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コラムカテゴリー: 企業法務

電子契約書は法的に有効なのか?

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契約を結ぶ際、紙で作成した契約書を使用するのではなく、電子的な契約書を導入する企業が増えています。
しかし、電子契約書は法的に有効といえるのでしょうか。
この記事では、電子契約書の法的な効力や、電子契約書を保存するうえでの決まりを解説します。

電子契約書とは

電子データを用いて契約を結び、電子的なやり取りで作成された契約書が、電子契約書です。
一定の要件を満たしている場合、電子契約書に法的な効力を持たせることが可能です。
紙による契約書では署名や押印によって法的な効力を持たせますが、電子契約書では電子署名やタイムスタンプを施すことにより法的な効力を持たせます。

法的な効力を持たせるための要件

電子契約書に法的な効力を持たせるための要件は次の通りです。

  • 電子文書に電子署名を施している
  • 本人だけが使用できる電子署名である
  • 電子署名を施したあと、データが改ざんされていないことを証明できる

電子的なファイルに対する本人確認や、内容の改変がないことの証明は、紙と同じ方法ではできません。
そのため、特別な認証システムを利用し、電子署名が本人によって作成されたものであることや、署名後に内容が改変されていないことを証明する必要があります。

電子署名

電子署名を利用するには、電子署名サービス業者を利用する方法と、認証局によって発行された電子証明書を使用する方法があります。
電子署名サービス業者を利用する方法では、業者が立会人となり、本人確認や同意の意志を確認して、電子署名をほどこします。
その効力は、認印と同程度であることが一般的です。
メールアドレスなどを用意するだけで簡単に利用できるため、導入しやすい方法です。

一方、電子証明書を利用するには、認証局などに電子証明書の発行を申請し、取得しなければいけません。
申請や発行には手間や時間がかかりますが、電子証明書には実印並みの効力があります。
たとえば、法務局が発行している会社代表の電子証明書は、法人の登録印に相当する効力があります。
一般的に実印が必要とされる契約書には、電子証明書を用いた電子署名を行うことが適切です。

タイムスタンプ

契約の締結後にデータの改ざんがないことを証明するため、タイムスタンプを使用します。
タイムスタンプを付与することで、付与した日時にそのデータが存在していたことと、それ以降データが改ざんされていないことの双方を証明できます。
タイムスタンプを付与するには、タイムスタンプの発行業者と契約しなければいけません。

ただし、電子データの訂正・削除ができないシステムや、訂正・削除の履歴が残るシステムを利用している場合、タイムスタンプは不要です。
また、タイムスタンプが付与された契約書を取引先から受け取った場合も、自社でタイムスタンプを付与する必要はありません。

電子契約書の保存

電子契約書の保存方法は、電子帳簿保存法によって決められています。
電子契約書を送付・受領したときは、一定の要件を満たした状態で保存しておかなければいけません。
その要件は次の通りです。

  • 改ざん防止の措置をとる
  • 保存データを確認するためのディスプレイやプリンタを用意する
  • 日付・金額・取引先の要素で検索できる

改ざん防止の措置

タイムスタンプの付与や、訂正・削除の履歴が残るシステムを利用することは、改ざん防止の措置に該当します。
そのほか、自社で改ざん防止のための事務処理規程を作り、それを運用することも改ざん防止措置として認められます。
規定を作成することで、新しいシステムを導入せずに電子帳簿保存法に対応できます。

データを確認できるようにする

電子契約書は紙に印刷して保管するのではなく、サーバやクラウド上に電子データとして保存しておく必要があります。
そのうえで、必要に応じてすぐにディスプレイで読める、印刷できる等の状態にあることが必要です。
従業員が速やかに書類へアクセスし、必要な形で契約書を出力できるよう、システムの操作マニュアルやプリンタを用意しておく必要があります。

データを検索できるようにする

沢山の電子契約書の中から必要な書類をすぐに探し出せるよう、検索機能の設定も必要です。
取引年月日、取引先、取引金額の3要素について検索できなければいけません。
そのほか、2つの要素を組み合わせて検索する機能や、日付や金額の範囲を指定して検索できる機能が必要です。

まとめ

この記事では電子契約書の法的効力や、保存方法の決まりについて解説しました。
電子的に作成された電子契約書は、電子署名やタイムスタンプを活用することにより法的な効力を持たせることが可能です。
たとえば電子証明書の利用により、実印と同程度の効力が認められます。
電子契約書は作成時だけでなく、保存方法の決まりも守らなければいけません。
電子契約の導入をお考えの際には、専門家である弁護士までご相談ください。

コンプライアンスを重視すべき理由とは

企業法務

現代の企業には、高いコンプライアンス意識が求められています。
その背景には、さまざまな企業の不祥事に対するマスメディアや消費者の批判と、適切なリスク管理により企業価値を高められるという考え方が世界的に広がったことがあげられます。
本記事ではコンプライアンスを重視すべき理由について、コンプライアンスを実践するための具体策とあわせて解説します。

コンプライアンスとは何か

コンプライアンスには本来、企業などが法令や規則を守ること(法令遵守)という意味があります。
「法令」とは、憲法や法律、行政機関が発する命令、規則、条約、地方自治体の条例などを総称する言葉であり、「法令遵守」とは国や地方自治体が定めた法令などに背かず、よく守ることです。
しかし、近年になってコンプライアンスの意味がより大きく捉えられるようになり、基本的には以下にあげる3つの要素を含んでいます。

・法令
・社会倫理
・社内規則

コンプライアンスを重視すべき理由

それでは、コンプライアンスを重視すべき理由を順番に解説します。

法律違反によるリスク回避

コンプライアンスの中でも法令を遵守することが基本となる部分であり、企業活動を行う上で法律違反が引き起こす罰則や制裁を回避することができます。
また、日頃から法令遵守の意識を高めることで、随時改正される法令にも迅速に対応することができます。

企業の信頼性を確保するため

企業は、顧客や取引先だけではなく、投資家や従業員により経営を行うことができます。
コンプライアンスがきちんと守られておらず、不正が横行するような企業であれば、顧客や取引先からの信頼を得ることはできません。
さらに、優秀な人材を確保できなくなるだけではなく、投資家や金融機関からの資金が得られないといったリスクを抱えることになります。

