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コラムカテゴリー: 企業法務

債権回収を弁護士に依頼すべきケースとは?

債権回収を弁護士に依頼すべきケースとは

企業間取引や個人間の貸し借りにおいて、売掛金や貸付金が期日通りに回収できないことは、事業の存続に関わる深刻な問題です。
債権回収は、内容証明郵便の送付といった交渉から始まりますが、債務者が支払いに応じなかったり、無視を続けたりすると、法的手段が必要になります。
この記事では、債権回収の方法と、弁護士に依頼すべきケースについて解説いたします。

債権回収の方法

債権回収とは、取引先や個人に売掛金や貸付金が期日までに支払われない場合に、その支払いを促し、最終的に代金を回収するための手続きです。
これは、事業の資金繰りを安定させ、経営リスクを回避するために不可欠です。
債権回収の方法は、大きく分けて交渉による回収と法的な手段による回収の2つがあります。
どちらを選択するかは、債務者の支払い意思や資産状況によって判断します。

交渉により回収する

債権回収の最初の、そして最も円満な手段は、債務者との交渉による回収です。
まず、電話やメールで催促することから始めます。
この段階では、相手の支払い遅延の理由を確認し、具体的な支払い予定日を取り決めることが重要です。
次に、内容証明郵便を用いることが有効です。
内容証明郵便は、いつ、どのような内容の文書を、誰が誰に送付したかを郵便局が公的に証明するものであり、単なる催促以上の強い督促の意思表示となります。
時効の完成を一時的に中断させる効果もあります。
債権の時効は、権利を行使できると知ったときから5年、権利を行使できるときから10年です。
交渉を通じて、債務者と具体的な支払い計画について合意し、それを公正証書などの文書に残すことも重要です。

法的手段により回収する

交渉による回収が困難な場合や、債務者が支払いに応じない場合は、裁判所の手続きを利用した法的な手段に移行します。
まず、裁判所に支払い督促を申し立てる方法です。
これは、裁判所書記官が債務者に支払いを命じる手続きで、簡易かつ迅速な解決を目指せます。
次に、民事調停手続きを申し立てる方法です。
調停委員が間に入り、当事者間の話し合いで和解を目指します。
訴訟よりも柔軟な解決が期待できます。
最後に、訴訟を提起する方法です。
裁判官が双方の主張や証拠を吟味し、判決を下します。
勝訴判決を得た場合、強制執行として債務者の財産を差し押さえることができます。

債権回収を弁護士に依頼すべきケース

債権回収を弁護士に依頼すべきケースは以下の通りです。

債務者が支払いに応じない

債務者が内容証明郵便による催促にもかかわらず、支払いに応じない場合や、連絡が取れない場合は、弁護士に依頼すべきです。
弁護士は、依頼者の代理人として、債務者との交渉を粘り強く行い、法的な圧力をかけることができます。
また、債務者の資産状況を調査し、回収の見込みがあるかどうかを判断してくれます。
感情的な対立を避け、冷静な話し合いを進めるためにも、弁護士に依頼した方が良いでしょう。

法的手続きによって債権回収する

支払督促、民事調停、訴訟提起、強制執行といった法的手続きによって債権回収を行う場合は、弁護士に依頼することが不可欠です。
これらの手続きは、法律や裁判所の運用に関する専門知識が必要であり、書類の作成や裁判所への出廷など、多くの時間と労力がかかります。
弁護士は、これらの手続きをすべて代行し、依頼者の負担を軽減します。
また、法的な主張を適切に行うことで、債権回収を成功させる可能性を高めます。

債権回収を弁護士に依頼するときの費用

債権回収を弁護士に依頼する際の費用は、主に着手金と成功報酬に分かれます。
着手金は、依頼時に支払う費用で、回収の成否にかかわらず発生します。
成功報酬は、実際に債権が回収できた場合に、回収額に応じて支払う費用です。
費用は、請求額の大小や、依頼内容の複雑さによって変動します。
弁護士によっては、回収の見込みが薄い場合は着手金を低く設定したり、完全成功報酬制を採用したりすることもあります。
相談無料を実施している弁護士事務所もあるため、まずは事情を相談し見積もりを出してもらいましょう。

