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コラムカテゴリー: 離婚

離婚時に不動産を財産分与する際の注意点

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離婚する際には、通常、夫婦で協力して築き上げた財産を夫婦間で公平に分配します。
このとき不動産があり、なおかつ住宅ローンが残っている場合には、分配が複雑になります。
この記事では、不動産を財産分与する際の注意点を解説します。

財産分与とは

財産分与とは、夫婦の共有財産を清算することです。
原則として、夫婦間で2分の1ずつ分配します。
たとえ夫婦どちらかの単独名義の財産であったとしても、夫婦の協力のもと築いてきた財産は共有財産です。
婚姻期間中に蓄えた預貯金や購入した不動産も共有財産となります。
現金はそのまま分配できますが、現金以外の財産は評価額などを参考にして分配しなければいけません。
現物をそのまま分けるほか、売却したのち現金を分配する方法もあります。

不動産の財産分与

不動産は夫婦の共有財産のうち、非常に大きな価値を持つものです。
通常、どちらかが住み続けたり、売却して売却益を分配したりする方法をとります。
どちらの場合でも、財産分与の際には、まず不動産の価値を把握しなければいけません。
このとき、住宅ローンの有無も考慮する必要があります。

不動産評価額

不動産の評価は売買時の時価で判断することが一般的です。
不動産業者に依頼し、査定してもらうことで判断できます。
住宅ローンが残っている場合には、評価額からローンを差し引くことで不動産の価値を算出します。
たとえば評価額1,500万円の不動産があり、住宅ローンが1,000万円残っている場合には、財産分与におけるその不動産の価値は500万円となります。

ただし状況によっては、不動産評価額よりも住宅ローンの方が高額になっていることもあります。
評価額1,500万円の不動産の住宅ローン残高が2,000万円だった場合、たとえ住宅を売却しても借金が500万円残ります。
財産分与において、売却後もローンが残ってしまう不動産の価値は0円とみなされることが一般的です。
この場合、価値のない不動産は財産分与の対象として取り扱わず、ローンの名義人がそのまま不動産を所有し、ローンを返済していく方法をとることがあります。

売却して得た金銭を分配する

財産分与の際に不動産を売却する場合には、ローンを完済しているか、ローンよりも評価額が高額であることが前提となります。
不動産には抵当権が設定されており、ローンを完済することが売却の条件になるためです。
ローンを完済している場合は売却して得た金銭をそのまま分配します。
ローンが残っている場合には、売却益でローンを完済したのち、余った売却益を分けます。

ただし、評価額よりもローンの方が高額であっても、どうしても売却したいケースも存在します。
所有している住宅が離婚後の生活に合わない場合には、その不動産を所有し、ローンの返済を続けていくことは大きな負担です。
このようなとき、売却益だけでは返済しきれない分は、自己資金でまかなうことも可能です。
そのほか、任意売却という方法であれば、ローンを完済できない場合でも売却できます。
ただし任意売却後は信用情報に傷がつき、数年間は借り入れが困難になるため注意が必要です。

夫婦のどちらかが所有し住み続ける

夫婦のどちらかが不動産を所有し続ける場合には、家を出ていく側に金銭など同じ価額分の財産を渡すことで公平に分配できます。
ローンを完済している場合、相手に渡す金額が高くなりやすいため注意が必要です。

ローンが残っている場合には、ローンの名義人と住み続ける人が同じかどうかで対応が異なります。
ローンの名義人と暮らす人が同一の場合、そのまま生活を続けることが可能です。
しかしローンの名義人ではない人が住み続けたい場合には、ローンの名義を変更して自身が不動産を取得するか、所有者に対し賃貸契約を結んだり使用許可を得たりする必要があります。
なお、ローンの名義変更は銀行などの許可を得なければならず、安定した収入が必要です。

ペアローンを組んでいた場合

ペアローンとは、ひとつの不動産に対し夫婦がそれぞれ別の住宅ローンを組む方法です。
不動産は共有名義となり、それぞれの出資割合に応じた持ち分を所有します。
離婚後もどちらかが所有し続けたい場合には、ローンを一本化し、単独名義にすることが理想です。

離婚後も共有名義のまま、お互いが自身の持ち分を所有し続けることは可能ですが、売却時には相手の同意を得なければいけないなど、手続きが複雑になります。
後々のトラブルを避けるため、ローンの一本化が難しい場合には売却を検討することもあります。

まとめ

この記事では不動産の財産分与について解説しました。
財産分与の方法としては、売却して得た金銭を公平に分配するか、片方が不動産を取得し、もう片方には金銭などほかの財産で清算する方法があります。
住宅ローンが残っている場合には、評価額とローン残高のどちらが高額かによって対応が変わります。
そのほか、条件により適切な財産分与の方法は異なります。
離婚をお考えの際は、弁護士までご相談ください。

慰謝料的財産分与とは別に、慰謝料を請求できるケースとは?

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離婚する際、婚姻期間中に築き上げた財産を分配する仕組みが、財産分与です。
財産分与に慰謝料的な意味合いを持たせて支払われたとき、それとは別に慰謝料を請求することは可能なのでしょうか。
この記事では、慰謝料的財産分与と慰謝料を両方とも請求できるケースについて解説します。

慰謝料と慰謝料的財産分与

離婚の原因が相手にある場合、離婚によって受けた精神的苦痛に対し、慰謝料を請求できます。
慰謝料や慰謝料的財産分与の額は、当事者同士の話し合いで決められます。
話し合いで慰謝料の必要性や金額などが合意できなかった場合には、裁判により金額などを判断してもらうこともあります。
婚姻期間が長かった場合や、相手の行為が悪質であるなど苦痛が大きいと判断される場合には、慰謝料の額も高額になることが一般的です。

慰謝料

離婚による慰謝料には、離婚すること自体に対する慰謝料と、離婚に至った原因となる行為に対する慰謝料が含まれます。
慰謝料の対象となる行為には、次のようなものがあります。

  • 配偶者以外と肉体関係を持った
  • 暴言や暴力があった
  • 夫婦間で互いに協力し、助け合うことをしなかった
  • 夫婦関係を継続できない重大な原因があった

