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コラムカテゴリー: 債務整理

官報に載るとどうなる?掲載内容とその影響

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個人再生や自己破産を行うと、その情報が官報に掲載されます。
官報は誰でも見ることができ、破産に関する情報は掲載拒否もできません。
この記事では、官報に掲載される内容や、その影響について解説します。

官報とは

官報とは、国の法令や公示事項を掲載し、周知するための国の広報誌です。
行政機関の休日を除いた毎日午前8時30分に、官報発行サイトへ掲載されることによって発行されます。
書面での交付を希望する場合には、各都道府県の官報サービスセンターなどへ申し込むことも可能です。
通常発行される本紙のほか、国会会議録や政府調達公告が掲載された号外が発行されることもあります。
発行から90日間は全体を無料で閲覧・ダウンロードできますが、それ以降は一部の記事が公開終了となります。

官報への掲載

官報には政府や各府省庁などが公布する文書や、国などからの告知が掲載されます。
そのほか、会社や裁判所などが重要事項を広く通知する際にも利用されます。
たとえば自己破産や個人再生を行った際には、破産手続きが開始されることを官報によって広く告知します。
これは個人が破産した事実を見せしめのように示すためではなく、その人へお金を貸した債権者がもれなく手続きに参加できるようにするためです。
このように、個人を特定できる内容が掲載されることもあります。

官報に掲載される個人情報とその影響

たとえば人事異動や褒章授与などに際して、名前が掲載されることがあります。
そのほか、破産手続きや処分などネガティブな内容に関しても、個人情報を掲載されることがあります。

破産手続きにより掲載される内容

たとえば自己破産の手続き開始によって官報に掲載される内容は次の通りです。

  • 事件番号
  • 住所
  • 氏名
  • 手続き開始が決まった日時
  • 手続き開始の理由
  • 免責意見申述期間
  • 手続きを行う裁判所の名前

破産を知られたくないからといって掲載を拒否することはできません。
ただし掲載内容に誤りがある場合には訂正可能です。
破産手続きを行うと、破産手続き開始時や破産が認められたときなど、個人情報が複数回掲載されます。

官報に掲載される影響

官報は発行後90日間であれば誰でも無料で閲覧可能です。
しかし官報に個人情報が掲載されたからといって、大きな影響はないと考えられます。

まず、知人や会社に対する影響についてです。
一部の職業の方以外、官報を毎日くまなく確認することは、ほぼありません。
自分の知り合いや家族が官報を毎日閲覧している可能性は低く、掲載されたことにも気付かれないことがほとんどです。
金融機関や信用情報機関などの職員は、官報を確認することもあります。
しかし毎日多くの情報が掲載されている官報から、偶然知り合いの情報を見つける可能性は低いと言えます。
このように、官報に個人情報が掲載されたとしても、知人や会社に対する影響は少ないと考えられます。

しかし破産の事実が公になることで、悪質な業者に目をつけられてしまうリスクがあります。
たとえば自己破産すると、クレジットカードが利用できなくなったり、新たな借り入れが難しくなったりします。
破産手続きが開始されたばかりの方は金銭的に困っていても、どうにかすることが簡単ではありません。
そのような方々を狙い、法外な利息で現金を貸し付ける悪質な業者も存在します。
官報に掲載された情報がデータベース化され、それをもとに悪質な勧誘を受けることがあるため、注意が必要です。

個人情報の保護が強化された影響

官報は2025年4月より電子化され、同時に個人情報の保護も強化されました。
掲載される情報のうち、裁判所公告などプライバシーに配慮が必要な情報は、記事を画像化することで、テキスト抽出やテキスト検索が困難になっています。
公開期間も90日に限定され、それ以降は当該記事の閲覧やダウンロードもできません。

プライバシーへの配慮が必要な記事は、官報情報検索サービスによって記事検索することもできなくなりました。
そのため破産情報などを探す際には、ひと記事ずつ目視で調べることになります。
これにより、今まで以上に破産などの情報を他人に知られる可能性が低くなりました。
破産などの情報が悪質な業者に利用される可能性が少なくなる半面、金融機関などの与信調査に影響を与える可能性もあります。

まとめ

この記事では、官報に掲載される内容とその影響について解説しました。
官報には法律や政令など国や各省庁が広く国民に伝えたい内容や、企業や裁判所などが知らせたい内容が掲載されます。
個人の破産に関しては、氏名や住所といった個人情報も掲載されます。
無料で誰でも閲覧できるため、破産の情報が他人に知られてしまうリスクがあります。
しかし官報を日頃から確認している人は多くなく、その影響は限定的です。
債務整理などによって掲載されることに不安がある方は、弁護士までご相談ください。

自己破産できない場合もある?できない条件をわかりやすく解説

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借金がふくらんで返済が難しくなったとき、自己破産を行うと、返済を免除してもらえる可能性があります。
しかしお金を貸した側が損をするため、無条件に認めてもらえるわけではありません。
この記事では、自己破産ができない条件を解説します。

自己破産とは

自己破産とは債務整理の一種です。
裁判所に破産手続きの申し立てを行い、借金の返済を免除してもらいます。
生活に必要な最低限の財産以外はすべて差し押さえられ、現金に換えられて、お金を貸した人(債権者)へ平等に分配されます。
その後、返済しきれなかった借金について返済の免除が認められると、残った借金を返済する必要がなくなります。

自己破産するには、裁判所に破産や返済の免除を認めてもらわなければいけません。
場合によっては申し立てが却下されたり、返済の免除が認められない場合もあります。

自己破産できない条件

自己破産できない条件は以下の通りです。

  • 借金の返済が不可能とはいえない
  • 借金を作った理由が免責不許可事由に該当する
  • 予納金が支払えない

そのほか、自己破産により業務が行えなくなる職種や、自己破産しても支払いが免除されない債務もあります。

借金の返済が不可能とは言えない

借金の返済が不可能とは言えない場合、自己破産は認められません。
「一時的に失業していて返済が苦しい」といった理由だけでは、認められない可能性があります。
収入だけでなく、預貯金や所有している財産すべてを考慮しても、どうしても完済できる見通しが立たない状況でなければいけません。