従業員の働きやすい環境づくり

コンプライアンスが守られることで、ハラスメントや不正のない健全な職場環境が実現できます。
社内規定や就業規則を整備して従業員に周知することは、社内の秩序を保つこと以外にも従業員間の賃金や処遇の公平を実現することにも寄与し、従業員が安心して働くことができます。
また、健全で働きやすい環境であれば従業員の責任感や意欲を高め、生産性の向上へとつながります。

長期的な企業成長への寄与

短期的な利益を追求してコンプライアンスを軽視する企業は、重大なミスが発生した際に対応が遅れ、より大きな問題に発展する恐れがあります。
このような企業は長期的な成長を見込むことができず、持続可能な経営を実現することができません。
また、企業は社会の一員として環境や人権などに配慮し、社会貢献を行う責任があると考えられています。
これを企業に求められる社会的責任(Corporate Social Responsibility=CSR)と呼び、自社の利益だけを追求していると社会から取り残され、持続的に発展することができません。

コンプライアンス違反の事例

コンプライアンス違反の事例は、大きく分けると次の4つに分類することができます。

・労働問題
・法令違反
・不正経理
・情報漏えい

過重労働や各種ハラスメントなど、労働問題に関するコンプライアンス違反は複数の要素が原因となっている場合が多く見られます。
また、法令違反は小さなものを積み重ねることで取り返しがつかなくなるケースが多く、この程度の違反なら、と見過ごさないようにすることが重要です。
架空請求や粉飾決算、業務上横領といった不正経理は、取引先や関連企業など広い範囲に被害を与えるため、最終的には経営破綻に至るケースがあります。
情報漏えいは、社員が秘匿性の高さを認識せずに情報を扱い、顧客情報の流出を起こしてしまうケースです。
情報漏洩は、社会的信用を失墜させるのに十分なコンプライアンス違反のため、セキュリティー対策に力を入れている企業が増加しています。

コンプライアンスを実践するための具体策

それでは、コンプライアンスを実践するための具体的な対策を解説します。

社内規定の整備

まずは、きちんと社内規定や就業規則などのルールを整備することが重要です。
コンプライアンスの基準である法令や社会倫理は、時代に応じて変化します。
最新の基準と照らし合わせ、コンプライアンス違反がないか常にアップデートしていく必要があるため、定期的な法令遵守のチェックと外部監査を活用した第三者視点の評価を行うことが重要です。

従業員教育の強化

社内規定などのルールを整備した上で従業員へ周知することで、コンプライアンスの意識を浸透させる必要があります。
そのためにも、定期的なコンプライアンス研修の実施と、従業員がルールを守りやすい環境づくりが必要不可欠です。

内部通報制度(相談窓口)の整備

内部不正や問題行動を報告するための相談窓口を設置します。
コンプライアンス違反は従業員からの相談や指摘で発覚する場合が多いため、相談窓口を設けることで大きな問題になることを防ぐ役割を果たします。
また、相談窓口を設置する場合は従業員が相談しやすい環境を整備することが重要であり、相談者は公益通報者保護法による保護の対象となります。

まとめ

今回は、コンプライアンスを重視すべき理由について解説しました。
コンプライアンスは単なる「守るべきルール」ではなく、企業の成長戦略の一部と捉えることができます。
法律だけでなく、倫理や社会的責任も重視する姿勢が求められるため、すべての従業員が一丸となり取り組むことが必要です。
コンプライアンスについて何か心配がある場合は、法律の専門家である弁護士への相談も検討してみてはいかがでしょうか。

就業規則はなぜ必要なのか?その意義と役割を徹底解説

企業法務

会社運営において、就業規則は欠かせない存在です。
就業規則の存在が労使間のトラブルを防ぎ、従業員の安心感を高める役割を果たすため、企業への信頼感、優秀な人材の確保や定着につながると言えます。
本記事では、就業規則の必要性やその重要性について詳しく解説します。

就業規則の基礎知識

まず、就業規則とは何かについて、順番に説明します。

1.就業規則とは

就業規則とは、労働者の労働時間や賃金、休暇などの労働条件、職場内の規律について定めたもので、職場のルールブックと言えます。
労働基準法第89条に基づき、常時10人以上の労働者を雇用する企業(事業場)での作成が義務づけられたおり、就業規則を新しく作成したり変更したりした場合には、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。

2.就業規則に記載すべき項目

就業規則に記載すべき項目として、以下の3つの項目に分けることができます。

  1. 絶対的必要記載事項
  2. 相対的必要記載事項
  3. 任意的記載事項

絶対的必要記載事項には労働基準法に定められた記載項目として、労働時間、賃金、休暇、退職や解雇事由などを明記します。
相対的必要記載事項とは、制度を設ける場合には必ず記載しなければならない項目で、たとえば退職手当や福利厚生、評価制度などを記載します。
また、任意的記載事項には服務規程や試用期間、休職についてなど、企業で任意に定めた規則を記載することができます。

3.就業規則が対象とする範囲

就業規則は、正社員はもちろん契約社員や派遣社員、パートタイムやアルバイトなど、その企業に雇用されている労働者すべてを対象とします。
原則として、会社役員や業務委託(外注)スタッフには適用されませんが、就業規則の適用範囲についても明確にしておくことが重要です。

就業規則が必要な理由

次に、就業規則が必要な理由について3つ解説します。

1.一定の条件を満たす企業では作成する義務がある

まず1つ目として、一定の条件を満たす企業では就業規則を作成する義務があります。
上述したように、常時10人以上の労働者を雇用する企業(事業場)での作成が義務づけられており、10人という人数は、正規雇用者だけではなくパートタイムやアルバイトなどの非正規雇用者も含みます。
ただし、本社とそれぞれの支店の従業員を合わせると10人以上になるといった場合は作成の義務はありませんが、職場の規律とトラブル防止のため、作成することが望ましいでしょう。

2.労働者保護と権利の明確化

就業規則には、労働時間や賃金といった従業員の労働条件が記載されており、労働者の権利などが明確になることで、従業員が安心して働くことができます。
また、賃金や休暇などのルールが統一されることで従業員の安心感が生まれ、従業員間の公平を実現することにもなります。

