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コラムカテゴリー: 離婚

選択共同親権とは?単独親権とはどう違う?

選択共同親権とは?

日本では、離婚後に親権をどちらか一方の親が持つ単独親権が原則でした。
しかし、民法の改正により選択共同親権が今後導入されます。
この記事では、共同親権がどのような制度で単独親権とどう違うのか、また共同親権のメリットやデメリットについて解説いたします。

選択共同親権とは?

選択共同親権とは、2024年5月に成立した改正民法によって導入される新しい制度です。
父母が離婚した後も、父母の協議によって、親権を共同で持つか、または従来の単独親権とするかを選択できるようになります。
これにより、離婚後も父母双方が、子どもの養育や教育、医療などに関する重要な事柄について共同で決定する権限を持つことになります。
この制度の目的は、離婚後も父母が協力して子育てに関わる環境を整備し、子どもの利益を最大限に守ることにあります。
父母が合意できない場合は、家庭裁判所が子の利益を考慮して親権を定めることになります。

選択共同親権はいつ施行される?

選択共同親権を導入する改正民法は、2024年5月に成立しました。
この改正法は、公布の日から2年以内に施行されることが定められています。
したがって、具体的な施行日はまだ確定していませんが、遅くとも2026年5月24日までには施行される予定です。

単独親権との違い

単独親権とは、離婚後に父母のどちらか一方のみが親権を持ち、その親が単独で子どもの監護、教育、財産管理といったすべての親権を行使する制度です。
これに対し、選択共同親権は、親権を父母双方が共同で持つため、離婚後も父母2人が協力して重要な事柄を決定します。
単独親権では、親権を持たない親は、財産管理や監護などにおける法律行為の代理権・同意見を持ちません。
共同親権では、離婚後も父母の双方が子どもの成長に責任を持ち続けることになります。

選択共同親権のメリット

選択共同親権は、子どもの養育環境や父母の関係性に多くのメリットをもたらします。

離婚時の親権を巡る対立が緩和される

離婚時において、親権をどちらが持つかを巡る争いは、夫婦間の対立を激化させる大きな原因でした。
選択共同親権が導入されることで、親権を共同で持つという選択肢ができるため、親権をめぐる激しい争いが緩和されることが期待されます。
どちらか一方が親権を失うという認識が薄れることで、冷静な話し合いが進みやすくなります。

親子間の交流が増える

共同親権となることで、両親がともに子どもの養育に関する意思決定に関与できるようになります。
これにより、単独親権の場合に親権を持つことができなかった親が、子どもの生活や教育に積極的に関わる機会が増え、親子間の交流が増加することが期待されます。
子どもが両親から愛情とサポートを受けやすくなるという利点があります。

選択共同親権のデメリット

一方で選択共同親権はメリットばかりではありません。
ここからは選択共同親権のデメリットを見ていきましょう。

共同親権者がもめる可能性がある

共同親権では、子どもの進学や医療など、重要な事柄について父母双方が合意する必要があります。
しかし、離婚後も父母間の対立が残っている場合、意見が対立し、重要な意思決定が滞る可能性があります。
父母の協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に申し立てて判断を仰ぐことになります。

離婚後も父母同士で関わる必要がある

共同親権を選択した場合、離婚後も子どもの養育に関する協議のために、父母同士で継続的に連絡を取り、意思疎通を図る必要があります。
これは、離婚によって相手と関わりたくないと考えている一方の親にとって、精神的な負担となる可能性があります。
協力関係が築けない場合、共同親権の運用が困難になります。

共同親権を選択できないケース

改正民法で共同親権が導入されても、特定の状況下では共同親権を選択できず、単独親権となる場合があります。
共同親権を選択できないケースとして、虐待やDVが挙げられます。
父母の一方から子に対する身体的虐待やネグレクトなど、子の心身に有害な影響を及ぼす言動のおそれが認められる場合、子の安全確保が不可能となるため、共同親権は選択できません。
また、父母の一方から他方の配偶者への暴行、脅迫、暴言といったDVのおそれが認められる場合も、単独親権となります。
DVの存在は、父母間で冷静な協議を行うことが困難であると判断されるためです。
これらの状況では、たとえ父母が共同親権を望んでも、裁判所は子の利益を害すると判断し、単独親権を命じることが義務付けられています。

まとめ

選択共同親権は、離婚後も父母の協議により共同で親権を持つことができる新しい制度です。
親権争いの緩和や親子交流の増加といったメリットがある一方で、父母間での対立継続や、離婚後も関わり続ける必要があるといったデメリットもあります。
離婚トラブルでお困りの際は、ぜひ弁護士にご相談ください。

子どもの連れ去りは早期に対応すべき理由

子どもの連れ去りは早期に対応すべき理由

離婚を意識した配偶者が、同意なく子どもを連れて行ってしまい、別居することがあります。
このような子どもの連れ去りは違法行為といえるのでしょうか。
今回は子どもの連れ去りを早期に対応すべき理由について解説します。

子どもの連れ去りとは?

子どもの連れ去りとは、親権を持つ者または監護権を持つ者が、相手方の同意を得ずに子どもを現在の居住地から連れ出す行為を指します。
この行為は、未成年者誘拐罪に問われる可能性もある重大な問題ですが、夫婦間の問題であるために、連れ去り行為の違法性については、離婚や別居の状況によって判断が分かれることがあります。

離婚前の監護者の場合違法性が低いとされる

夫婦がまだ離婚に至っておらず、共同生活を続けている段階で、一方の親が子どもを連れて別居を開始するケースは多くみられます。
このような場合、連れ出した側の親が、事実上、子どもの生活を監督・保護する監護者として適切であったと判断されることがあります。
夫婦の共同生活がすでに破綻している状況下において、子どもの養育環境を確保するという目的が重視されるためです。

別居後の子どもの連れ去りは違法性が高い

夫婦がすでに別居しており、どちらの親が子どもを監護するかについて合意が成立している、または裁判所の判断が出ている状況下での連れ去り行為は、違法性が高いと判断されます。
別居が長期化し、子どもが一方の親との生活に慣れ、その環境が安定している場合、その安定した環境を破壊する行為は、子の福祉に大きく反するとみなされます。
特に、面会交流の日程を利用するなどして、監護権を持つ親の合意なく子どもを連れ去り、監護親と子どもとの交流を遮断する行為は、悪質性が高いと評価されます。
裁判所は、別居後に安定した監護体制を奪う行為に対しては、子の引渡しを命じる審判や、間接強制などの強力な手段を用いて、早期に元の状態に戻す判断を下す傾向があります。
別居後の連れ去りは、刑事上の未成年者誘拐罪にも該当する可能性があり、連れ去った親は民事や刑事の両面で責任を問われることになります。

年齢によっては子どもの意思で付いてきた場合はどうなる?

