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コラムカテゴリー: 交通事故

電動キックボードで交通事故にあってしまったときの対応

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電動キックボードは近年新しく普及してきた乗り物です。
小型で簡単に乗れるため便利な反面、事故が起こった際の対応が難しい面もあります。
この記事では、電動キックボードで交通事故にあった際の対応について解説します。

電動キックボードとは

電動キックボードはモーターの付いたキックボードです。
道路交通法では自転車やバイク、自動車と同じく、車両に該当します。
電動キックボードはその規格に応じて、次の3つに分けられます。

  • 一般原動機付自転車
  • 特定小型原動機付自転車
  • 特例特定小型原動機付自転車

一般原動機付自転車に該当する電動キックボードを運転する際には、原付免許が必要です。
特定小型・特例特定小型に該当する電動キックボードは、16歳以上であれば免許不要で運転できます。
ただし免許が不要であっても、交通ルールは守らなければいけません。

規格ごとの主な交通ルール

電動キックボードは、自賠責保険の加入やナンバープレートの装着が義務付けられています。
そのほか、一般原動機付自転車に該当する電動キックボードは車道のみ走行可能ですが、特定小型原動機付自転車は自転車道の走行も可能です。
さらに特例特定小型原動機付自転車に該当する場合は、一定の条件を満たした場合、一部の歩道も走行できます。
運転する車両の規格を把握し、規格に応じた交通ルールを守ってください。

電動キックボードによる交通事故

電動キックボードは車両の中でもバランスを崩しやすく、転倒しやすい特徴があります。
自損事故だけでなく、被害者にも加害者にもなる可能性があります。
車道走行時には自動車に接触する可能性もあり、大きな事故を起こしかねません。

電動キックボード使用時に交通事故にあった場合も、その他の交通事故と同様の対応が必要です。
まずは警察へ連絡したり、けが人を搬送したりといった基本的な対応をしてください。
保険に加入している場合には保険会社へ連絡し、その後の対応を相談します。
また電動キックボードのレンタルサービスを利用していた場合には、レンタル事業者への連絡も必要です。

自損事故や被害者になった場合

操作を誤って自損事故を起こすことや、交通事故の被害者になることがあります。
事故を起こした時には、たとえ自覚症状がなかったとしても、病院で診察を受けておくことが大切です。
むち打ち症などの場合、あとから痛みが出てくることもあります。

事故の被害者になると、事故の相手に治療費や慰謝料などを請求できます。
自損事故の場合も、加入している保険によっては、治療費などが支払われる可能性があります。
治療費の請求の際には医師の診断書が必要です。

誰かに怪我をさせた・物を壊してしまった場合

誰かにけがを負わせたり、何かを壊したりしてしまった際には、相手の損害に対して自分の過失に応じた分の賠償金を支払わなければいけません。
電動キックボードを利用する際には自賠責保険の加入が義務付けられていますが、自賠責保険で支払われるのは相手の怪我に対する補償のみです。
壊してしまった物の賠償は補償されません。

自賠責保険でまかないきれない賠償金は、任意保険でまかなえます。
任意保険に加入していない場合には自分で賠償金を支払うことになるため、自動車やバイクと同様、任意保険へ加入しておくと安心です。

過失割合でもめる可能性がある

支払う賠償金の額は、過失割合によっても変動します。
過失割合とは、どちらの行動にどれだけ悪い部分があったのかを示す割合です。
一般的な自動車事故では、事故の状況に応じて基本的な過失割合が決まっています。
過去の似たような事故の裁判例と照らし合わせ、道路交通法違反の有無などを考慮しながら、適切な過失割合を導き出します。

しかし電動キックボードによる事故の場合、過去の電動キックボードによる事故の事例が少なく、判断基準が明確ではありません。
電動キックボードは原動機付自転車に該当しますが、一部の車両は免許不要で運転できたり、走行場所が自転車と同様だったりします。
単純にバイク事故の事例を参考にすれば良いというものではなく、慎重に判断しなければいけません。

基本的な過失割合が明確ではないぶん、事故の相手方は自身が有利になるような主張をする可能性が高くなります。
参考にできる裁判例も少ないことから、交渉が難航する可能性も高くなります。
そのため、弁護士に交渉を依頼することが有益です。

まとめ

この記事では電動キックボード利用中に交通事故を起こした際の対応について解説しました。
電動キックボードは原動機付自転車に該当しますが、一定の条件を満たせば、運転免許がなくても運転できます。
交通事故後の対応は一般的な交通事故と変わりません。
しかし過失割合を決める際には、前例が少ないため、交渉が難航する恐れがあります。
電動キックボード利用時に交通事故を起こしてしまった場合には、弁護士へご相談ください。

交通事故により受け取れるお金の種類

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交通事故の被害にあったとき、加害者側から金銭を受け取ることが可能です。
被害の状況に応じて、治療費や慰謝料など、さまざまなお金を受け取れます。
この記事では、交通事故の被害にあったときに受け取れるお金について解説します。

交通事故によって発生した損害の賠償

交通事故によって受けた損害を補填するため、加害者側から金銭を受け取れます。
たとえば治療のためにかかった費用は、その実費を受け取ることが可能です。
事故にあったことによる精神的苦痛など、金銭的な損害以外に対しても、金銭での補填を受けられます。

受け取れる金額に差が出ることもある

治療費や修理代は実費で支払われますが、精神的苦痛に対する慰謝料は、金額の判断が簡単ではありません。
慰謝料の額は、どの算定基準を用いるかによっても変わります。
たとえば保険会社が独自に設定している算定基準では、弁護士が採用している算定基準よりも低くなることが一般的です。
弁護士へ依頼して相手方と交渉することで、法的に適正な額の慰謝料を受け取れる可能性が高くなります。

受け取れるお金の種類

交通事故によって受け取れる金銭には次のようなものがあります。

  • 物損や人身傷害に対する実費の補填
  • 精神的苦痛に対する慰謝料
  • 後遺障害や逸失利益に対する補填

物損や人身傷害に対する実費の補填

事故によって破損した自動車などの修理費や、怪我をした際の治療費は、かかった費用の実費が補填されます。
ただし、医学的な必要性や合理性のない治療費などは補填されません。
医師の指示がない状態で利用した整体やマッサージの費用は、治療費として認められない可能性があるため注意してください。

