断はとても難しく、一概には言えません。
民法では「婚姻もしくは養子縁組のためもしくは生計の資本として贈与を受けた」とされていますが、これはこの法律ができた当時の文化や慣習が反映されたものであり、核家族化が進んだ現在では、挙式費用や結納金などは社交上の出費とする考え方が一般的です。
実際には、それぞれの家庭の資産や収入の状況、他の相続人とのバランスを考慮し、財産の前渡しかどうかという点で判断されます。
特別受益に該当する贈与の例として、3つご紹介しておきましょう。

1.生前贈与

生前贈与は、生前に行われた贈与を指します。
先述したように、生前贈与のすべてが特別受益に該当するわけではなく、扶養者として支払う範囲を超える多額の贈与は、特別受益とみなされる傾向にあると言えます。
例として、以下のようなものがあります。

・住宅購入資金
・開業資金

2.死因贈与

死因贈与とは、生前に財産を譲る相手を決めた上で、受け取る相手と交わす契約です。
契約なので受け取る相手との合意が必要ですが、合意があれば法定相続人でもそれ以外の第三者でも財産を受け取ることができます。
受け取る相手が法定相続人であった場合、特別受益に該当します。

3.遺贈

遺贈とは、故人の遺言書に基づき、その人の財産の一部または全部を遺言書に記された人や団体、施設などに無償で譲ることです。
この遺贈の対象が法定相続人であった場合は財産の前渡しとみなされ、特別受益にあたります。

(補足)生命保険金は原則として特別受益に該当しない

一部の相続人が被相続人の生命保険から支払われた保険金を受け取った場合でも、原則として特別受益には該当しないと考えられています。
生命保険金は、被保険者が死亡することにより保険会社などから支払われるものであり、故人がもともと所有していた財産ではないため、相続財産にはあたらないと考えられているからです。
ただし、受け取った保険金が高額であったり、その他の相続人が受け取った額と極端な差があったりした場合は、特別受益とみなされることがあるため注意が必要です。

特別受益を考慮した相続財産の計算方法

特別受益があった場合、特別受益分を相続財産へ加算(持ち戻し)、法定相続分に従って分割した後、特別受益者の相続分については特別受益分を差し引きます。

具体例

たとえば、相続財産が1億円あり、相続人が子A、子B、子Cの3人、子Aのみ生前贈与として2,000万円受け取っていたとします。
この場合、子B、子Cの相続分は次のようになります。

・(相続財産1億円+特別受益分2,000万円)×1/3=4,000万円

また、子Aの相続分については以下のようになります。

・(相続財産1億円+特別受益分2,000万円)×1/3-特別受益分2,000万円=2,000万円

持ち戻し免除の意思表示

被相続人が生前、持ち戻しを免除する意思を示していた場合、特別受益分を相続財産に加算せず、相続分を計算することができます。
これを「持戻し免除の意思表示」と言います。
持ち戻し免除の意思表示の方法については法律上の決まりはありませんが、遺言書にその旨を記載しておくのが一般的です。
ただし、特別受益が他の相続人の遺留分(最低限もらえる相続分)を侵害していた場合は、持ち戻し免除の意思表示があったとしても遺留分を請求することが可能です。

まとめ

特別受益は、相続において公平を保つために重要な制度であり、持ち戻しや計算方法を理解することでトラブルを防ぐことができます。
しかし、特別受益に該当するかどうかは判断が難しく、法的なアドバイスを受けることが重要です。
わからない点がある場合は弁護士への相談を検討してみてください。

遺留分とは?計算方法も併せて解説

遺留分

遺産相続の際に、他の相続人よりも相続できる額が少ないと感じる場合は、ご自身の「遺留分」を計算して侵害されているか否か確認されることをおすすめします。
この記事では、遺留分とは何なのか、また遺留分の計算方法も併せて解説します。

遺留分とは

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人が受け取れる遺産について、最低限保障されている相続分のことです。
遺留分は、故人の家族構成や故人から見て法定相続人がどの親族に該当するのかによって相続できる割合が異なります。

遺留分の割合

遺留分を算定するには、まずは法定相続人の遺留分割合を確認する必要があります。
遺留分割合とは、以下のように定められています。

  • 直系尊属のみが相続人である場合:相続財産の3分の1
  • 直系尊属以外の場合:相続財産の2分の1
  • 相続人が複数いる場合:法定相続分に上記の割合を乗じた割合


