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コラムカテゴリー: 企業法務

秘密保持契約(NDA)とは?ポイントや注意点など

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ビジネスの場面では、相手に機密情報を開示するケースがあります。
自社の情報が無断で第三者に漏れたり、悪用されたりしないようにするために結ばれるのが、秘密保持契約(NDA)です。
今回は、秘密保持契約(NDA)の基本的な意味や役割、注意すべき点をわかりやすく解説します。

秘密保持契約(NDA)の役割と目的

まずは、秘密保持契約(NDA)の基礎知識を確認していきましょう。

秘密保持契約(NDA)とは

NDAは、「Non-Disclosure Agreement」の頭文字を取ったもので、日本語では「秘密保持契約」と呼ばれています。
企業や個人が、商品開発・業務委託・業務提携などの前提として、相手方に情報を提供するときに締結されるのが一般的です。

秘密保持契約(NDA)の目的

秘密保持契約(NDA)の主な目的は、以下の通りです。

  • 自社のノウハウや未公開情報を守る
  • 第三者への情報流出を防ぐ
  • 万一漏洩した場合の責任範囲を明確にする

上記により、安心して情報を共有し、円滑に交渉を進めやすくなります。

秘密保持契約が使われる主な場面

秘密保持契約(NDA)は、さまざまな状況で利用されています。
たとえば新商品や新サービスの開発に関する外部との打ち合わせは、秘密保持契約(NDA)が使われる場面の典型例です。
新商品・新サービスの情報は、まだ一般には公開されていません。
自社の利益を守るためにも、秘密保持契約(NDA)の締結が重要になります。
他にも、「業務委託(IT開発、デザイン、コンサルなど)の開始前」や「M&A(企業買収や合併)の交渉過程」などでも、秘密保持契約(NDA)が活用されます。

片務契約と双務契約の違い

秘密保持契約(NDA)には、主に2つのタイプがあります。

  • 片務契約:一方だけが情報を提供し、相手に守秘義務を課す
  • 双務契約:双方が情報を提供し合い、お互いに守秘義務を負う

たとえば、受注側の会社が発注者から仕様を聞く場合には、基本的に前者が使われます。

秘密保持契約(NDA)に含めるべき主な項目

秘密保持契約(NDA)を締結する際は、以下のような項目を定めます。

  • 秘密情報の定義
  • 秘密情報の利用範囲
  • 第三者への開示禁止
  • 契約期間および秘密保持義務の存続期間
  • 違反時の対応

それぞれ確認していきましょう。

秘密情報の定義

何を「秘密情報」とするかを文書内ではっきりと示す必要があります。
たとえば、「技術情報」「営業資料」「取引先名簿」「価格情報」など、対象をできるだけ具体的に記載します。

秘密情報の利用範囲

開示された情報を、どの目的に限定して使用するのかを明示します。
通常は「本契約に基づく検討目的の範囲内に限る」などの表現が使われます。

第三者への開示禁止

秘密情報を、契約相手以外の第三者に漏らさない義務について定めます。
例外的に、外部の専門家(弁護士、税理士など)に開示する場合の取り扱いもここで規定します。

契約期間および秘密保持義務の存続期間

契約が終了した後も秘密保持義務を続ける期間を設定します。
たとえば「契約終了後も3年間義務が続く」といった定めが一般的です。
秘密情報の性質から、「契約終了後も存続する」など、期間の定めがない場合もあります。

違反時の対応

もし秘密情報が漏洩した場合に、どのような対応になるかをあらかじめ記載します。
基本的には、損害賠償と差止請求の2つです。

秘密保持契約の注意点

秘密保持契約(NDA)はシンプルな契約書に見えても、内容次第ではトラブルにつながる可能性があります。
以下の点には特に注意が必要です。

  • 秘密情報の範囲があいまい
  • 情報の管理方法が明記されていない
  • 違反時の対応が不明確

それぞれ確認していきましょう。

秘密情報の範囲があいまい

秘密保持契約では、「何が秘密か」を明確に定めるのが前提です。
しかし実務では、「秘密情報とは一般に知られていない情報を指す」など、抽象的な表現で済まされるケースが少なくありません。
範囲がぼんやりしていると、情報を受け取った側は「これは秘密なのかどうか」が判断しにくくなります。
「製品の仕様書」「原価データ」「販売戦略」「顧客リスト」のように明記して、情報管理の線引きをわかりやすくしてください。

情報の管理方法が明記されていない

秘密情報は、受け取った側が適切に管理しなければ意味がありません。
ところが、契約書に管理方法の具体的な指示が書かれていないケースも多く見受けられます。
「コピー・複製の取り扱いはどうなるのか」「返還・廃棄はどうするか」など、具体的な部分を決めて、合意を得てください。
管理ルールがなければ、「不用意に社内で共有されていた」「個人のPCに保存されていた」などの形で漏洩リスクが高まります。

違反時の対応が不明確

「違反があった場合は別途協議する」とだけ書かれていると、実際に問題が起きた際に話し合いが難航しやすくなります。
リスク管理のポイントは以下の3つです。

  • 違反によって損害が出た場合に損害賠償を請求するかどうか
  • 損害額の上限を設けるかどうか
  • 裁判ではなく仲裁や調停で解決するか

できるだけ具体的に定めましょう。

まとめ

秘密保持契約(NDA)は、取引を始める前の段階で結ばれるケースが多く、信頼関係を築くうえでも重要な意味を持ちます。
形式だけの契約にせず、自社の情報を適切に守れる内容かどうかを確認してから締結してください。
法的にわからない部分があれば、弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。

雇用契約書や労働条件通知書を作成する際の注意点

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雇用契約を結ぶ際、雇用契約書と労働条件通知書は兼用が可能です。
ただし労働条件通知書の作成には法的な決まりがあるため、兼用する場合には適切に要件を満たすよう注意しなければいけません。
この記事では、雇用契約書と労働条件通知書の作成で気を付けるべきことを解説します。