治療費そのものだけでなく、治療のために必要となった費用も補填されます。
車いすなどの器具や装具が必要となった場合には、その購入費やレンタル費用が支払われます。
通院にかかる交通費も補填の対象です。
電車やバスの運賃は、常識の範囲内で支払いが認められます。

ただしタクシーを利用した場合は注意が必要です。
タクシーの費用は電車などに比べて高額であり、タクシーを利用しなければいけなかった合理的な理由がない場合には、認められない可能性があります。
自家用車を利用した際には、ガソリン代や駐車料金などが補填の対象となります。

入院が必要となった場合、実際の入院費のほか、入院に必要な日用品などの購入費用も損害として認められる可能性があります。
入院や通院時、怪我の程度や被害者の年齢などによって付き添いや介助が必要となった場合には、付き添い介護費が支払われることもあります。

精神的苦痛に対する慰謝料

交通事故によって負った精神的苦痛に対する慰謝料も受け取れます。
怪我によって通院や入院が必要となった場合、入通院に対する慰謝料を受け取れます。
通院が必要になってから、完治または症状が固定するまでの期間に対して支払われます。
症状の固定とは、治る見込みがない状態のことです。

症状が固定し、後遺障害と認められた場合、後遺障害に対する慰謝料も受け取れます。
後遺障害に対する慰謝料の額は、後遺障害認定の等級によっても変わります。
重い障害が残るほど慰謝料も高額になります。

万が一事故によって被害者が亡くなった場合、亡くなった本人の苦痛に対して死亡慰謝料が支払われます。
死亡慰謝料の受取人は相続人です。
また、被害にあった方の近親者の精神的苦痛に対して、近親者慰謝料が支払われることもあります。

後遺障害や逸失利益に対する補填

逸失利益とは、事故にあわなければ受け取れたであろう将来的な利益のことです。
事故で亡くなったり、後遺障害が残ったりすると、健康なときのように働けなくなります。
その補填として、事故前の収入をベースに、失われた労働能力から逸失利益を計算します。
専業主婦(主夫)や学生など収入がなかった方も、平均賃金をもとに逸失利益が支払われます。

事故によって仕事を休まなければならなくなったときには、休業損害に対する賠償を受け取れます。
専業主婦であっても家事という労働に従事していると考えられるため、休業損害賠償の対象です。

後遺障害が残った場合、将来発生する介護費についても補填されます。
要介護認定を受けた際には原則として将来介護費が認められ、要介護認定を受けなかった場合でも介護の必要性が認められる際には支払われます。
自宅のバリアフリー化や、介護用ベッドや介護用自動車の購入費も補填されます。

まとめ

この記事では、交通事故の被害にあった際に受け取れるお金について解説しました。
怪我の治療にかかる実費のほか、被害にあったことによる精神的苦痛に対する慰謝料も受け取れます。
怪我によって働けなくなった場合には、休業損害や将来的に得られるはずだった利益も補填されます。
ただし、法的に妥当な金額を受け取るには、弁護士による交渉が欠かせません。
交通事故の被害にあわれた場合には、弁護士までご相談ください。

交通事故であとから痛みが出てきたときの対処法

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交通事故によって怪我を負った場合、事故直後は症状を感じなかったとしても、あとから症状を感じることが少なくありません。
事故直後に病院を受診せず、保険会社にも「怪我はない」と伝えていた場合、あとから症状が出てきた際には、どのように対応するべきでしょうか。
この記事では、交通事故であとから痛みが出てきたときの対処法について解説します。

事故から数日後に痛みを感じることもある

交通事故にあったとき、あとから身体の異変を感じることがあります。
たとえば、むちうち症は外部に目立った症状が現れず、一見すると無傷のように見えます。
怪我を負った本人も事故直後は興奮状態にあり、痛みを感じないことが少なくありません。
そのため、その場では「怪我なし」として、対応するケースがあります。
しかし事故から時間が経ち、興奮状態が落ち着いてくると、症状を感じ始めることがあります。

事故と症状の因果関係

事故によって怪我を負ったときには、加害者に治療費や慰謝料などを請求できる可能性があります。
しかし、そのためには症状と交通事故の因果関係が認められなければいけません。
ただし事故から時間が経過すると、症状と事故の因果関係が認められづらくなります。
そのため痛みが出はじめたときには、早めに行動する必要があります。

あとから痛みが出たときにやるべきこと

交通事故後、あとから症状が出始めた場合にやるべきことは以下の通りです。

  • 速やかに病院を受診する
  • 双方の保険会社へ連絡する
  • 物損事故から人身事故へ切り替える
  • 医師の指示に従い通院する

速やかに整形外科を受診する

まずは速やかに医療機関を受診することが大切です。
痛みを放置し、適切な治療を行わないでいると、症状が悪化する恐れがあります。
身体の内部だけに異常がある場合、外から見ただけでは異常に気付けません。
レントゲンなどの検査を受けると、内部の異常を見つけられます。

保険会社や警察に対応を依頼する際には、診断書の提出を求められます。
診断書の作成は医師にしかできないため、受診の際は整骨院ではなく、整形外科など医師が在籍する病院を選んでください。
また、事故から初診までに時間がかかると、怪我が事故によるものか判断できなくなる恐れがあります。
とくに事故発生後2週間以上経過してから初めて受診した場合、その症状が事故を起因としたものと認められなくなる可能性が高くなります。
少しでも違和感を覚えた際には、念のため受診しておくと安心です。

さらに、怪我を負った日から時間が経過するほど、怪我が治り始める可能性が高くなります。
検査の結果、事故当時よりも軽い怪我として診断されることとなり、その分請求できる慰謝料が少なくなります。
早めに受診すれば怪我の程度を正しく診断でき、それに見合った慰謝料の請求が可能です。