そのため借金総額が少額の場合には、返済が困難であると認められないこともあります。
ただし、働くことが困難であり収入の目途が立たないなど、本人にとって返済が難しい金額であると証明できるのであれば、少額でも自己破産は可能です。
一般的には、借金の総額が年収の3分の1を超過していると認められやすくなります。

免責不許可事由に該当している

借金を負った理由に問題がある場合や、手続きに際して問題行動をとった場合には、返済の免除(免責)を認めてもらえない可能性があります。

たとえば、自分の収入を超える金額をギャンブルや趣味などに使用し、結果として借金を増やした場合には、免責が認められません。
そのほか、借金の返済が困難であるとわかっていながら借金を繰り返すなど、自分の利益のために債権者へ損害を与える行為を行っていた場合には、免責を認めてもらえない可能性が高くなります。
また、破産手続きを行うにあたり、自分の所有する財産を少なく申告するなど虚偽の情報を提出した場合にも、免責は認められません。

ただし免責不許可事由に該当していても、深く反省し、生活を立て直したいという姿勢が見える場合には、裁判所の判断により免責が認められることもあります。
自己破産を認めてもらうには、裁判所の調査を妨害したり指示に従わなかったりせず、手続きに協力的な姿勢をみせることが大切です。

ただし、これまでに自己破産や個人再生の経験がある場合、前回の免責から7年を超えていない場合には免責が認められません。
たとえ7年経過していたとしても、2回目以降は1回目よりも厳しく審理されます。
そのため、2回目以降の免責は認められづらくなります。

予納金が支払えない

予納金を支払えない場合には、破産手続きの申請ができません。
自己破産の手続きには費用がかかり、申し立ての際に裁判所へ前払いする必要があります。
所有する財産を現金に換えて、債権者へ分配する手続きをとる場合には、20万円以上の予納金が必要です。
所有する財産がほとんどなく、現金に換えて分配する手続きを行わない場合には、数万円の予納金を支払います。

そのほか自己破産ができない条件

特定の職業では、自己破産手続き中はその資格を行使できなくなります。
次のような職業が該当します。

  • 警備員
  • 宅建士
  • 公証人
  • 税理士

これらの職業は破産手続きが開始された際に届け出を行う必要があり、それによって資格の登録が取り消されます。
その後、免責が認められると、再びその資格の登録が可能になり、業務を再開できるようになります。
また、債務のなかには、支払いが免除されない債務もあります。

  • 税金
  • 健康保険料
  • 損害賠償
  • 雇用していた従業員の給料
  • 養育費

これらは免責の対象にならないため、破産後も支払い続けなければいけません。
この条件を総合的に考え、自己破産が適切かどうか判断する必要があります。

まとめ

この記事では、自己破産できない条件について解説しました。
自己破産は返済の目途がたたない状況でなければできません。
また、手続きに非協力的な場合は、返済の免除が認められない可能性もあります。
そのほか、破産の手続き中に資格を失う職業や、支払いが免除されない債務も存在します。
自己破産が適切かどうかの判断は、専門家である弁護士までご相談ください。

個人再生の手続きと流れを詳しく解説

債務整理

個人再生は債務整理の一種であり、借金返済の負担を大幅に軽減できる手続きです。
また、家を守りながら借金整理を進めたい人にとっては有効な選択肢となります。
本記事では、個人再生の手続きと流れについて詳しく解説します。

個人再生とは

個人再生とは、裁判手続きを利用した債務整理の一種で、借金の返済が困難になった場合に、全ての債権者に対する借金総額を減額し、その減額後の金額を原則として3年間で分割返済する計画を立てる手続きです。
この計画は、債権者の意見を考慮したうえで裁判所が認めた場合に実行され、計画通りに返済を進めることで、養育費や税金など一部を除く残りの債務が大幅に免除されるというメリットがあります。
また、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用することで、住宅ローンを継続して返済し、住宅を処分されないようにすることができます。
ただし、任意整理と異なり、すべての債務が手続きの対象となるため、車やバイクのローンが残っている場合は手放さなければならない可能性があります。
また、信用情報に個人再生の手続きを行ったことが登録されてしまうため、約5~10年間はクレジットカードの新規作成や新たな借り入れができなくなるというデメリットもあります。

個人再生の種類と利用条件

個人再生の手続きには、次の2種類があります。

A.小規模個人再生
B.給与所得者等再生

「小規模個人再生」は主に個人商店や個人事業主を対象とした手続きで、利用条件として負債総額(住宅ローンを除く)が5000万円以下であること、将来的に安定した収入の見込みがあることとなっています。
また、「給与所得者等再生」は一般的に会社員などのサラリーマンを対象としており、Aの条件に加えて収入が給料などで、その金額が安定していることなどがあります。
この2つの違いは、返済していく金額を決める基準と、債権者の同意の有無です。

個人再生手続きの流れ

それでは、個人再生の具体的な手続きと流れについて解説します。
手続きは裁判所を通じて行われますが、裁判所が定めた期間内に行う必要があり、積極的に財産状況を公開しなければならないなど手続きを主体的に進める必要があるため、多くは弁護士に依頼します。

1.受任

受任通知(債務整理について弁護士が介入したことを知らせるもの)をそれぞれの債権者へ発送し、以後の取り立てや返済を停止します。
また、受任通知と同時に取引履歴の開示請求を行い、債権の金額や内容を確認します。