雇用契約

労働者が企業に使用されて労働し、その対価として報酬を得る契約が雇用契約です。
雇用契約を結ぶことで、長時間労働の抑制や社会保険の加入など、労働者として法的に保護を受けられます。
契約を結ぶときには、その内容を明らかにするため契約書を作成することが一般的です。

雇用契約書

雇用主と労働者の間で雇用契約を結んだことを証明する書類が雇用契約書です。
雇用契約は口頭でも結ぶことができ、必ずしも書面にする必要はありません。
しかし口頭だけではトラブルになることもあるため、契約書を作成し、署名押印しておくことが大切です。
同時に雇用主には、労働者に対して労働条件を明示する義務があります。
このとき、雇用契約書に法で定められた通知内容を記載することで、労働条件通知書を兼ねることも可能です。

労働条件通知書

労働条件通知書とは、労働者へ明示しなければならない労働条件などを記載した書類です。
交付が義務付けられており、記載しなければならない内容も法的に決まっています。
書かなければいけない内容は次の通りです。

  • 労働契約期間
  • 就業場所
  • 業務内容
  • 始業・終業の時刻
  • 残業の有無
  • 休憩や休日について
  • 賃金について
  • 退職や解雇について

そのほか、交代制の場合はそのルールや、有期契約の場合には更新などについても記載しなければいけません。
就業場所や業務内容が変更になる可能性がある場合にも、その内容を記載します。
また、パートやアルバイトの方には別途記載しなければいけない内容もあります。
明示義務を果たしていない場合、30万円以下の罰金が科せられる可能性があるため注意が必要です。

作成時の注意点

トラブルを発生させず、また万が一トラブルが発生した際にも速やかに解決させるため、契約書や通知書の作成は重要です。
必要な内容を漏れなく記載し、不備のないように作成しなければいけません。

内容が有効であるよう注意する

たとえば時間外労働に対する割増賃金を支払わないなど、労働基準法に違反した内容を記載してはいけません。
そのような内容を記載した契約書に署名や押印していた場合でも、その契約は無効になります。
また労働条件通知書に記載した内容が実際の条件と異なっている場合には、労働者は即時に契約を解除することが可能です。
経営に大きな影響を与える可能性があるため、注意して作成しなければいけません。

また、就業規則と雇用契約書の内容が異なっていた場合には、就業規則の内容が優先されます。
ただし雇用契約書の内容の方が労働者にとって有利な条件であった場合、雇用契約書の内容が優先されることもあります。
とくに契約更新時などは以前の契約書のまま手続きを進めるのではなく、現在の就業規則や法律に合っているか確認が必要です。

相対的明示事項に注意する

労働条件通知書には必ず書かなければいけない内容のほか、該当する場合のみ明示が義務付けられている内容が存在します。
具体的には次の内容です。

  • 退職手当に関する内容
  • 賞与や手当について
  • 最低賃金額について
  • 食費や作業用品費
  • 安全や衛生について
  • 職業訓練
  • 災害補償、疾病扶助
  • 表彰や制裁
  • 休職について

必要に応じて忘れずに明示するよう注意してください。

テンプレートをそのまま使用しない

インターネット上にはさまざまな雇用契約書や労働条件通知書のテンプレートが存在します。
しかしそれらをそのまま使用すると、企業の実態に合わない内容になってしまう恐れがあり、トラブル発生のリスクが高まります。
テンプレートを使用する際には、実際の契約に合わせて内容を適切に作り変えなければいけません。
とくに正社員や契約社員、パートなど雇用形態が異なる場合には、それぞれ異なる内容について記載義務があるため注意が必要です。

また、テンプレートに記載されていない内容であっても、企業の実情に合わせて記載するべき内容が存在する可能性もあります。
記載漏れを防ぐため、テンプレートを使用する場合であっても、法律の専門家などに相談しながら作成すると安心です。

まとめ

この記事では、雇用契約書や労働条件通知書を作成するうえでの注意点を解説しました。
労働契約を結ぶ際には労働条件の通知が義務付けられており、決められた内容を通知していない場合には違法となる可能性もあります。
また、記載内容が労働基準法に違反している場合や就業規則と異なる場合には、無効となることもあります。
作成時には社内に存在する規則や法的な観点をもとに、適切に作成しなければいけません。
雇用契約書などの作成の際には、弁護士までご相談ください。

残業代を請求されたときの対応について

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事業を行っていると、従業員から未払いの残業代を請求されることがあります。
支払わなければいけない残業代を支払っていなかった場合だけでなく、従業員の認識や計算が会社と異なっていた場合にも、このようなことは起こります。
この記事では、従業員に残業代を請求されたときの対応について解説します。

残業代とは

残業代とは、決められた労働時間を超えて行った労働に対する賃金です。
法内残業に対する賃金や、以下の労働に対する割増賃金を合わせて支払います。

  • 時間外労働
  • 休日労働
  • 深夜労働

割増賃金は、それぞれの割増率を用いて計算します。
1か月間に時間外労働を行った総時間数や、労働した時間帯によって割増率は変わるため、正確な残業の記録や正しい計算知識がなければ計算を間違えてしまうこともあります。

残業代の未払いがある場合

支払わなければいけない残業代を未払いにしていた場合、遅延した期間の遅延損害金を上乗せして支払わなければいけません。
さらに、訴訟によって支払いが決定した場合には、未払い額と同額の付加金も合わせて支払わなければいけないことがあります。
従業員から残業代の請求を受けたときには、その請求が正しいかどうかを精査し、誠実に対応しなければいけません。

残業代を請求されたときの対応

従業員から残業代を請求されたとき、それを無視してはいけません。
正しく事務処理を行ったつもりでも、時間外労働の把握や計算に誤りがあり、未払いが発生していることもあります。
また、たとえ従業員の認識が間違っている場合でも、対応せずにいると大きなトラブルへ発展する恐れがあります。