子どもの連れ去りの問題において、子どもの意思は非常に重要な要素となります。
連れ去り行為があったとしても、子ども自身の自由な意思に基づいて、連れ出した親と一緒にいたいと望んだ場合、法的な判断に影響を与えることがあります。
ただし、子どもの意思が尊重されるかどうかは、子どもの年齢と発達段階によって異なります。
一般的に、裁判所は10歳から15歳程度以上の子どもの意思については、その形成過程を慎重に調査した上で、子の福祉の観点から尊重する傾向があります。

子どもが連れ去られたときの対処法

子どもが連れ去られたときの対処法として、次のようなものが考えられます。

子の引渡しの調停・審判を行う

子どもが連れ去られた場合、まず家庭裁判所に対し、子の引渡しの調停または審判を申し立てます。
これは、子どもを監護している相手方に対し、子どもを元の生活環境に戻すよう裁判所が命じることを求める手続きです。
基本的には、話し合いから始まる手続きですが、DVなど状況によって話し合いが困難な場合は、最初から審判を申し立てることも可能です。
審判では、裁判官が提出された証拠や、家庭裁判所調査官の調査結果などに基づいて判断を下します。
子の引渡しを求める親は、自分が監護親としてふさわしいことや、連れ去られた状況が子の福祉に反することを主張し、証明する必要があります。

審判前の保全処分を行う

子の引渡しの調停や審判には時間がかかることが多く、その間に子どもの生活環境が固定化されてしまうリスクがあります。
これを防ぐために、本案の審判が下されるまでの間、子どもを一時的に元の親に引き渡すよう命じる審判前の保全処分を同時に申し立てることができます。
保全処分は、緊急性が高いと裁判所が判断した場合に発令されるものであり、子の福祉を一時的かつ緊急に確保するための非常に強力な手段です。
申立ての際は、連れ去りによる子どもの心身への影響や、生活環境の急変による不利益などを具体的に示す証拠を提出することが重要となります。

相手が引き渡しに応じない場合は強制執行できる可能性もある

子の引渡しを命じる審判や、審判前の保全処分が下されたにもかかわらず、相手方が子どもを引き渡しに応じない場合があります。
この場合、子どもが連れ去られた親は、強制執行の申立てを行うことが可能です。
強制執行は、裁判所の命令を強制的に実現する手続きであり、執行官が相手方の居所に立ち入り、子どもを引き渡すという方法が取られます。
ただし、子の強制執行は、子どもの心身に大きな負担をかける可能性があるため、裁判所は慎重に判断するため状況によっては難しい場合もあります。

まとめ

今回は、別居時などに子どもを連れ去られた場合の対応について考えていきました。
子どもを連れ去られた場合、時間がたつほど、引き渡しが難しくなります。
そのため、迅速に法的手続きを行うべきです。
とはいえ、自力での手続きは難しいため弁護士に相談することをおすすめします。

養育費の取り決めを公正証書にすべき理由と手続きの流れ

養育費の取り決めを公正証書にすべき理由と手続きの流れ

離婚をした後、子どもの将来を考える際に重要になるのが「養育費」です。
とはいえ、口約束だけで養育費を決めてしまうケースも少なくありません。
今回は、養育費の取り決めを公正証書にしておくべき理由と、その手続きの流れを解説します。

養育費とは

養育費とは、子どもが社会的・経済的に自立するまでに必要な費用です。
離婚した後も、親には子どもを育てる責任があります。
どちらか一方が子どもを引き取った場合、もう一方の親が養育費を支払う義務があります。
養育費に含まれるのは、以下のような費用です。

  • 食費、衣類、住居費などの日常生活費
  • 医療費や通院費用
  • 保育園や学校などの教育費
  • 習い事や塾などの課外活動費

子どもの年齢や進学希望によって必要な金額は変わります。
そのため、将来も視野に入れ、十分に話し合うのが大切です。

口約束では不十分な理由

養育費の支払いに関して、離婚の際に話し合って決めても、文書にしなかったり口約束だけだったりするケースがあります。
しかし文書化しないと、さまざまなリスクがあります。

  • 支払いが滞るリスクが高い
  • 証拠が残らない
  • 子どもが不利益を受ける

それぞれ確認していきましょう。

支払いが滞るリスクが高い

養育費の取り決めが口頭だけだった場合、支払いが止まっても法的に強制できません。
仮に一度は約束を守っても、再婚や転職、収入の変化などを理由に支払いをやめる可能性があります。

証拠が残らない

「養育費を支払う」と口約束をしても、文書がなければ後からその約束を証明できません。
仮に裁判になった場合、証拠がないと養育費を請求するのが難しくなるリスクがあります。

子どもが不利益を受ける

養育費の支払いが止まると、子どもの生活や教育環境に直接的な影響を与える可能性があります。
必要なサポートが受けられず、将来の進路が制限されることも考えられます。
養育費の取り決めは、強制執行が可能な「公正証書(強制執行認諾文言付き)」として残すのが重要です。

公正証書とは

公正証書とは、公証役場で公証人が作成する、法的な効力を持つ文書です。
離婚の際に養育費や面会交流、財産分与などを取り決める場合、公正証書を作成するのが推奨されます。
特に重要なのが、「強制執行認諾文言」が付いた公正証書です。
養育費の不払いが起きた場合、訴訟を経ずに、裁判所を通じて差し押さえの手続きができます。