遺留分割合をわかりやすく解説したものが以下の表です。

相続人個別の法定相続人遺留分割合
配偶者子ども※1親※2兄弟姉妹
配偶者のみ2分の1
子どものみ※12分の1
親のみ※23分の1
配偶者と子ども4分の14分の1
配偶者と親3分の16分の1
配偶者と兄弟姉妹2分の1なし

※1:子どもの人数によって割合は異なります。
※2:親がいない場合は祖父母、祖父母がいない場合は曾祖父母が相続人です。

上記の遺留分割合を用いて個々の法定相続人の遺留分を算定します。

遺留分の計算方法

遺留分の計算は、以下の計算式で求めます。

(遺留分の基礎となる財産)+(生前贈与された財産)+(特別受益を受けた財産)-(負債)=遺留分

上記の計算内容について詳しくみていきましょう。

①遺留分算定の基礎となる遺産額を明確にする

まずは、遺留分算定の基礎となる被相続人の遺産をすべて洗い出して金額を算定します。
現金や預貯金は確認すれば金額はわかりますが、不動産や有価証券、骨董品などは評価額を算出しなければならず、正確な評価額を算出するには専門家の協力が必要です。

②生前贈与財産の遺産額を足す

遺留分の基礎となる財産に生前贈与の財産を加算します。
ただし、遺留分の基礎となる財産に加算できるのは、「相続開始前の1年間に生前贈与された財産」のみです。
また、相続開始前の1年間に「法定相続人以外の第三者」に生前贈与したものであっても遺留分の基礎となる財産に加算できます。
ただし、贈与者と受贈者の双方が、遺留分権利者に損害を与えることを知りながら贈与した場合は、1年前の日よりも前に行っていたとしても遺留分の基礎となる財産に加算できます。

③特別受益の総額を足す

「相続開始前10年以内に発生した特別受益の総額」も遺留分の基礎となる財産に足します。
特別受益とは、相続人の中に被相続人から遺贈や生前贈与、死因贈与によって特別な利益を得た者がいる場合に、その利益を得た贈与などのことを指します。

死因贈与とは、贈与者の生前中に受贈者との間で合意されたものであり、贈与者の死亡を条件に受贈者に財産が受贈されることです。
特別受益には、婚姻や養子縁組のために贈与された金銭や、子ども学費、生計を別にする子どもに対する生計の資本のために贈与した生活費や新築費用などが該当します。
以上のような特別受益をすべて洗い出し、遺留分の基礎となる財産に加算します。

ただし、特別受益に関して贈与者と受贈者の双方が、遺留分権利者に損害を与えることを知りながら特別受益を行った場合は、相続開始前の10年より前に行っていたとしても遺留分の基礎となる財産に加算できます。

④負債額を差し引く

遺留分には被相続人の負債額は含まれないため、遺留分の基礎となる財産や生前贈与、特別受益の総額から負債額の総額を差し引きます。
負債には、被相続人が生前中にした借金や未払金などのマイナス財産が該当します。

⑤遺留分の割合を掛けて個々の遺留分を計算する

遺留分の元になる遺産総額が分かれば、個々の遺留分割合を乗じて遺留分を計算します。

たとえば、被相続人と配偶者、子ども2人の4人家族で被相続人が亡くなった時点で1億円の遺産があった場合の遺留分は以下のように計算します。
このケースの遺留分割合は、配偶者(4分の1)、子どもA君(8分の1)、子どもB君(8分の1)となります。

  • 1億円×4分の1=2,500万円(配偶者の遺留分)
  • 1億円×8分の1=1,250万円(子どもA君の遺留分)
  • 1億円×8分の1=1,250万円(子どもB君の遺留分)

まとめ

今回は遺留分とは何か、また遺留分の計算方法も併せて解説しました。
遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人が相続する際に最低限保証されている相続分です。
たとえ第三者に生前贈与されていたことで法定相続人の遺留分を侵害されていた場合でも、条件を満たせば遺留分を請求できます。
遺留分に関して悩みや困りごとを抱えているのであれば、法律の専門家でもある弁護士に相談することをおすすめします。

法定相続人は誰?順位や割合について詳しく解説

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法定相続人は民法のルールにより順位や割合が決まっています。
法定相続人には配偶者、子・孫などの直系卑属、両親などの直系尊属、兄弟姉妹がいますが、被相続人が亡くなった時点で誰が存命しているのかにより、法定相続人となる人は異なります。
それぞれのパターンで法定相続人は誰になるのか、順位や割合について詳しく解説します。

法定相続人とは

人が亡くなった場合、親族の誰かが相続人になります。
亡くなった人の子どもが相続人になることはご存じの方も多いと思いますが、誰が相続人になるかは、民法により法定されています。
民法で決められている相続人のことを「法定相続人」と言います。