請求内容を精査する

まずは従業員の請求内容を精査し、従業員の請求が正しいか確認する必要があります。
たとえば次のような理由により、従業員の請求に誤りがあることもあります。

  • 残業時間の認識に誤りがある
  • 計算が間違っている
  • 固定残業代を支給している
  • 時効が成立している

残業時間の確認は、タイムカードなどの記録によって行います。
残業に関する報告書などがある場合には、それらをもとに確認してください。
このとき、労働時間の切り捨てや切り上げを間違えていないか注意が必要です。
1か月の時間外労働の合計時間に1時間未満の端数がある場合、30分未満の端数は切り捨て、30分以上の端数は1時間に切り上げることが認められています。
ただしこれは1か月単位の計算でのみ認められるものであり、日単位・週単位では認められません。

営業職や外回りを中心とする従業員は正確な労働時間を把握することが難しく、固定の残業代を支給することもあります。
固定残業代とは、あらかじめ一定時間の残業が行われることを想定し、一定の残業代を支払うものです。
実際の残業時間が決められた残業時間内に収まっていれば、追加で残業代を支払う必要はありません。
ただし、深夜労働や休日労働に対する割増賃金は発生します。
決められた労働時間を超えた分の残業代や、深夜・休日労働に対する割増賃金が未払いになっていないか、注意する必要があります。

また、残業代請求に関する時効が成立している場合も、その分の支払いは必要ありません。
残業代の時効は3年で成立しますが、成立前に残業代の請求や裁判などを行うと、時効完成までの期間が延長されます。

和解もしくは反論する

従業員の請求を精査し、会社側に誤りがあった場合には、和解によって解決を目指します。
未払いの残業代や遅延損害金を支払い、和解についての合意書を作成しておくと、その後のトラブルを防止できます。
従業員の請求を精査した結果、会社側の計算などに誤りがない場合には、従業員の請求に対し反論していくことになります。
労働時間に関する認識の間違いがある場合には、タイムカードなどの客観的な証拠をもとに、会社側の認識が正しいことを証明してください。
残業代の計算は法律の知識がないと間違ってしまうこともあるため、従業員への反論は弁護士に依頼すると安心です。

双方の主張が対立している場合、裁判に発展する恐れもあります。
裁判には時間も労力もかかるため、裁判に発展しないよう交渉した方が良い場合もあります。
裁判の際、労働時間の認識や残業代の計算が正しいか判断するのは裁判所です。
第三者が見ても会社側の主張が正しいと判断できる客観的な証拠を用意してください。

まとめ

この記事では、従業員に残業代を請求されたときの対応について解説しました。
残業時間の認識や計算ルールの認識を間違えていると、残業代を正しく計算できません。
従業員から残業代を請求されたときには、従業員の主張が正しいか、会社側にミスがないか、精査する必要があります。
会社側のミスが発覚した場合には、誠実かつ速やかに対応します。
しかし従業員側の主張を受け入れられないときには、反論していかなければいけません。
労働に関する問題の交渉は、弁護士までご相談ください。

電子化できない契約書とは|電子保存についても解説

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近年、書面による契約ではなく、電子契約書を用いた契約が普及しています。
便利かつ安全に契約を締結できるようになりましたが、まだ一部の契約においては電子化できないものも存在します。
この記事では、電子化できない契約と、書類の電子保存について解説します。

電子契約とは

電子契約とは、電子化された取引の中で締結する契約です。
紙の契約書や物理的な署名・捺印を必要とせず、電子的な契約書に電子署名を施すことによって契約します。
インターネットを介して契約できるため、書面の郵送や対面でのやり取りが必要なく、遠方にいる相手とも即時の取引が可能です。

電子契約書の証拠力

次の条件を満たした電子署名を施すことで、その電子契約書は裁判においても十分な証拠力を持ちます。

  • 本人による署名であると確認できる
  • 署名後、その文書に変更がないことを確認できる

本人確認は、電子証明書の発行や、電子契約サービスを利用する方法で行えます。
本人確認の方法によって、印鑑でいうところの三文判程度の効力から、実印相当の効力を持った契約まで可能です。

電子化できない契約

2025年現在、ほとんどの契約が電子化できます。
ただし、一部の契約は電子化できません。

公正証書による契約

公正証書によって締結するように決められている契約は、電子化できません。
公正証書の作成は、対面かつ書面での作成が義務付けられているためです。
公正証書によって締結しなければいけない契約は次の通りです。

  • 事業用定期借地権
  • 企業担保権の設定や変更の契約
  • 任意後見契約

ただし現在、公正証書のデジタル化に向けて、法整備やその他の準備が進められています。
令和7年度内のデジタル化施行を目指しており、施行後は公正証書の電子的な作成や保存が原則となる見込みです。

取引相手の同意や承諾が必要になる契約

一部の契約において、電子契約実施の同意や承諾を得なければいけないものがあります。
たとえば建設工事に関わる請負契約書や、宅建業者の媒介契約書などを電子契約書にするためには、事前に契約相手の承諾が必要です。
承諾を得られなかった場合には、従来通り書面で契約書を発行しなければいけません。
また訪問販売などの契約も、事前に消費者から承諾を得なければ電子契約書の交付はできません。
取引相手が電子的な取引に不慣れであっても問題なく契約できるよう、相手の状況に合わせて契約書を作成してください。

電子保存の決まり

国税関係帳簿書類に該当する電子契約書は、電子帳簿保存法の対象です。
会計の帳簿だけでなく、注文書や雇用契約書など、取引に関わる契約書も電子帳簿保存法に則って保存しなければいけません。
電子取引によって得た書類は電子データのまま保存する必要があり、紙に印刷して保存することはできません。
ただし、FAXによる受信などで電子データが残っていない場合には、電子保存の対象外です。
受信した書類をそのまま保存するか、スキャナ等で取り込み画像データとして保存してください。

電子保存の要件

電子的な取引をした場合、そのデータは次の要件を満たしたうえで電子保存する必要があります。

  • 真実性が確保されている
  • パソコンやシステムのマニュアルが完備されている
  • 必要なときに速やかに取引データを表示または印刷できる
  • 必要事項に応じたデータの検索ができる