このような原因に対して慰謝料を請求する際には、とくに裁判などで争う場合、その行為があったことを示す客観的な証拠が必要です。

慰謝料的財産分与

財産分与に慰謝料的な意味合いを持たせたものが、慰謝料的財産分与です。
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が互いの協力のもと築き上げた財産を公平に分配することです。
通常は夫婦で2分の1ずつ分け合います。
たとえ夫婦のどちらかが専業主婦(夫)であっても同様に分配します。
専業主婦は家事に従事することで相手の生活を支え、財産の形成に協力したと言えるためです。

しかし財産分与は、必ずしも2分の1ずつ分けるものではありません。
個々の事情に合わせ、割合を変更することも可能です。
たとえば離婚に至った原因が夫婦の片方にある場合、その事情を考慮したうえで割合を決定してもかまいません。
離婚の原因を作った側の割合を少なくし、相手側が多く受け取ることで、相手の精神的苦痛の補填とします。
これが、慰謝料的財産分与です。

慰謝料と慰謝料的財産分与を両方得られるケース

慰謝料と慰謝料的財産分与は別の仕組みです。
しかし離婚というひとつの苦痛に対し、慰謝料を重ねて受け取ることはできません。
ただし慰謝料的財産分与の額が、本来受け取れるはずの慰謝料額に満たない場合、その不足分を別途請求することが可能です。

慰謝料的財産分与で賠償しきれない場合

たとえば離婚による慰謝料として300万円の請求が適正である場合で考えてみましょう。
本来、財産分与は2分の1ずつ分け合いますが、その金額に300万円を上乗せして支払われた場合、それとは別に慰謝料を請求しても認められません。
しかし上乗せされた金額が100万円であった場合、不足分200万円の請求を認められる可能性があります。

ただし裁判によってこれを認めてもらうには、財産分与に上乗せされた金額だけでは賠償しきれないことを証明しなければいけません。
たとえば離婚に至った原因として、相手の不貞行為や暴力などがあった場合には、それらを示す証拠が必要です。

慰謝料は不倫相手に請求することも可能

配偶者へ別途慰謝料を請求しようとしても、配偶者の経済状況によっては、支払う能力が足りないこともあります。
離婚の原因が相手の不貞行為であり、一定の条件を満たしている場合、不倫相手に慰謝料を請求することも可能です。

ただし不倫相手に慰謝料を請求できるのは、不倫相手が「相手が既婚者であるとわかっていながら肉体関係を持ったとき」のみです。
配偶者が不倫相手に既婚者であることを伝えていた場合や、既婚者であることが明らかな状況で不貞行為に及んだ場合でなければ請求できません。
そのため、配偶者がマッチングアプリなどを利用し、既婚者であることを隠して不貞行為に及んでいた場合には、不倫相手に請求できない可能性があります。

また、不倫相手に請求できる金額は、慰謝料の不足分です。
適正な慰謝料額が300万円であり、配偶者から慰謝料的財産分与として100万円、慰謝料として50万円を受け取る場合、不倫相手に請求できるのは残りの150万円となります。

まとめ

この記事では、慰謝料的財産分与とは別に慰謝料を請求できるケースについて解説しました。
慰謝料と財産分与は本来別の仕組みですが、ふたつを合わせて慰謝料的財産分与とすることも可能です。
ただし、受け取った慰謝料的財産分与の額では精神的苦痛を賠償しきれないと判断されるときには、別途不足分の慰謝料を請求できます。
慰謝料の判断には、離婚に至った原因や財産分与として受け取った金額など、さまざまな要因が関係します。
離婚の際は弁護士までご相談ください。

扶養的財産分与の相場や期間

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離婚の際、夫婦の共有財産を公平に分配したり、離婚後の生活を保障したりするため、財産を分け合うことが認められています。
その中でも、離婚後の生活を保障するために分け合う仕組みを扶養的財産分与と呼びます。
この記事では扶養的財産分与について解説します。

扶養的財産分与とは

離婚後、生活を続けていくことが困難になる相手に対し、金銭的なサポートをする手段が扶養的財産分与です。
婚姻期間中、夫婦どちらかの経済力に頼って生活を営んでいた場合、離婚すると、経済力のない側は生活を続けられなくなってしまいます。
とくに長い間専業主婦だった方にとって、これから就職することは簡単ではありません。
このようなとき、夫婦の協議によって扶養の必要性や金額、期間などを判断・決定できます。
夫婦だけの協議で話がまとまらない場合には、調停や裁判によって判断してもらうことも可能です。

ただし本来、離婚後の夫婦間にお互いの扶養義務はありません。
裁判などで認められるには、それ相応の理由が必要です。
たとえ就職が難しくても、通常の財産分与によってしばらく生活していけるようであれば、扶養的な部分の財産分与は認められない可能性があります。

扶養の必要性が認められる状況

離婚後に自分の力だけで生活を営んでいくことが難しいと判断されるのは、主に次のような状況です。

  • 現在、専業主婦(夫)である
  • 病気や障害により就職が難しい
  • 高齢により就職が難しい
  • 小さな子どもを養育しておりフルタイムの勤務が難しい

専業主婦歴が長い場合、就職のために資格の取得や職業訓練が必要な場合もあり、すぐに安定した仕事に就くことは困難です。
高齢であったり、病気や障害があったりする場合も、生活していくだけの収入を得ることが難しい場合があります。
このように当面の生活費を稼ぐことが難しいと判断される場合、サポートの必要性を認められる可能性が高くなります。

子どもを養育する場合、相手方から養育費を受け取れますが、養育費は子どものための費用です。
養育のために親が時短勤務を強いられたとしても、それによって生じた親の生活費の不足分までは補填されません。
その補填として、フルタイム勤務が可能になるまでの間、扶養的財産分与が認められることもあります。
とくに子どもに障害がある場合などは認められやすくなります。

支払われる金額の相場

支払われる金額は、当事者双方の当面の経済状況や公的な手当の有無など、個々の状況に応じて決められます。
1か月あたりの支払金額は、婚姻期間中の生活費よりも低く設定されることが多く、経済的な自立に向けた準備ができる最低限の金額になることが一般的です。
支払う側にとっても、大きな負担にならない程度の金額です。