保険会社や警察署へ連絡する

自分の加入する保険会社と、相手の加入する保険会社への連絡も必要です。
すでに物損事故としての手続きが始まっている場合、人身事故に切り替えなければ、治療費が支払われないなどのトラブルにつながります。

保険会社に人身事故として対応してもらうには、警察への届け出を物損事故から人身事故に切り替えなければいけません。
事故当時に担当してくれた警察署に切り替えを申請し、必要な手続きを行ってください。
ただし、事故発生から時間が経過するほど切り替えが受理されづらくなります。
警察署により異なりますが、事故発生からおおむね10日以内に申請する必要があるとされます。

人身事故として処理されると、人身事故の記載のある事故証明書を取得できます。
これを保険会社へ提出することで、保険会社に人身事故として対応してもらえます。
もしも警察に切り替えを認めてもらえなかった場合には、保険会社に「人身事故証明書入手不能理由書」を提出することで、人身事故として対応してもらえる可能性もあります。

医師の指示に従って通院する

初診後は、医師の指示に従い適切に通院します。
勝手に通院をやめると、損害賠償請求の際に不利になる場合があります。
万が一症状が固定し、後遺障害が残るような状況になったときには、後遺障害の認定を受けることになります。
後遺障害の等級は医師が作成した診断書の内容によって判断されるため、医師の指示通り通院し、治療や症状の記録を残しておく必要があります。

まとめ

この記事では、交通事故であとから痛みが出てきたときの対処法について解説しました。
痛みや違和感を覚えたときは、すぐに病院を受診することが大切です。
適切な対応を取らずにいると、症状が悪化するだけでなく、本来得られるはずだった損害賠償を請求できなくなる可能性があります。
とくに、事故発生から初診までの期間が長くなるほど、保険会社との交渉も難しくなります。
交通事故後、あとから症状が出てきた場合には、専門家である弁護士までご相談ください。

交通事故における慰謝料の種類とは

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交通事故に遭うことは、被害者にとって身体的な苦痛だけでなく、精神的な負担も大きなものとなります。
この精神的苦痛に対して支払われるのが「慰謝料」ですが、その種類や金額の計算方法にはさまざまな違いがあり、正しい知識を身につけることで、適切な補償を受けられる可能性が高まります。
本記事では、交通事故における慰謝料の種類について具体的に解説します。

交通事故における慰謝料とは

交通事故における慰謝料とは、被害者が事故によって受けた精神的な苦痛を補償するために支払われる金銭(損害賠償金)のことを指します。
交通事故により怪我を負ったり、後遺症が残ったり、最悪の場合は死に至ったりすることで、被害者や遺族は大きな不安や恐怖など、精神的な負担を抱えることになります。
民法第709条において、「故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害した者は、その結果生じた損害を賠償する責任を負う」と定められており、この規定に基づいて被害者の精神的苦痛を金銭的に補填する仕組みが慰謝料なのです。
また、慰謝料は精神的な苦痛に対する補償であるため、治療費や物的損害の補償とは別に請求することが可能です。

交通事故における慰謝料の種類

それでは、具体的に交通事故における慰謝料の種類をご紹介します。
事故に遭った場合に請求できる慰謝料は、次の3種類に分けることができます。

  1. 入通院慰謝料
  2. 後遺障害慰謝料
  3. 死亡慰謝料

1つずつ詳しく見ていきましょう。

1.入通院慰謝料

入通院慰謝料は、入院や通院による精神的苦痛に対する補償です。
入院や通院の期間に応じて支払われるのでこのように呼ばれますが、被害者が怪我を負うと発生するものなので、治療を行えば請求することができます。
ただし、入院や通院により治療を受けた場合に限って認められるものなので、怪我をしても病院に行かなければ支払いは受けられません。
入通院慰謝料の金額は、通院頻度や治療期間、症状固定(治療を継続しても症状の改善が見込めない状態)までの状況などが考慮されます。

2.後遺障害慰謝料

次に、後遺障害慰謝料とは交通事故により後遺障害が残った場合の補償です。
「後遺障害」とは、後遺症の中でも交通事故が原因と証明され、労働能力が低下(喪失)した状態を指し、部位や程度によって等級に分類されています。
後遺障害が残ると、被害者はその障害を抱えて生きていかなければならないため、入通院慰謝料とは別に請求することができます。
後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害の等級を基準として算定されます。

3.死亡慰謝料

死亡慰謝料は、交通事故により被害者が死亡した場合の慰謝料です。
死亡した本人が受けた精神的苦痛と遺族(配偶者、子ども、親など)が受けた精神的苦痛は別のもと考えられており、それぞれに請求する権利があります。
死亡慰謝料の金額は、被害者の年齢や職業、家族構成、扶養家族の有無などが考慮されます。

慰謝料の算定基準と金額の違い

慰謝料の算定には、以下の3つの基準があります。
どの基準を採用するかによって金額が大きく変わるため、注意が必要です。

・自賠責基準…国が定める基準
・任意保険基準…任意保険会社が交渉に用いる基準
・弁護士基準…弁護士や裁判所などが交渉に用いる基準

任意保険に加入していて保険会社を通じて慰謝料を請求する場合は、自賠責基準や任意保険基準が適用されることが一般的です。
自賠責基準は、国の定める基本的な対人賠償を目的としているため最も支払い額が低く、任意保険基準も保険会社によって差があり、弁護士基準より低い傾向にあります。
一方、弁護士基準は過去の判例に基づいて算定されるため、実際の被害に見合った慰謝料が支払われる可能性が高くなります。

慰謝料請求の流れ

慰謝料を請求する場合、基本的には以下のような流れになります。

  1. 入通院による治療と必要な書類の準備(事故証明書、診断書など)
  2. 怪我が完治しない場合は後遺障害の申請
  3. 示談交渉

示談交渉は、基本的に相手方の保険会社と行うことになります。
相手方から損害賠償額(示談金)の提示があり、納得がいかない場合は交渉を重ねるという流れです。

慰謝料請求には時効がある

最後に、慰謝料請求で注意すべきことをご紹介します。
交通事故の慰謝料請求には時効が存在します。
事故の態様によって起算日が異なりますが、人身事故の場合は事故の翌日から、後遺障害がある場合は症状固定から、死亡事故の場合は死亡した翌日から起算して5年間と定められています。
時効が成立すると慰謝料を請求することができなくなるため、示談交渉が長引く可能性がある場合には、時効を中断する手続きをとるなど、対策を講じる必要があります。