真実性の確保とは、電子データに偽りがないことを証明するものです。
たとえば取引相手からタイムスタンプが付与されたデータが送られてきた場合、そのデータは真実性が確保されていると言えます。
そのほか、取引後すみやかに自社でタイムスタンプを付与したり、データの訂正や削除に関する社内規定を作ったりすることで、真実性を確保できます。
さらに、データの訂正や削除の履歴が残るシステムを用いてデータの保存を行う場合にも、真実性の確保がされていると認められます。

紙で作成された書類も電子保存できる

紙で作成された契約書や請求書などの国税関係書類も、電子的に保存することが可能です。
書類をスキャナで取り込んだり、写真撮影したりして、画像データとして保存します。
スキャナ保存せず、紙のまま保存することも可能です。
ただし仕訳帳や総勘定元帳などの国税関係帳簿類は、電子的に作成されたもののみが電子保存の対象です。
手書きによって作成された帳簿類をスキャナ等で取り込み、電子的に保存することはできません。

まとめ

この記事では電子化できない契約書と、取引したデータの電子保存について解説しました。
ほとんどの契約書は電子化することが可能ですが、取引相手の同意を得られなかったり、公正証書による作成が必要だったりする場合には、電子化できないこともあります。
また、電子化された取引データは、電子帳簿保存法に則って正しく保存しなければいけません。
電子取引や電子帳簿保存法に不安のある方は、弁護士までご相談ください。

電子契約書は法的に有効なのか?

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契約を結ぶ際、紙で作成した契約書を使用するのではなく、電子的な契約書を導入する企業が増えています。
しかし、電子契約書は法的に有効といえるのでしょうか。
この記事では、電子契約書の法的な効力や、電子契約書を保存するうえでの決まりを解説します。

電子契約書とは

電子データを用いて契約を結び、電子的なやり取りで作成された契約書が、電子契約書です。
一定の要件を満たしている場合、電子契約書に法的な効力を持たせることが可能です。
紙による契約書では署名や押印によって法的な効力を持たせますが、電子契約書では電子署名やタイムスタンプを施すことにより法的な効力を持たせます。

法的な効力を持たせるための要件

電子契約書に法的な効力を持たせるための要件は次の通りです。

  • 電子文書に電子署名を施している
  • 本人だけが使用できる電子署名である
  • 電子署名を施したあと、データが改ざんされていないことを証明できる

電子的なファイルに対する本人確認や、内容の改変がないことの証明は、紙と同じ方法ではできません。
そのため、特別な認証システムを利用し、電子署名が本人によって作成されたものであることや、署名後に内容が改変されていないことを証明する必要があります。

電子署名

電子署名を利用するには、電子署名サービス業者を利用する方法と、認証局によって発行された電子証明書を使用する方法があります。
電子署名サービス業者を利用する方法では、業者が立会人となり、本人確認や同意の意志を確認して、電子署名をほどこします。
その効力は、認印と同程度であることが一般的です。
メールアドレスなどを用意するだけで簡単に利用できるため、導入しやすい方法です。

一方、電子証明書を利用するには、認証局などに電子証明書の発行を申請し、取得しなければいけません。
申請や発行には手間や時間がかかりますが、電子証明書には実印並みの効力があります。
たとえば、法務局が発行している会社代表の電子証明書は、法人の登録印に相当する効力があります。
一般的に実印が必要とされる契約書には、電子証明書を用いた電子署名を行うことが適切です。

タイムスタンプ

契約の締結後にデータの改ざんがないことを証明するため、タイムスタンプを使用します。
タイムスタンプを付与することで、付与した日時にそのデータが存在していたことと、それ以降データが改ざんされていないことの双方を証明できます。
タイムスタンプを付与するには、タイムスタンプの発行業者と契約しなければいけません。

ただし、電子データの訂正・削除ができないシステムや、訂正・削除の履歴が残るシステムを利用している場合、タイムスタンプは不要です。
また、タイムスタンプが付与された契約書を取引先から受け取った場合も、自社でタイムスタンプを付与する必要はありません。

電子契約書の保存

電子契約書の保存方法は、電子帳簿保存法によって決められています。
電子契約書を送付・受領したときは、一定の要件を満たした状態で保存しておかなければいけません。
その要件は次の通りです。

  • 改ざん防止の措置をとる
  • 保存データを確認するためのディスプレイやプリンタを用意する
  • 日付・金額・取引先の要素で検索できる

改ざん防止の措置

タイムスタンプの付与や、訂正・削除の履歴が残るシステムを利用することは、改ざん防止の措置に該当します。
そのほか、自社で改ざん防止のための事務処理規程を作り、それを運用することも改ざん防止措置として認められます。
規定を作成することで、新しいシステムを導入せずに電子帳簿保存法に対応できます。

データを確認できるようにする

電子契約書は紙に印刷して保管するのではなく、サーバやクラウド上に電子データとして保存しておく必要があります。
そのうえで、必要に応じてすぐにディスプレイで読める、印刷できる等の状態にあることが必要です。
従業員が速やかに書類へアクセスし、必要な形で契約書を出力できるよう、システムの操作マニュアルやプリンタを用意しておく必要があります。

データを検索できるようにする

沢山の電子契約書の中から必要な書類をすぐに探し出せるよう、検索機能の設定も必要です。
取引年月日、取引先、取引金額の3要素について検索できなければいけません。
そのほか、2つの要素を組み合わせて検索する機能や、日付や金額の範囲を指定して検索できる機能が必要です。

まとめ

この記事では電子契約書の法的効力や、保存方法の決まりについて解説しました。
電子的に作成された電子契約書は、電子署名やタイムスタンプを活用することにより法的な効力を持たせることが可能です。
たとえば電子証明書の利用により、実印と同程度の効力が認められます。
電子契約書は作成時だけでなく、保存方法の決まりも守らなければいけません。
電子契約の導入をお考えの際には、専門家である弁護士までご相談ください。