現在専業主婦であったとしても、資格を持っていたり、収入につながるスキルがあったりする場合には、すぐに自立できるものとして、支払われる金額が少なくなることがあります。
一方で、専業主婦の期間が長く資格などもない場合には、就職することが難しかったり資格取得の時間や費用がかかったりすることから、支払われる金額が多くなることもあります。

支払い方法

支払いは離婚時に一括で支払うほか、毎月分割払いする方法もあります。
とくに病気などにより働くこと自体が困難な場合には、一括で大金を受け取るよりも、毎月支援を受ける方法が適している場合があります。
ただし、支払期間が長くなるほど支払いが途絶えてしまうリスクも高くなります。
支払いに関する決定事項は公正証書にしておくと安心です。

支払われる期間

扶養的財産分与は、離婚した相手が経済的に自立できるようになるまで支援するものです。
そのため、経済的な自立が可能になるまでの期間を定めて支払われます。
経済的な自立が可能になるまでの期間は個々の状況によっても異なりますが、1~3年とすることが一般的です。
期間を定めた場合、たとえその期間内に自立できなかったとしても、それ以降の支援は望めません。

高齢や病気・障害を理由に就職のめどが立たない場合、長期間の支払いが認められる可能性もあります。
ただし、年金の受給開始などにより支援が必要なくなった場合には、それ以降の支払いは受けられないことが一般的です。
同様に、分与を受ける側が相続などにより多くの財産を取得した場合や、再婚によって他者の扶養に入った場合にも、支払いは終了します。

まとめ

この記事では、扶養的財産分与について解説しました。
離婚後すぐに自立した生活を送ることが困難な場合には、相手に生活のサポートを求められます。
しかし裁判などで認められるには、相応の理由がなければいけません。
認められた場合でも、離婚後はお互いに相手を扶養する義務がなくなるため、受け取れる金額は最低限です。
当事者同士の話し合いで決まらない場合には、裁判などにより判断する必要があります。
財産分与にお悩みの方は、弁護士までご相談ください。

清算的財産分与の対象や割合について

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離婚時、夫婦の共有財産を夫婦で公平に分ける仕組みが、清算的財産分与です。
たとえ夫婦どちらかの名義の財産であったとしても、それが夫婦の協力によって築かれた財産であれば、清算的財産分与の対象です。
この記事では、清算的財産分与の対象や、分配するときの割合について詳しく解説します。

清算的財産分与とは

夫婦が協力して築いてきた財産は、基本的に、離婚時に公平に分配します。
それは共働きであっても、どちらかが専業主婦(主夫)であっても変わりません。
たとえ専業主婦であっても、家事や育児を担うことで就労していた相手の生活を支えていた場合には、夫婦で協力して財産を築いてきたといえます。
そのため清算的財産分与では、財産を2分の1ずつ分け合うことが基本です。

財産形成の貢献度に応じて分配割合は変わる

分配するときの割合は、財産形成への貢献度に応じて変わります。
たとえば夫婦のどちらかが収入もなく、家事や育児も行っていなかった場合、財産形成に貢献していたとはいえません。
この状況で財産を2分の1ずつ分けることは不公平です。
そのため貢献度が低い場合には、分配割合が少なる可能性があります。

また特殊な資格や技術によって多額の収入を得ていた場合、その人は財産形成への貢献度が高いといえます。
その資格がなければ、それだけの収入を得られなかったと考えられるためです。
たとえば医師や弁護士など資格を生かした職業や、危険をともなう職業など、その特殊性とそれに対する報酬額によって、分配割合が変動する可能性があります。

そのほか、マイナスの貢献も考慮されることがあります。
どちらか一方が莫大な金額を浪費した場合、分配割合に影響を与えることがあります。

財産分与の対象となる期間

清算的財産分与は、婚姻期間中、夫婦が協力して家庭を築いていた期間に形成された財産を公平に分け合います。
そのため夫婦関係が破綻し、別居していた場合には、別居するまでの間に築いた財産を分け合うことになります。
離婚が成立していなくても、別居後に築いた財産は、夫婦それぞれの特有財産として認められます。

清算的財産分与の対象となる財産

対象となるのは、夫婦が協力して築いてきた財産です。
そのため、それぞれが結婚前から所有していた財産は分け合う必要がありません。
また結婚後に得た財産であっても、夫婦のどちらかが相続や贈与などによって得た財産は個人のものであると認められ、分与の対象外です。
さらに、夫婦の合意によって「個人の財産である」と認めた財産については、分与の対象から除外できます。

具体的な財産の例

清算的財産分与の対象となる主な財産は以下の通りです。

  • 預貯金
  • 不動産
  • 有価証券
  • 生命保険
  • 退職金
  • 家財道具

不動産の名義が夫婦どちらかの単独名義であったとしても、分与の際には相手にその価額分の財産を分配する必要があります。
夫婦どちらかが不動産を取得し他方には現金を渡す方法や、不動産を売却してその売却益を分配する方法によって分配します。

退職金

将来支給される予定の退職金も財産分与の対象です。
退職金は、労働の対価の一部を後払いする仕組みであると考えられます。
そのため、婚姻期間中に働いた分の退職金は夫婦で分配できます。
退職金の分配は、原則として離婚時に行います。
しかし実際に企業から退職金が支払われるのは退職時であり、離婚時には手元にありません。
経済的な理由により離婚時に分配することが難しい場合には、夫婦の合意のもと、分割払いや退職時に支払うなどの取り決めを行うことも可能です。

個人年金と厚生年金

個人年金は生命保険などの契約と同じものと考えられ、財産分与の対象です。
個人年金を解約した場合に得られる解約返戻金の額を分与の対象額とします。

一方、社会保険の一種である厚生年金は財産分与の対象にはなりません。
ただし、保険料の納付実績を夫婦で分割することは可能です。
専業主婦歴が長く厚生年金保険料の納付実績が少ない場合には、将来的にもらえる年金額が少なくなります。
そうならないよう、年金分割手続きをして納付実績を分け合っておくことで、将来に備えられます。
対象となるのは婚姻期間中の厚生年金部分であり、基礎年金や私的年金部分は対象外です。
専業主婦や扶養の範囲内で働いているなど第3号被保険者であれば、配偶者の合意がなくても2分の1ずつ年金分割できます。