まとめ

交通事故における慰謝料の種類について解説しました。
交通事故の慰謝料には3つの種類があり、金額は基準や状況によって大きく変わるため適切な手続きを踏むことが重要です。
請求や交渉は専門家の力を借りることで、有利に進められる場合があるので、早めに弁護士へ相談してみてはいかがでしょうか。

交通事故の加害者がすべき対応とは?法的手続きや被害者対応のポイントを解説

交通事故

交通事故は誰にでも起こり得るトラブルであり、加害者になってしまう可能性があります。
加害者として適切な対応を取ることが、被害者への誠意を示すだけでなく、自身の法的リスクを軽減する重要なポイントになります。
本記事では、交通事故を起こしてしまった際に取るべき行動とその注意点を詳しく解説します。

【初期対応】事故直後にすべきこと

まず、交通事故の直後に加害者がすべき初期対応を説明します。
対応を怠ると、被害者への損害賠償額が大きくなったり刑事罰が重くなったりするため注意が必要です。

1.負傷者の救護と安全確保

交通事故を起こしたら、まずは直ちに運転を停止し、負傷者の有無を確認します。
二次被害を防止するため車を安全な場所に移動し、道路上に停車した場合にはハザードランプや発煙筒、三角表示板などを使用して周囲に注意を促します。
負傷者がいる場合はすぐに救護、救急車を呼び、応急処置を行う場合は被害者の状態を悪化させないよう慎重に対応しましょう。
被害者に目立った外傷が見当たらない場合でも、外からは見えない場所を負傷している恐れがあります。
負傷者の救護は道路交通法で義務づけられており、加害者の判断で救護の必要はないとしてその場を立ち去ると、救護義務違反(ひき逃げ)として刑事罰を受ける可能性があるため、十分な注意が必要です。

2.警察への報告

事故の大小にかかわらず、必ず警察に通報しましょう。
負傷者の救護同様、事故を起こしたら必ず警察へ報告することが義務づけられており、報告しなかった場合は3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科される可能性があります。
通報時には、以下の内容を正確に伝えます。

  • 事故が発生した日時と場所
  • 死傷者の数と負傷の程度
  • 損壊した物と損壊の程度
  • 積載物
  • 事故について講じた措置

警察が到着した後は、実況見分や聞き取り捜査に協力します。

3.情報交換と証拠保全

被害者と連絡先の交換をし、保険情報を伝えます。
決してその場で解決しようとせず、冷静にやり取りしましょう。
また、可能であれば事故現場の写真を残しておきます。
たとえば、信号の有無や見通しなどの道路状況、車両や周辺の破損状況などの写真を撮っておくと、証拠として損害賠償の額に影響する可能性があるためです。
また、目撃者がいる場合はその方の住所や氏名、連絡先、目撃内容などをメモしたり、録音したりしておくことも重要です。

4.保険会社への報告

事故の初期対応が終わったら、自身が加入している保険会社に連絡します。
連絡の際には、以下の内容を伝えることでスムーズな対応が可能となります。

・契約者情報と保険証券の番号
・事故日時と詳細
・双方の車両の損傷程度および負傷の程度
・病院名

【被害者対応】誠意を持った対応の重要性

次に、被害者に対して加害者としてすべきことをご紹介します。

1.被害者へのお見舞いと謝罪

被害者が怪我を負った場合は、謝罪の意味を込めてお見舞いに行きます。
謝罪する際は責任を認めすぎない、事実を冷静に伝えるといったことが大切であり、加害者として真摯に謝罪し、被害者の心情に寄り添うことが重要です。
ただし、お見舞いに行く場合は自身の保険会社などを介して事前に確認し、拒否された場合は無理に行くことのないようにしましょう。

2.被害者との適切なコミュニケーション

加害者が被害者に支払う損害賠償金や慰謝料の額は、示談交渉によって決まります。
また、示談交渉については、自身が加入する任意保険の担当者が行ってくれることが基本ですが、必要な情報やサポートを提供するなど、被害者との適切なやり取りを心がけることが重要です。
保険会社に任せ切りにするなど、不誠実な対応は示談交渉に影響を与える場合があるため、丁寧な対応を意識しましょう。

交通事故の加害者が直面する責任

最後に、交通事故の加害者が直面する3つの責任について解説します。

1.民事責任

民事責任とは、他人の権利や利益を不法に侵害した者(加害者)が、被害者に対して損害を賠償する法律上の責任です。
具体的には、加害者が被害者の治療費や修理費、慰謝料などの損害を賠償しなくてはなりません。

2.刑事責任

重大な過失がある場合は、刑事責任が問われる可能性があります。
刑事責任とは、犯罪行為に対して刑罰などの制裁を受ける法律上の責任で、民事責任や行政責任と比較して、違法行為に対する法的制裁としては最も強力な制裁とされています。
具体的には、運転ミスなどによる人身事故の場合は「過失運転致死傷罪」、飲酒運転や信号無視など悪質な運転による場合は「危険運転致死傷罪」が問われます。

3.行政責任

行政責任とは、ある行政行為の結果として、人や物、自然などの環境に損害や被害が生じ、それが法的または社会的な基準から許容できないと判断される場合、その行為に対する法律上の責任を指します。
具体的には、事故の種別、責任や負傷の程度に応じて違反点数が加算され、所定の点数に達すると運転免許の停止や取り消しなどを受けます。

まとめ

交通事故は予期せぬ出来事ですが、加害者として適切な対応をとることで、被害者とのトラブルや法的責任を最小限に抑えることができます。
法律の知識を正しく理解し、保険会社や専門家のサポートを活用することが重要と言えます。
加害者として対応に不安がある場合は、早めに弁護士など専門家に相談することが肝要です。

死亡事故における慰謝料の算定基準とは

交通事故

交通事故による死亡事故は、被害者とその家族に計り知れない悲しみと影響をもたらします。
その損害を補うため、加害者やその保険会社から慰謝料が支払われますが、金額は一定ではなく、さまざまな基準や条件によって変わります。
そこで、本記事では、死亡事故における慰謝料の算定基準や、その金額を決定する要素について詳しく解説します。

慰謝料の役割とは?