公正証書を作成する手続きの流れ

公正証書を作成するには、一定の手順があります。

①内容の合意
②必要書類の準備
③公証役場に相談・予約
④作成・署名
⑤正本・謄本の受け取り

それぞれのステップを確認します。

①内容の合意

まず、養育費の金額、支払い方法、支払期間などの詳細について、当事者同士で合意します。
以下のポイントを話し合っておくと安心です。

  • 毎月の支払金額
  • 支払日
  • 支払い方法
  • 支払いの終了時期
  • 将来的に収入が変動した場合の対応

必要に応じて、弁護士や行政書士への相談も検討してください。

②必要書類の準備

次に、公証役場に提出する書類を準備します。

  • 離婚協議書(養育費の内容が記載されたもの)
  • 身分証明書
  • 戸籍謄本
  • 不動産の登記簿謄本
  • 固定資産税納税通知書もしくは固定資産評価証明書

年金分割も行う場合や、代理人に依頼する場合などで、内容が若干異なります。

③公証役場に相談・予約

公正証書の作成は、原則として公証役場で行います。
事前に電話などで予約を取り、必要書類や内容を確認しましょう。
不明点がある場合には、相談に応じてもらえるケースもあります。

④作成・署名

公証人の面前で内容を確認し、問題がなければ当事者が署名・押印を行います。
公正証書が完成し、法的効力が生じます。
なお公正証書の手数料は、取り決める金額によって異なるため、事前に確認してください。

⑤正本・謄本の受け取り

公正証書の原本、正本、謄本の違いは以下の通りです。

種類説明
原本大元の書類。公証役場に保管されるため、当事者は持ち帰れない
正本原本をもとにして作成される「正規の写し」。原本とまったく同じ内容で、法的な効力がある
謄本証拠や参考資料として使うためのコピー。法的な強制力はない

公正証書が完成すると、正本と謄本が発行されます。
養育費などで将来の強制執行に備えるなら、「正本」は必須です。
内容を確認したり保管したりするために「謄本」も持っておくと安心です。
特に養育費など継続的なお金の支払いがある場合は、正本を適切に保管してください。

公正証書の内容の見直しはできるのか

公正証書は、「一度作成したら永久にそのまま使い続けなければならない」というわけではありません。
子どもの成長や親の収入状況の変化など、環境の変化によって、養育費の内容を見直す必要が出てくる場合もあります。
当事者同士が合意すれば、公正証書の内容の変更が可能です。
ただし、口頭での約束やメモ書きだけでは、法的効力を持ちません。
変更内容について新たに修正後の合意書を作成し、それをもとに公正証書を再作成する必要があります。

まとめ

今回は、養育費の取り決めを公正証書にするべき理由と、手続きの流れを解説しました。
公正証書にすれば、養育費の支払いに法的な裏付けを持たせられます。
作成には一定の手間・費用がかかりますが、長期的に見ると安心して子育てを進めるための大切な備えになります。
不安があれば、弁護士や司法書士などの専門家に相談してください。

離婚調停を有利に進めるためのポイント

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夫婦間の話し合いだけでは離婚の条件がまとまらないとき、家庭裁判所での「離婚調停」を選ぶ方法があります。
とはいえ、調停の場では感情的になりやすく、冷静な判断を欠いて不利な結果につながる可能性もあります。 
今回は、離婚調停を少しでも有利に進めるために押さえておきたいポイントを解説します。

離婚調停とは

離婚調停は、家庭裁判所で行う法的な手続きです。 
夫婦双方の話し合いを、裁判官と調停委員の立ち会いのもとで進める形式となります。

離婚調停の流れ

離婚調停の流れは、以下の通りです。

①申立書および必要書類の提出
②初回の調停期日の通知
③調停
④調停調書の作成・調停の終了

それぞれ確認していきましょう。

①申立書および必要書類の提出

まずは、家庭裁判所に調停申立書と必要書類を提出します。
提出先は、相手方(配偶者)の住所地を管轄する家庭裁判所です。

②初回の調停期日の通知

申立てを受けた裁判所は、調整後に初回の調停期日を指定し、当事者双方に通知します。
調停は裁判所が開廷している時間、つまり平日の昼間に行われるのが原則です。
仕事や育児があっても、都合を調整して出席しなければなりません。

③調停

調停当日は、夫婦が別々の待合室で待機し、交互に調停委員と話すのが一般的です。
いわゆる「非対面方式」であり、相手と直接顔を合わせずに話ができるため、冷静なやりとりがしやすくなります。
調停委員2名(男女1名ずつが多い)と、家庭裁判所の裁判官が対応するのが基本です。
まずは申立人から意見を聞き、次に相手方の意見を確認するという流れで話が進みます。
調停委員は中立の立場から、事実関係や希望条件を整理し、妥協点を探ります。

④調停調書の作成・調停の終了

複数回の期日を重ね、双方が合意に達すれば「調停調書」が作成されます。
調停調書は、裁判所が作成する正式な文書です。
確定判決と同じ効力を持つため、離婚届を提出せずに離婚が成立します。
一方で、意見が折り合わず合意に至らない場合には、調停は不成立となります。
上記の場合、家庭裁判所が職権で判断を下す「審判」に進むか、あるいは当事者が改めて「離婚訴訟」を起こします。

離婚調停を有利に進めるためのポイント

離婚調停を有利に進めるためには、以下のポイントを意識してください。

  • 事前に目的と優先順位を明確にする
  • 証拠や資料を準備する
  • 調停委員には丁寧に接する
  • 調停の記録は自分でも残す
  • 調停中の言動には注意する

それぞれ確認していきましょう。

事前に目的と優先順位を明確にする

調停を始める前に、自分が「何を一番重視するのか」を整理するのが重要です。 
「親権を得たい」「養育費を確実に取り決めたい」など、希望内容を紙に書き出します。
すべてを主張すると対立が激しくなるため、譲れない点と妥協できる点の線引きをすると、より柔軟に交渉を進めやすくなります。

証拠や資料を準備する

主張を裏付けるためには、客観的な証拠が欠かせません。 
以下のような資料を整理すると効果的です。

  • DVやモラハラの証拠(録音データ、LINE、診断書など) 
  • 夫婦共有財産の資料(通帳、不動産登記簿など) 
  • 収入を示す資料(源泉徴収票、給与明細など) 
  • 子どもの養育状況に関する記録(学校の連絡帳、写真など)

調停委員はあくまでも第三者として関与する存在であり、一方に肩入れするわけではありません。
しかし当然、人間としての好感や嫌悪感を抱くのも事実です。
調停委員たちの心証を良くするのも、調停を有利に進めるうえで重要です。