遺言がある場合法定相続人は考慮しなくて良い

遺産は原則として法定相続人が相続しますが、遺言がある場合は民法のルールに従う必要はありません。
遺言者(故人)が、遺産の譲受先を決めており、その相手が法定相続人であれば、「相続人」として、法定相続人以外の人ならば「受遺者」として遺産を譲り受けることができます。
ただ、民法で決められた法定相続人には、最低限の取り分である遺留分が認められており、この遺留分を超えた遺産の譲り受けがなされている場合は、法定相続人から受遺者等に対して遺留分侵害額請求がなされることがあります。

法定相続人の順位

法定相続人の順位は、配偶者とそれ以外の法定相続人とに分けて判断します。

まず、配偶者は常に法定相続人となります。注意したいのは、配偶者がいれば他の人は相続人になれないという意味ではなく、配偶者と共に順位に従って法定相続人になるという点です。
配偶者以外の法定相続人の順位は、直系卑属、直系尊属、兄弟姉妹の順になります。
具体的には法定相続人の順位は次のようになります。

第1順位:配偶者+直系卑属(子や孫、ひ孫など)
第2順位:配偶者+直系尊属(父母や祖父母など)
第3順位:配偶者+兄弟姉妹(亡くなっている場合は甥姪)

配偶者が存命していて直系卑属がいない場合は、配偶者と直系尊属。
直系卑属と直系尊属が全員いない場合は、配偶者と兄弟姉妹が法定相続人になります。
配偶者が亡くなっている場合は、直系卑属、直系尊属、兄弟姉妹の順になります。
子どもか孫が一人でも存命していれば、その人がすべての遺産を相続し、直系尊属、兄弟姉妹は無関係になります。

法定相続人の相続割合

法定相続人の相続割合は、法定相続人の組み合わせにより異なります。

配偶者+直系卑属の場合の相続割合

配偶者:2分の1
直系卑属:2分の1

配偶者は2分の1で固定されます。
一方、直系卑属は頭数で分配されます。
たとえば、子が三人兄弟であれば、一人あたり6分の1になります。

直系卑属のみ場合の相続割合

直系卑属:すべて

直系卑属のみが法定相続人の場合は、直系卑属がすべての遺産を相続します。
子が複数いる場合は、頭数で等しく分配します。
たとえば、子が三人兄弟であれば、一人あたり3分の1になります。

直系卑属に孫がいる場合

亡くなった人の子(孫から見て親)が存命している場合は、孫は法定相続人になりません。
子(孫から見て親)が亡くなっている場合は、孫が代襲して相続人となります。
孫が複数いる場合は、子の法定相続分を頭数で等しく割ります。

たとえば、子が三人兄弟で、そのうちの一人が亡くなっており、孫(亡くなった子の子ども)が二人いる場合は次のようになります。

子:一人あたり6分の1
孫:一人あたり12分の1

直系卑属の相続割合に関する注意点

直系卑属の相続割合についてはいくつか注意点があります。
まず、養子がいる場合は、養子も実子と同様に法定相続人になるということです。
子や孫が法定相続人の立場になる場合は、未成年や胎児であっても相続割合に代わりはないことに注意しましょう。
ただ、未成年や胎児は自ら権利主張することが難しいため、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらう必要があります。

配偶者+直系尊属の場合の相続割合

配偶者:3分の2
直系尊属:3分の1

配偶者は3分の2で固定されます。一方、直系尊属は頭数で分配されます。
亡くなった人の両親がどちらも存命していれば、それぞれ6分の1ずつです。
亡くなった人の両親のどちらかが存命している場合は、その祖父母は法定相続人になりません。

配偶者+兄弟姉妹の場合の相続割合

配偶者:4分の3
兄弟姉妹:4分の1

配偶者は4分の3で固定されます。一方、兄弟姉妹は頭数で分配されます。
亡くなった人が3人兄弟姉妹であれば、残りの2人で8分の1ずつになります。
兄弟姉妹が亡くなっている場合は、甥、姪に当たる人が代襲相続します。
甥、姪が複数いる場合は頭数で等しく割ります。

配偶者のみ場合の相続割合

配偶者:すべて

配偶者のみが法定相続人の場合は、配偶者がすべての遺産を相続します。

まとめ

民法に規定されている法定相続人の順位や割合について解説しました。
法定相続人を確定するにあたっては、戸籍謄本等の調査が必要になりますが、親族が多い場合は、実際に誰が法定相続人になるのか混乱しがちです。
分からない場合は、弁護士等の専門家に相談しましょう。