コンプライアンスを重視すべき理由とは

企業法務

現代の企業には、高いコンプライアンス意識が求められています。
その背景には、さまざまな企業の不祥事に対するマスメディアや消費者の批判と、適切なリスク管理により企業価値を高められるという考え方が世界的に広がったことがあげられます。
本記事ではコンプライアンスを重視すべき理由について、コンプライアンスを実践するための具体策とあわせて解説します。

コンプライアンスとは何か

コンプライアンスには本来、企業などが法令や規則を守ること(法令遵守)という意味があります。
「法令」とは、憲法や法律、行政機関が発する命令、規則、条約、地方自治体の条例などを総称する言葉であり、「法令遵守」とは国や地方自治体が定めた法令などに背かず、よく守ることです。
しかし、近年になってコンプライアンスの意味がより大きく捉えられるようになり、基本的には以下にあげる3つの要素を含んでいます。

・法令
・社会倫理
・社内規則

コンプライアンスを重視すべき理由

それでは、コンプライアンスを重視すべき理由を順番に解説します。

法律違反によるリスク回避

コンプライアンスの中でも法令を遵守することが基本となる部分であり、企業活動を行う上で法律違反が引き起こす罰則や制裁を回避することができます。
また、日頃から法令遵守の意識を高めることで、随時改正される法令にも迅速に対応することができます。

企業の信頼性を確保するため

企業は、顧客や取引先だけではなく、投資家や従業員により経営を行うことができます。
コンプライアンスがきちんと守られておらず、不正が横行するような企業であれば、顧客や取引先からの信頼を得ることはできません。
さらに、優秀な人材を確保できなくなるだけではなく、投資家や金融機関からの資金が得られないといったリスクを抱えることになります。

従業員の働きやすい環境づくり

コンプライアンスが守られることで、ハラスメントや不正のない健全な職場環境が実現できます。
社内規定や就業規則を整備して従業員に周知することは、社内の秩序を保つこと以外にも従業員間の賃金や処遇の公平を実現することにも寄与し、従業員が安心して働くことができます。
また、健全で働きやすい環境であれば従業員の責任感や意欲を高め、生産性の向上へとつながります。

長期的な企業成長への寄与

短期的な利益を追求してコンプライアンスを軽視する企業は、重大なミスが発生した際に対応が遅れ、より大きな問題に発展する恐れがあります。
このような企業は長期的な成長を見込むことができず、持続可能な経営を実現することができません。
また、企業は社会の一員として環境や人権などに配慮し、社会貢献を行う責任があると考えられています。
これを企業に求められる社会的責任(Corporate Social Responsibility=CSR)と呼び、自社の利益だけを追求していると社会から取り残され、持続的に発展することができません。

コンプライアンス違反の事例

コンプライアンス違反の事例は、大きく分けると次の4つに分類することができます。

・労働問題
・法令違反
・不正経理
・情報漏えい

過重労働や各種ハラスメントなど、労働問題に関するコンプライアンス違反は複数の要素が原因となっている場合が多く見られます。
また、法令違反は小さなものを積み重ねることで取り返しがつかなくなるケースが多く、この程度の違反なら、と見過ごさないようにすることが重要です。
架空請求や粉飾決算、業務上横領といった不正経理は、取引先や関連企業など広い範囲に被害を与えるため、最終的には経営破綻に至るケースがあります。
情報漏えいは、社員が秘匿性の高さを認識せずに情報を扱い、顧客情報の流出を起こしてしまうケースです。
情報漏洩は、社会的信用を失墜させるのに十分なコンプライアンス違反のため、セキュリティー対策に力を入れている企業が増加しています。

コンプライアンスを実践するための具体策

それでは、コンプライアンスを実践するための具体的な対策を解説します。

社内規定の整備

まずは、きちんと社内規定や就業規則などのルールを整備することが重要です。
コンプライアンスの基準である法令や社会倫理は、時代に応じて変化します。
最新の基準と照らし合わせ、コンプライアンス違反がないか常にアップデートしていく必要があるため、定期的な法令遵守のチェックと外部監査を活用した第三者視点の評価を行うことが重要です。

従業員教育の強化

社内規定などのルールを整備した上で従業員へ周知することで、コンプライアンスの意識を浸透させる必要があります。
そのためにも、定期的なコンプライアンス研修の実施と、従業員がルールを守りやすい環境づくりが必要不可欠です。

内部通報制度(相談窓口)の整備

内部不正や問題行動を報告するための相談窓口を設置します。
コンプライアンス違反は従業員からの相談や指摘で発覚する場合が多いため、相談窓口を設けることで大きな問題になることを防ぐ役割を果たします。
また、相談窓口を設置する場合は従業員が相談しやすい環境を整備することが重要であり、相談者は公益通報者保護法による保護の対象となります。

まとめ

今回は、コンプライアンスを重視すべき理由について解説しました。
コンプライアンスは単なる「守るべきルール」ではなく、企業の成長戦略の一部と捉えることができます。
法律だけでなく、倫理や社会的責任も重視する姿勢が求められるため、すべての従業員が一丸となり取り組むことが必要です。
コンプライアンスについて何か心配がある場合は、法律の専門家である弁護士への相談も検討してみてはいかがでしょうか。

就業規則はなぜ必要なのか?その意義と役割を徹底解説

企業法務

会社運営において、就業規則は欠かせない存在です。
就業規則の存在が労使間のトラブルを防ぎ、従業員の安心感を高める役割を果たすため、企業への信頼感、優秀な人材の確保や定着につながると言えます。
本記事では、就業規則の必要性やその重要性について詳しく解説します。

就業規則の基礎知識

まず、就業規則とは何かについて、順番に説明します。

1.就業規則とは

就業規則とは、労働者の労働時間や賃金、休暇などの労働条件、職場内の規律について定めたもので、職場のルールブックと言えます。
労働基準法第89条に基づき、常時10人以上の労働者を雇用する企業(事業場)での作成が義務づけられたおり、就業規則を新しく作成したり変更したりした場合には、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。