まとめ

この記事では清算的財産分与について解説しました。
婚姻期間中に夫婦で協力して築いた財産は、基本的に2分の1ずつ分配できます。
ただし財産形成への貢献度の違いによって、分与の割合が変わることもあります。
現金や不動産など現在手元にあるものだけでなく、将来的に支払われる予定の退職金も財産分与の対象です。
対象となる財産や分与の割合は状況によって異なるため、財産分与を行う際には専門家の弁護士までご相談ください。

離婚後にトラブルにならないためには

離婚

離婚後も元配偶者との間でトラブルが起きるケースがあります。
たとえば、養育費の未払いや面会交流のトラブルなどです。
本記事では、離婚後のトラブルを防ぐために注意すべきポイントをトラブルが発生した場合の対処法とあわせて解説します。

離婚後に起こりやすいトラブル

まず初めに、離婚後に起こりやすいトラブルを具体的に見ていきましょう。

1.養育費の未払い

最も多く見られるトラブルとして、養育費の未払いがあります。
離婚の際に取り決めたものの途中で支払いが滞るケースとして、養育費を支払う親が再婚したり収入が下がってしまったりなど、環境の変化によることが考えられます。
また、離婚の際に養育費についてきちんと取り決めをしなかった場合もトラブルに発展する可能性があります。
親は未成年の子どもに対して、自分と同じ水準の生活を保障する義務(生活保持義務)があるため後から請求することは可能ですが、離婚時に養育費の取り決めがなされていなかった場合では、さかのぼって請求することは難しいと言えます。

2.面会交流の制限や拒否

離婚後に子どもと面会させてもらえない、という事例もよくあるトラブルの1つです。
親権者とならなかった親には子どもとの面会交流権が認められていますが、面会交流の方法について明確なルールはなく、子どもの年齢や居住場所、生活状況などを考慮して話し合いにより取り決めるのが実情です。
したがって、面会の際に暴力や虐待があるなどの明確な拒否理由がなければ、協議による調整が望ましいですが、それでも解決できない場合は調停を申し立てることができます。

3.財産分与の不履行

3つ目は、財産分与に関するトラブルです。
財産分与は離婚の際に財産を公平に分配する制度ですが、離婚した後の生活を保障するという性質や離婚原因を作ったことへの慰謝料の意味合いがあります。
したがって、夫婦どちらかの名義の財産でも夫婦が協力して築いたものであれば対象となりますが、現金以外にも不動産や自動車なども対象となるため、公平に分配することが難しいという側面があります。
また、早く離婚したいという気持ちから、財産分与についてしっかり取り決めをせず離婚してしまったというケースも見られます。

離婚後のトラブルを防ぐためのポイント

それでは、具体的に離婚後のトラブルを防ぐためのポイントをご紹介します。

1.離婚時の取り決めは公正証書にする

協議離婚(話し合いによる離婚)の場合、養育費や財産分与などの離婚条件を取り決める際は口約束ではなく、法的効力を持つ公正証書にまとめることが重要です。
公正証書とは、個人や法人の依頼に基づいて公証人が作成する文書で、反証のない限り強力な証拠力があります。
ただし、養育費の未払いなど、金銭の授受に対して家庭裁判所の手続きを経ることなく強制執行をするには、公正証書に「直ちに強制執行を受けることに従う」といった文言(強制執行認諾文言)を記載する必要があります。
なお、家庭裁判所で離婚調停を行うなど裁判所を通じて離婚をした場合には、強制執行力のある「調停調書」を作成するので、公正証書を作成する必要はありません。

2.離婚後の連絡手段やルールを明確にする

元配偶者とのやり取りをスムーズにするため、連絡方法を事前に取り決めておくことも重要です。
特に、面会交流については子どもに対する影響を考慮する必要があります。
面会交流の頻度だけではなく、宿泊や旅行、学校行事への参加など、細かい部分までルールとして決めておけば、後のトラブルを防ぐことになります。
感情的な対立により連絡や話し合いが難しい場合は、弁護士や専門機関など第三者を介する方法もあります。

3.専門家への相談を活用する

離婚後のトラブルが心配なら、あらかじめ弁護士など専門家のサポートを受けることも視野に入れましょう。
離婚の際にきちんと話し合っておけば防げるトラブルも多く、専門家の力を借りることでスムーズに解決することができるだけでなく、万が一トラブルが発生した場合もすぐに対処することができます。

離婚後にトラブルが発生した場合の対処法

最後に、離婚後にトラブルが発生した場合の対処法について簡単に解説します。

養育費の未払いが発生した場合

養育費の未払いは、協議で取り決めた場合は支払日から5年、調停や審判などの裁判所の手続きで取り決めた場合は支払日から10年を経過する前に請求できます。
まずは相手と連絡を取って督促することが考えられますが、支払いに応じてもらえない場合は交渉や調停へと移ります。
また、離婚調停などで調書を作成している場合は、その調書を用いて履行勧告や履行命令、強制執行といった方法をとることができます。

面会交流のトラブル

上述したように、まずは話し合いによる解決が望ましいですが、それでも解決しない場合は面会交流調停を申し立てることができます。
調停を活用し、面会条件を再設定することが重要です。

財産分与が進まない場合

財産分与について、話し合いがまとまらない場合や話し合いができない場合は、離婚後2年以内であれば家庭裁判所に調停の申し立てをすることで請求が可能です。
また、調停でも話し合いがまとまらなかった場合には自動的に審判へ移行します。

まとめ

離婚後にトラブルにならないために注意すべきポイントについて解説しました。
離婚後のトラブルを防ぐには、離婚時の取り決めを明確にし、法的に対応できる準備を整えておくことが重要です。
適切なコミュニケーションを心がけることで防ぐことができるトラブルもありますが、困った時は弁護士への相談も視野に入れてみてはいかがでしょうか。