調停委員には丁寧に接する

調停の進行役を担うのが調停委員です。 
調停委員に対して高圧的な態度を取ると、話し合いが進まず、結果的に自分に不利な展開になる可能性があります。 
たとえ相手側の主張に納得できない場面でも、礼儀ある対応を心がけましょう。

調停の記録は自分でも残す

調停は複数回にわたって行われるのが一般的です。
自分自身でも、できる限り毎回のやりとりを記録してください。
調停の内容をノートにまとめたり、話し合いで合意した内容を書き留めたりすれば、次回以降の方針が立てやすくなります。
相手側の主張が変わったときにも、過去の記録があれば主張の矛盾を指摘できるかもしれません。

調停中の言動には注意する

調停の場だけでなく、その前後の言動にも注意が必要です。 
たとえばSNSで相手を非難するような投稿をしたり、感情的なLINEを送ったりすると、その内容が調停に持ち出される可能性があります。
子どもが関わる離婚の場合、親としてのふるまいも評価の対象になるため、節度ある行動が求められます。

弁護士に依頼すべきかの判断ポイント

離婚調停は自分だけでも対応可能ですが、状況によっては弁護士への依頼を検討する価値があります。
たとえば、以下のようなケースです。

  • 相手が弁護士を立てている
  • 複雑な財産分与や借金問題がある
  • DVや精神的虐待を受けている
  • 親権や面会交流について争いがある
  • 精神的に不安定で自分では交渉が難しい

弁護士に依頼すれば、調停への同行だけでなく書類作成や主張の整理も任せられるため、心理的な負担が軽くなります。

まとめ

調停は法的な手続きでありながら、個人のふるまいなどで結果が変わる可能性もあります。 
証拠の整理を徹底し、当日は冷静な対応を心がけてください。
自分だけで対応できない場合は、早めに弁護士へ相談するのがおすすめです。

離婚時に不動産を財産分与する際の注意点

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離婚する際には、通常、夫婦で協力して築き上げた財産を夫婦間で公平に分配します。
このとき不動産があり、なおかつ住宅ローンが残っている場合には、分配が複雑になります。
この記事では、不動産を財産分与する際の注意点を解説します。

財産分与とは

財産分与とは、夫婦の共有財産を清算することです。
原則として、夫婦間で2分の1ずつ分配します。
たとえ夫婦どちらかの単独名義の財産であったとしても、夫婦の協力のもと築いてきた財産は共有財産です。
婚姻期間中に蓄えた預貯金や購入した不動産も共有財産となります。
現金はそのまま分配できますが、現金以外の財産は評価額などを参考にして分配しなければいけません。
現物をそのまま分けるほか、売却したのち現金を分配する方法もあります。

不動産の財産分与

不動産は夫婦の共有財産のうち、非常に大きな価値を持つものです。
通常、どちらかが住み続けたり、売却して売却益を分配したりする方法をとります。
どちらの場合でも、財産分与の際には、まず不動産の価値を把握しなければいけません。
このとき、住宅ローンの有無も考慮する必要があります。

不動産評価額

不動産の評価は売買時の時価で判断することが一般的です。
不動産業者に依頼し、査定してもらうことで判断できます。
住宅ローンが残っている場合には、評価額からローンを差し引くことで不動産の価値を算出します。
たとえば評価額1,500万円の不動産があり、住宅ローンが1,000万円残っている場合には、財産分与におけるその不動産の価値は500万円となります。

ただし状況によっては、不動産評価額よりも住宅ローンの方が高額になっていることもあります。
評価額1,500万円の不動産の住宅ローン残高が2,000万円だった場合、たとえ住宅を売却しても借金が500万円残ります。
財産分与において、売却後もローンが残ってしまう不動産の価値は0円とみなされることが一般的です。
この場合、価値のない不動産は財産分与の対象として取り扱わず、ローンの名義人がそのまま不動産を所有し、ローンを返済していく方法をとることがあります。

売却して得た金銭を分配する

財産分与の際に不動産を売却する場合には、ローンを完済しているか、ローンよりも評価額が高額であることが前提となります。
不動産には抵当権が設定されており、ローンを完済することが売却の条件になるためです。
ローンを完済している場合は売却して得た金銭をそのまま分配します。
ローンが残っている場合には、売却益でローンを完済したのち、余った売却益を分けます。

ただし、評価額よりもローンの方が高額であっても、どうしても売却したいケースも存在します。
所有している住宅が離婚後の生活に合わない場合には、その不動産を所有し、ローンの返済を続けていくことは大きな負担です。
このようなとき、売却益だけでは返済しきれない分は、自己資金でまかなうことも可能です。
そのほか、任意売却という方法であれば、ローンを完済できない場合でも売却できます。
ただし任意売却後は信用情報に傷がつき、数年間は借り入れが困難になるため注意が必要です。

夫婦のどちらかが所有し住み続ける

夫婦のどちらかが不動産を所有し続ける場合には、家を出ていく側に金銭など同じ価額分の財産を渡すことで公平に分配できます。
ローンを完済している場合、相手に渡す金額が高くなりやすいため注意が必要です。

ローンが残っている場合には、ローンの名義人と住み続ける人が同じかどうかで対応が異なります。
ローンの名義人と暮らす人が同一の場合、そのまま生活を続けることが可能です。
しかしローンの名義人ではない人が住み続けたい場合には、ローンの名義を変更して自身が不動産を取得するか、所有者に対し賃貸契約を結んだり使用許可を得たりする必要があります。
なお、ローンの名義変更は銀行などの許可を得なければならず、安定した収入が必要です。

ペアローンを組んでいた場合

ペアローンとは、ひとつの不動産に対し夫婦がそれぞれ別の住宅ローンを組む方法です。
不動産は共有名義となり、それぞれの出資割合に応じた持ち分を所有します。
離婚後もどちらかが所有し続けたい場合には、ローンを一本化し、単独名義にすることが理想です。

離婚後も共有名義のまま、お互いが自身の持ち分を所有し続けることは可能ですが、売却時には相手の同意を得なければいけないなど、手続きが複雑になります。
後々のトラブルを避けるため、ローンの一本化が難しい場合には売却を検討することもあります。

まとめ

この記事では不動産の財産分与について解説しました。
財産分与の方法としては、売却して得た金銭を公平に分配するか、片方が不動産を取得し、もう片方には金銭などほかの財産で清算する方法があります。
住宅ローンが残っている場合には、評価額とローン残高のどちらが高額かによって対応が変わります。
そのほか、条件により適切な財産分与の方法は異なります。
離婚をお考えの際は、弁護士までご相談ください。

慰謝料的財産分与とは別に、慰謝料を請求できるケースとは?