遺言とは?遺言書の種類と取り扱い時の注意点を解説

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遺言者が亡くなった後に財産をどのようにするのか、自分の意思を残すことを遺言と言い、紙に書き残したものが遺言書です。
この記事では、遺言書の種類について解説します。

遺言および遺言書とは

遺言とは、遺言者の保有財産を遺された遺族にどのように引き継いでもらうのかという遺言者の意思表示であり、その意思表示を紙に書き残したものが遺言書です。
遺言書を作成するにあたって、法律では以下のことを定めています。

  • 15歳になれば遺言書は作成できる
  • 遺言書を書くときには遺言内容を理解できる能力がなければならない
  • 遺言書の種類によっては決められた書き方、書く人、保管方法でなければ無効になることがある


遺言者が亡くなると基本的に遺言書の内容に従って遺産分割するため、できるだけ詳細に書くことが望ましいです。
そのため、遺言書を残せば遺産分割する際に相続人同士の争いを未然に回避する目的としても有効です。

遺言書の種類

遺言を残す方法として遺言書には以下の3種類あり、種類によって書く人や書き方、保管方法が異なります。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言


遺言書は死後に、遺言者の意思を確実に実現させる必要があるので法律で厳格に定められており、規定に違反している場合は無効になるので注意が必要です。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者がメモ用紙などの紙に自筆で書いて保管する方法で以下の規定があります。

  • 遺言者の自筆であること
  • 遺言書の全文を手書きすること
  • 日付、氏名、押印をすること


その他に、財産目録などはパソコンで作成しても良いですし、通帳などをコピーしたものを遺言書に添付しても構いません。

ただし、財産目録が記載されている個所には遺言者の署名・押印が必要です。
用紙の両面に財産目録を記載およびコピーしている場合は、両面に署名・押印が必要となり、署名・押印がなければ財産目録として認められず、無効になる可能性があるので注意してください。
保管方法は、遺言者自身で保管するか、法務省が行っている自筆証書遺言保管制度を利用して法務省で保管してもらう方法があります。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証人に書いてもらう遺言書であり、公証役場で20年間保管してもらえます。
公正証書遺言は以下の内容を厳守しなければ無効になるので注意してください。

  • 証人が2名以上必要であること
  • 公証役場で公証人に遺言書作成を依頼すること
  • 公証人が作成した遺言書を確認して、遺言者と証人の署名・押印をすること


公正証書遺言は遺言者自身で作成するのではなく、公証人が行うので法律的にも問題のないように作成してもらえます。
また、公正証書遺言は遺言者が亡くなるまで誰も遺言書を開封できないので、偽装・改ざん・破棄といった行為から遺言書を安全に守ることができます。

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、作成した遺言書を封筒に入れて密封し、公証役場で保管してもらう遺言書です。
以下の点に注意して作成する必要があります。

  • 遺言書に遺言者の署名・押印をすること
  • 遺言書は封筒に入れて密封して、遺言書と同じ印章で封印すること
  • 公証役場で保管手続きを行うこと
  • 証人が2名以上必要であること
  • 公証人に対して証人2名以上の前で遺言者の遺言書であることを述べること
  • 公証人が作成した封紙に遺言者と証人は署名・押印すること


秘密証書遺言は遺言者の自筆である必要はなく、パソコンや第三者に依頼して作成してもらっても構いません。
また、作成後には遺言者自身が密封するため、公証人も遺言内容を知ることはできず、遺言者が亡くなるまで誰も開封できないので安全に保管できます。

遺言書を取り扱う際の注意点

遺言書の種類によっては、家庭裁判所に「検認」の申し立てを行わなければ遺言書を開封できないので注意してください。
「検認」とは、遺言書が見つかった場合、誰かに偽造や変造をされないために家庭裁判所に申し立てて、裁判官に遺言書を確認してもらう手続きです。
遺言者の死後、遺言書を開封するための検認手続きが必要になるのは以下のケースです。

  • 自筆証書遺言保管制度を利用していない自筆証書遺言
  • 秘密証書遺言


例えば、遺言者の遺品整理をしていたときに自筆証書遺言が見つかったからといって、検認手続きを行わず、発見者や遺族が勝手に開封すると罰則が科せられるので注意してください。