死亡事故における慰謝料は、被害者の命を失ったことで遺族が受けた精神的苦痛に対して支払われる金銭です。
これは被害者の命の価値を直接的に評価するものではなく、家族の精神的損失を金銭的に補償するためのものです。

慰謝料の算定基準

死亡事故の慰謝料は、以下の3つの基準に基づいて算定されます。

自賠責基準

自賠責保険は、すべての車両に加入が義務付けられている最低限の保険です。
この基準で支払われる慰謝料は、あくまで最低限の補償であり、3つの慰謝料算定基準の中で最も低額です。
自賠責基準による、被害者本人の死亡慰謝料は400万円となっています。
なお、交通事故により被害者が即死した場合、被害者本人の慰謝料請求権が発生しないのではないかと疑問に思う方もいるかもしれませんが、被害者即死の場合でも、本人の慰謝料請求権が発生し、それを遺族が相続することとなることが裁判例で示されたため、被害者本人の慰謝料請求も相続人が受け取ることができます。
これに加え、被害者遺族固有の、精神的損害を補償する慰謝料額を加えて、合計の慰謝料額を算定します。

任意保険基準

任意保険基準は、加害者が加入している保険会社独自の基準に基づいて算出されるものです。
自賠責基準よりも高額になり、以下で解説する弁護士基準より低額になる場合が一般的ですが、会社によって基準が異なります。
任意保険基準の慰謝料額の相場は約1400万円~約2000万円とされていますが、あくまでも目安であり、保険会社によって異なるため、確認が必要です。

弁護士基準(裁判基準)

弁護士基準は、裁判所が過去の判例をもとに決定する基準です。
この基準は自賠責基準や任意保険基準と比べて最も高額になることが多く、遺族にとって有利な結果をもたらす可能性が高いといえます。
弁護士は、この弁護士基準を使って、相手方に慰謝料請求をしていくため、高額の慰謝料を受け取りたい場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
死亡事故における、弁護士基準による慰謝料請求の相場は、約2000万円から2800万円であり、高額といえます。

慰謝料の金額に影響を与える事情

慰謝料の金額は一律ではなく、以下の事情が金額に影響を与えます。

被害者の年齢

被害者が若いほど、残された家族の精神的苦痛は大きいと判断されるため、慰謝料が高くなる傾向があります。
また、被害者が若いと、失われる時間が長く、得られるはずであった労働による利益が大きくなるため、逸失利益の額も高額になりやすいです。
したがって、被害者の年齢が慰謝料の金額に影響を与えるといえます。

扶養関係

被害者が家族を養っていた場合、一家の大黒柱を失ったという遺族の経済的苦痛も考慮され、慰謝料が高額になることがあります。
特に、未成年の子どもがいる場合は、慰謝料が高額になる傾向があります。

過失割合

被害者に一定の過失があれば、過失相殺として、その分が減額されます。
一方、加害者側が危険な運転をしていたり、飲酒運転をしていたりといった、加害者側に重大な過失がある場合は、慰謝料額が増加する場合があります。

慰謝料の請求方法

慰謝料を適切に受け取るためには、以下の手順を踏むことが重要です。

保険会社との交渉

まずは、加害者が加入している保険会社と交渉し、提示された金額が適正であるかを確認します。

弁護士への相談

保険会社の提示額が不適切と感じた場合や、交渉が難航する場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
特に、弁護士に依頼することで、弁護士基準により交渉が進むため、高額の慰謝料を受け取ることができる可能性が高まります。

裁判での解決

交渉で合意に至らない場合は、裁判に発展することがあります。
この場合、弁護士基準が適用されるため、より高額な慰謝料が期待できます。

まとめ

本記事では、死亡事故における慰謝料の算定基準について解説しました。
死亡事故における慰謝料請求の基準は、自賠責基準、任意保険基準及び弁護士基準があり、慰謝料の算定基準もそれぞれ異なります。
中でも、弁護士が使う弁護士基準がもっとも高額になるため、交通事故にあった際は、弁護士に相談することをおすすめします。

物損事故と人身事故の違い|法的な影響や処理の方法について

交通事故

交通事故には「物損事故」と「人身事故」の2種類があります。
両者の違いを理解することは、事故後の対応や処理をスムーズに行うために重要です。
本記事では、物損事故と人身事故の違い、法的な影響、処理の方法について解説します。

物損事故とは

物損事故とは、車両や建物、ガードレールなどの物に対する損害が発生した事故のことを言います。
車体に傷がついたといった軽微なものから、ガードレールに衝突して大破してしまったといった大きなものまで、程度の差はあっても死傷者がいなかった場合は物損事故として扱われます。

人身事故とは

次に、人身事故とは、事故により人が怪我を負ったり、死亡したりした場合の事故です。
怪我の程度に関わらず、人に対する影響があれば人身事故として扱われます。
また、物的損害と人的損害の両方が発生した場合でも、人身事故として扱われるのが一般的です。

交通事故での対応方法

交通事故を起こしてしまったら、車を安全な場所へ移動してから次の手順で対応しましょう。

  1. 負傷者の有無を確認
  2. 負傷者がいた場合は救護し、救急車を手配
  3. 警察への通報
  4. 相手方と連絡先を交換、保険会社へ報告
  5. 事故現場の証拠保全(写真やドライブレコーダーの記録など)

物損事故と人身事故の違い

物損事故と人身事故の違いについて、3つの視点から解説します。

1.法的な違い

交通事故を起こした場合、加害者に発生する責任には大きく分けて3つあります。

・行政責任(免許の停止や取り消しなど)
・刑事責任(懲役刑や罰金刑など)
・民事責任(被害者への損害賠償)