2.債務状況の調査

債務や資産の状況を調査し、取引履歴をもとに借金の額を確定します。
このとき、過払い金が発生している場合は過払い金の返還請求を行います。

3.必要書類の準備と裁判所への申し立て

必要な書類は資産状況などによって異なりますが、おおむね次の通りです。

・申立書
・陳述書
・債権者の一覧表
・添付書類(給与明細、源泉徴収票、財産目録、戸籍謄本、住民票など)

申立書については、収集した書類をもとに弁護士が作成します。
申立書を居住している地域を管轄する裁判所へ提出し、同時に住宅ローン特則の利用希望があれば、その旨も申請します。

4.個人再生委員の選任と再生手続き開始決定

申し立て後、個人再生委員が選任されます。
個人再生委員が選任されるかどうかは裁判所によって異なりますが、手続きに精通した弁護士が選ばれ、債務者の収入や財産を調査したり、再生計画案の作成について必要なサポートをしたりします。
個人再生委員との面談や、再生計画の通りに返済が可能かどうかのテスト(履行テスト)を行った後、個人再生委員の意見を踏まえた上で裁判所が再生手続きの開始を決定します。

5.再生計画案の作成と提出

債権者や財産の変動などを調査し、債権額を確定した上で弁護士が再生計画案を作成します。
個人再生委員がいる場合はあらかじめ確認してもらい、裁判所に提出します。
再生計画案には提出期限があり、期限内に提出できないと事情に関わらず手続きが廃止となってしまうため注意が必要です。

6.債権者の決議と再生計画案の認可決定

債権者および裁判所が計画案を審査し、問題がなければ再生計画案が認可されます。
小規模個人再生では、裁判所からそれぞれの債権者に対して再生計画案と議決書が郵送され、書面による決議(給与所得者等再生では意見聴取)が行われます。
債権者の半数以上の反対がなく、かつ反対した債権者の債権額が全債権額の2分の1を超えていなければ可決となり、個人再生委員からの意見書などを踏まえ、裁判所が再生計画の認可を決定します。

7.認可決定の確定と返済開始

認可決定の約1ヶ月後に、認可決定が確定して効力を持ちます。
弁護士との契約は終了となり、認可決定が確定した翌月から再生計画に基づいた返済を開始します。
3年間で減額した借金を完済できれば、残りの借金返済の義務が免除されることになります。

まとめ

個人再生の手続きと流れについて詳しく解説しました。
個人再生は借金の大幅な減額が可能な救済制度ですが、債務整理にはさまざまな方法があるため、個人再生が自分にとって適切な選択肢であるかどうかを見極めることが重要です。
手続きも煩雑なため、最適な選択肢を検討するためにも早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

債務整理を弁護士に相談・依頼するメリットとは?安心して借金問題を解決するために

債務整理

借金問題に直面すると、解決方法が分からず不安を抱える方も多いかと思います。
債務整理は借金問題を解決するための有効な手段であり、弁護士に依頼することで安心して進めることができます。
本記事では、債務整理を弁護士に相談・依頼するメリットを詳しく解説します。

債務整理とは

まずは、債務整理とは何かについて説明します。

債務整理の種類

債務整理とは、裁判所に申し立てるなどして借金返済の負担を軽減し、支払計画を見直すための手続き全般を指します。
債務整理には、次の4つの種類があります。

  1. 任意整理
  2. 個人再生
  3. 自己破産
  4. 特定調停

この4つのうち、任意整理は裁判所を通さずに話し合いによって解決するものに対し、個人再生、自己破産、特定調停については、裁判所を通じて手続きすることで借金問題を解決します。
債務整理で対応できる借金の額に制限はなく、収入制限も特にありません。
また、未成年者や高齢者など年齢制限もないため誰でも利用することが可能ですが、状況に応じて4つの中から最適な方法を選択することが重要です。

債務整理の目的

債務整理は、借金返済の負担を軽減することで生活を立て直すことが目的です。
具体的には借金の元本を減らしたり、利息を減額、免除したりすることで毎月の返済が減ったり、なくなったりする可能性があります。
一方、債務整理を行うことで、借金の減額や免除を受けたという事実が信用情報機関に登録されるため、一定期間は住宅ローンを組んだり、クレジットカードを作成したりといったことが難しくなるというデメリットもあります。

弁護士に相談・依頼するメリット

ここからは、債務整理を弁護士に依頼するメリットについて解説します。
弁護士に依頼するメリットとして、次の3つがあります。

  1. 債権者との直接交渉を代行してくれる
  2. 手続きの専門知識を活用できる
  3. 個々の状況に応じた最適な方法を提案

1つずつ見ていきましょう。

1.債権者との直接交渉を代行してくれる

債務整理を弁護士に依頼することで、債権者との直接交渉を代行してもらうことができます。
弁護士に直接交渉を代行してもらうことで、依頼者は債権者からの督促や取り立てから解放され、生活の立て直しに注力することができます。
また、プロの交渉により、より有利な条件で債務整理が可能になる場合もあります。

2.手続きの専門知識を活用できる

債務整理には法的な手続きや書類作成が多いため、専門知識が必要不可欠です。
その点、弁護士は法律のプロであり、債務整理の手続きを弁護士に依頼することで、ミスを防ぎながらスムーズに進めることができます。

3.個々の状況に応じた最適な方法を提案

先述したように、債務整理には複数の選択肢があります。
弁護士に依頼することで、依頼者の状況に応じた適切な方法の提案が期待できます。
また、借金の額や収入状況に応じて、長期的に無理のない返済計画のアドバイスを受けることもできます。

弁護士に依頼する際の費用について

最後に、弁護士に依頼する際の費用についてご紹介します。

1.費用の種類

債務整理を弁護士に相談・依頼する場合の費用として、以下のようなものがあります。

  • 相談料
  • 着手金
  • 成功報酬
  • その他実費

相談料は法律相談にかかる費用で、1時間につき1万円程度が相場ですが、初回相談のみ無料という場合もあります。
また、着手金とは実際に依頼した場合の費用で、結果に関わらず基本的には返金されません。
成功報酬については、案件が解決した際の解決報酬、借金の減額に成功した際の減額報酬、過払い金の回収に成功した際の過払い金報酬などに分かれている場合があります。
その他実費については、必要書類の作成や取得、郵便代や弁護士の交通費などが含まれます。