離婚調停が不成立になったらどうする?その後の手続きと注意点

離婚

離婚調停が成立しないケースは珍しくなく、その場合にどのように対応すべきか悩む人も多いと思います。
いきなり離婚裁判に進むのは抵抗がある場合でも、検討すべき選択肢があります。
本記事では、離婚調停が不成立になった後の選択肢や対応方法について詳しく解説します。

離婚調停とは

離婚調停とは、夫婦間の話し合いだけでは離婚について合意できない場合に、家庭裁判所で話し合うことで双方が合意、円満に解決することを目指す手続きです。
離婚は、夫婦の間で離婚に関する条件を話し合い、合意した上で離婚届を提出する形式(協議離婚)が一般的ですが、夫婦間での話し合いがまとまらなかったり、話し合いができない状態であったりした場合は、家庭裁判所での調停手続きを利用することができます。
裁判を回避し、夫婦間の問題は話し合いによって双方が納得して解決するのが望ましいという考えから、裁判に進む前に調停手続きを行うことが法律で義務づけられています。
離婚調停では調停委員が間に入り、双方の意見を聞くことで財産分与や養育費など、離婚の条件について調整を行います。

離婚調停が不成立になるケース

家庭裁判所が公表している司法統計では、離婚調停を実施した件数に対する不成立の割合は約16~17%となっています。
離婚調停が不成立になる主な原因としては、以下のようなものがあります。

  • 相手が離婚を拒否している
  • 離婚理由に納得していない
  • 財産分与や養育費などの離婚条件で折り合わない
  • 調停に出廷しない

これらの理由により、裁判官が離婚が成立する見込みがないと判断した場合は、調停が不成立となります。

離婚調停が不成立になったら取れる選択肢

それでは、離婚調停が不成立になったらどのような選択肢があるのでしょうか。
順番に見ていきます。

1.協議離婚への再挑戦

まずは、再び夫婦間で話し合いを試みることが考えられます。
夫婦の話し合いによる協議離婚は裁判所の手続きが必要なく、時間や費用などを削減できるというメリットもあります。
また、離婚調停を経たことにより、より相手の意見や主張がわかるようになり、当初の話し合いよりスムーズに進む可能性があります。
ただし、感情的な対立が強く冷静に話し合うことが困難な場合は、弁護士を介して協議する方法もあります。

2.ADR(裁判外紛争解決手続)を利用する

家庭裁判所の調停では解決できなかったが、裁判へ進むのはハードルが高いと感じるようであれば、ADRの利用も視野に入れると良いでしょう。
ADRとは、法務省が管轄する民間の調停機関です。
ただし、ADRを利用して合意に至った場合に作成する合意書には、法的な効力がありません。
取り決めた内容が履行されない場合の強制執行などはできないため、注意が必要です。
なお、ADRを利用して離婚した場合は調停離婚ではなく、協議離婚となります。

3.離婚裁判を申し立てる

離婚裁判は、裁判所が判決によって強制的に離婚を成立させる方法なので、夫婦で合意していなくても離婚が可能ですが、一方で法律により定められた離婚理由に当てはまらない場合は離婚できません。
裁判による離婚は、最終手段と考えておきましょう。

離婚裁判に進む場合の注意点

最後に、離婚裁判を選択した場合の注意点を解説します。

1.離婚裁判は調停以上に時間や費用がかかる

離婚裁判には、離婚調停以上に時間と費用がかかります。
離婚裁判では訴訟の提起後、審理において主張や反論などを行いますが、この期間は1年以上かかる場合があります。
裁判費用については、1万6,000円~2万円程度かかり、訴訟費用の他、財産分与や養育費などについて請求する場合の費用、裁判所からの書類送付に必要な費用などが含まれます。
また、弁護士費用として60~120万円程度必要ですが、弁護士に依頼せず自ら裁判で争うことは現実的ではありません。
基本的に裁判費用を相手に請求することはできないため、注意が必要です。

2.離婚理由を証明する必要性

上述したように、裁判による離婚は強制的に離婚を成立させる方法なので、民法770条に規定された「法定離婚事由」のいずれかに該当する必要があります。
法定離婚事由は以下の5つです。

  • 不貞行為(浮気・不倫)
  • 悪意の遺棄(正当な理由なく同居義務や協力義務などを履行しない)
  • 相手の生死が3年以上明らかではない
  • 相手が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
  • その他、婚姻を継続しがたい重大な事由がある

その他、個別の事情により離婚できるかどうかが決まるため、裁判を起こしたからといって必ず離婚できるわけではない点に留意しておく必要があります。

まとめ

離婚調停が不成立になった後の選択肢や対応方法について解説しました。
調停の不成立は離婚が成立しないことではなく、次の手段を選ぶタイミングであるとも言えます。
裁判や再交渉など、最適な方法を選ぶために専門家の助けを借りることも重要です。
離婚問題においては冷静な対応と適切な次へのステップのために、弁護士への相談も検討してみてはいかがでしょうか。

親権の決め方と流れについて解説

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親権は、離婚の際に子供の生活や成長を守るために考える必要がある事項です。
親権の取り決めは子供の福祉を第一に考えたうえで、両親が話し合いや裁判所の介入によって決定します。
本記事では、親権の決め方や手続きの流れについて詳しく解説します。

親権とは?

親権とは、子供の身上監護(生活の管理や教育)と財産管理を行うための権限のことをさし、子が未成年の時に、発生します。
日本の親権では、2つの権利があります。

1つ目が、財産管理権です。
財産管理権は、その名の通り、子の財産を管理したり、子の財産に関する法律行為について、子を代理したりする権限をさします。

2つ目が、身上監護権です。
身上監護権は、子の職業について許可したり、身分行為を代理したりする権利であり、子の監護をする権利といえます。

通常、これらの2つの権利の双方を持つことが多いですが、親権者が子とは離れて暮らしているというような、事情がある場合、親権者とは別で、身上監護権のみを持つ場合もあります。
親権は、夫婦が婚姻中であれば、夫婦が共同して親権を行使することとなっており、家庭裁判所の許可や、夫婦間の合意によって、夫婦のどちらか一方が親権を行使するといったような規定はありません。
したがって、婚姻中であれば、親権を決めるといったような手続きは発生せず、親権を決める必要があるのは、夫婦が離婚した時になります。