物損事故では行政処分や刑事処分を受けることはありませんが(著しい過失や故意の場合を除く)、人身事故では行政処分だけではなく、罰金以外にも過失運転致死傷罪などの刑事責任を問われて刑事処分を受けた場合には、前科がつくことになります。
民事責任については物損事故、人身事故ともに被害者から損害賠償を請求される可能性があります。

2.事故後の調査の違い

事故発生後、警察が人身事故として処理する場合は、現場や車両の状況、事故が発生するまでの経緯など、事故状況について詳しく調べた上で「実況見分調書」が作成されます。
一方、物損事故の場合はこの実況見分調書は作成されず、「物件事故報告書」という簡易的な報告書が作成されます。
交通事故の加害者なのか被害者なのかという過失割合は、基本的には事故態様(事故状況)によって決まります。
この実況見分調書が作成されていないと事故態様の立証が困難となり、過失割合で不利になる場合があります。

3.示談金の内訳の違い

示談金とは、加害者と被害者が話し合って決めた損害賠償金のことです。
物損事故と人身事故とでは、示談金の内訳が異なります。
物損事故における示談金には、以下のようなものがあります。

・車両や家屋などの修理費
・車両の買い替え費用
・代車費用
・修理中の交通費など

一方、人身事故の場合は以下のようになります。

・治療費
・慰謝料
・休業損害
・逸失利益(後遺障害や死亡により得られなかった収入)など

物損事故と人身事故の選択における注意点

通常、物損事故か人身事故かの判断は警察が行います。
警察は、交通事故の状況や人的被害の有無などにより、物損事故または人身事故として処理しますが、その際に注意すべきことを2点ご紹介します。

1.最初に物損事故として処理されることがある

事故が発生した当初は怪我がないように見えても、後日症状が出てくる場合があります。
たとえば、追突事故で発症しやすいむちうち(頸椎捻挫)は、事故直後には症状が見られなくても、事故発生から数時間後や翌日以降に痛みやしびれ、頭痛やめまいといった症状が現れるので、怪我がないと思っても念のため医療機関を受診することが望ましいでしょう。
また、こういった場合は物損事故から人身事故への切り替えが必要になるため、注意が必要です。

2.加害者が物損事故にしたがる場合もある

加害者が物損事故にしたがる理由として、以下のようなものがあります。

・刑事責任を免れるため
・免許の停止や取り消しを回避するため
・示談金を減らすため

少しでも怪我をしていたなら、それは人身事故です。
本当は人身事故なのに物損事故として処理されてしまうと、示談金や保険金の請求などで不利になる恐れがあります。

人身事故に切り替える際の手続き

人身事故へ切り替えたい場合、以下の手順で手続きします。

  1. 医師に診断書を作成してもらう
  2. 警察に診断書を提出、人身事故に切り替えてもらう
  3. 実況見分など捜査に協力する
  4. 保険会社に人身事故に切り替えた旨を伝える


手続きに必要な書類や流れは警察署によって異なりますので、事前に確認して下さい。
また、事故から時間が経つほど怪我と事故との関連性がわかりにくくなるため、人身事故への切り替え手続きは、事故後10日以内に行うと良いでしょう。

まとめ

物損事故と人身事故の違いは、法的な影響や賠償の範囲、処理手続きに大きく関わります。
怪我の有無によって適切な対応が求められ、後日症状が出た場合には迅速に切り替えを行うことが重要です。
事故後の処理を適切に進めるために、弁護士へ相談することも検討してみてはいかがでしょうか。

交通事故証明書とは?必要な場面や取得方法について

交通事故

交通事故で損害を受けた場合に「交通事故証明証」がなければ損害賠償請求できない可能性があります。
この記事では、交通事故証明書とは何か、また必要な場面や取得方法について解説します。

交通事故証明書とは

交通事故証明書とは、交通事故が発生した際に交通事故の内容を記した書面であり、交通事故が起こった事実や状況を証明できます。
交通事故証明書は、警察の事故調査資料や自動車安全運転センター法に従い、交通事故の発生日時、場所、内閣府令で定める事項を記載した書面で作成されます。
また、交通事故の加害者および被害者、その他に交通事故証明書を受け取ることが正当な利益を有すると認められる者の求めに応じて交付されます。

交通事故証明書が必要な場面とは

交通事故証明書が必要な場面とは、どのような状況なのかみていきましょう。

自賠責保険を利用するとき

自動車賠償責任保険(通称:自賠責保険)は、車両を購入した際に法律で加入することが義務付けられている保険です。
補償内容は、交通事故による人身事故に限定されており、相手を死亡させたり、ケガを負わせてしまったりした場合に補償されます。
被害者のケガや死亡に対して補償する際の事故証明として、交通事故証明書を必要とします。

任意保険を利用するとき

自賠責保険で補償できないときには、任意保険を利用します。
具体的には、事故によって破損した車両の修理費、自らが加害者になった場合のケガや手術等に関する治療費および入院費などを任意保険で補います。
交通事故により、加入している任意保険会社の保険を適用して自賠責保険で補償できないものを補償してもらう際に交通事故証明書が必要です。

労災保険を利用するとき

労働者災害補償保険(通称:労災保険)は、勤務中に起こった事故などの災害に対して補償される保険です。
労災保険は業務中だけでなく通勤も含まれているため、通勤途中に起こった交通事故も労災保険の適用範囲です。
労災保険の適用を受ける際にも交通事故証明書が必要です。
ただし、会社に提出した通勤経路を逸脱した場所で発生した交通事故の場合は、たとえ通勤途中であっても交通事故証明書を提出しても労災として認められないケースがあるので注意してください。

加害者に慰謝料を請求するとき

交通事故によって損害を被った場合は、加害者に対して慰謝料を請求する際に交通事故証明書を必要とします。
加害者側の保険会社は、被害者に支払う慰謝料について交通事故証明書も参考にして支払額を算定します。

後遺障害認定を申請するとき

交通事故で負ったケガに障害が残ると後遺障害に認定されることがあり、申請手続きに交通事故証明書が必要です。
後遺障害とは、交通事故を原因としたケガの治療が終了しても障害が残り、労務に支障をきたす場合のことです。
後遺障害に認定されれば、一般的な人身事故の賠償額より割り増しで補償されます。
また、後遺障害には認定等級が1~14等級まであり、等級によって補償額が異なります。