2.費用が負担に感じる場合の対処法

弁護士費用がすぐに用意できない、支払えないといった場合でも、以下のような方法で対処できる可能性があります。

  • 特定調停を利用する
  • 法テラスの利用

特定調停とは、借金返済が困難な債務者が、簡易裁判所を介して債権者と話し合うことで借金を整理する手続きで、弁護士に依頼せずに申し立てることができます。
また、法テラス(日本司法支援センター)は国によって設立された法的トラブルを解決するための機関で、弁護士との無料相談が利用できるだけでなく、弁護士費用の一部や全額を立て替えてくれる制度があります。

まとめ

今回は、債務整理を弁護士に相談・依頼するメリットについて解説しました。
債務整理を弁護士に依頼することで、適切な手続きと借金問題の解決をはかることができるだけではなく、債権者の督促などから解放されて生活の立て直しに集中することができます。
借金問題を早期に解決し、生活を立て直す第一歩として、弁護士に相談することを検討してみてはいかがでしょうか。

法人破産における債権の種類とその優先順位について解説

債務整理

法人破産は、企業が多額の債務を返済できず、裁判所に破産を申立てる手続きです。
破産手続きでは、法人が持つ資産を現金化し、債権者に公平に配分します。
この際、債権には法的な優先順位が定められており、その順番に従って弁済が行われます。
本記事では、法人破産における債権の種類とその優先順位について詳しく解説します。

法人破産における債権の種類

法人破産手続きで取り扱われる債権は、以下のような種類に分類されます。

  • 財団債権 
  • 優先的破産債権
  • 一般破産債権 
  • 劣後的破産債権
  • 約定劣後破産債権

これらの債権は、法的な優先順位に従って配分されます。

法人破産における債権の優先順位

法人破産において、優先的に充当を受けることができる債権は、優先度が高い順に、財団債権、優先的破産債権、一般破産債権、劣後的破産債権、約定劣後破産債権となります。
破産をする法人が有していた財産については、上記優先順位にしたがって充当されるため、財団債権の債権者は充当を受けやすく、約定劣後破産債権の債権者は、充当を受けにくいといえます。

各債権の特徴の解説

法人破産における各債権には、それぞれ特徴があります。
以下で、各債権の特徴を解説します。

財団債権

財団債権とは、法人破産という手続きとは別で、破産財団から支払いを受けることができる手続きであり、もっとも優先的に支払いを受けることができます。
財団債権に当たるか否かは、政策的観点から決せられます。
財団債権にあたる例としては、破産管財人の報酬や破産にかかる登記費用などといった破産手続きに必要な費用や、破産手続開始決定前3か月分についての従業員の給料債権があげられます。
また、納期限から1年間を経過していない租税債権についても、財団債権となります。

優先的破産債権

優先的破産債権は、法律で特に保護されている債権であり、一般破産債権よりも優先的に配分されます。
優先的破産債権の例として、財団債権にあたらない未払い賃金や、財団債権にあたらない租税債権があげられます。
賃金は、当該企業に属する従業員の生活の基盤となるため、重要な債権といえます。
したがって、賃金債権を優先的破産債権とし、破産債権の中で優先的に充当を受けることができるようにすることで、従業員の生活を保護するという趣旨で、賃金債権が優先的破産債権に該当します。
優先的破産債権の中でも優先順位があり、租税債権がもっとも優先され、賃金債権などの私債権はもっとも劣後します。

一般破産債権

一般破産債権は、優先的破産債権に該当しない通常の債権です。
これは破産手続きにおける配分の対象となる資産が残っている場合に、割合に応じて弁済されます。
一般的破産債権の主な例としては、金融機関や取引先からの借入金や商取引に基づく未払い債務といった、通常の商取引による破産企業に対する債権がこれにあたります。
一般破産債権は財団債権や優先的破産債権に比べ、配分の優先順位が低いため、破産財団に十分な資産がない場合は、全額が弁済されないこともあります。

劣後的破産債権

劣後的破産債権は、一般破産債権よりもさらに優先順位が低い債権です。
この債権は、一般破産債権までのすべての他の債権が弁済された後、残った資産がある場合に限り配分されます。
劣後的破産債権該当する主な債権は、破産手続開始決定後の遅延損害金や利息といった元本に付随する債権や、延滞税や加算税などがあげられます。
実際には、破産企業に十分な資産がない場合が多く、劣後的破産債権が弁済されるケースは稀です。

約定劣後破産債権

法人破産において、もっとも配当の優先順位が低い債権は、約定劣後破産債権です。
約定劣後破産債権は、債権者と法人の間で、法人破産の場合に、劣後的破産債権よりも配置順位を低くする点について合意した債権を指します。
約定劣後破産債権は、劣後的破産債権まですべて配当が完了した時にはじめて弁済がされますが、法人破産の場合に劣後的破産債権に配当があるまで財産が残っていることは珍しく、約定劣後破産債権の配当まで行われることはほとんどありません。
したがって、約定劣後破産債権を有している場合には、当該債権に対する配当はないと考えても問題はないといえます。

まとめ

本記事では、法人破産における債権の優先順位と各債権の内容について解説しました。
法人破産における債権の優先順位は、財団債権、優先的破産債権、一般破産債権、劣後的破産債権の順に定められており、さらにそれぞれの債権には特徴があり、どの範囲で弁済が行われるかが明確に規定されています。
法人破産をする際は、これらの債権の性質を理解したうえで、会社の財産状況を理解して手続きを進める必要があるため、法人破産を検討する際は、弁護士に相談することをおすすめします。

法人破産にかかる期間はどのくらい?