3.労使間のトラブル防止

就業規則は、労働者側だけではなく使用者(企業)側も遵守する必要があります。
たとえば残業代を支払わない、休暇を取得させないといった不当な扱いの防止につながり、労使間のトラブルを未然に防ぐ役割を果たします。

就業規則の作成・運用時の注意点

次に、就業規則の作成・運用時の注意点について解説します。

1.法律に準拠した作成

就業規則の作成にあたっては、社内の人事部や総務部などが作成する以外に、社会保険労務士や弁護士など、人事労務の専門家に依頼する方法があります。
どちらの場合についても、労働基準法や関連法規に沿った就業規則の作成が重要です。
自社で作成する場合は、厚生労働省のホームページで「モデル就業規則」を公開しているので、自社の実情に応じた就業規則作成の参考にすると良いでしょう。

2.従業員への周知が必須

就業規則は新規作成後、または変更後に全従業員に周知されることが法律で義務づけられています。
周知の方法としては社内の見やすい場所に掲示する、電子的データとしてパソコンで閲覧できるようにする、書面で配布するなどがあり、その内容を従業員がいつでも確認できる状態にしておく必要があります。

3.実態との乖離を防ぐ

実際の運用と就業規則に記載された内容とが一致しているかどうか、定期的に確認することが重要です。
不一致がある場合は、労務トラブルの原因となる可能性があります。

就業規則の見直しが必要なタイミング

最後に、就業規則の見直しが必要なタイミングについて簡単に解説します。

1.法改正があったとき

たとえば、働き方改革関連法や育児介護休業法の改正など、労働に関する法改正があったときは、必ず見直しが必要なタイミングと言えます。
なぜなら、労働基準法92条1項により法律に違反した就業規則は無効になることが定められており、就業規則で定めたルールが法律違反にならないか、定期的に見直す必要があります。

2.社内制度の変更時

人事評価制度や労働時間制度の変更など、社内の仕組みに変化が生じた場合は、それに合わせた規則の見直しが必要と言えるでしょう。
また、事業規模が拡大し、さまざまな働き方が求められるようになれば、それに応じた就業規則も必要になります。

まとめ

就業規則は従業員だけではなく、雇用側である企業にとっても重要な役割を果たします。
法律に準拠し、実態に即した内容で作成・運用することで、労務トラブルを防止することが期待できます。
就業規則の作成にあたってはさまざまな関連法規に沿った作成が必要となるので、弁護士への依頼を検討することも視野に入れてみてはいかがでしょうか。

企業法務相談とは?よくある相談内容について解説

企業法務

企業法務相談とは、企業の担当者や代表が、事業に当たっての法律に関する疑問や問題を専門家に相談し、解決の糸口を見つけるためのものです。
企業運営や事業の進行において、法的トラブルを未然に防ぐことや、既存の問題を迅速に解決することが主な目的です。
そこで、本記事では、企業法務相談の概要や、よくある相談内容を詳しく解説します。

企業法務相談の概要

企業法務相談は、事業内容や会社の運営の際に生じる、法律上の問題点について弁護士などの法律専門家に相談し、相談を受けた弁護士が、適切な法的助言や手続きを提供することにより、当該会社の法的な問題点を解決に導くサービスです。
相談の範囲は幅広く、あらゆる事業において、あらゆる法的問題が対象になります。
特に、企業法務相談の内容として多いのが、契約書の中身の話や、労務管理に関するものです。
この、企業法務相談を利用することで、問題が深刻化する前に対処することができる可能性が高まるため、早めの相談が推奨されます。

よくある相談内容

企業法務相談において、よくある相談内容は以下の通りです。

契約書の作成・チェック

契約書は、企業間の取引において、必ずと言っていいほど作成するものであり、業務委託契約書や秘密保持契約書など形態もさまざまです。
この契約書に不備があると、契約当時は想定していないようなトラブルが生じる可能性があります。
特に「または」や「並びに」といった、ちょっとした言葉遣いの違いによって、トラブルが生じる事例もあります。
したがって、取引先との契約書が不備だったためにトラブルに発展するケースを防ぐため、契約書の作成やリーガルチェックを専門家である弁護士に依頼し、アドバイスをもらう企業が増えています。

労務管理

従業員とのトラブル、残業代請求、ハラスメント問題への対応など、労務に関する相談は中小企業を中心によく見られる相談内容です。
特に、労働基準法に定められている残業代の支払いの方法については、さまざまなパターンがあり、複雑なため、従業員との間でトラブルが生じやすく、これに関する労務相談が増えています。
また、日本の労働法上、解雇や懲戒についてのハードルも高く、この点についても弁護士に相談し、解雇や懲戒が適法なのかについて助言をもらうことも重要であるといえます。

知的財産権について

特許権、商標権、著作権などの知的財産権の保護や侵害対応もよくある企業法務相談の分野です。
知的財産権については、新たな製品やサービスを展開するときに、必ずと言っていいほど問題となりますが、内容が難しく、法律の専門家である弁護士を通さずに解決することは難しい分野です。
したがって、知的財産権について、企業法務相談を行い、問題点をクリアにする企業が増えています。

取引先とのトラブルについて

取引先とのトラブルについてもよくある企業法務相談のひとつです。
一見、取引先とのトラブルは法律には関係なく、企業法務相談の内容にはなりえないと思う方もいるかもしれません。
しかし、取引先とのトラブルの中には、契約の解釈に基づくトラブルも多くあります。
このようなトラブルの際は、弁護士に相談することにより、問題点がクリアになり、会社として解決に向けた方向性を見つけやすくなります。
したがって、取引先とのトラブルが生じた際に、企業法務相談を利用することも一つの手であるといえます。

企業法務相談を利用するメリット

企業法務相談を利用するメリットは以下の通りです。

問題の早期解決

法律の専門家が状況を正確に分析し、適切なアドバイスを行うため、問題が拡大する前に解決できる可能性が高まります。
特に、企業法務相談を受けずに、対応が後手に回ることにより、問題が拡大したり、不利な地位に追い込まれたりすることもあります。

リスクの回避

契約書のチェックや法的助言を受けることで、トラブルの発生を未然に防ぐことができる可能性が高まります。
特に企業の場合、法律違反による罰則や損害賠償リスクを軽減できます。