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離婚する際、婚姻期間中に築き上げた財産を分配する仕組みが、財産分与です。
財産分与に慰謝料的な意味合いを持たせて支払われたとき、それとは別に慰謝料を請求することは可能なのでしょうか。
この記事では、慰謝料的財産分与と慰謝料を両方とも請求できるケースについて解説します。

慰謝料と慰謝料的財産分与

離婚の原因が相手にある場合、離婚によって受けた精神的苦痛に対し、慰謝料を請求できます。
慰謝料や慰謝料的財産分与の額は、当事者同士の話し合いで決められます。
話し合いで慰謝料の必要性や金額などが合意できなかった場合には、裁判により金額などを判断してもらうこともあります。
婚姻期間が長かった場合や、相手の行為が悪質であるなど苦痛が大きいと判断される場合には、慰謝料の額も高額になることが一般的です。

慰謝料

離婚による慰謝料には、離婚すること自体に対する慰謝料と、離婚に至った原因となる行為に対する慰謝料が含まれます。
慰謝料の対象となる行為には、次のようなものがあります。

  • 配偶者以外と肉体関係を持った
  • 暴言や暴力があった
  • 夫婦間で互いに協力し、助け合うことをしなかった
  • 夫婦関係を継続できない重大な原因があった

このような原因に対して慰謝料を請求する際には、とくに裁判などで争う場合、その行為があったことを示す客観的な証拠が必要です。

慰謝料的財産分与

財産分与に慰謝料的な意味合いを持たせたものが、慰謝料的財産分与です。
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が互いの協力のもと築き上げた財産を公平に分配することです。
通常は夫婦で2分の1ずつ分け合います。
たとえ夫婦のどちらかが専業主婦(夫)であっても同様に分配します。
専業主婦は家事に従事することで相手の生活を支え、財産の形成に協力したと言えるためです。

しかし財産分与は、必ずしも2分の1ずつ分けるものではありません。
個々の事情に合わせ、割合を変更することも可能です。
たとえば離婚に至った原因が夫婦の片方にある場合、その事情を考慮したうえで割合を決定してもかまいません。
離婚の原因を作った側の割合を少なくし、相手側が多く受け取ることで、相手の精神的苦痛の補填とします。
これが、慰謝料的財産分与です。

慰謝料と慰謝料的財産分与を両方得られるケース

慰謝料と慰謝料的財産分与は別の仕組みです。
しかし離婚というひとつの苦痛に対し、慰謝料を重ねて受け取ることはできません。
ただし慰謝料的財産分与の額が、本来受け取れるはずの慰謝料額に満たない場合、その不足分を別途請求することが可能です。

慰謝料的財産分与で賠償しきれない場合

たとえば離婚による慰謝料として300万円の請求が適正である場合で考えてみましょう。
本来、財産分与は2分の1ずつ分け合いますが、その金額に300万円を上乗せして支払われた場合、それとは別に慰謝料を請求しても認められません。
しかし上乗せされた金額が100万円であった場合、不足分200万円の請求を認められる可能性があります。

ただし裁判によってこれを認めてもらうには、財産分与に上乗せされた金額だけでは賠償しきれないことを証明しなければいけません。
たとえば離婚に至った原因として、相手の不貞行為や暴力などがあった場合には、それらを示す証拠が必要です。

慰謝料は不倫相手に請求することも可能

配偶者へ別途慰謝料を請求しようとしても、配偶者の経済状況によっては、支払う能力が足りないこともあります。
離婚の原因が相手の不貞行為であり、一定の条件を満たしている場合、不倫相手に慰謝料を請求することも可能です。

ただし不倫相手に慰謝料を請求できるのは、不倫相手が「相手が既婚者であるとわかっていながら肉体関係を持ったとき」のみです。
配偶者が不倫相手に既婚者であることを伝えていた場合や、既婚者であることが明らかな状況で不貞行為に及んだ場合でなければ請求できません。
そのため、配偶者がマッチングアプリなどを利用し、既婚者であることを隠して不貞行為に及んでいた場合には、不倫相手に請求できない可能性があります。

また、不倫相手に請求できる金額は、慰謝料の不足分です。
適正な慰謝料額が300万円であり、配偶者から慰謝料的財産分与として100万円、慰謝料として50万円を受け取る場合、不倫相手に請求できるのは残りの150万円となります。

まとめ

この記事では、慰謝料的財産分与とは別に慰謝料を請求できるケースについて解説しました。
慰謝料と財産分与は本来別の仕組みですが、ふたつを合わせて慰謝料的財産分与とすることも可能です。
ただし、受け取った慰謝料的財産分与の額では精神的苦痛を賠償しきれないと判断されるときには、別途不足分の慰謝料を請求できます。
慰謝料の判断には、離婚に至った原因や財産分与として受け取った金額など、さまざまな要因が関係します。
離婚の際は弁護士までご相談ください。

扶養的財産分与の相場や期間

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離婚の際、夫婦の共有財産を公平に分配したり、離婚後の生活を保障したりするため、財産を分け合うことが認められています。
その中でも、離婚後の生活を保障するために分け合う仕組みを扶養的財産分与と呼びます。
この記事では扶養的財産分与について解説します。

扶養的財産分与とは

離婚後、生活を続けていくことが困難になる相手に対し、金銭的なサポートをする手段が扶養的財産分与です。
婚姻期間中、夫婦どちらかの経済力に頼って生活を営んでいた場合、離婚すると、経済力のない側は生活を続けられなくなってしまいます。
とくに長い間専業主婦だった方にとって、これから就職することは簡単ではありません。
このようなとき、夫婦の協議によって扶養の必要性や金額、期間などを判断・決定できます。
夫婦だけの協議で話がまとまらない場合には、調停や裁判によって判断してもらうことも可能です。