まとめ

今回は、遺言書の種類について解説しました。
遺言書には3種類あり、それぞれ書き方や保管方法などが異なります。
自筆証書遺言は手続きなどが必要ないので手軽に作成できますが、自筆証書遺言保管制度を利用せず、自分で保管していた場合、万が一にも認知症のような精神疾患を患うと保管場所を忘れる恐れがあります。
また、法律的にも問題のない遺言書を作成するためには、公正証書遺言を利用するか、もしくは、法律の専門家でもある弁護士に依頼してサポートしてもらうことをおすすめします。

後から遺書書が見つかった場合の対処法

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遺産相続の際は遺言書の内容をもとに遺産を分割します。
では、遺言書が残されたことを知らず、遺産分割協議で取り決めた後に、遺言書が見つかった場合はどうすべきなのでしょうか。
今回は、後から遺言書が見つかった場合の対処法について解説します。

遺言書に有効期限はあるのか

民法では「遺言者が死亡したときから効力を生じる」とあるだけで、その期限については定められていません。
そのため遺言者が亡くなった後、何十年も経って見つかったとしても、その遺言書は有効とされます。

遺言書が見つかった場合の対処法

遺産分割協議後に遺言書が見つかった場合、実際にはどう対処したらいいのでしょうか。

遺言書が有効か確認する

まず、その遺言書が法的に有効なものかどうかを確認します。
遺言書には以下の3種類があります。

  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言
  • 自筆証書遺言


公正証書遺言は、公証役場の遺言検索システムですぐに見つけることができるので、遺産分割の後に見つかる可能性は低いと考えられます。
後から見つかる可能性が高いのは秘密証書遺言と自宅で保管されていた自筆証書遺言になります。
この2つは、家庭裁判所で「検認」する必要があります。

検認とは、見つかった遺言書がどんな状態であったかの確認をするもので、形状や加筆・訂正などの状態や、日付・署名などの内容を明確にするものです。
また、それと同時に遺言書の存在と内容が相続人に知らされることになります。
検認は遺言書の有効無効を判断するものではないので、有効性が疑われる場合は、弁護士などの専門家にチェックしてもらう必要があります。

遺言書が有効だった場合

遺産分割協議が終わっていても、遺言書が有効であれば、その協議は無効になります。
遺言書の内容をもとに、遺産分割を再度やり直す必要があります。
ただし、相続人全員の合意があれば、遺産分割協議を優先させることも可能です。
遺言の内容と遺産分割協議の内容にあまり違いがない場合などは、全員の合意が得られる可能性が高く、再分割しなくて済みます。

遺産分割のやり直しをしなければいけないケースとは

相続人全員の合意があっても、次のような場合は、遺産分割をやり直さなければいけません。

遺言に遺言執行者が指定されている

遺言執行人の役目は遺言を実現させることなので、指定されている場合は遺言の内容に従う必要があります。
ただし、遺言執行者からも合意を得ることができれば、分割をやり直さなくてもいい可能性があります。

遺言に法定相続人以外に遺贈することが示されていた場合

法定相続人以外に遺贈することが記されていた場合も遺産分割をやり直す必要があります。
また、遺言があることを知らずに相続放棄をしていたのに、遺言に多額の財産を譲ると書いてあった場合、相続放棄をしていても財産を受け取ることが可能です。
遺言により財産を譲るのは「遺贈」になり、遺贈の相手は法定相続人でも、それ以外でも指定することができます。
相続放棄は相続を放棄しただけで、遺贈を放棄したわけではないので、受け取ることができるのです。
この場合も、相続人の人数に変更が出るため、遺産分割のやり直しをすることになります。

遺言書を相続人が隠していた場合

遺言書の内容が自分に不利だと知った相続人の1人が遺言書をわざと隠していた場合、その相続人は民法により相続する資格を失います。
そのため、遺産分割を再度やり直す必要が出てきます。

再分割が難しい場合

遺言書の内容をもとに再分割しなくてはいけなくなった場合、それが難しいことがあります。
相続した遺産の現金をすでに使っていたり、不動産を手放していたりしたら、遺産分割協議の時点と同じ状況で再分割をすることは不可能です。
このような場合は、相続人全員が合意できるよう様々な方法を考えていく必要があります。

まとめ

今回は後から遺書が見つかった場合の対処法について解説しました。
家族が亡くなっても、すぐに遺品の整理をしないことはよくあるため、しばらくしてから遺言が見つかることも珍しくありません。
数年後などに見つかればまだしも、何十年も経ってからでは、相続人が代替わりしている可能性もあるのでトラブルが起こりやすくなります。
また、遺言書の内容によっては、相続人から不満が出ることもあるので、トラブルになりそうな場合は弁護士に相談することをおすすめします。

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