破産

法人が経営破綻した場合、最終的に選ばれる手段として「法人破産」があります。
法人破産の手続きにはどのくらいの時間がかかるのか、そしてその期間にどのようなプロセスを経るのか。
本記事では、経営者や債権者が知っておくべき、法人破産の期間や手続きについて解説します。

法人破産とは

法人破産とは、債務超過や支払不能に陥った会社について、裁判所の関与のもと会社を清算する法的な手続きです。
裁判所が弁護士の中から選任した「破産管財人」が、法人の財産を「破産財団」として管理し、換価できるものは換金するなどして債権者に分配します。
また、借金返済を免除して良いか調査されるなどして、最終的には法人格の消滅により債務も消滅します。

法人破産のメリット

法人破産には、次に挙げるようなメリットがあります。

メリット①債務が免除され、返済や取り立てから解放される

法人破産を弁護士に依頼すると、すぐに債権者に支払停止の通知が送られます。
その後の対応や交渉は全て弁護士が行うため、債権者による取り立ては実質的に行われなくなります。

メリット②負債が消滅する

法人の規模によりますが、数千万円から数億円ほどの負債があったとしても、法人格の消滅によりそれらの負債も消滅することになります。
民事再生など、破産以外の債務整理では債務自体が消滅するということはないので、負債が消滅するというのは法人破産の最大のメリットと言えます。

法人破産のデメリット

一方、法人が破産した場合には、次のようなデメリットが考えられます。

デメリット①会社の再建ができない

法人破産は、法人自体が消滅することになるので、今まで行っていた事業を継続できなります。
また、中小企業の多くは経営者が法人の債務保証をしている場合が多く、そういった場合には、法人破産と同時に個人破産の手続きが必要になります。
個人が破産すると、個人の名義で保有していた財産についても借金返済の対象となるうえ、金融機関からの借入ができなくなるので、もう一度会社を築くことは難しくなります。

デメリット②従業員を解雇しなければならない

破産の場合は会社が消滅してしまうので、従業員を全員解雇しなければなりません。
長きにわたり貢献してくれた従業員を解雇するのは心苦しいだけではなく、今まで培ったノウハウも失うことになります。

法人破産の流れ

法人破産の手続きについて、流れを説明します。

1.破産手続きの申し立て|1〜2ヶ月

債務整理についてまずは弁護士に相談し、最適な債務整理の方法についてアドバイスをもらいます。
その結果、破産することになった場合は破産申し立ての準備を行います。
この準備には、1〜2ヶ月程度かかるとされています。

2.破産手続きの開始|1〜2週間

破産手続きの準備ができたら、地方裁判所へ必要書類を提出し、破産手続きの申し立てを行います。
裁判所による書類審査が行われ、破産手続きが開始されます。
申し立てから手続き開始決定までは1〜2週間程度かかります。

3.破産管財人の選任と調査|3〜6ヶ月

裁判所が破産管財人を選任し、会社の資産や債務の状況を調査します。
破産管財人の調査には3〜6ヶ月ほどかかるとされています。

4.財産の清算と債権者への分配|数ヶ月~1年以上

会社の資産を売却し、債権者に公平に分配します。
資産や負債の規模が大きく、複雑な場合は清算作業や資産売却に時間がかかる可能性があります。
また、債権者が多数いる場合、分配に関する調整が必要で合意に時間がかかることがあるうえ、債権者の異議申し立てや訴訟が発生することもあり、手続きの期間を延ばす要因になります。

5.手続きの完了と会社の解散

最終的に破産手続きが終了すると、会社は正式に解散となります。
ここまで見てきたように、法人破産の手続きにかかる期間は、おおよそ6ヶ月〜2年程度が一般的です。

法人破産が完了するまでの注意点

最後に、法人破産が完了するまでの注意点について解説します。

1.手続き中の経営者の義務

破産手続き中も、経営者は破産管財人への協力や情報提供など一定の義務を負います。
破産手続きが滞ると期間が長引く可能性があるため、適切な対応が必要です。

2.破産による影響を考慮する

法人破産後は会社が解散し、経営者の再起には制約が生じるので、信用回復や新たな事業立ち上げを検討する場合は、事前に対策を考えておく必要があります。

3.法的責任の整理

破産手続き終了後も、経営者個人に対する保証や債務が残る場合があります。
個人保証や役員責任の範囲に注意し、必要に応じて弁護士に相談することが重要です。

まとめ

法人破産にかかる期間は、準備や会社の状況によって大きく異なりますが、一般的には6ヶ月〜2年程度と考えられています。
経営者としては、事前のリスク管理や法的な知識を持ち、必要な場合には迅速に対応することが重要です。
早期に適切な準備を行い、弁護士に相談することでスムーズな手続きを目指すことができます。

会社・法人が破産を検討すべきタイミングとは?

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会社経営をしていると、経営悪化や資金繰りなどさまざまな問題が起こり、どのタイミングで破産を検討すればよいのか悩ましい問題です。
この記事では、会社・法人が破産を検討するタイミングについて解説します。

会社・法人が破産を検討するタイミングとは

会社・法人が破産を検討するタイミングは、主に6つあるので詳しくみていきましょう。

運転資金を調達できないとき

会社経営において、運転資金が調達できないときが破産を検討するタイミングのひとつです。
売上が多くても手元に現金が残らない状況や運転資金を調達できなければ、仕入れや修繕、従業員の給与の支払いができないため、そのまま継続しても負債が増加する可能性があります。

赤字が続いているとき

赤字が続くと手元の資金を持ち出すため、自己資金が枯渇して支払いができず、負債額が増大します。
また、売掛金などが支払えない場合は債務不履行となり、倒産に追い込まれます。
赤字が続いても返済の目処が立っていれば良いのですが、返済の目処が立たないのであれば、負債額の少ないうちが破産を検討するタイミングです。