まとめ

本記事では、企業法務相談の概要や、よくある相談内容について解説しました。
企業法務相談は企業が抱える法的な問題を解決するための重要なサービスであり、さまざまな相談内容があります。
法的な疑問点が生じた場合は、早めに専門家に相談することで、問題の拡大を防ぎ、スムーズな解決を図ることが可能になるため、法律問題に直面した際は、なるべく早く弁護士に相談することをおすすめします。

契約書とリーガルチェックの重要性

契約書

ビジネスや日常生活において、契約書の作成は欠かせないものです。
契約書は取引の基本的な約束事を明確にし、トラブル防止のための重要な文書であり、リーガルチェックの重要性がますます高まっています。
本記事では、契約書の役割とリーガルチェックがなぜ必要なのかを詳しく説明します。

契約書の役割と必要性

契約書とは、当事者間において合意内容を整理し、契約の成立、更改または内容の変更などを証明する目的で作成される文書のことで、通常、当事者が署名または捺印することによって完成します。
契約書が必要な理由として、主に以下の2つがあります。

  1. 取引内容や権利、義務を明確にする
  2. 紛争発生時に証拠として利用できる


民法では契約は口頭でも成立しますが、契約書を作成することで契約内容が整理され、双方の義務が明確になります。
さらに、契約書には法的効力があり、契約違反が発生した場合には法的措置を講じることが可能です。
訴訟などの紛争が発生した場合、どのような取り決めがあったのか、契約書が重要な証拠となります。

リーガルチェックとは

リーガルチェックとは、契約書などの法的文書が法令に適合しているか、不備がないかを専門家が確認し、精査することです。
通常、会社の法務担当者や、会社から依頼を受けた弁護士などが担当します。
法務担当者が社内事情や法的観点を踏まえた上で一次チェックを行い、必要に応じて顧問弁護士などに二次チェックを依頼するという流れが一般的です。

リーガルチェックが重要な理由

リーガルチェックが重要な理由として、大きく分けて4つあります。

  1. 契約書の複雑化と専門知識の必要性
  2. リスクの回避
  3. 紛争の予防
  4. 法改正への対応

1.契約書の複雑化と専門知識の必要性

近年のグローバル化やデジタル化により、契約書の内容が複雑化しています。
専門知識がなければ契約書の条項の意味を正確に理解することは難しく、特に国際取引やIT関連契約など、特定の分野では法的規制も多いため、プロのサポートが必要となります。

2.リスクの回避

契約書の中に、法令に抵触するような不備があった場合は契約が無効になるだけではなく、相手からの信頼を損なう可能性があります。
また、重要なポイントが抜け落ちていた場合には、自社にとって不利な契約内容となるなど、ビジネス上の損失が発生することも考えられます。
リーガルチェックを行うことにより、リスクの洗い出しやリスクマネジメントが可能であり、ひいては安全で信頼のある取引環境を構築することにもなります。

3.紛争の予防

契約の内容が曖昧だったり、解釈の余地がある条項が残っていたりすると、後に紛争の原因となる場合があります。
将来の紛争を予防するためには、契約書の条項をできる限り明確にし、解釈の余地を排除することが重要です。
専門家のリーガルチェックによって、曖昧な表現や解釈の余地を削減し、紛争のリスクを避けることができます。

4.法改正への対応

契約書を作成する際、法律に詳しくない場合は法令上認められていない内容を記載してしまう可能性も考えられます。
法律は頻繁に改正されるため、法改正に対応していない契約書は後に無効となるだけではなく、行政からの指導を受けてしまったり、罰則の対象となってしまったりする可能性もあります。
その点、法律の専門家によるリーガルチェックを行うことで、契約内容が法的に適正であるか確認してもらうことができます。

リーガルチェックで確認するべき主な項目

リーガルチェックで確認するべき項目として、以下のようなものがあります。

・契約内容が法令に適合しているか
・当事者の権利と義務が明確に定められているか
・紛争解決手段や違約金条項が適切に設定されているか
・契約解除や自動更新に関する条件が明記されているか

契約書の中には、法律上記載しなければならない項目が決まっている場合があります。
たとえば、1か月以上の期間で、5万円を超えるエステや語学教室の契約では、特定商取引法における「特定継続的役務提供」に該当し、契約書面には法律で定められた事項を記載する必要があるため注意が必要です。
また、権利と義務については、どのような権利なのか、誰がその義務を負うのかといった主語の部分が明確に定められていないと、曖昧な契約内容となってしまい、紛争の原因となる可能性があります。
「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように」という要素がきちんと含まれているか確認することも重要です。

まとめ

契約書は、取引の安全性と信頼性を確保するために欠かせない文書です。
権利や義務について明確に記載するという基本的なことから、法令に適合しているかといった法的な知識を必要とすることまで、契約書に盛り込む内容は多岐にわたります。
ビジネスをする上で法的リスクを回避し、円滑な取引を進めるためにも、不安な場合には弁護士への相談を検討してみてください。

顧問弁護士を依頼するメリット

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会社経営をしていると、法律に関するトラブルが起こることがあり、顧問弁護士を依頼した方が良いのか悩むことがあります。
この記事では、顧問弁護士を依頼するメリットについて解説します。

顧問弁護士を依頼するメリット

顧問弁護士を依頼する主なメリットは9つあるので詳しくみていきましょう。

法的トラブルについて相談できる

顧問弁護士を依頼すれば、法的トラブルについて相談できます。
会社を経営していると雇用契約や労災、事業に関する法的トラブルに巻き込まれる恐れがあります。
自社に法務部を設けている場合であれば、法務部がある程度は対応できるでしょう。

しかし、法務部を設けていない会社では、トラブルが起こってから弁護士を探して対応することになるので、後手に回ってトラブルや損害が拡大する可能性があります。
顧問弁護士を依頼しておくことで、いつでも気軽に相談できるため、日常的に法律に関する知識を蓄えることができます。
結果として、法的トラブルに対して早期解決が望めます。

法的リスクを軽減できる

取引先との契約内容によっては、法的リスクの高い契約を結ぶこともあります。
企業間の契約内容は、専門家が確認しなければ回避できないような文言や言い回しで記載されていることもあるため、顧問弁護士を依頼することで法的リスクを回避できます。