まとめ

債権回収は、交渉から始まり、支払督促や訴訟といった法的手続きへと段階的に進みます。
債務者が支払いに応じない場合や、法的手続きを行う場合は、弁護士に依頼すべきケースと言えるでしょう。
債権回収でお困りの際は、ぜひ弁護士にご相談ください。

【2026年1月施行】下請法が取適法になる!何が変更されるのか

【2026年1月施行】改正下請法とは?何が変更されるのか

2026年から下請業者の取引環境の適正化などを目的に、下請法が取適法になります。
今回は、取適法になったことによる、適用対象などの変更点について解説いたします。

下請法が取適法になった理由は?

下請法が改正され、取適法へと名称が変更された理由には、取引の公正性を確保するための規制範囲と実効性の強化が強く求められたことがあります。
長らく、下請法は、親事業者と下請事業者との間の優越的な地位の差を利用した不当な取引を規制し、下請事業者を保護する役割を担ってきました。
しかし、経済社会の変化やサプライチェーンの複雑化が進む中で、従来の法律では対応しきれない新たな問題が次々と顕在化しました。
法律の名称を変更したことは、単なる下請けの保護に留まらず、すべての事業間取引における公正かつ健全な取引慣行の確立を目指すという、法律の目的と役割の拡大を象徴しているといえるかもしれません。

取適法のおもな改正ポイント

取適法の施行により、取引の公平性を高めるために、主に四つの重要な改正が行われます。
これらの改正は、従来の法律の隙間を埋め、より多くの事業者と取引行為を規制対象に含めることを目的としています。

①適用対象が拡大された

これまでの下請法では、親事業者と下請事業者の区分を資本金の額を基準として行っていました。
この基準は明確である一方で、一部の企業が資本金を意図的に減額することで下請法の適用を逃れるという事例が指摘されていました。
こうした適用逃れの問題を解消し、規制の実効性を高めるために、資本金に加えて従業員数を新たな基準として追加しました。
具体的な基準として、製造委託や修理委託などの場合は従業員300人、情報成果物作成委託や役務提供委託などの場合は従業員100人が基準のひとつとなります。

②下請業者が買いたたかれないように規制が強化された

取適法では、買いたたき規制が強化されました。
現行法においても、親事業者が不当に低い価格で下請事業者と契約する行為は規制されています。
しかし、物価や人件費、原材料費が高騰している状況下で、親事業者が契約価格を据え置くことにより、下請事業者が実質的に買いたたかれているのと同じ状態になっていることが大きな問題とされてきました。
下請事業者が親事業者に対して価格の見直しを求めても、親事業者がその協議に応じないという行為が、不公正な取引として指摘されていたのです。
価格変動が生じた際に親事業者が下請事業者からの価格協議の申し出に応じない行為も規制対象に追加されます。
これは、親事業者に協議に応じる義務を負わせるものであり、下請事業者が適正な対価を得るための機会を保証し、取引の透明性と公平性を高めるための重要な措置となります。

③報酬の支払い条件が見直されることとなった

下請事業者の資金繰りの改善は、事業の安定性にとって非常に重要です。
従来、親事業者による支払手段として広く利用されてきた約束手形は、現金化までに時間がかかることや、手形割引料というコストを下請事業者が負担することになる点から問題視されていました。
政府は、こうした約束手形の利用を全面的に廃止することを目指しており、今回の改正案では、手形による支払いを認めない方向性が示されています。
電子記録債権やファクタリングを利用する場合も、下請事業者が支払期日までに満額の現金との引き換えができることが条件となります。
これにより、手形発行や決済に伴う下請事業者の資金繰りの不安を解消し、迅速かつ確実な現金収入を保証することが期待されています。

④適用対象が物流分野へも適用拡大された

サプライチェーンの維持に欠かせない物流分野においても、発荷主企業と運送事業者との間で、親事業者の優越的地位を利用した不当な取引が行われている事例が問題となっていました。
運賃の不当な買いたたきや、不必要な付帯業務の無償強要などです。
現在、発荷主から運送事業者への委託取引は下請法の規制対象外ですが、改正案ではこの取引も下請法の規制対象に追加されることになります。

取適法が施行されることによる注意点は?