ただし本来、離婚後の夫婦間にお互いの扶養義務はありません。
裁判などで認められるには、それ相応の理由が必要です。
たとえ就職が難しくても、通常の財産分与によってしばらく生活していけるようであれば、扶養的な部分の財産分与は認められない可能性があります。

扶養の必要性が認められる状況

離婚後に自分の力だけで生活を営んでいくことが難しいと判断されるのは、主に次のような状況です。

  • 現在、専業主婦(夫)である
  • 病気や障害により就職が難しい
  • 高齢により就職が難しい
  • 小さな子どもを養育しておりフルタイムの勤務が難しい

専業主婦歴が長い場合、就職のために資格の取得や職業訓練が必要な場合もあり、すぐに安定した仕事に就くことは困難です。
高齢であったり、病気や障害があったりする場合も、生活していくだけの収入を得ることが難しい場合があります。
このように当面の生活費を稼ぐことが難しいと判断される場合、サポートの必要性を認められる可能性が高くなります。

子どもを養育する場合、相手方から養育費を受け取れますが、養育費は子どものための費用です。
養育のために親が時短勤務を強いられたとしても、それによって生じた親の生活費の不足分までは補填されません。
その補填として、フルタイム勤務が可能になるまでの間、扶養的財産分与が認められることもあります。
とくに子どもに障害がある場合などは認められやすくなります。

支払われる金額の相場

支払われる金額は、当事者双方の当面の経済状況や公的な手当の有無など、個々の状況に応じて決められます。
1か月あたりの支払金額は、婚姻期間中の生活費よりも低く設定されることが多く、経済的な自立に向けた準備ができる最低限の金額になることが一般的です。
支払う側にとっても、大きな負担にならない程度の金額です。

現在専業主婦であったとしても、資格を持っていたり、収入につながるスキルがあったりする場合には、すぐに自立できるものとして、支払われる金額が少なくなることがあります。
一方で、専業主婦の期間が長く資格などもない場合には、就職することが難しかったり資格取得の時間や費用がかかったりすることから、支払われる金額が多くなることもあります。

支払い方法

支払いは離婚時に一括で支払うほか、毎月分割払いする方法もあります。
とくに病気などにより働くこと自体が困難な場合には、一括で大金を受け取るよりも、毎月支援を受ける方法が適している場合があります。
ただし、支払期間が長くなるほど支払いが途絶えてしまうリスクも高くなります。
支払いに関する決定事項は公正証書にしておくと安心です。

支払われる期間

扶養的財産分与は、離婚した相手が経済的に自立できるようになるまで支援するものです。
そのため、経済的な自立が可能になるまでの期間を定めて支払われます。
経済的な自立が可能になるまでの期間は個々の状況によっても異なりますが、1~3年とすることが一般的です。
期間を定めた場合、たとえその期間内に自立できなかったとしても、それ以降の支援は望めません。

高齢や病気・障害を理由に就職のめどが立たない場合、長期間の支払いが認められる可能性もあります。
ただし、年金の受給開始などにより支援が必要なくなった場合には、それ以降の支払いは受けられないことが一般的です。
同様に、分与を受ける側が相続などにより多くの財産を取得した場合や、再婚によって他者の扶養に入った場合にも、支払いは終了します。

まとめ

この記事では、扶養的財産分与について解説しました。
離婚後すぐに自立した生活を送ることが困難な場合には、相手に生活のサポートを求められます。
しかし裁判などで認められるには、相応の理由がなければいけません。
認められた場合でも、離婚後はお互いに相手を扶養する義務がなくなるため、受け取れる金額は最低限です。
当事者同士の話し合いで決まらない場合には、裁判などにより判断する必要があります。
財産分与にお悩みの方は、弁護士までご相談ください。

清算的財産分与の対象や割合について

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離婚時、夫婦の共有財産を夫婦で公平に分ける仕組みが、清算的財産分与です。
たとえ夫婦どちらかの名義の財産であったとしても、それが夫婦の協力によって築かれた財産であれば、清算的財産分与の対象です。
この記事では、清算的財産分与の対象や、分配するときの割合について詳しく解説します。

清算的財産分与とは

夫婦が協力して築いてきた財産は、基本的に、離婚時に公平に分配します。
それは共働きであっても、どちらかが専業主婦(主夫)であっても変わりません。
たとえ専業主婦であっても、家事や育児を担うことで就労していた相手の生活を支えていた場合には、夫婦で協力して財産を築いてきたといえます。
そのため清算的財産分与では、財産を2分の1ずつ分け合うことが基本です。

財産形成の貢献度に応じて分配割合は変わる

分配するときの割合は、財産形成への貢献度に応じて変わります。
たとえば夫婦のどちらかが収入もなく、家事や育児も行っていなかった場合、財産形成に貢献していたとはいえません。
この状況で財産を2分の1ずつ分けることは不公平です。
そのため貢献度が低い場合には、分配割合が少なる可能性があります。

また特殊な資格や技術によって多額の収入を得ていた場合、その人は財産形成への貢献度が高いといえます。
その資格がなければ、それだけの収入を得られなかったと考えられるためです。
たとえば医師や弁護士など資格を生かした職業や、危険をともなう職業など、その特殊性とそれに対する報酬額によって、分配割合が変動する可能性があります。

そのほか、マイナスの貢献も考慮されることがあります。
どちらか一方が莫大な金額を浪費した場合、分配割合に影響を与えることがあります。

財産分与の対象となる期間

清算的財産分与は、婚姻期間中、夫婦が協力して家庭を築いていた期間に形成された財産を公平に分け合います。
そのため夫婦関係が破綻し、別居していた場合には、別居するまでの間に築いた財産を分け合うことになります。
離婚が成立していなくても、別居後に築いた財産は、夫婦それぞれの特有財産として認められます。

清算的財産分与の対象となる財産

対象となるのは、夫婦が協力して築いてきた財産です。
そのため、それぞれが結婚前から所有していた財産は分け合う必要がありません。
また結婚後に得た財産であっても、夫婦のどちらかが相続や贈与などによって得た財産は個人のものであると認められ、分与の対象外です。
さらに、夫婦の合意によって「個人の財産である」と認めた財産については、分与の対象から除外できます。