ケガの治療による休業申請を会社に提出するとき

私用によって会社を休むときには休業申請をしますが、交通事故によるケガの治療で休業申請する際には、交通事故証明書の提出が必要になるケースがあります。

交通事故証明書の取得方法

交通事故証明書の取得方法についてご紹介します。

申請が行える人

まず、交通事故証明書の申請が行えるのは、以下に該当する人です。

  • 交通事故の加害者
  • 交通事故の被害者
  • 交通事故証明書の交付について正当な利益があると認められる者
  • 上記に該当する代理人


交通事故証明書の交付について正当な利益がある者とは、損害賠償請求権のある親族、保険金の受取人などです。
また、代理人とは、交通事故の損害賠償請求の依頼を受けた弁護士、保険会社の担当者などが該当し、別途で代理人の委任状が必要です。

申請手続

交通事故証明書の申請には、以下の3つの方法があります。

  • 自動車安全運転センターの窓口で申請する
  • ゆうちょ銀行・郵便局で申請する
  • インターネットで申請する


交通事故現場がどこであっても、最寄りの自動車安全運転センターの窓口で申請できます。
管轄内の交通事故であれば原則、即日交付されますが、他県の場合は後日郵送されます。
ゆうちょ銀行・郵便局で申請する場合は、自動車安全運転センターや警察署、交番、駐在所に「交通事故証明書申込用紙」が備え付けてあるので必要事項を記入して申請します。
インターネットの場合は、当事者本人以外の申請はできないので注意してください。
どの方法を選択しても交付手数料として1通につき800円かかります。

まとめ

今回は交通事故証明書とは何か、必要な場面や取得方法について解説しました。
交通事故証明書は、交通事故によって損害を受けた際、加害者に対して損害賠償を請求する目的に使用されることが多いです。
交通事故の被害に遭い、加害者から思うような賠償額を提示されないなどの悩みや不安を抱えている場合は、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

交通事故における逸失利益とは?

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交通事故に遭い、被害者に後遺症が残った場合や死亡した場合は、被害者の将来の収入に影響を及ぼすことも少なくありません。
本記事では、交通事故における将来の損失を補償する逸失利益について解説します。

逸失利益の定義と重要性

逸失利益とは、交通事故がなければ将来的に得られたであろう収入や利益のことを指します。
これは主に以下のような場合に問題となります。

  • 被害者が死亡した場合
  • 被害者に後遺障害が残った場合


逸失利益は、被害者やその家族の将来の生活を支える重要な要素です。
適切に算出し請求することで、事故による経済的な影響を軽減できる可能性があります。

逸失利益の種類

逸失利益は、大きく分けて2種類あります。

後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益とは、交通事故による後遺障害が残った場合に労働能力が低下し、将来の収入が減少することを補償します。
後遺障害の程度に応じて、労働能力喪失率が決定され、それに基づいて逸失利益が算出されます。

死亡逸失利益

死亡逸失利益とは、被害者が亡くなった場合、その人が生きていれば得られたであろう将来の収入が逸失利益として計算されます。
被害者の年齢や職業、収入などを基に、将来得られるはずだった収入を推定します。

逸失利益の計算方法

逸失利益の計算では、主に以下の要素が考慮されます。

  • 基礎収入
  • 労働能力喪失率
  • 就労可能年数
  • 中間利息控除(ライプニッツ係数)
  • 生活費控除率(死亡逸失利益の場合)


通常、基礎収入は事故前の年収や職業に基づいて算出されますが、業種によって算出方法は異なります。
たとえば、サラリーマンと自営業、フリーランスでは以下のような違いがあります。

  • サラリーマンの場合:事故前1年間の実収入
  • 自営業者やフリーランスの場合:事故前年度の確定申告の申告所得額


ただし、学生や主婦など、定期的な収入がない場合でも、将来の予想収入や家事労働の経済的価値などが考慮されることがあります。

労働能力喪失率

後遺障害が残った場合、その程度に応じて労働能力喪失率が決定されます。
後遺障害逸失利益における労働能力喪失率とは、後遺障害によって労働に支障をきたす割合を指します。
労働能力逸失率は、自動車損害賠償保障法施行令別表に第1級〜第14級まで障害等級別割合が定められています。
障害等級は、後遺障害認定等級表に基づいて判断されます。

就労可能年数

労働能力喪失期間は、被害者の年齢や定年までの期間などを考慮して決定されます。
一般的に67歳までの期間が基準となることが多いです。

中間利息控除(ライプニッツ係数)

将来の収入を現在の金額に換算する際、中間利息を控除する必要があります。
中間利息の控除とは、将来得られるはずだった収入を一括で受け取ることによる利息分を差し引くことです。
この計算には、ライプニッツ係数が用いられます。
ライプニッツ係数とは、中間利息控除の際に複利(元本だけでなく利息に対しても利息をつける方法)を用いた数値であり、年数に応じて決まっています。

生活費控除率

生活費控除率とは、被害者が死亡事故に遭った場合に生きていれば生活費を支出できたであろうと考えられる費用を差し引く割合のことです。
死亡逸失利益(死亡事故に遭わなければ得られたはずの給与や収入)の場合、被害者本人の生活費分を控除するための率が適用されます。

逸失利益の計算例

後遺障害逸失利益と死亡逸失利益の具体的な計算例を示します。

後遺障害逸失利益の計算例

35歳のサラリーマンが交通事故で後遺障害7級の障害を負った場合を考えてみましょう。

  • 基礎収入:年収500万円
  • 労働能力喪失率:56%(7級の場合)
  • ライプニッツ係数:17.2920(67歳までの32年分)


【計算式】
500万円 × 0.56 × 17.2920 = 4,841万7,600円

この例では、逸失利益は約4,841万円と算出されます。

死亡逸失利益の計算例

40歳の会社員が交通事故で死亡し、被扶養者が1人いた場合を考えてみましょう。

  • 基礎収入:年収600万円
  • 生活費控除率:40%(被扶養者1人の場合)
  • ライプニッツ係数:13.1630(67歳までの27年分)