業績悪化で回復が見込めないとき

新型コロナウイルスのようなパンデミックに襲われると、不可抗力であっても業績不振に陥り、売上を伸ばすことが困難になります。
長年経営してきた老舗と呼ばれる会社であれば、特に破産を検討するタイミングには困ります。
ユーザーの期待に応えたい気持ちはあっても、商品やサービスを購入・利用してもらえなければ業績は悪化し、状況によっては回復の目処が立たないことがあります。
このような状況に陥ったときが破産を検討するタイミングです。

予納金を支払えるだけの現金があるとき

裁判所に予納金を支払える資金が残っているときが、破産を検討するタイミングの一つです。
予納金とは、裁判所に破産を申し立てるときに前もって支払う費用のことです。
予納金は破産手続きに必要になる破産管財人・監督委員の報酬や各手続きの費用に充てられます。
破産法では、「破産する場合は予納金の支払いができないときには破産手続きを開始することができない」と定められています。
そのため、裁判所に予納金を納めるだけの現金がなければ破産できません。
破産手続きに必要な予納金は、最低20万円からとなっており、負債額や事案に応じて予納金額は変更されます。

(参考元:東京地裁民事第20部 破産事件の手続費用一覧

また、会社・法人が破産する場合は弁護士に依頼する必要があるため、裁判所の手続き費用以外に弁護士費用も加味した資金が残っている間に破産を検討することをおすすめします。

取引先への支払いができないとき

取引先に対して、支払いが遅延している場合や支払えない状況に陥っているときは破産を検討するタイミングです。
懇意にしている取引先であれば、事情を説明すれば1回の支払い遅延は大目に見てもらえる可能性があるかもしれません。
しかし、多くの会社は1回でも支払いが遅延すると経営状態に関して不信感を抱きます。
不信感を抱いた取引相手に対して与信調査などを行い、今後の取引継続について検討するため、状況によっては取引を中止されるかもしれません。
また、取引先の1社が取引を中止すると、納入業者間で情報が広まり、取引中止を申し出る会社が増加する可能性すらあります。
そうなれば通常業務を行えず、より一層業績が悪化して負債額が増加します。

従業員の給与を支払えないとき

業績悪化により従業員の給与が支払えないときは、破産を検討するタイミングです。
従業員も生活があるため、給与の支払いが遅れるとか、支払ってもらえない場合は、よほどの理由がない限りは離職します。
従業員が退職すれば業務遂行が困難になり、さらに業績は悪化して悪循環に陥ります。
また、給料の未払いがあれば、従業員は労働基準監督署に相談に行き、会社に支払いを要求することもあります。
その時点で、労働基準監督署も実態調査に動くことがあり、未払いのあった従業員によっては民事調停や少額訴訟、民事訴訟を裁判所に申し立てる可能性があります。

まとめ

今回は会社・法人が破産を検討するタイミングについて解説しました。
会社や法人が破産を検討するタイミングにはいくつかありますが、経営悪化、業績悪化など、経営を継続することが困難になったときが検討するタイミングです。
また、破産するにも裁判所の手続き費用や弁護士費用が必要になるため、支払えるだけの資金があるタイミングでなければ、破産手続きが行えない恐れがあるのでご注意ください。
業績不振のお悩みや経営の継続に関して不安を抱えているようであれば、法律の専門家でもある弁護士にご相談されることをおすすめいたします。

法人破産の手続の流れについて

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企業経営を取り巻く環境は、時に予期せぬ経済的困難に直面することがあります。
事業の拡大や成長を目指していたにもかかわらず、資金繰りが逼迫し、経営が行き詰まることも少なくありません。
そこで本記事では、法人破産の手続きの流れについて具体的にわかりやすく解説します。

法人破産の手続の流れ

法人破産における手続きの流れについてみていきましょう。

STEP 1: 弁護士への相談

法人破産を考えた際、まず行うべきは専門家である弁護士への相談です。
弁護士は、経営者が抱える問題を理解し、破産の必要性や他の選択肢の可能性について検討します。
この際、経営者は会社の財務状況や資産、負債の詳細な情報など以下の情報を提供することが求められます。

  • 会社負担の債務や税金、保証、担保などの状況
  • 会社の売掛金、資産、在庫商品、備品などの状況
  • 現在の営業状況
  • 従業員の人数、給与の支払い状況、雇用契約の内容、解雇の有無
  • 支店や営業所などが賃貸物件の場合は賃貸契約の内容、室内の状況、明け渡し完了の有無
  • 現在進行中の業務の有無やその業務に関する契約内容および進捗状況
  • 会社の決算書類、会計書類などの保管状況


弁護士との相談により、破産が最適な選択肢であると判断された場合、弁護士は債権者に対して破産予定であることを知らせる「受任通知」を送付します。
受任通知が送られると、債権者からの取り立てが一時的に停止されるため、経営者は精神的な負担から解放されます。
ただし、事業が継続中である場合、弁護士が前面に出ず、慎重に手続きを進めることが必要なケースもあります。

STEP 2: 破産手続きの準備

破産手続きを進めることが決定した後は具体的な準備に入ります。
まず、会社の活動をいつ停止するかを決め、その時期に向けてスケジュールを立てます。
この時点で必要な書類を整え、会社の資産を保全することが重要です。
特に従業員への対応については、解雇通知のタイミングや未払い賃金の処理を含め、法的に適切な手続きを行わなければなりません。

また、破産手続きに必要な費用を確保することも非常に重要です。
現金が不足している場合は、売掛金の回収や資産の現金化を進める必要があります。
弁護士費用や裁判所に納める予納金も、この段階で準備しておくべきです。
これらの準備が整うことで、裁判所への申立てがスムーズに進みます。