他のクライアントよりも優先的に対応してもらえる

顧問弁護士を依頼すれば、弁護士が抱えている他のクライアントよりも優先的に対応してもらえるメリットがあります。
取引先との契約内容や業務上の労災、人身事故による補償問題など、急を要するトラブルでも適切なアドバイスをもらえるので会社としても迅速に対応できます。
また、優先的に対応してもらえれば法的リスクも最小限に抑えられる可能性があります。

会社の信頼度がアップする

顧問弁護士を依頼することで、コンプライアンス意識の高さをアピールできるため、会社の信用アップにつながります。
そのため、企業によっては信頼度を上げるため、自社のホームページなどで顧問弁護士との契約をアピールしているケースもあります。
また、顧問弁護士との契約を積極的にアピールすることで、取引先に対して「法律を犯すような取引先とは契約しない」という無言の注意喚起の効果もあります。

秘匿性の高い相談ができる

会社経営において、経営陣だけで話を進める内容やパワハラ、セクハラ、社内のいじめなど、外部を始めとする社内の従業員にも知られたくない秘匿性の高い案件が発生します。
顧問弁護士を依頼すれば、あらゆる秘匿性の高い相談が可能です。
弁護士には依頼者の情報を守る「守秘義務」が弁護士法で定められているため、どのような相談でも外部や関係者以外に情報が洩れる心配はありません。

新たに法務部を設置するよりも費用を抑えられる

自社に法務部がないからといって、新たに設置すると高額な費用がかかる可能性があります。
顧問弁護士を依頼すれば、一度に高額の費用を拠出する必要はないので経費を抑えられます。
また、弁護士の方が法的専門知識や経験があるので、法務部を新たに設置して数名の従業員を配属するよりも遥かにコスト削減に貢献できます。

自社にとって適切なアドバイスをもらえる

顧問弁護士を依頼することで、自社にとって適切なアドバイスをもらえます。
トラブルが起こったときにだけ依頼する弁護士とは異なり、顧問弁護士は自社の内情を把握しているため、さまざまな面で適切に指摘してもらえます。

法改正などの重要な情報を提供してもらえる

弁護士は業務を遂行する上で、常に法律に関する情報にアンテナを張っています。
会社にとって重要な労働基準法や会社法、顧問契約している会社の業種に関する法律など、法改正の情報をその都度、提供してもらえます。
情報提供が早いほど、会社としての対応も迅速に行えます。

社内規定や契約書のひな形を作成してもらえる

顧問弁護士を依頼することで、内部事情を把握してもらえるため、就業規則や定款のような社内規定の作成を依頼できます。
また、取引先との契約書もインターネットなどのひな形を利用する会社もありますが、そもそも契約書は取引先に応じてその都度、契約内容が異なります。
また、自社および取引先に対しての法的リスクも考慮して作成する必要があるため、不用意にインターネットなどのひな形を使用するのではなく、弁護士に依頼して作成してもらうことをおすすめします。

まとめ

今回は、顧問弁護士を依頼するメリットについて解説しました。
顧問弁護士を依頼することで、コンプライアンスに対して専門家の視点でチェックしてもらえます。
また、社内規定や契約書のひな形なども依頼できる上に法的見解から経営上の適切なアドバイスを受けられるメリットがあります。
顧問弁護士を依頼する際に悩みや不安を抱えているのであれば、まずは弁護士に相談してみることをおすすめいたします。

景品表示法とは?企業が押さえておくべきポイントを解説

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消費者の信頼を守り、市場の透明性を保つために、企業は景品表示法の遵守が求められています。
この法律は、消費者を誤解を与える広告から守り、公正な市場環境を促進するために不可欠です。
本記事では、景品表示法の重要性、基本的な内容、および企業が遵守すべき具体的なポイントについて解説します。

景品表示法とは

「景品表示法」とは、消費者に対する商品やサービスの広告表示に関する公正を確保し、不当な表示を防ぐための法律です。
景品表示法は、以下の4点で消費者の保護と健全な市場取引を促進する役割を果たします。

目的消費者に対する公正な商品やサービスの情報提供を確保する。
内容誇大広告や虚偽表示の禁止を含む、不当な表示を防止する。
影響消費者が正確な情報に基づいて選択できる環境を作る。
責任企業には正確かつ公正な情報提供の義務がある。

法律が制定された背景と目的

商品表示法は以下の背景と目的がから制定されました。

背景

高度成長期(1955年から1972年)は、経済の急速な拡大とともに消費者市場も大きく成長した時代でした。
市場の拡大にともなって企業間の競争も激化し、誇大広告や虚偽表示が増え、消費者が誤解を招くケースが多くなりました。
不適切な商品選択をさせる問題が顕著になり、消費者を保護するため、景品表示法が1962年(昭和37年)に制定され、同年に施行されたのです。

目的

景品表示法の目的は、消費者が正確かつ公平な情報にもとづいて商品やサービスを選ぶことを支援することです。
この法律は不当な広告表示を禁止し、誇大広告や虚偽表示を根絶することを目指しています。

景品表示法の基本的な内容

以下に、景品表示法の基本的な内容を簡潔に示します。

不当な表示の禁止

景品表示法は、消費者が誤解を招くような不正確な情報提供から守るため、誇大広告や虚偽表示を禁じるものである。
法律は、消費者が事実と異なる品質や価格の誤認をすることなく、合理的な選択ができるように保護しています。

主要な不当表示と規制

不当表示は大きくわけて3つあります。

  • 優良誤認表示
  • 有利誤認表示
  • その他 誤認されるおそれのある表示


「優良誤認表示」「有利誤認表示」は消費者に対して誤解を招くような有利な情報を提供し、実際よりも優れているか、または有利であると誤認させるような表示を禁じています。
「その他 誤認されるおそれのある表示」は二重価格表示やまぎらわしい表示も厳しく規制されています。

適用される商品やサービスの範囲

景品表示法は、消費者向けに広告されるほぼすべての商品やサービスに適用されます。
法律により、食品、衣類、電子製品など、日常的に消費者が接触する可能性のある商品全般にわたって情報の正確さが保証されます。