2.就業規則に記載すべき項目

就業規則に記載すべき項目として、以下の3つの項目に分けることができます。

  1. 絶対的必要記載事項
  2. 相対的必要記載事項
  3. 任意的記載事項

絶対的必要記載事項には労働基準法に定められた記載項目として、労働時間、賃金、休暇、退職や解雇事由などを明記します。
相対的必要記載事項とは、制度を設ける場合には必ず記載しなければならない項目で、たとえば退職手当や福利厚生、評価制度などを記載します。
また、任意的記載事項には服務規程や試用期間、休職についてなど、企業で任意に定めた規則を記載することができます。

3.就業規則が対象とする範囲

就業規則は、正社員はもちろん契約社員や派遣社員、パートタイムやアルバイトなど、その企業に雇用されている労働者すべてを対象とします。
原則として、会社役員や業務委託(外注)スタッフには適用されませんが、就業規則の適用範囲についても明確にしておくことが重要です。

就業規則が必要な理由

次に、就業規則が必要な理由について3つ解説します。

1.一定の条件を満たす企業では作成する義務がある

まず1つ目として、一定の条件を満たす企業では就業規則を作成する義務があります。
上述したように、常時10人以上の労働者を雇用する企業(事業場)での作成が義務づけられており、10人という人数は、正規雇用者だけではなくパートタイムやアルバイトなどの非正規雇用者も含みます。
ただし、本社とそれぞれの支店の従業員を合わせると10人以上になるといった場合は作成の義務はありませんが、職場の規律とトラブル防止のため、作成することが望ましいでしょう。

2.労働者保護と権利の明確化

就業規則には、労働時間や賃金といった従業員の労働条件が記載されており、労働者の権利などが明確になることで、従業員が安心して働くことができます。
また、賃金や休暇などのルールが統一されることで従業員の安心感が生まれ、従業員間の公平を実現することにもなります。

3.労使間のトラブル防止

就業規則は、労働者側だけではなく使用者(企業)側も遵守する必要があります。
たとえば残業代を支払わない、休暇を取得させないといった不当な扱いの防止につながり、労使間のトラブルを未然に防ぐ役割を果たします。

就業規則の作成・運用時の注意点

次に、就業規則の作成・運用時の注意点について解説します。

1.法律に準拠した作成

就業規則の作成にあたっては、社内の人事部や総務部などが作成する以外に、社会保険労務士や弁護士など、人事労務の専門家に依頼する方法があります。
どちらの場合についても、労働基準法や関連法規に沿った就業規則の作成が重要です。
自社で作成する場合は、厚生労働省のホームページで「モデル就業規則」を公開しているので、自社の実情に応じた就業規則作成の参考にすると良いでしょう。

2.従業員への周知が必須

就業規則は新規作成後、または変更後に全従業員に周知されることが法律で義務づけられています。
周知の方法としては社内の見やすい場所に掲示する、電子的データとしてパソコンで閲覧できるようにする、書面で配布するなどがあり、その内容を従業員がいつでも確認できる状態にしておく必要があります。

3.実態との乖離を防ぐ

実際の運用と就業規則に記載された内容とが一致しているかどうか、定期的に確認することが重要です。
不一致がある場合は、労務トラブルの原因となる可能性があります。

就業規則の見直しが必要なタイミング

最後に、就業規則の見直しが必要なタイミングについて簡単に解説します。

1.法改正があったとき

たとえば、働き方改革関連法や育児介護休業法の改正など、労働に関する法改正があったときは、必ず見直しが必要なタイミングと言えます。
なぜなら、労働基準法92条1項により法律に違反した就業規則は無効になることが定められており、就業規則で定めたルールが法律違反にならないか、定期的に見直す必要があります。

2.社内制度の変更時

人事評価制度や労働時間制度の変更など、社内の仕組みに変化が生じた場合は、それに合わせた規則の見直しが必要と言えるでしょう。
また、事業規模が拡大し、さまざまな働き方が求められるようになれば、それに応じた就業規則も必要になります。

まとめ

就業規則は従業員だけではなく、雇用側である企業にとっても重要な役割を果たします。
法律に準拠し、実態に即した内容で作成・運用することで、労務トラブルを防止することが期待できます。
就業規則の作成にあたってはさまざまな関連法規に沿った作成が必要となるので、弁護士への依頼を検討することも視野に入れてみてはいかがでしょうか。

企業法務相談とは?よくある相談内容について解説

企業法務

企業法務相談とは、企業の担当者や代表が、事業に当たっての法律に関する疑問や問題を専門家に相談し、解決の糸口を見つけるためのものです。
企業運営や事業の進行において、法的トラブルを未然に防ぐことや、既存の問題を迅速に解決することが主な目的です。
そこで、本記事では、企業法務相談の概要や、よくある相談内容を詳しく解説します。

企業法務相談の概要

企業法務相談は、事業内容や会社の運営の際に生じる、法律上の問題点について弁護士などの法律専門家に相談し、相談を受けた弁護士が、適切な法的助言や手続きを提供することにより、当該会社の法的な問題点を解決に導くサービスです。
相談の範囲は幅広く、あらゆる事業において、あらゆる法的問題が対象になります。
特に、企業法務相談の内容として多いのが、契約書の中身の話や、労務管理に関するものです。
この、企業法務相談を利用することで、問題が深刻化する前に対処することができる可能性が高まるため、早めの相談が推奨されます。

よくある相談内容

企業法務相談において、よくある相談内容は以下の通りです。

契約書の作成・チェック

契約書は、企業間の取引において、必ずと言っていいほど作成するものであり、業務委託契約書や秘密保持契約書など形態もさまざまです。
この契約書に不備があると、契約当時は想定していないようなトラブルが生じる可能性があります。
特に「または」や「並びに」といった、ちょっとした言葉遣いの違いによって、トラブルが生じる事例もあります。
したがって、取引先との契約書が不備だったためにトラブルに発展するケースを防ぐため、契約書の作成やリーガルチェックを専門家である弁護士に依頼し、アドバイスをもらう企業が増えています。