親権の決め方

ここからは親権の決め方を解説します。
上記のように、親権の帰属が問題となるのは、夫婦が離婚した時です。
この際、親権は、子供の利益を最優先に考えたうえで決められます。
決定方法には以下のステップがあります。

話し合いによる合意

離婚協議の場で、夫婦間で話し合いを行い、親権者を決めます。
この方法が最も円滑で、費用や時間もかからないため、この方法が、もっともおすすめの方法です。
しかし、実際には、お互い親権を譲らないケースが多く、また離婚により、夫婦の関係が破綻している場合も多いため、話し合いにより親権が決まらないケースも多くあります。
そのような場合でも、話し合いの場でむきにならず、冷静に相手と話し合うことが重要です。
また、場合によっては、夫婦の二人だけではなく、中立な第三者を交えて、話し合うことも重要といえます。

家庭裁判所での調停

夫婦間の話し合いで合意に至らない場合、家庭裁判所での離婚調停が行われる場合があります。
離婚調停は、離婚調停の申し立てにより開始され、調停委員が双方の意見を聞き、調整を試みます。
離婚調停は、夫婦間での任意の話し合いとは異なり、調停委員が夫婦の双方から話を聞き、話し合いを取りまとめます。
したがって、夫婦は直接話し合う必要はないため、心理的な負担は少ないです。
また、調停がまとまった場合は、裁判所の判決と同様の効果を得ることができるため、これに基づき強制執行を行うことも可能です。
しかし、調停は、通常の裁判とは異なり、双方が合意をしなければ、調停が成立しないため、どちらかが合意をしなければ、調停によっても親権が定まらないことになります。

裁判での決定

調停でどちらかが調停に合意せず、調停でも親権が決まらなかった場合は、裁判に進み、最終的に裁判官が親権者を決定します。
この離婚裁判での親権の判断基準は、もっぱら子の利益に着目して判断がなされます。
具体的には、夫婦双方の経済状態や健康状態などといったさまざまな事情を考慮します。
また、これらの判断要素を考慮しても判断が難しい場合は、母親が優先されることが多いです。

親権決定の手続きの流れ

親権決定の手続きの流れは以下の通りです。

離婚協議の開始

まずは夫婦間で親権について話し合い、合意を目指します。
このとき、子供の生活環境や将来の教育方針なども考慮し、子にとって適切な判断をすることが重要です。

家庭裁判所への申し立て

話し合いで解決できない場合、家庭裁判所に調停を申し立てます。
申立書を提出することにより、調停が開始されます。

調停の進行

調停では、調停委員が双方の主張を聞き、子供の福祉を重視した解決策を提案します。
調停で合意に至れば、親権が正式に決定します。
調停は、双方が別々に調停委員に呼び出され、それぞれ約30分、調停委員と話し合いをします。
場合によっては、これを数回繰り返すことがあります。

裁判の実施

調停でも解決しない場合、裁判に進みます。
裁判所は証拠や証言をもとに親権者を決定し、判決を下し、判決が確定したら、これに従わなければなりません。

まとめ

本記事では、親権の決め方や親権決定の流れについて解説しました。
親権の決定に当たっては、相手の態度により進め方や手続きが大きく変わるため、手続きの概要や親権の内容を抑えておくことが重要です。
しかし、これらは法律的に複雑なため、親権に関する問題を抱えている場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

裁判離婚にかかる費用はどのくらい?

離婚

離婚手続きの中でも、裁判離婚は最も時間と費用がかかる方法です。
協議離婚や調停離婚と異なり、弁護士費用や裁判費用が必要になるためです。
本記事では、裁判離婚にかかる具体的な費用の内訳や、その負担を軽減する方法について詳しく解説します。

裁判離婚とは

離婚には、大きく分けて3つの方法があります。

・協議離婚
・調停離婚
・裁判離婚

離婚の多くは、協議離婚と言って夫婦の話し合いにより離婚条件を決め、市区町村へ離婚届を提出するという方法ですが、夫婦間での協議や調停が成立しなかった場合は、家庭裁判所へ申し立てを行い、裁判所が離婚の判断を下します。
これを「裁判離婚」と言います。
婚をする際、財産分与や養育費、親権など、さまざまな条件について取り決めなければなりませんが、これらの条件について調停で解決しない場合や、相手が離婚を拒否している場合、最終手段として裁判離婚を選択します。

裁判離婚は最終手段

上述したように、裁判離婚は最終手段です。
離婚調停を行わず、いきなり離婚訴訟を申し立てることはできません。
これは、夫婦間の問題は、話し合いによりお互いが納得した上で解決することが望ましいという考えの下、訴訟を提起する前に調停手続きを踏まなければならないことが法律で定められているためです。
また、裁判離婚は、裁判所が判決によって強制的に離婚を成立させる方法なので、夫婦で合意していなくても離婚が可能ですが、一方で、法律により定められた離婚理由に当てはまらない場合は離婚できません。

手続きの流れ

それでは、裁判離婚をする際の流れについて簡単にご紹介します。
裁判により離婚するには、以下のような流れで進行します。

  1. 訴訟提起
  2. 審理
  3. 判決


訴訟を提起するには、訴状を夫または妻の住所地を管轄する家庭裁判所へ提出します。
離婚訴訟では、同時に財産分与や子どもの養育費、親権、慰謝料などについても申し立てることができます。
審理において主張、反論などを行いますが、この期間は1年以上かかる場合もあります。
最後に判決が下されて離婚の認否が決定しますが、審理の途中で和解に至るケース(和解離婚)や、相手方が離婚請求を受け入れるケース(認諾離婚)もあります。

裁判離婚にかかる費用

ここからは、実際に裁判離婚にかかる費用をご紹介します。
裁判離婚にかかる費用には、大きく分けて3つあります。

  1. 裁判所に支払う費用
  2. 弁護士費用
  3. その他(証拠収集や裁判所への交通費など)