企業が注意すべき具体的なポイント

企業は景品表示法を遵守し、消費者に対して誤解を招くような表示を行わないように注意が必要です。

  • 誇大広告
  • 比較広告
  • その他の誤解を招く可能性のある表示


以下では、これらの点について詳しく解説し、企業がどのようにして法律を遵守し、消費者の信頼を維持できるかに焦点を当てています。

誇大広告とは

誇大広告とは、商品やサービスについての品質、効果、価格などを実際よりも優れているかのように誤解を招くような表示をすることです。
たとえば、証明されていない効果を宣伝したり、実際の性能を超える性能があるかのように広告することが含まれます。
企業は誇大広告を避け、実際の製品やサービスの能力を正確に表現する必要があります。

比較広告のルール

比較広告においては、自社製品を競合他社の製品と比較する際に、客観的かつ検証可能なデータに基づいて行う必要があります。
例えば、比較する製品やサービスの属性や性能が、客観的かつ検証可能であることが求められます。
また誤解を招く可能性のある不公正な比較や、事実に基づかない表示を避けることが必要です。
企業はルールに従って比較広告を実施することで、不公正競争を防ぎ、消費者に対して正確な情報提供を保証する責任があります。

その他の誤解を招く可能性のある表示

消費者に誤解を招く可能性のあるその他の表示には、以下のような事例が含まれます。

無果汁の清涼飲料水等に関する表示

果汁または果肉の割合が5%未満である清涼飲料水に「無果汁・無果肉」と表示していない場合、不当表示となる可能性があります。
消費者が果汁含有量を誤解することを防ぐため、正確な表示が求められます 。

商品の原産国に関する表示

実際の原産国と異なる国名や国旗、事業者名を表示することも不当表示に該当します。
消費者が商品の原産国を正確に理解できるよう、適切な表示が必要です 。

おとり広告

実際には供給が不十分な商品やサービスを広告すること。
消費者を誘引する目的で行われるおとり広告は、実際の供給能力と異なる情報を提供することから、不当表示とされることがあります 。

まとめ

本記事では、景品表示法について企業が押さえるべきポイントを解説しました。
景品表示法は、消費者が正確な情報に基づいて商品やサービスを選ぶことを支援し、市場での公正な取引を促進するために極めて重要です。
法律に定められたルールを遵守することで、企業は消費者の信頼を得られるだけでなく、不正競争を避け、自社のブランド価値を守ることができます。

しかし、景品表示法の適用範囲は広く、その遵守には注意深い理解と対応が求められます。
企業は誇大広告や虚偽表示を避け、常に透明性を保つことが不可欠です。
違反が発見された場合には、法的な罰則だけでなく、消費者からの信頼喪失という重大なリスクに直面することになるでしょう。
不確実性を避け、法的リスクを最小限に抑えるためにも、専門家のアドバイスを求めることが推奨されます。
正しい情報と専門的なガイダンスを得ることで、企業は法規制を遵守し、消費者との良好な関係を維持することが可能となります。

業績悪化が理由の減給について会社側の法的リスクはある?

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業績悪化を理由に減給に踏み切らざるを得ない会社も少なくないと思います。
しかし、労働者の給料等の労働条件は、労働基準法等によりさまざまな法規制が設けられており、会社側がこれらの規制を無視した場合は、違法、減給が無効となる等、法的リスクを負う可能性があります。
本稿ではこうした事態を避けるために、会社側としてどのように対処したらよいのか解説します。

給料等の労働条件の決め方

給料等の労働条件は、会社と労働者間の契約により決定されます。
私人間の契約は契約自由の原則により、どのような内容でも自由に定めることができます。
そのため、減給についても、会社と労働者間で合意すれば、法的な問題は生じません。
しかし、会社と労働者の交渉力には差があり、労働者が不利な立場に立たされるのが一般的です。
そこで、労働基準法を初めとする様々な法律により法規制が設けられています。

給料等の労働条件の根拠規定

給料等の労働条件の根拠規定は主に次の4つに分けられます。

  • 労働基準法、最低賃金法等
  • 就業規則
  • 労働協約
  • 労働契約


それぞれ見ていきましょう。

労働基準法、最低賃金法等

労働基準法、最低賃金法等は、国や地方ごとの最低限の労働条件を定めたものです。
労働者の同意があったとしても、最低賃金を下回る減給は違法になります。

就業規則

就業規則は、職場の原則的な労働条件を定めたものです。
就業規則には、絶対的必要記載事項と言い、必ず記載しなければならない項目がありますが、賃金の決定方法と計算方法、支払方法、締切り、支払時期もその一つです。
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は無効とされているため、個別の労働者との交渉による減給の際も就業規則の基準を下回ることはできません(労働契約法12条)。
業規則の基準を下回る減給をするには、就業規則の変更が必要になります。

労働協約

労働協約は、職場に労働組合がある場合に、個別の労働者に代わって使用者側と交渉を行い、労働条件を定めたものです。
労働組合に加入している労働者については、労働協約が個別の労働契約に優先して適用されるため、労働協約で定めた給与基準を下回る減給は認められません(労働組合法16条)。
また、労働協約は労働組合に加入していない労働者にも拡張適用されるケースがあるため注意が必要です(労働組合法17条等)。

労働契約

労働契約は、会社と個別の労働者の間で交わされる契約です。
給料等の労働条件については自由に定めることができるため、業績悪化を理由とする減給も労働者が同意すれば可能です。

業績悪化を理由に減給する方法

業績悪化を理由に減給するためには労働契約、労働協約、就業規則のいずれかを変更する必要があります。

労働契約を変更する方法

会社の従業員数が少ない場合は、個別の労働者ごとに交渉して、労働契約を見直し、合意を得ることで減給が可能になります。
減給に関して、労働者と同意が成立したら、同意書を交わしたり、改めて、労働契約書を作り直すなど、文書を作成して、双方が署名しておくことが大切です。
ただし、労働基準法、最低賃金法等に抵触する水準まで減給することは違法なのでその点には注意が必要です。

労働協約を変更する方法

労働協約がある場合は、個別の労働契約よりも優先して適用されるため、まずは、労働協約で定めた給与水準を下げる必要があります。
労働協約の変更は、労働組合との交渉により行います。
交渉の結果、減給に関して合意に至った場合は、合意内容の文書化が必要です。
具体的には、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することが求められています(労働組合法14条)。

