離婚後も元配偶者との間でトラブルが起きるケースがあります。
たとえば、養育費の未払いや面会交流のトラブルなどです。
本記事では、離婚後のトラブルを防ぐために注意すべきポイントをトラブルが発生した場合の対処法とあわせて解説します。
離婚後に起こりやすいトラブル
まず初めに、離婚後に起こりやすいトラブルを具体的に見ていきましょう。
1.養育費の未払い
最も多く見られるトラブルとして、養育費の未払いがあります。
離婚の際に取り決めたものの途中で支払いが滞るケースとして、養育費を支払う親が再婚したり収入が下がってしまったりなど、環境の変化によることが考えられます。
また、離婚の際に養育費についてきちんと取り決めをしなかった場合もトラブルに発展する可能性があります。
親は未成年の子どもに対して、自分と同じ水準の生活を保障する義務(生活保持義務)があるため後から請求することは可能ですが、離婚時に養育費の取り決めがなされていなかった場合では、さかのぼって請求することは難しいと言えます。
2.面会交流の制限や拒否
離婚後に子どもと面会させてもらえない、という事例もよくあるトラブルの1つです。
親権者とならなかった親には子どもとの面会交流権が認められていますが、面会交流の方法について明確なルールはなく、子どもの年齢や居住場所、生活状況などを考慮して話し合いにより取り決めるのが実情です。
したがって、面会の際に暴力や虐待があるなどの明確な拒否理由がなければ、協議による調整が望ましいですが、それでも解決できない場合は調停を申し立てることができます。
3.財産分与の不履行
3つ目は、財産分与に関するトラブルです。
財産分与は離婚の際に財産を公平に分配する制度ですが、離婚した後の生活を保障するという性質や離婚原因を作ったことへの慰謝料の意味合いがあります。
したがって、夫婦どちらかの名義の財産でも夫婦が協力して築いたものであれば対象となりますが、現金以外にも不動産や自動車なども対象となるため、公平に分配することが難しいという側面があります。
また、早く離婚したいという気持ちから、財産分与についてしっかり取り決めをせず離婚してしまったというケースも見られます。
離婚後のトラブルを防ぐためのポイント
それでは、具体的に離婚後のトラブルを防ぐためのポイントをご紹介します。
1.離婚時の取り決めは公正証書にする
協議離婚(話し合いによる離婚)の場合、養育費や財産分与などの離婚条件を取り決める際は口約束ではなく、法的効力を持つ公正証書にまとめることが重要です。
公正証書とは、個人や法人の依頼に基づいて公証人が作成する文書で、反証のない限り強力な証拠力があります。
ただし、養育費の未払いなど、金銭の授受に対して家庭裁判所の手続きを経ることなく強制執行をするには、公正証書に「直ちに強制執行を受けることに従う」といった文言(強制執行認諾文言)を記載する必要があります。
なお、家庭裁判所で離婚調停を行うなど裁判所を通じて離婚をした場合には、強制執行力のある「調停調書」を作成するので、公正証書を作成する必要はありません。
2.離婚後の連絡手段やルールを明確にする
元配偶者とのやり取りをスムーズにするため、連絡方法を事前に取り決めておくことも重要です。
特に、面会交流については子どもに対する影響を考慮する必要があります。
面会交流の頻度だけではなく、宿泊や旅行、学校行事への参加など、細かい部分までルールとして決めておけば、後のトラブルを防ぐことになります。
感情的な対立により連絡や話し合いが難しい場合は、弁護士や専門機関など第三者を介する方法もあります。
3.専門家への相談を活用する
離婚後のトラブルが心配なら、あらかじめ弁護士など専門家のサポートを受けることも視野に入れましょう。
離婚の際にきちんと話し合っておけば防げるトラブルも多く、専門家の力を借りることでスムーズに解決することができるだけでなく、万が一トラブルが発生した場合もすぐに対処することができます。
離婚後にトラブルが発生した場合の対処法
最後に、離婚後にトラブルが発生した場合の対処法について簡単に解説します。
養育費の未払いが発生した場合
養育費の未払いは、協議で取り決めた場合は支払日から5年、調停や審判などの裁判所の手続きで取り決めた場合は支払日から10年を経過する前に請求できます。
まずは相手と連絡を取って督促することが考えられますが、支払いに応じてもらえない場合は交渉や調停へと移ります。
また、離婚調停などで調書を作成している場合は、その調書を用いて履行勧告や履行命令、強制執行といった方法をとることができます。
面会交流のトラブル
上述したように、まずは話し合いによる解決が望ましいですが、それでも解決しない場合は面会交流調停を申し立てることができます。
調停を活用し、面会条件を再設定することが重要です。
財産分与が進まない場合
財産分与について、話し合いがまとまらない場合や話し合いができない場合は、離婚後2年以内であれば家庭裁判所に調停の申し立てをすることで請求が可能です。
また、調停でも話し合いがまとまらなかった場合には自動的に審判へ移行します。
まとめ
離婚後にトラブルにならないために注意すべきポイントについて解説しました。
離婚後のトラブルを防ぐには、離婚時の取り決めを明確にし、法的に対応できる準備を整えておくことが重要です。
適切なコミュニケーションを心がけることで防ぐことができるトラブルもありますが、困った時は弁護士への相談も視野に入れてみてはいかがでしょうか。