STEP 3: 裁判所への申立て

破産手続きの申立ては、裁判所に書類を提出することから始まります。
この作業を弁護士に依頼した場合は、基本的に弁護士が代行するため、経営者が直接裁判所に出向く必要はありません。
申立ての際には、裁判所に対して予納金を納付する必要があり、事前に十分な資金を準備しておくことが求められます。
申立てに必要な書類には、会社の財務状況を示す決算書や帳簿、債権者の一覧などが含まれます。
これらの書類が不十分もしくは、内容に不備がある場合には、裁判所から追加の資料提出が求められることがあります。
そのため、家庭裁判所に申し立てる前には、必要な書類を不備なく整えることが重要です。

STEP 4: 破産手続きの開始

裁判所が破産手続きの開始を決定すると、破産管財人が選任されます。
破産管財人は、会社の財産を管理し、売却する役割を担います。
経営者は、破産管財人と面談を行い、今後の手続きの進め方や処理方針について詳細な打ち合わせを行います。
破産管財人が選任されると、会社の財産の管理処分権は全て破産管財人に移行します。
経営者は、このプロセスに積極的に協力する義務があります。
破産手続開始決定後に債権者集会を開催します。
債権者集会とは、破産管財人が財産の状況や債権者への配当の進行状況を報告し、経営者もこれに出席して手続きを確認することです。

STEP 5: 破産手続きの終了

破産手続きは、裁判所による手続終結の決定によって正式に終了します。
この時点で破産管財人の任務も終了し、会社の法人格が法的に消滅します。
破産手続終結の決定は官報に公告されるため、社会的にも破産が終了したことが確認されます。
法人格が消滅することで、会社としての活動は完全に終了し、法人登記簿も閉鎖されます。
ただし、経営者個人に対して保証責任が残る場合や、破産後の手続きが必要な場合もあるため、引き続き注意が必要です。

まとめ

法人破産の手続きは、慎重かつ計画的に進めることが求められます。
この記事で解説したように、弁護士への相談から破産手続きの準備、裁判所への申立て、そして破産手続きの終了まで各ステップを正確に理解しておくことが重要です。
経営者が適切なタイミングで専門家に相談し、手続きを進めることで、最悪の事態を避けることができる可能性もあります。
法人破産を検討している方は、ぜひ早めに専門家でもある弁護士に相談することをおすすめします。

任意整理から個人再生への切り替えは可能?

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任意整理したけれど収入が減って返済が困難になった場合に、個人再生に切り替えられないか思案している方もいらっしゃると思います。
この記事では、任意再生から個人再生への切り替えは可能なのかという疑問について解説します。

任意整理から個人再生に切り替える条件とは

任意整理から個人再生に切り替えられるのか、また、切り替えるために条件はあるのかみていきましょう。

任意整理から個人再生に切り替えられるケースもある

基本的には、任意整理から個人再生に切り替えることは可能です。
任意整理とは、裁判所が関与することなく債権者と直接交渉して返済を楽にしてもらう手続きです。
例えば、分割払いの期間延長や金額、長期的に発生する利息のカットなどについて、確実に返済できるように債権者と交渉します。

一方、個人再生は、地方裁判所に申し立てを行い、法的手続きを経て返済額を減額してもらう手続きです。
個人再生に切り替えることができれば、返済総額が減るので毎月の返済も楽になる可能性があります。

任意再生から個人再生に切り替える条件

任意整理から個人再生に切り替える際には、以下の条件をクリアする必要があります。

  • 安定した収入があること
  • 個人再生の対象となる負債総額が5,000万円以下であること


その他にも、給与所得者の場合は、給与の変動が小さいことも条件とされています。
個人再生は、裁判官に認めてもらえなければ切り替えることは不可能です。
そのため、必ず残りの借金は支払期日に遅延することなく、完済するまで払い続ける強い意思や誠実さを裁判官にアピールすることも大切なポイントです。

任意整理から個人再生に切り替えた方が良いケースとは

任意整理から個人再生に切り替えた方が良いケースを3つご紹介します。

債権者と合意できない場合

任意整理は債権者の合意の元で行われるため、債権者の合意がなければ任意整理は行えません。
「債権者と話し合えばどうにかなるだろう」と思って交渉してみたものの、思いのほか交渉が難航して債権者に合意してもらえない場合は、個人再生を検討した方が良いかもしれません。

借金額が予想よりも多い場合

専門家による債務調査が行われて、予想以上に借金額が多い場合は、返済額が多すぎて任意整理では返済できないかもしれません。
その場合は、個人再生に切り替えて借金総額を減額してもらった方が、確実に返済できる可能性は高いです。

任意整理したけど返済が困難な場合

一度は任意整理を行い、毎月返済していたとしても、社会情勢による物価高騰や収入の減少により、毎月返済できない場合があります。
自分の力だけではどうしようもない状況に陥り、毎月の返済額を確保できない場合は、個人再生に切り替えた方が良いかもしれません。

任意整理から個人再生に切り替えるときの注意点

任意整理から個人再生に切り替える場合は、以下の4つに注意してください。

個人再生には別途費用がかかる

任意整理から個人再生に切り替えると、個人再生の費用として別途弁護士費用がかかります。
また、任意整理の時点で弁護士などに依頼している場合は、任意整理にかかった費用とは別に個人再生にも弁護士費用が必要になるので2重の費用がかかります。
債務整理を検討する段階で、任意整理と個人再生のどちらが無理なく返済できるのか、慎重に検討しなければなりません。

連帯保証人がいる場合は迷惑がかかる

借金をしている方の中には、連帯保証人をつけている場合があります。
連帯保証人がいる状態で主債務者が個人再生に切り替えると、主債務者の返済額は減額されますが、減額された返済額は連帯保証人に請求されます。

例えば、主債務者が500万円の借金をしていた場合に個人再生に切り替えると、主債務者は100万円に減額されますが、減額された400万円は連帯保証人に請求されます。
この場合、一括請求されることがあり、連帯保証人でもまとまったお金を用意できなければ一括で支払えない可能性があります。
一括で支払えない場合は、債権者に分割払いにしてもらうなどの交渉が必要です。