【計算式】
600万円 × (1 – 0.4) × 13.1630 = 4,738万6,800円

この例では、逸失利益は約4,738万円と算出されます。

逸失利益請求のポイント

逸失利益を請求する際には、以下に記した5つのポイントに注意してください。

  • 適切な資料の準備
  • 専門家への相談
  • 将来の収入増加の可能性
  • 交渉の重要性
  • 請求権の消滅時効


収入を証明する源泉徴収票や確定申告書や、昇給・転職の場合も証明する資料を用意する必要があります。
また、保険会社との交渉で適切な賠償金額を求めたり、適切な計算方法や請求額を検討する際には、弁護士や交通事故の専門家に相談することをおすすめします。
さらに請求権の消滅時効は事故から3年なので早めの対応が重要です。

まとめ

本記事では、交通事故における逸失利益の概念、計算方法、請求のポイントについて解説しました。
逸失利益は、交通事故被害者とその家族の将来の生活を守るための重要な要素です。
逸失利益の計算や請求には専門的な知識が必要となるため、事故に遭った際は早めに専門家に相談することをおすすめします。

後遺障害と後遺症の違いとは?等級認定を受けるメリットや審査の受け方も解説

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交通事故に遭い、むち打ちや腕が痺れて日常生活に支障が出ていても、後遺障害に認定されなければ適切な慰謝料請求はできません。
この記事では、交通事故による後遺障害と等級認定について解説します。

後遺障害とは

「後遺障害」とは、交通事故で負ったケガが「症状固定」された上に労働能力の低下もしくは喪失が認められ、さらに自動車損害賠償保障法の後遺障害等級に認定された状態です。
症状固定とは、交通事故によるケガの治療において、これ以上継続しても完治せず、将来的にも事故によるケガの症状が残る状態のことです。
そのため、後遺障害と認定されるためには、医師の診断結果だけでなく、専門機関に申請して認定してもらう必要があります。

後遺症との違い

「後遺症」とは、病気やケガの治療をしても、これ以上完治しないと診断されて身体機能に障害が残った状態です。
例えば、交通事故が原因で後遺症が残る場合でも、後遺障害等級の認定を受けなければ後遺症です。
一方、「後遺障害」は交通事故を原因とし、後遺障害等級の認定をもらえた場合に限り、後遺障害と認定されるので混同しないように注意してください。

後遺障害等級の認定とは

後遺障害等級の認定とは、障害が残った原因が交通事故だと診断された後、自動車損害賠償保障法の14等級の何等級に当てはまるのかを検証して認定してもらうことです。
後遺障害等級に該当していれば後遺障害と認定されます。

自動車損害賠償保障法における等級の種類

自動車損害賠償保障法の14等級は第1級から第14級まであり、第1級が重度の後遺障害で、等級数が増えるごとに後遺障害の症状は軽症になっていきます。
また、等級の数字が少ないほど損害賠償請求額も高額になりますが、障害の度合いも重症になるので日常生活に及ぼす影響は大きいです。
等級認定の決め方は、「後遺障害のある部位はどこなのか」を確認し、労働能力の低下、もしくは喪失の度合いを見て、等級表に記載されている内容と照らし合わせて認定します。

後遺障害等級認定の審査を受ける方法とは

認定機関で後遺障害等級の認定を受ける方法は次の2通りです。

  • 被害者請求:加害者側の自賠責保険会社を通じて申請
  • 事前請求:加害者側の任意保険会社を通じて申請


認定機関とは、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所のことです。
上記のどちらかの保険会社を通じて申請手続きを行った後、保険会社から自賠責損害調査事務所へ必要書類を提出してもらって後遺障害等級の認定を受けます。
申請方法はどちらでも自由に選べますが、手間がかかっても自分の症状などを正確に伝えて適切な等級認定を受けたいのであれば被害者請求の方がおすすめです。

加害者側の自賠責保険会社に申請する場合

加害者側の自賠責保険会社に申請する場合、以下のメリット・デメリットがあります。

  • 申請に必要な書類は自分でそろえる
  • 病状や症状を正確に伝えやすいので審査対策がしやすい
  • 申請者が書類収集などをすべて行うので手間がかかる

加害者側の任意保険会社に申請する場合

加害者側の任意保険会社に申請する場合のメリットやデメリットは以下の通りです。

  • 後遺障害診断書を保険会社に提出すれば、残りの申請に必要な書類は保険会社が用意してくれる
  • 診断書のみを提出するので審査対策はできない
  • 提出書類は診断書だけなので書類収集などの手間がかからない

後遺障害等級の認定を受けるメリット

後遺障害等級の認定を受けると、2つのメリットがあります。

  • 後遺障害慰謝料
  • 後遺障害逸失利益

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、後遺障害と認定された場合のみ、入通院慰謝料とは別に加害者に請求できる慰謝料です。
障害が残った原因が交通事故であると診断されたら、後遺障害認定を受けることで少しでも多くの慰謝料を受け取れる可能性があるので経済的にもメリットがあります。

後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益とは、交通事故に遭って後遺障害が残らなれば得られるはずだった将来の給料や収入などのことです。
後遺障害逸失利益も後遺障害と認定されたときのみ請求できる損害賠償です。
そのため、交通事故に遭って後遺症が残っただけでは請求できないので、必ず後遺障害の認定を受けることをおすすめします。

まとめ

今回は、後遺障害と等級認定について解説しました。
交通事故が原因で障害が残った場合は、等級認定を受けることで後遺障害と認定されます。
後遺障害と認定されれば、通常の慰謝料や損害賠償の請求とは別に後遺障害の慰謝料と逸失利益を請求できるので経済的にもメリットがあります。
後遺障害の認定を受けるには、後遺症の原因が交通事故であることを医師に診断してもらう必要があり、必要書類の書き方や医師とのやり取りに不安のある方は交通事故を専門に扱っている弁護士に相談することをおすすめします。

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