就業規則を変更する方法

就業規則で定めた労働条件については、原則として、労働者の不利益になる内容に変更することはできません。
不利益変更を行うためには労働者の合意が必要になる上、変更の範囲が「合理的な」範囲に留まっていなければならないものとされています(労働契約法10条)。
「合理的」であるかどうかは次の事項が判断要素となります。

  • 労働者の受ける不利益の程度
  • 労働条件の変更の必要性
  • 変更後の就業規則の内容の相当性
  • 代替措置その他関連する他の労働条件の改善状況
  • 労働組合等との交渉の経緯
  • 他の労働組合又は従業員の対応
  • 同種事項に関する一般的状況


これらの事項を総合考慮して判断すべきとするのが判例の見解です(最判平成9年2月28日 民集 第51巻2号705頁)。
一般的には、減給の範囲は必要最小限の範囲に留めることが求められますし、減給が必要なほど、業績が悪化していると言えるのかどうかも考慮されます。

また、就業規則の変更には一定の手順があります。
具体的には次のとおりです。

  • 就業規則の変更内容につき、弁護士等の専門家を交えながら検討する
  • 労働者代表者に変更内容を示して、意見聴取を行う
  • 労働基準監督署に就業規則変更届を提出する
  • 就業規則の変更内容を労働者に周知する

まとめ

業績悪化を理由にやむを得ず減給に踏み切らざるを得ない会社もあると思いますが、減給に際しては、労働基準法、最低賃金法、労働契約法などで定めるさまざまなルールを遵守する必要があります。
労働基準法等を無視した減給は、違法、無効となってしまいますので、法規制に関して詳しくわからない場合は、弁護士等の専門家へ相談することが大切です。

業務委託契約で起こりやすいトラブルや注意点について

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これまでの業務を改善するため、活性化・効率化を目指して業務委託契約を導入する企業が増えています。
しかし業務委託契約における大きなメリットがある反面、トラブルも増加しています。
本稿では業務委託契約を行うことによるメリット・デメリットと、トラブルや注意点について解説します。

業務委託を行うことによるメリット

業務委託契約を行うことによるメリットは以下の通りです。

  • 生産性の向上
  • 人件費の削減
  • 専門性の高い知識やスキルが必要な業務の委託ができる

生産性の向上

業務委託によっていつでも必要な人材を必要なタイミングで、必要な場所へと配置することができます。
それにより業務の効率化を図ることができ、生産性の向上へとつながるのです。

人件費の削減

業務委託にすると、人材確保のために行う人材採用や教育などの人件費を削減することができます。

専門性の高い知識やスキルが必要な業務の委託ができる

専門性の高い知識が必要な場合に、委託契約の人材に必要な業務を任せることができます。
自社で対応が難しい専門的な知識も業務委託契約によって活用は可能です。

業務委託のデメリット

業務委託のデメリットは次の通りです。

  • 社内に知識やスキルが蓄積しない
  • 業務品質の均一化が難しい

社内に知識やスキルが蓄積しない

業務委託によって仕事が完結してしまった場合には、社内で知識やスキル、経験などが蓄積されないため、企業としての能力がいつまでも育ちません。
従業員の活用もあわせて考える必要があります。

業務品質の均一化が難しい

業務委託は委託者と受託者に使用関係がないため委託者の方から直接指示することができにくく、作業現場での作業の品質管理や維持ができません。
そのため業務品質の均一化が難しいのがデメリットとなっています。

業務委託で起こる可能性のあるトラブル

業務委託で起こる可能性のあるトラブルを紹介します。

コンプライアンス違反や不正

業務委託の場合は雇用契約ではないため会社への愛着も乏しくなりがちで、コンプライアンス違反や時には不正などを引き起こしてしまうことがあります。
できれば委託者と受託者で信頼関係を構築するため、積極的なコミュニケーションをとるなどの対策が必要です。

契約不履行と成果物の納品遅れ

業務委託契約で請負契約の場合によくあるのが、契約の途中で音信不通になってしまったり期限通りに納品がされなかったりする場合です。
納品物の修正に対応してくれるかどうかも契約時に確認しておく必要があります。

再委託によって業務品質の低下懸念

再委託というのは、受託者が委託業務を第三者に依頼することです。
再委託は委託者と下請けの連絡やコミュニケーションが取りにくいため、完成する業務の品質が低下してしまう可能性があります。

報酬に関して認識が違う場合

報酬に関しては金銭的な問題であることから深刻なトラブルに発展する可能性が高いため、特に注意が必要です。
報酬の支払い日の管理、成果物の合格基準、また認識の相違などがあります。

契約を解除したことによる損害賠償

業務委託を自己都合で一方的な解除をする場合もトラブルに発展する可能性があります。
場合によっては違約金や損害賠償額を請求する場合もあります。

契約内容の理解不足している場合の偽装請負

偽装請負というのは、業務委託契約の締結をしているのに委託者が受託者へ直接指揮命令を行っている状態のことです。
業務委託契約を締結している状態で指揮命令を行うのは違法になる場合があります。
契約内容をよく確認し内容を正しく理解しておくことが大事です。

情報セキュリティ甘さによる情報漏えい

情報のセキュリティの甘さが引き起こす情報漏えいには要注意です。
業務委託によって受託者が故意に情報を窃取したり、過失によって発生する情報漏えいなどもあります。
社内の情報漏えいは重大な信用失墜となりますので、十分な対策を行う必要があります。

業務委託に関する注意点

業務委託をすることで注意する点は次の通りです。

必要事項を契約時点で取り決めておく

委託者は受託者との間で業務委託契約を行う場合、契約のなかに必要なことをすべて細かく取り決めておくことが大事です。
お互い納得のうえで契約を交わすことでトラブルは減少します。
業務委託契約書に明記すべき項目は次の通りです。

  • 報酬
  • 契約期間
  • 報酬の支払い条件
  • 成果物の権利
  • 再委託について
  • 禁止事項
  • 損害賠償について、など

高い意識で法律を守る

法律に対する意識を高く持つようにします。
法律を守るのは当然のことですが、お互いしっかりと認識して法律違反をしないようにしましょう。

信頼できる相手と契約する

業務委託契約は信頼関係がとても重要なポイントです。
信頼できる相手であれば問題はないわけです。
しかし知人でもなければ信頼できる人であるかどうかは判断しづらいところです。