個人情報が官報に掲載される

個人再生すると国が発行している「官報」に名前や住所などの個人情報が掲載されます。
官報はインターネットで誰でも閲覧できるため、家族や親族、知り合い、第三者などに個人再生したことを知られる可能性があります。
周囲に知られたくない場合は、任意整理のままで債権者と再交渉して毎月の返済額を減額してもらうなど、債権者の合意を得るしかありません。

司法書士では個人再生の申し立てはできない

任意整理を司法書士にサポートしてもらっている方もいらっしゃると思います。
司法書士では個人再生の申し立てができませんが、弁護士であれば個人再生の申し立てが可能です。
そのため、司法書士と相性が良くても、任意整理から個人再生に切り替える場合は弁護士に依頼しなければなりません。
司法書士は弁護士とのつながりを大事にしているので、個人再生する場合は弁護士を紹介してもらえます。

まとめ

今回は、任意整理から個人再生に切り替えるのは可能なのかという疑問について解説しました。
任意整理から個人再生に切り替えることは可能ですが、条件をクリアする必要があります。
債務整理を検討している方は、任意整理と個人再生のどちらにするか悩むかもしれません。
そんなときは、適切な状況判断ができる上に法律の専門家でもある弁護士に相談することをおすすめします。

2回目の自己破産は可能?条件や注意点を解説

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1回でも自己破産した人は、2回目も自己破産できるのか気になると思います。
結論から言えば、2回目の自己破産は可能ですが、2回目になると条件が加わり、その条件や1回目よりも厳しい審査をクリアしなければ自己破産はできません。
この記事では、2回目の自己破産の条件や注意点について解説します。

2回目の自己破産はできる

自己破産は倒産法の一つでもある「破産法」で定められており、2回目でも自己破産はできます。
ただし、1回目に行われた免責の審査よりも2回目の方が条件も加わって審査も厳しくなります。

2回目の自己破産ができる2つの条件

2回目以降の条件について解説します。

前回の自己破産から7年以上経過していること

1回目の自己破産(免責許可の決定の確定日)から7年以上経過していないと2回目の自己破産はできません。
破産法では、破産者に対して免責許可が確定した日から7年以内に免責許可の申立てがあった場合、2回目の免責を許可できないと定められています。

(参考先:e-eov法令検索 破産法第252条第1項10号イ(免責許可の決定の要件等)

2回目の自己破産の原因は前回と違うこと

2回目の自己破産の原因が前回と同じ場合には、反省していないとみなされるので免責が認められにくい可能性があります。

2回目の自己破産をするときの注意点

2回目の自己破産では、処分する財産がなければ「同時廃止」になる可能性があり、処分する財産があれば「管財事件」になります。

管財事件とは、裁判所が選任した破産管財人が、自己破産の申立てを行った人の財産を清算して債権者への弁済や配当にすることです。    
破産管財人は財産の調査や管理、処分を行う費用が発生するため、1回目より手続きの費用が高くなり、期間も長くなる傾向にあります。

免責許可を認める判断基準

2回目の自己破産をするときに免責許可を認める判断基準について解説します。

2回目の自己破産は自分ではどうすることもできない事情がある

2回目の自己破産をするときには、自分ではどうすることもできなかった事情や完済するために行った努力を裁判所や弁護士に伝えると免責が認められる可能性があります。

2回目の自己破産を真面目に反省している

自己破産が2回目になると、1回目の反省ができていないと判断されかねないので、深く反省しているという誠実な態度で手続きや調査には協力しましょう。
もし、不誠実な態度や管財人などの調査を妨害するような行為を行った場合には、免責が認められにくくなるので注意してください。

免責許可されないケース

免責許可されないケースとは、免責不許可事由(免責しがたい理由)に該当する場合であり、財産を不当に処分するような行為のことを指します。
免責不許可事由の中でも、特にギャンブルで自己破産する場合には、2回目の免責は認めらない可能性が非常に高いです。
ただし、やむを得ない事情により生活に困窮して借金した結果、自己破産するしかない場合には免責が認められる可能性があります。

2回目の自己破産ができないときの対処法

2回目の自己破産ができなときには以下の対処法があるので解説します。

  • 即時抗告
  • 個人再生
  • 債権者と直接交渉

即時抗告

即時抗告とは、地方裁判所が下した免責不許可の決定(自己破産できないこと)に対して、最高裁判所に異議を申立てることであり、期限は免責不許可が決定してから1週間以内です。
ただし、自己破産の原因が免責不許可事由に当てはまっている場合には、異議を申立てても決定が覆る確率は低いので注意してください。

個人再生の申立て

個人再生とは、自己破産と同様に裁判所に申立てて債務を減らしてもらうことであり、債務とは、特定の人に金銭を払ったり物を渡したりする法律上の義務です。
また、民事再生法では、次のように定められています。

「個人である債務者のうち、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあり、かつ、再生債権の総額が五千万円を超えないものは、再生手続きを行うことを求められる」

(引用先:民事再生法 第1節 小規模個人再生 第221条第1項

自己破産では、免責許可が決定すれば債務はすべて免除されますが、個人再生の場合は債務の一部は残るので返済する必要があります。

任意整理で債権者と直接交渉する

任意整理は自己破産とは異なり、裁判所を通さない代わりに弁護士などを介して債務者と債権者が直接話し合って債務者の債務を整理します。

まとめ

今回は、2回目の自己破産は可能なのか、条件や注意点について解説しました。
2回目の自己破産は可能ですが、1回目の自己破産から7年以上経過していることや、債権者や周囲に対して迷惑をかけることに対する深い反省を態度で示す必要があります。
もし、2回目の自己破産でお悩みの方は、法律の専門家でもある弁護士に相談することをおすすめします。

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