1.裁判所に支払う費用

裁判所に支払う費用として、以下のようなものがあります。

・訴訟費用(収入印紙)…1万3,000円~2万円
・郵便切手代…6,000円程度

離婚訴訟の申し立てをする際、訴訟費用として1万3,000円程度かかります。
時に財産分与や養育費、親権などについて請求する場合は、それぞれ1,000円程度の費用が追加され、総額で2万円程度となります。
また、裁判所からの書類送付に必要な費用として、郵便切手を用意します。
裁判所によって必要な金額が異なるため、訴状を提出する裁判所へ確認して下さい。

2.弁護士費用

裁判を弁護士に任せる場合には、弁護士費用がかかってきます。
弁護士費用の相場は60~120万円程度で、以下のようなものが含まれます。

・相談料…1時間あたり5,000~1万円
・着手金…30~60万円
・成功報酬…30~60万円

相談料は初回無料の場合もありますが、1時間あたり5,000~1万円程度かかるのが一般的です。
また、着手金として30~60万円、裁判が有利に進んだ場合には成功報酬として30~60万円かかってきます。
その他、追加の証拠収集や書類作成、弁護士の裁判所への交通費などがかかる場合があります。

3.その他の費用

証拠収集を調査会社に依頼する場合は、10万円~数十万円程度の費用が発生します。
また、裁判所が遠方の場合、裁判に出席するための交通費や宿泊費も考慮する必要があります。

裁判離婚にかかる費用は誰が払うのか

裁判離婚にかかる費用のうち、裁判所に支払う費用は相手方に払ってもらえる場合があります。
それは、最後に判決により費用の負担割合が決定するので、訴訟費用の一部または全部を相手方に請求することができるためです。
一方、弁護士費用は原則として自分で負担しなければなりません。
例外として、相手の不倫などの不法行為が原因で慰謝料が認められた場合に限り、慰謝料の金額に対して10%程度を弁護士費用として上乗せすることができます。

費用を軽減する方法

費用面の問題から弁護士に依頼せず裁判を行うことは可能ですが、実際には弁護士をつけずに離婚訴訟をするのは難しいと考えた方が良いでしょう。
そこで、以下のような方法で費用の軽減を検討してみて下さい。

  1. 裁判外での解決を目指す
  2. 法テラスの利用


裁判に進む前に、調停や交渉によって解決を試みるのも1つの手段です。
調停での解決は訴訟よりも簡単に進行するので、時間と費用が少なく済みます。
また、法テラス(日本司法支援センター)では、弁護士費用の一部や全額を立て替えてくれる制度があります。
資産要件を満たす場合に弁護士費用の立替制度が利用でき、立て替えてもらったものは分割で返済します。

まとめ

裁判離婚は、法的に確実な解決を目指す方法ですが、多くの費用がかかります。
事前に弁護士費用などを把握した上で計画的な準備が必要ですが、費用負担を軽減するためには、裁判外での解決も検討する必要があります。
不安な場合には、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

離婚後の養育費の平均相場と金額を変更できるケースについて解説

離婚

養育費の平均相場は、最高裁判所の公式ホームページで統計データを発表しており、どなたでも閲覧できます。
この記事では、離婚後の養育費の平均相場について解説します。

養育費とは

養育費とは、子どもの監護や教育のために必要な費用であり、一般的には子どもが経済的・社会的に自立するまでにかかる費用を意味します。
離婚して親権がなくなった元配偶者でも、子どもの親であることに変わりはないので養育費の支払義務はなくなることはありません。

養育費の平均相場とは

養育費は子どもの人数や年齢、支払義務を負った親の年収によって費用は異なります。
また、支払義務者が給与受給者もしくは自営、養育費を受け取る権利者の年収によっても変動します。

養育費の平均相場に関する参考データ

養育費の平均相場について、最高裁判所事務総局が発表した令和5年度司法統計年報(家事編)を参考に説明したいと思います。

月額の養育費母親が監護者となった未成年の子どもの数
1人2人3人4人5人以上
1万円以下2.2%2.4%3.3%0.6%24.0%
1~2万円8.1%6.7%7.4%13.6%8.0%
2~4万円35.7%27.2%21.4%22.2%16.0%
4~6万円28.2%24.6%21.0%16.0%16.0%
6~8万円11.6%17.2%10.3%11.7%12.0%
8~10万円6.3%9.1%15.4%8.6%8.0%
10万円を超える7.9%12.8%21.2%27.2%16.0%
額不定0.1%
総数7,1434,6541,24116225

監護とは、子ども福祉や最善の利益を考慮しながら、継続的に保護する責任を持つことであり、金銭面や精神面なども含めて子どもの監督および保護を行う者のことを監護者と言います。
たとえば母親が監護者となって未成年の子どもを監護する場合、元配偶者が支払う養育費の平均相場は以下の通りです。

  • 子ども1人の場合:月額2~6万円
  • 子ども2人の場合:月額2~6万円
  • 子ども3人の場合:月額2~6万円もしくは10万円以上
  • 子ども4人の場合:月額1~6万円もしくは10万円以上
  • 子ども5人以上の場合:1~10万円以上


上記の平均相場は子どもの人数による金額であり、支払義務者および監護者の収入は考慮されておりません。
そのため、支払義務者の収入が多い場合には、平均相場よりも高い金額を支払う可能性があり、逆に支払義務者よりも監護者の方が多くの収入を得ている場合は、平均相場よりも低い金額になることもあります。
このように養育費は、支払義務者および監護者の収入を得る方法(給与・自営)や子どもの人数、年齢によっても平均相場は異なります。

また、家族構成や健康状態、収入額、子どもの進学先、支払義務者の支払い能力など、あらゆる面を考慮して決定されます。
具体的な養育費の目安をお知りになりたいときは、弁護士にご相談されることをおすすめいたします。

養育費の金額を変更できるケースとは

養育費の金額は、当事者間の話し合いによって双方が合意すれば変更することは可能です。
子どもの成長とともに決定した養育費よりも多く必要になるケースもあれば、逆に支払義務者の収入が会社事情などで減少すると支払えない可能性もあります。
その際には、養育費の増減について当事者同士の話し合いが再度必要になるため、どのような場合に養育費の増減が必要になるのかを説明します。