  • 契約をする前に入念に面接などを行いしっかりと話し合う
  • 信頼できる仲介サービスを利用する
  • 信頼できる人物からの紹介をしてもらう


以上のことに注意し、信頼できる相手と契約をするよう心がけましょう。

条件を途中で変更する場合は変更契約書をつくる必要がある

業務委託の契約中に内容に変更があった場合には、必ず変更契約書を作成するようにします。
あとでトラブルにならない、またはトラブルになったときの証拠品として契約書は必要となります。

条件によっては業務委託ではなく雇用契約として扱われる

専属性があったり勤務時間の指定などにより、業務委託に使用従属性があると認められた場合には「雇用」としてみなされることがあります。
雇用契約となるとさまざまな部分に影響がでてきてしまうため要注意です。

まとめ

業務委託契約のメリット・デメリットを把握し、トラブルになった事例についてよく確認し前もって対策を講じておくことが大事です。
契約書についても必要だと思われることは契約書に記述しお互い納得のうえで締結をするようにします。
業務委託契約はトラブルの発生することが多く解決が難しいことから、できれば早めに弁護士へご相談されることをおすすめします。

企業でハラスメントが起きた場合の対処法について解説

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セクハラやパワハラなど、ハラスメント問題は世間一般でも広く知られるようになりました。
もし社内でハラスメントが発生した場合に放置をしていると、後々大きな問題に発展する可能性もあります。
すると会社の社会的信用を失い、大きな痛手になるでしょう。
今回は企業内でハラスメント問題が起きた場合の対処法について解説していきたいと思います。

ハラスメントとは?

ハラスメントといわれる言動・行動には、以下の6つの類型があります。

  • パワハラ(パワーハラスメント)
  • セクハラ(セクシュアルハラスメント)
  • マタハラ(マタニティハラスメント)
  • パタハラ(パタニティハラスメント)
  • ケアハラ(ケアハラスメント)
  • モラハラ(モラルハラスメント)


それぞれに定義づけがなされており、どのハラスメントであっても行動だけでなく、言動に問題がある場合でも成立するものとなっています。

また「自分では大丈夫」と思っていたとしても、相手の捉え方・感じ方次第では各種ハラスメントにあたる場合もあるので、十分に注意して行動することが大切です。

主要なハラスメント対策を確認しよう

社内でハラスメントが起きた場合、会社は状況によって管理者責任を問われる可能性があります。
そのため、社内でハラスメント起きないようにするための事前策や、また万が一起きたとしても適切に対処できるように対応策を構築しておくことが重要です。

ガイドラインを共有する

ハラスメントは人の感じ方という抽象的なものをベースに判断されます。
そこでハラスメントには厳しく対応していくけれども、ハラスメントに該当するものしか取り扱わないという明確な宣言を出しましょう。
そしてガイドラインを策定し、具体的に何がパワハラやセクハラに該当するか明記します。

また定期的にハラスメントに関する講習会や研修会を開催することもおすすめです。
講習会でハラスメントとは何かを社内で共有していきます。
このようなことを繰り返せば、自分はハラスメントと思っていなくても実はハラスメント行為に抵触していたといった事態の発生も低減できます。

保険への加入も検討すべき

いくら気を付けていても、情報共有や従業員への教育を徹底してもハラスメントをゼロにはできないでしょう。
ついカッとなってハラスメントを働く人もいるでしょうし、飲み会で酔った勢いで…といったことも想定できます。
ハラスメントが起きた場合、従業員が会社や加害者に対して損害賠償請求してくるかもしれません。
そのようなときのために、保険に加入するのも一考です。
一部損保会社では、ハラスメントに関する特約を提供しているところも出てきました。

相談窓口を設置しよう

ハラスメントが起きた場合、従業員がどこに相談すれば良いかわからず一人で悩みを抱えてしまう可能性もあります。
そこでわかりやすくするために、専用の相談窓口を設置するのも対策の一つです。
ではどのような人材を配置すべきか、どのような役割を果たせば良いのか見ていきましょう。

適切な人材を配置する

社内に相談窓口を設置するのであれば、ハラスメントに関する教育を受けた人材を配置しましょう。
またはコンプライアンスや法務部門の担当者を付けるのも一つの方法です。
産業医やカウンセラーがいる場合には、被害者の傷ついた心をケアできます。
また内部に窓口設置できるだけのリソースがなければ、外部に設置するのも一考です。
弁護士や社会保険労務士、コンサルタントなどに委託する方法も検討しましょう。

役割を明確にする

相談担当者の役割を明確にしてください。
相談を受け付けるだけと役割を限定する場合もあれば、事実確認の調査まで担当する場合も考えられます。
前者の場合、人事担当部など事実確認を担当する部署へ引き継ぐ仕組みも検討しなければなりません。
事実確認の下で、ハラスメントに該当するか客観的に判断します。
ハラスメントの中でも悪質であると判断された場合には、懲戒処分の検討もあわせて行いましょう。

再発防止策を検討する

加害者を処分すればそれでおしまい、では再発を防止できません。
再発防止策も検討する必要があります。
ハラスメントガイドラインの中に新たに今回発生した事例を盛り込み、今回の事例が起こらないようにするためにはどうすべきか検討します。

また加害者個人に対して研修を実施し、あらためてハラスメントをしっかり理解してもらえる場を提供する必要もあるでしょう。
ハラスメントが起こる要因として、職場環境が関係しているかもしれません。
職場環境が閉塞していてストレスがたまった結果、ハラスメントが発生する場合も考えられるからです。
職場環境に問題がある場合には改善も検討しましょう。

まとめ

ハラスメント問題は、どの会社でも起こる可能性があります。
ハラスメントは主観的な問題でもあるので、何をもってハラスメントなのか従業員で情報を共有できる環境づくりが必要です。
また、ハラスメントの被害に遭ったときに相談できる環境を用意することも、大事な対策です。
自分たちで相談窓口を設置するだけのリソースがなければ、弁護士などの専門家に相談しましょう。

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