具体的な財産の例

清算的財産分与の対象となる主な財産は以下の通りです。

  • 預貯金
  • 不動産
  • 有価証券
  • 生命保険
  • 退職金
  • 家財道具

不動産の名義が夫婦どちらかの単独名義であったとしても、分与の際には相手にその価額分の財産を分配する必要があります。
夫婦どちらかが不動産を取得し他方には現金を渡す方法や、不動産を売却してその売却益を分配する方法によって分配します。

退職金

将来支給される予定の退職金も財産分与の対象です。
退職金は、労働の対価の一部を後払いする仕組みであると考えられます。
そのため、婚姻期間中に働いた分の退職金は夫婦で分配できます。
退職金の分配は、原則として離婚時に行います。
しかし実際に企業から退職金が支払われるのは退職時であり、離婚時には手元にありません。
経済的な理由により離婚時に分配することが難しい場合には、夫婦の合意のもと、分割払いや退職時に支払うなどの取り決めを行うことも可能です。

個人年金と厚生年金

個人年金は生命保険などの契約と同じものと考えられ、財産分与の対象です。
個人年金を解約した場合に得られる解約返戻金の額を分与の対象額とします。

一方、社会保険の一種である厚生年金は財産分与の対象にはなりません。
ただし、保険料の納付実績を夫婦で分割することは可能です。
専業主婦歴が長く厚生年金保険料の納付実績が少ない場合には、将来的にもらえる年金額が少なくなります。
そうならないよう、年金分割手続きをして納付実績を分け合っておくことで、将来に備えられます。
対象となるのは婚姻期間中の厚生年金部分であり、基礎年金や私的年金部分は対象外です。
専業主婦や扶養の範囲内で働いているなど第3号被保険者であれば、配偶者の合意がなくても2分の1ずつ年金分割できます。

まとめ

この記事では清算的財産分与について解説しました。
婚姻期間中に夫婦で協力して築いた財産は、基本的に2分の1ずつ分配できます。
ただし財産形成への貢献度の違いによって、分与の割合が変わることもあります。
現金や不動産など現在手元にあるものだけでなく、将来的に支払われる予定の退職金も財産分与の対象です。
対象となる財産や分与の割合は状況によって異なるため、財産分与を行う際には専門家の弁護士までご相談ください。

離婚後にトラブルにならないためには

離婚

離婚後も元配偶者との間でトラブルが起きるケースがあります。
たとえば、養育費の未払いや面会交流のトラブルなどです。
本記事では、離婚後のトラブルを防ぐために注意すべきポイントをトラブルが発生した場合の対処法とあわせて解説します。

離婚後に起こりやすいトラブル

まず初めに、離婚後に起こりやすいトラブルを具体的に見ていきましょう。

1.養育費の未払い

最も多く見られるトラブルとして、養育費の未払いがあります。
離婚の際に取り決めたものの途中で支払いが滞るケースとして、養育費を支払う親が再婚したり収入が下がってしまったりなど、環境の変化によることが考えられます。
また、離婚の際に養育費についてきちんと取り決めをしなかった場合もトラブルに発展する可能性があります。
親は未成年の子どもに対して、自分と同じ水準の生活を保障する義務(生活保持義務)があるため後から請求することは可能ですが、離婚時に養育費の取り決めがなされていなかった場合では、さかのぼって請求することは難しいと言えます。

2.面会交流の制限や拒否

離婚後に子どもと面会させてもらえない、という事例もよくあるトラブルの1つです。
親権者とならなかった親には子どもとの面会交流権が認められていますが、面会交流の方法について明確なルールはなく、子どもの年齢や居住場所、生活状況などを考慮して話し合いにより取り決めるのが実情です。
したがって、面会の際に暴力や虐待があるなどの明確な拒否理由がなければ、協議による調整が望ましいですが、それでも解決できない場合は調停を申し立てることができます。

3.財産分与の不履行

3つ目は、財産分与に関するトラブルです。
財産分与は離婚の際に財産を公平に分配する制度ですが、離婚した後の生活を保障するという性質や離婚原因を作ったことへの慰謝料の意味合いがあります。
したがって、夫婦どちらかの名義の財産でも夫婦が協力して築いたものであれば対象となりますが、現金以外にも不動産や自動車なども対象となるため、公平に分配することが難しいという側面があります。
また、早く離婚したいという気持ちから、財産分与についてしっかり取り決めをせず離婚してしまったというケースも見られます。

離婚後のトラブルを防ぐためのポイント

それでは、具体的に離婚後のトラブルを防ぐためのポイントをご紹介します。

1.離婚時の取り決めは公正証書にする

協議離婚(話し合いによる離婚)の場合、養育費や財産分与などの離婚条件を取り決める際は口約束ではなく、法的効力を持つ公正証書にまとめることが重要です。
公正証書とは、個人や法人の依頼に基づいて公証人が作成する文書で、反証のない限り強力な証拠力があります。
ただし、養育費の未払いなど、金銭の授受に対して家庭裁判所の手続きを経ることなく強制執行をするには、公正証書に「直ちに強制執行を受けることに従う」といった文言(強制執行認諾文言)を記載する必要があります。
なお、家庭裁判所で離婚調停を行うなど裁判所を通じて離婚をした場合には、強制執行力のある「調停調書」を作成するので、公正証書を作成する必要はありません。

2.離婚後の連絡手段やルールを明確にする

元配偶者とのやり取りをスムーズにするため、連絡方法を事前に取り決めておくことも重要です。
特に、面会交流については子どもに対する影響を考慮する必要があります。
面会交流の頻度だけではなく、宿泊や旅行、学校行事への参加など、細かい部分までルールとして決めておけば、後のトラブルを防ぐことになります。
感情的な対立により連絡や話し合いが難しい場合は、弁護士や専門機関など第三者を介する方法もあります。

3.専門家への相談を活用する

離婚後のトラブルが心配なら、あらかじめ弁護士など専門家のサポートを受けることも視野に入れましょう。
離婚の際にきちんと話し合っておけば防げるトラブルも多く、専門家の力を借りることでスムーズに解決することができるだけでなく、万が一トラブルが発生した場合もすぐに対処することができます。