養育費を増額したい場合

養育費を増やしたい場合とは、子どもや監護者に何らかの事情があり、以下のように一般的な状況よりもお金がかかる場合です。

  • 子どもが私立の高校や大学に進学した場合
  • 子どもが事故や病気で障害を負った場合
  • 監護者が病気などで今までのように働けず収入が減少した場合


基本的に子どもの成長とともに必要な養育費は多くなると考えられているため、養育費を決めた当初の金額では生活を維持できないかもしれません。
そのため、支払義務者と話し合って事情を理解してもらえれば養育費を増額してもらえる可能性があります。

養育費を減額したい場合

養育費を減らしたい場合とは、支払義務者などに以下のような事情が起こった場合です。

  • 支払義務者がリストラされて今までのように支払えない場合
  • 支払義務者が病気で勤務時間を短縮したために収入が減った場合
  • 支払義務者の再婚相手との間に子どもが生まれた場合
  • 監護者が再婚して、再婚相手が子どもと養子縁組をした場合


その他にも社会情勢の影響により、物価高騰や増税などで支払義務者の生活が苦しくなった場合なども監護者と話し合うことで養育費を減額してもらえる可能性があります。

まとめ

今回は離婚後の養育費の平均相場について解説しました。
養育費の平均相場は、子ども年齢や人数、支払義務者および監護者の収入を得る方法(給与・自営)によっても異なります。
あくまでも今回ご紹介した平均相場は参考の金額であり、必ずしもご紹介した養育費を受け取れるわけではないのでご注意ください。
離婚後の養育費がいくらもらえるのか悩みや不安を抱えているようであれば、法律の専門家でもある弁護士に相談されることをおすすめいたします。

離婚が認められないケースとは?その理由と解決策も解説

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離婚が認められないケースには、法律上の制約や社会的な理由があります。
この記事では、離婚が認められないケースや離婚できない場合の解決策について解説します。

離婚が認められないケース

基本的に離婚するには夫婦の合意がなければ離婚できません。
そのため、夫婦のどちらかが離婚したいと言っても法的に離婚が認められないケースがあります。
主な離婚が認められないケースは以下の5つです。

  • 有責配偶者から離婚を申し出た場合
  • 離婚相手が離婚に合意してもらえない場合
  • 離婚理由を法的に認められない場合
  • 配偶者が精神病を患っていても回復の見込みがある場合


それぞれ理由を詳しく解説します。

有責配偶者から離婚を申し出た場合

離婚を申し出た者が有責配偶者の場合は離婚できない場合があります。
有責配偶者とは、離婚原因となった問題や行為を起こした配偶者のことです。
問題や行為とはDVや不貞行為、モラハラなどを行う行為です。
認められない理由として、夫婦生活を身勝手な行動で破綻させておきながら、一方的に離婚するという無責任な行動は認められないからです。
ただし、すでに夫婦生活が破綻している場合や、離婚を認めないことによって離婚相手に不合理な状況を招きかねない場合などは、有責配偶者でも例外的に認められることがあります。

離婚相手が離婚に合意してもらえない場合

離婚する場合は、基本的に夫婦の合意がなければ離婚できません。
一般的に用いられる協議離婚は、夫婦が離婚に合意した後に離婚届に署名・押印して役所に提出すれば離婚が成立します。
一方が離婚に合意しなければ、家庭裁判所に申し立てを行い調停離婚を行いますが、その際にも夫婦の合意が必要です。
離婚する際には、夫婦どちらか一方が離婚したいと言っても相手が合意しなければ離婚できないので注意してください。

離婚理由を法的に認められない場合

協議離婚や調停離婚で離婚できなければ、裁判離婚に発展するケースがあります。
その際、離婚理由が法律で以下のように定められており、該当する場合は訴えられます。

  • 配偶者の一方に不貞行為があったとき
  • 配偶者から悪意で遺棄(扶助・扶養を怠る行為)されたとき
  • 配偶者が行方不明になって生死が3年以上わからないとき
  • 配偶者が重い精神病を患い、回復の見込みがないとき
  • その他に婚姻を継続できない重大な事由があるとき


裁判において、離婚理由が上記内容に該当していないと判断された場合は、法的に認めてもらえないので離婚できません。

配偶者が精神病を患っていても回復の見込みがある場合

配偶者が重い精神病を患って回復の見込みがない場合は、家庭裁判所に離婚を申し立てることが可能です。
しかし、何年先になるかわからないけど回復の見込みがある場合は、離婚できない可能性があります。

離婚したいけど離婚できない場合の解決策

離婚する際には、以下の方法で行います。

  • 協議離婚
  • 調停離婚
  • 離婚裁判


次に、それぞれ詳しく解説します。

協議離婚

協議離婚の場合は、夫婦間で十分な話し合いを行い、互いの意見や感情を理解することが大切です。
感情的にならず冷静な話し合いが求められますが、話し合いで解決できなければ第三者に介入してもらう必要があります。
それでも、離婚に至らない場合は調停離婚や裁判離婚を検討する必要があります。

調停離婚

調停離婚とは、家庭裁判所に調停離婚の申し立てを行い、調停員に介入してもらって離婚に向けて話し合うことです。
調停員が、双方から親権や財産分与、養育費、慰謝料などの離婚条件を聞いて離婚の合意をもらえるように話を進めます。
第三者が介入することで、話し合いがスムーズに行える可能性があります。
ただし、離婚調停を行っても離婚できない場合があります。
その際には、離婚裁判を検討する必要があります。

離婚裁判

離婚裁判とは、裁判所の判決によって離婚する手続きです。
家庭裁判所に離婚訴訟の申し立てをして、裁判官が離婚できると認める判決を下せば離婚が成立します。
裁判は当事者でも行えますが、相手側が弁護士に依頼している場合や離婚の争点などを明確に判断し、相手と争うことは専門家でなければ困難です。
そのため、離婚裁判を行う場合は弁護士に依頼することをおすすめします。

まとめ

今回は、離婚が認められないケースや離婚できない場合の解決策について解説しました。
離婚は、基本的に夫婦の合意がなければできません。
離婚に至る経緯にはさまざまな理由があり、状況によっては思うように話が進まない場合があります。
その場合は、離婚裁判に発展する可能性も見越して、離婚調停の段階から離婚に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

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