取適法が施行されることによる最大の注意点は、法律の適用を受ける親事業者の範囲が大きく広がることです。
適用基準に見直しが入った結果、特に情報サービス業や役務提供を主とする業種において、従来は下請法を意識する必要がなかった企業が、新たに親事業者として規制対象となることが見込まれます。
企業は、この改正内容を深く理解し、自社の取引全てについて、下請法が求める義務を遵守できているかどうかを徹底的に見直すことが求められます。
具体的には、取引先に発注書を交付する義務、代金の支払期日を守る義務、そして特に重要なのが、価格協議に真摯に応じる体制を社内に整備することです。
価格転嫁を円滑に行うためのガイドラインを参照し、取引先からの価格見直しの申し出に対して、部門間で連携して透明性のある対応ができるように、社内体制の整備や教育が急務となります。
新たな規制対象となる企業は、コンプライアンス違反による指導や勧告を受けないよう、改正法施行に向けて準備を進める必要があります。

まとめ

今回は、2026年1月より施行される取適法について考えていきました。
取適法の施行により、契約書の見直しなどをしなければならない可能性があります。
見直さない場合、会社の信用を下げてしまう可能性もあるため、不安な方は弁護士に相談することを検討してください。

労働条件の不利益変更の実施方法と注意点

労働条件の不利益変更の実施方法と注意点

会社経営では、経済状況の悪化などの理由で、労働者の労働条件を見直す場面もあります。
しかし労働条件を、労働者にとって不利な内容に変更する場合、法的な制約や注意点が数多く存在します。
今回は、労働条件の不利益変更の実施方法と、その際に企業が注意すべきポイントを解説します。

労働条件の「不利益変更」とは何か

労働条件の「不利益変更」とは、労働者にとって今までよりも悪い内容へと変更されることを意味します。
具体的には、給料の引き下げや勤務時間の延長、休暇制度の変更などです。
不利益変更は、労働者の生活や権利に大きく影響するため、法律的な観点からも慎重な対応が必要です。

不利益変更の実施方法

不利益変更の実施方法は、以下の通りです。

  • 労働者からの個別合意を得る
  • 労働組合との包括的合意を図る
  • 就業規則の改定をする

それぞれ簡単に解説します。

労働者からの個別合意を得る

まず、不利益変更をそれぞれの労働者と話し合い、書面による同意を得るのが原則です。
トラブルを避けるため、内容や減額の程度が明記された同意書を交わします。

労働組合との包括的合意を図る

会社に労働組合がある場合は、締結された労働協約により適用できる場合があります。
労働協約で定めた場合は、組合員には当然に適用され、非組合員にも就業規則と同様の効力が及ぶ可能性があります(組合員数が事業場労働者の4分の3以上の場合)。

就業規則の改定をする

合意が得られない場合や、多数の社員に適用したい場合は、前述のように就業規則を変更する方法があります。
ただし、「合理的な理由」が必要です。
就業規則を変更した後は、労働者が新しいルールを「見て知れる状態」にしなければなりません。
具体的には書面で配布するか、社内の見やすい場所に掲示するか、電子媒体で保存して閲覧可能にする方法が認められています。