労務管理

従業員とのトラブル、残業代請求、ハラスメント問題への対応など、労務に関する相談は中小企業を中心によく見られる相談内容です。
特に、労働基準法に定められている残業代の支払いの方法については、さまざまなパターンがあり、複雑なため、従業員との間でトラブルが生じやすく、これに関する労務相談が増えています。
また、日本の労働法上、解雇や懲戒についてのハードルも高く、この点についても弁護士に相談し、解雇や懲戒が適法なのかについて助言をもらうことも重要であるといえます。

知的財産権について

特許権、商標権、著作権などの知的財産権の保護や侵害対応もよくある企業法務相談の分野です。
知的財産権については、新たな製品やサービスを展開するときに、必ずと言っていいほど問題となりますが、内容が難しく、法律の専門家である弁護士を通さずに解決することは難しい分野です。
したがって、知的財産権について、企業法務相談を行い、問題点をクリアにする企業が増えています。

取引先とのトラブルについて

取引先とのトラブルについてもよくある企業法務相談のひとつです。
一見、取引先とのトラブルは法律には関係なく、企業法務相談の内容にはなりえないと思う方もいるかもしれません。
しかし、取引先とのトラブルの中には、契約の解釈に基づくトラブルも多くあります。
このようなトラブルの際は、弁護士に相談することにより、問題点がクリアになり、会社として解決に向けた方向性を見つけやすくなります。
したがって、取引先とのトラブルが生じた際に、企業法務相談を利用することも一つの手であるといえます。

企業法務相談を利用するメリット

企業法務相談を利用するメリットは以下の通りです。

問題の早期解決

法律の専門家が状況を正確に分析し、適切なアドバイスを行うため、問題が拡大する前に解決できる可能性が高まります。
特に、企業法務相談を受けずに、対応が後手に回ることにより、問題が拡大したり、不利な地位に追い込まれたりすることもあります。

リスクの回避

契約書のチェックや法的助言を受けることで、トラブルの発生を未然に防ぐことができる可能性が高まります。
特に企業の場合、法律違反による罰則や損害賠償リスクを軽減できます。

まとめ

本記事では、企業法務相談の概要や、よくある相談内容について解説しました。
企業法務相談は企業が抱える法的な問題を解決するための重要なサービスであり、さまざまな相談内容があります。
法的な疑問点が生じた場合は、早めに専門家に相談することで、問題の拡大を防ぎ、スムーズな解決を図ることが可能になるため、法律問題に直面した際は、なるべく早く弁護士に相談することをおすすめします。

契約書とリーガルチェックの重要性

契約書

ビジネスや日常生活において、契約書の作成は欠かせないものです。
契約書は取引の基本的な約束事を明確にし、トラブル防止のための重要な文書であり、リーガルチェックの重要性がますます高まっています。
本記事では、契約書の役割とリーガルチェックがなぜ必要なのかを詳しく説明します。

契約書の役割と必要性

契約書とは、当事者間において合意内容を整理し、契約の成立、更改または内容の変更などを証明する目的で作成される文書のことで、通常、当事者が署名または捺印することによって完成します。
契約書が必要な理由として、主に以下の2つがあります。

  1. 取引内容や権利、義務を明確にする
  2. 紛争発生時に証拠として利用できる


民法では契約は口頭でも成立しますが、契約書を作成することで契約内容が整理され、双方の義務が明確になります。
さらに、契約書には法的効力があり、契約違反が発生した場合には法的措置を講じることが可能です。
訴訟などの紛争が発生した場合、どのような取り決めがあったのか、契約書が重要な証拠となります。

リーガルチェックとは

リーガルチェックとは、契約書などの法的文書が法令に適合しているか、不備がないかを専門家が確認し、精査することです。
通常、会社の法務担当者や、会社から依頼を受けた弁護士などが担当します。
法務担当者が社内事情や法的観点を踏まえた上で一次チェックを行い、必要に応じて顧問弁護士などに二次チェックを依頼するという流れが一般的です。

リーガルチェックが重要な理由

リーガルチェックが重要な理由として、大きく分けて4つあります。

  1. 契約書の複雑化と専門知識の必要性
  2. リスクの回避
  3. 紛争の予防
  4. 法改正への対応

1.契約書の複雑化と専門知識の必要性

近年のグローバル化やデジタル化により、契約書の内容が複雑化しています。
専門知識がなければ契約書の条項の意味を正確に理解することは難しく、特に国際取引やIT関連契約など、特定の分野では法的規制も多いため、プロのサポートが必要となります。

2.リスクの回避

契約書の中に、法令に抵触するような不備があった場合は契約が無効になるだけではなく、相手からの信頼を損なう可能性があります。
また、重要なポイントが抜け落ちていた場合には、自社にとって不利な契約内容となるなど、ビジネス上の損失が発生することも考えられます。
リーガルチェックを行うことにより、リスクの洗い出しやリスクマネジメントが可能であり、ひいては安全で信頼のある取引環境を構築することにもなります。

3.紛争の予防

契約の内容が曖昧だったり、解釈の余地がある条項が残っていたりすると、後に紛争の原因となる場合があります。
将来の紛争を予防するためには、契約書の条項をできる限り明確にし、解釈の余地を排除することが重要です。
専門家のリーガルチェックによって、曖昧な表現や解釈の余地を削減し、紛争のリスクを避けることができます。

4.法改正への対応

契約書を作成する際、法律に詳しくない場合は法令上認められていない内容を記載してしまう可能性も考えられます。
法律は頻繁に改正されるため、法改正に対応していない契約書は後に無効となるだけではなく、行政からの指導を受けてしまったり、罰則の対象となってしまったりする可能性もあります。
その点、法律の専門家によるリーガルチェックを行うことで、契約内容が法的に適正であるか確認してもらうことができます。

