現代の企業には、高いコンプライアンス意識が求められています。
その背景には、さまざまな企業の不祥事に対するマスメディアや消費者の批判と、適切なリスク管理により企業価値を高められるという考え方が世界的に広がったことがあげられます。
本記事ではコンプライアンスを重視すべき理由について、コンプライアンスを実践するための具体策とあわせて解説します。
コンプライアンスとは何か
コンプライアンスには本来、企業などが法令や規則を守ること(法令遵守)という意味があります。
「法令」とは、憲法や法律、行政機関が発する命令、規則、条約、地方自治体の条例などを総称する言葉であり、「法令遵守」とは国や地方自治体が定めた法令などに背かず、よく守ることです。
しかし、近年になってコンプライアンスの意味がより大きく捉えられるようになり、基本的には以下にあげる3つの要素を含んでいます。
・法令
・社会倫理
・社内規則
コンプライアンスを重視すべき理由
それでは、コンプライアンスを重視すべき理由を順番に解説します。
法律違反によるリスク回避
コンプライアンスの中でも法令を遵守することが基本となる部分であり、企業活動を行う上で法律違反が引き起こす罰則や制裁を回避することができます。
また、日頃から法令遵守の意識を高めることで、随時改正される法令にも迅速に対応することができます。
企業の信頼性を確保するため
企業は、顧客や取引先だけではなく、投資家や従業員により経営を行うことができます。
コンプライアンスがきちんと守られておらず、不正が横行するような企業であれば、顧客や取引先からの信頼を得ることはできません。
さらに、優秀な人材を確保できなくなるだけではなく、投資家や金融機関からの資金が得られないといったリスクを抱えることになります。
従業員の働きやすい環境づくり
コンプライアンスが守られることで、ハラスメントや不正のない健全な職場環境が実現できます。
社内規定や就業規則を整備して従業員に周知することは、社内の秩序を保つこと以外にも従業員間の賃金や処遇の公平を実現することにも寄与し、従業員が安心して働くことができます。
また、健全で働きやすい環境であれば従業員の責任感や意欲を高め、生産性の向上へとつながります。
長期的な企業成長への寄与
短期的な利益を追求してコンプライアンスを軽視する企業は、重大なミスが発生した際に対応が遅れ、より大きな問題に発展する恐れがあります。
このような企業は長期的な成長を見込むことができず、持続可能な経営を実現することができません。
また、企業は社会の一員として環境や人権などに配慮し、社会貢献を行う責任があると考えられています。
これを企業に求められる社会的責任(Corporate Social Responsibility=CSR)と呼び、自社の利益だけを追求していると社会から取り残され、持続的に発展することができません。
コンプライアンス違反の事例
コンプライアンス違反の事例は、大きく分けると次の4つに分類することができます。
・労働問題
・法令違反
・不正経理
・情報漏えい
過重労働や各種ハラスメントなど、労働問題に関するコンプライアンス違反は複数の要素が原因となっている場合が多く見られます。
また、法令違反は小さなものを積み重ねることで取り返しがつかなくなるケースが多く、この程度の違反なら、と見過ごさないようにすることが重要です。
架空請求や粉飾決算、業務上横領といった不正経理は、取引先や関連企業など広い範囲に被害を与えるため、最終的には経営破綻に至るケースがあります。
情報漏えいは、社員が秘匿性の高さを認識せずに情報を扱い、顧客情報の流出を起こしてしまうケースです。
情報漏洩は、社会的信用を失墜させるのに十分なコンプライアンス違反のため、セキュリティー対策に力を入れている企業が増加しています。
コンプライアンスを実践するための具体策
それでは、コンプライアンスを実践するための具体的な対策を解説します。
社内規定の整備
まずは、きちんと社内規定や就業規則などのルールを整備することが重要です。
コンプライアンスの基準である法令や社会倫理は、時代に応じて変化します。
最新の基準と照らし合わせ、コンプライアンス違反がないか常にアップデートしていく必要があるため、定期的な法令遵守のチェックと外部監査を活用した第三者視点の評価を行うことが重要です。
従業員教育の強化
社内規定などのルールを整備した上で従業員へ周知することで、コンプライアンスの意識を浸透させる必要があります。
そのためにも、定期的なコンプライアンス研修の実施と、従業員がルールを守りやすい環境づくりが必要不可欠です。
内部通報制度(相談窓口)の整備
内部不正や問題行動を報告するための相談窓口を設置します。
コンプライアンス違反は従業員からの相談や指摘で発覚する場合が多いため、相談窓口を設けることで大きな問題になることを防ぐ役割を果たします。
また、相談窓口を設置する場合は従業員が相談しやすい環境を整備することが重要であり、相談者は公益通報者保護法による保護の対象となります。
まとめ
今回は、コンプライアンスを重視すべき理由について解説しました。
コンプライアンスは単なる「守るべきルール」ではなく、企業の成長戦略の一部と捉えることができます。
法律だけでなく、倫理や社会的責任も重視する姿勢が求められるため、すべての従業員が一丸となり取り組むことが必要です。
コンプライアンスについて何か心配がある場合は、法律の専門家である弁護士への相談も検討してみてはいかがでしょうか。