合理的な理由として認められる基準

就業規則の改定に関して、合理的な理由として認められるかどうかは、以下の4つが基準となります。

  • 労働者の合意が得られているか
  • どれくらいの不利益があるか
  • 変更の必要性があるか
  • 代わりの対応や配慮がなされているか

企業が一方的に就業規則を変更しても、これらの要素を満たさなければ、法的に無効とされる可能性があります。
それぞれ確認していきましょう。

労働者の合意が得られているか

労働条件の不利益変更では、労働組合や労働者の多数から合意を得ているかどうかが重要な判断要素です。
会社側があらかじめ丁寧に説明を行い、多くの労働者が同意している場合には、変更が合理的と認められる可能性が高まります。
一方で労働者の大半が反対している場合は、たとえ就業規則を改正しても、その変更の正当性や有効性が疑問視されます。

どれくらいの不利益があるか

変更によってどれほど労働者が不利になるかも、大きな判断材料です。
たとえば基本給の大幅な減額や長時間労働など、生活に大きな影響が出るような変更だと、合理性が認められにくくなります。

変更の必要性があるか

変更しなければ会社の運営が困難になるような事情がある場合には、必要性があると評価されやすくなります。
一方で、特に理由がなく変更するようなケースだと、合理性が認められにくくなります。

代わりの対応や配慮がなされているか

不利益を受ける労働者に対して、会社がどれだけ代替案や補償などの配慮をしているかも重要です。
「給料が下がる代わりに特別手当を支給する」「勤務時間の変更に応じて通勤手当を増やす」などの対応があれば、合理性が認められやすくなります。

不利益変更の実施に関する注意点

企業が法的な手続きを無視して労働条件を変更した場合、行政指導や民事訴訟など、さまざまなリスクを抱えます。

  • 直接的な金銭的リスク
  • 職場環境や労働者の信頼への悪影響
  • 企業の信用失墜のリスク

違法な不利益変更がどのような結果を招くかを整理して解説します。

直接的な金銭的リスク

就業条件を正当な理由や手続きなしに下げた場合、労働者から民事訴訟を起こされる可能性があります。
裁判で変更が無効と認められた場合、企業は本来支払うべきだった金額との差額を補填しなければなりません。
給与の減額が問題になったケースでは、減額分の全額をさかのぼって支払うよう命じられる可能性もあります。
上記のような訴訟が複数の労働者から同時に起きれば、会社にとって大きな負担となります。

職場環境や労働者の信頼への悪影響

不利益変更は、仮に裁判に発展しなくても、労働者の不満を生み出す可能性もあります。
最も顕著なのが、労働者の士気の低下です。
「自分たちは軽く扱われている」と感じ、仕事に対する意欲が薄れて、生産性が下がるケースも少なくありません。
企業の対応に不信感を抱いた労働者が退職を選ぶ可能性もあります。

企業の信用失墜のリスク

不当な対応が外部に漏れると、企業としてのイメージも悪くなります。
採用や取引先との関係にも悪影響が及ぶかもしれません。
一度失われた信用を取り戻すには、時間もコストもかかります。
経営上やむを得ない場合もありますが、対応を誤ると企業に大きな悪影響が出る可能性があるため注意が必要です。

まとめ

今回は、労働条件の不利益変更の実施方法や注意点を解説しました。
労働条件の見直しは、会社の存続や業務改善のために必要となる場合もあります。
しかし労働者の生活に直接関わるため、慎重に進めるべき問題です。
不利益変更に関して不安な点があれば、弁護士などの専門家にいち早く相談してください。

秘密保持契約(NDA)とは?ポイントや注意点など

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ビジネスの場面では、相手に機密情報を開示するケースがあります。
自社の情報が無断で第三者に漏れたり、悪用されたりしないようにするために結ばれるのが、秘密保持契約(NDA)です。
今回は、秘密保持契約(NDA)の基本的な意味や役割、注意すべき点をわかりやすく解説します。

秘密保持契約(NDA)の役割と目的

まずは、秘密保持契約(NDA)の基礎知識を確認していきましょう。

秘密保持契約(NDA)とは

NDAは、「Non-Disclosure Agreement」の頭文字を取ったもので、日本語では「秘密保持契約」と呼ばれています。
企業や個人が、商品開発・業務委託・業務提携などの前提として、相手方に情報を提供するときに締結されるのが一般的です。