離婚後にトラブルが発生した場合の対処法

最後に、離婚後にトラブルが発生した場合の対処法について簡単に解説します。

養育費の未払いが発生した場合

養育費の未払いは、協議で取り決めた場合は支払日から5年、調停や審判などの裁判所の手続きで取り決めた場合は支払日から10年を経過する前に請求できます。
まずは相手と連絡を取って督促することが考えられますが、支払いに応じてもらえない場合は交渉や調停へと移ります。
また、離婚調停などで調書を作成している場合は、その調書を用いて履行勧告や履行命令、強制執行といった方法をとることができます。

面会交流のトラブル

上述したように、まずは話し合いによる解決が望ましいですが、それでも解決しない場合は面会交流調停を申し立てることができます。
調停を活用し、面会条件を再設定することが重要です。

財産分与が進まない場合

財産分与について、話し合いがまとまらない場合や話し合いができない場合は、離婚後2年以内であれば家庭裁判所に調停の申し立てをすることで請求が可能です。
また、調停でも話し合いがまとまらなかった場合には自動的に審判へ移行します。

まとめ

離婚後にトラブルにならないために注意すべきポイントについて解説しました。
離婚後のトラブルを防ぐには、離婚時の取り決めを明確にし、法的に対応できる準備を整えておくことが重要です。
適切なコミュニケーションを心がけることで防ぐことができるトラブルもありますが、困った時は弁護士への相談も視野に入れてみてはいかがでしょうか。

離婚調停が不成立になったらどうする?その後の手続きと注意点

離婚

離婚調停が成立しないケースは珍しくなく、その場合にどのように対応すべきか悩む人も多いと思います。
いきなり離婚裁判に進むのは抵抗がある場合でも、検討すべき選択肢があります。
本記事では、離婚調停が不成立になった後の選択肢や対応方法について詳しく解説します。

離婚調停とは

離婚調停とは、夫婦間の話し合いだけでは離婚について合意できない場合に、家庭裁判所で話し合うことで双方が合意、円満に解決することを目指す手続きです。
離婚は、夫婦の間で離婚に関する条件を話し合い、合意した上で離婚届を提出する形式(協議離婚)が一般的ですが、夫婦間での話し合いがまとまらなかったり、話し合いができない状態であったりした場合は、家庭裁判所での調停手続きを利用することができます。
裁判を回避し、夫婦間の問題は話し合いによって双方が納得して解決するのが望ましいという考えから、裁判に進む前に調停手続きを行うことが法律で義務づけられています。
離婚調停では調停委員が間に入り、双方の意見を聞くことで財産分与や養育費など、離婚の条件について調整を行います。

離婚調停が不成立になるケース

家庭裁判所が公表している司法統計では、離婚調停を実施した件数に対する不成立の割合は約16~17%となっています。
離婚調停が不成立になる主な原因としては、以下のようなものがあります。

  • 相手が離婚を拒否している
  • 離婚理由に納得していない
  • 財産分与や養育費などの離婚条件で折り合わない
  • 調停に出廷しない

これらの理由により、裁判官が離婚が成立する見込みがないと判断した場合は、調停が不成立となります。

離婚調停が不成立になったら取れる選択肢

それでは、離婚調停が不成立になったらどのような選択肢があるのでしょうか。
順番に見ていきます。

1.協議離婚への再挑戦

まずは、再び夫婦間で話し合いを試みることが考えられます。
夫婦の話し合いによる協議離婚は裁判所の手続きが必要なく、時間や費用などを削減できるというメリットもあります。
また、離婚調停を経たことにより、より相手の意見や主張がわかるようになり、当初の話し合いよりスムーズに進む可能性があります。
ただし、感情的な対立が強く冷静に話し合うことが困難な場合は、弁護士を介して協議する方法もあります。

2.ADR(裁判外紛争解決手続)を利用する

家庭裁判所の調停では解決できなかったが、裁判へ進むのはハードルが高いと感じるようであれば、ADRの利用も視野に入れると良いでしょう。
ADRとは、法務省が管轄する民間の調停機関です。
ただし、ADRを利用して合意に至った場合に作成する合意書には、法的な効力がありません。
取り決めた内容が履行されない場合の強制執行などはできないため、注意が必要です。
なお、ADRを利用して離婚した場合は調停離婚ではなく、協議離婚となります。

3.離婚裁判を申し立てる

離婚裁判は、裁判所が判決によって強制的に離婚を成立させる方法なので、夫婦で合意していなくても離婚が可能ですが、一方で法律により定められた離婚理由に当てはまらない場合は離婚できません。
裁判による離婚は、最終手段と考えておきましょう。

離婚裁判に進む場合の注意点

最後に、離婚裁判を選択した場合の注意点を解説します。

1.離婚裁判は調停以上に時間や費用がかかる

離婚裁判には、離婚調停以上に時間と費用がかかります。
離婚裁判では訴訟の提起後、審理において主張や反論などを行いますが、この期間は1年以上かかる場合があります。
裁判費用については、1万6,000円~2万円程度かかり、訴訟費用の他、財産分与や養育費などについて請求する場合の費用、裁判所からの書類送付に必要な費用などが含まれます。
また、弁護士費用として60~120万円程度必要ですが、弁護士に依頼せず自ら裁判で争うことは現実的ではありません。
基本的に裁判費用を相手に請求することはできないため、注意が必要です。

2.離婚理由を証明する必要性

上述したように、裁判による離婚は強制的に離婚を成立させる方法なので、民法770条に規定された「法定離婚事由」のいずれかに該当する必要があります。
法定離婚事由は以下の5つです。

  • 不貞行為(浮気・不倫)
  • 悪意の遺棄(正当な理由なく同居義務や協力義務などを履行しない)
  • 相手の生死が3年以上明らかではない
  • 相手が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
  • その他、婚姻を継続しがたい重大な事由がある

その他、個別の事情により離婚できるかどうかが決まるため、裁判を起こしたからといって必ず離婚できるわけではない点に留意しておく必要があります。

まとめ

離婚調停が不成立になった後の選択肢や対応方法について解説しました。
調停の不成立は離婚が成立しないことではなく、次の手段を選ぶタイミングであるとも言えます。
裁判や再交渉など、最適な方法を選ぶために専門家の助けを借りることも重要です。
離婚問題においては冷静な対応と適切な次へのステップのために、弁護士への相談も検討してみてはいかがでしょうか。

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