リーガルチェックで確認するべき主な項目

リーガルチェックで確認するべき項目として、以下のようなものがあります。

・契約内容が法令に適合しているか
・当事者の権利と義務が明確に定められているか
・紛争解決手段や違約金条項が適切に設定されているか
・契約解除や自動更新に関する条件が明記されているか

契約書の中には、法律上記載しなければならない項目が決まっている場合があります。
たとえば、1か月以上の期間で、5万円を超えるエステや語学教室の契約では、特定商取引法における「特定継続的役務提供」に該当し、契約書面には法律で定められた事項を記載する必要があるため注意が必要です。
また、権利と義務については、どのような権利なのか、誰がその義務を負うのかといった主語の部分が明確に定められていないと、曖昧な契約内容となってしまい、紛争の原因となる可能性があります。
「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように」という要素がきちんと含まれているか確認することも重要です。

まとめ

契約書は、取引の安全性と信頼性を確保するために欠かせない文書です。
権利や義務について明確に記載するという基本的なことから、法令に適合しているかといった法的な知識を必要とすることまで、契約書に盛り込む内容は多岐にわたります。
ビジネスをする上で法的リスクを回避し、円滑な取引を進めるためにも、不安な場合には弁護士への相談を検討してみてください。

顧問弁護士を依頼するメリット

顧問弁護

会社経営をしていると、法律に関するトラブルが起こることがあり、顧問弁護士を依頼した方が良いのか悩むことがあります。
この記事では、顧問弁護士を依頼するメリットについて解説します。

顧問弁護士を依頼するメリット

顧問弁護士を依頼する主なメリットは9つあるので詳しくみていきましょう。

法的トラブルについて相談できる

顧問弁護士を依頼すれば、法的トラブルについて相談できます。
会社を経営していると雇用契約や労災、事業に関する法的トラブルに巻き込まれる恐れがあります。
自社に法務部を設けている場合であれば、法務部がある程度は対応できるでしょう。

しかし、法務部を設けていない会社では、トラブルが起こってから弁護士を探して対応することになるので、後手に回ってトラブルや損害が拡大する可能性があります。
顧問弁護士を依頼しておくことで、いつでも気軽に相談できるため、日常的に法律に関する知識を蓄えることができます。
結果として、法的トラブルに対して早期解決が望めます。

法的リスクを軽減できる

取引先との契約内容によっては、法的リスクの高い契約を結ぶこともあります。
企業間の契約内容は、専門家が確認しなければ回避できないような文言や言い回しで記載されていることもあるため、顧問弁護士を依頼することで法的リスクを回避できます。

他のクライアントよりも優先的に対応してもらえる

顧問弁護士を依頼すれば、弁護士が抱えている他のクライアントよりも優先的に対応してもらえるメリットがあります。
取引先との契約内容や業務上の労災、人身事故による補償問題など、急を要するトラブルでも適切なアドバイスをもらえるので会社としても迅速に対応できます。
また、優先的に対応してもらえれば法的リスクも最小限に抑えられる可能性があります。

会社の信頼度がアップする

顧問弁護士を依頼することで、コンプライアンス意識の高さをアピールできるため、会社の信用アップにつながります。
そのため、企業によっては信頼度を上げるため、自社のホームページなどで顧問弁護士との契約をアピールしているケースもあります。
また、顧問弁護士との契約を積極的にアピールすることで、取引先に対して「法律を犯すような取引先とは契約しない」という無言の注意喚起の効果もあります。

秘匿性の高い相談ができる

会社経営において、経営陣だけで話を進める内容やパワハラ、セクハラ、社内のいじめなど、外部を始めとする社内の従業員にも知られたくない秘匿性の高い案件が発生します。
顧問弁護士を依頼すれば、あらゆる秘匿性の高い相談が可能です。
弁護士には依頼者の情報を守る「守秘義務」が弁護士法で定められているため、どのような相談でも外部や関係者以外に情報が洩れる心配はありません。

新たに法務部を設置するよりも費用を抑えられる

自社に法務部がないからといって、新たに設置すると高額な費用がかかる可能性があります。
顧問弁護士を依頼すれば、一度に高額の費用を拠出する必要はないので経費を抑えられます。
また、弁護士の方が法的専門知識や経験があるので、法務部を新たに設置して数名の従業員を配属するよりも遥かにコスト削減に貢献できます。

自社にとって適切なアドバイスをもらえる

顧問弁護士を依頼することで、自社にとって適切なアドバイスをもらえます。
トラブルが起こったときにだけ依頼する弁護士とは異なり、顧問弁護士は自社の内情を把握しているため、さまざまな面で適切に指摘してもらえます。

法改正などの重要な情報を提供してもらえる

弁護士は業務を遂行する上で、常に法律に関する情報にアンテナを張っています。
会社にとって重要な労働基準法や会社法、顧問契約している会社の業種に関する法律など、法改正の情報をその都度、提供してもらえます。
情報提供が早いほど、会社としての対応も迅速に行えます。

社内規定や契約書のひな形を作成してもらえる

顧問弁護士を依頼することで、内部事情を把握してもらえるため、就業規則や定款のような社内規定の作成を依頼できます。
また、取引先との契約書もインターネットなどのひな形を利用する会社もありますが、そもそも契約書は取引先に応じてその都度、契約内容が異なります。
また、自社および取引先に対しての法的リスクも考慮して作成する必要があるため、不用意にインターネットなどのひな形を使用するのではなく、弁護士に依頼して作成してもらうことをおすすめします。

まとめ

今回は、顧問弁護士を依頼するメリットについて解説しました。
顧問弁護士を依頼することで、コンプライアンスに対して専門家の視点でチェックしてもらえます。
また、社内規定や契約書のひな形なども依頼できる上に法的見解から経営上の適切なアドバイスを受けられるメリットがあります。
顧問弁護士を依頼する際に悩みや不安を抱えているのであれば、まずは弁護士に相談してみることをおすすめいたします。

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