秘密保持契約(NDA)の目的

秘密保持契約(NDA)の主な目的は、以下の通りです。

  • 自社のノウハウや未公開情報を守る
  • 第三者への情報流出を防ぐ
  • 万一漏洩した場合の責任範囲を明確にする

上記により、安心して情報を共有し、円滑に交渉を進めやすくなります。

秘密保持契約が使われる主な場面

秘密保持契約(NDA)は、さまざまな状況で利用されています。
たとえば新商品や新サービスの開発に関する外部との打ち合わせは、秘密保持契約(NDA)が使われる場面の典型例です。
新商品・新サービスの情報は、まだ一般には公開されていません。
自社の利益を守るためにも、秘密保持契約(NDA)の締結が重要になります。
他にも、「業務委託(IT開発、デザイン、コンサルなど)の開始前」や「M&A(企業買収や合併)の交渉過程」などでも、秘密保持契約(NDA)が活用されます。

片務契約と双務契約の違い

秘密保持契約(NDA)には、主に2つのタイプがあります。

  • 片務契約:一方だけが情報を提供し、相手に守秘義務を課す
  • 双務契約:双方が情報を提供し合い、お互いに守秘義務を負う

たとえば、受注側の会社が発注者から仕様を聞く場合には、基本的に前者が使われます。

秘密保持契約(NDA)に含めるべき主な項目

秘密保持契約(NDA)を締結する際は、以下のような項目を定めます。

  • 秘密情報の定義
  • 秘密情報の利用範囲
  • 第三者への開示禁止
  • 契約期間および秘密保持義務の存続期間
  • 違反時の対応

それぞれ確認していきましょう。

秘密情報の定義

何を「秘密情報」とするかを文書内ではっきりと示す必要があります。
たとえば、「技術情報」「営業資料」「取引先名簿」「価格情報」など、対象をできるだけ具体的に記載します。

秘密情報の利用範囲

開示された情報を、どの目的に限定して使用するのかを明示します。
通常は「本契約に基づく検討目的の範囲内に限る」などの表現が使われます。

第三者への開示禁止

秘密情報を、契約相手以外の第三者に漏らさない義務について定めます。
例外的に、外部の専門家(弁護士、税理士など)に開示する場合の取り扱いもここで規定します。

契約期間および秘密保持義務の存続期間

契約が終了した後も秘密保持義務を続ける期間を設定します。
たとえば「契約終了後も3年間義務が続く」といった定めが一般的です。
秘密情報の性質から、「契約終了後も存続する」など、期間の定めがない場合もあります。

違反時の対応

もし秘密情報が漏洩した場合に、どのような対応になるかをあらかじめ記載します。
基本的には、損害賠償と差止請求の2つです。

秘密保持契約の注意点

秘密保持契約(NDA)はシンプルな契約書に見えても、内容次第ではトラブルにつながる可能性があります。
以下の点には特に注意が必要です。

  • 秘密情報の範囲があいまい
  • 情報の管理方法が明記されていない
  • 違反時の対応が不明確

それぞれ確認していきましょう。

秘密情報の範囲があいまい

秘密保持契約では、「何が秘密か」を明確に定めるのが前提です。
しかし実務では、「秘密情報とは一般に知られていない情報を指す」など、抽象的な表現で済まされるケースが少なくありません。
範囲がぼんやりしていると、情報を受け取った側は「これは秘密なのかどうか」が判断しにくくなります。
「製品の仕様書」「原価データ」「販売戦略」「顧客リスト」のように明記して、情報管理の線引きをわかりやすくしてください。

情報の管理方法が明記されていない

秘密情報は、受け取った側が適切に管理しなければ意味がありません。
ところが、契約書に管理方法の具体的な指示が書かれていないケースも多く見受けられます。
「コピー・複製の取り扱いはどうなるのか」「返還・廃棄はどうするか」など、具体的な部分を決めて、合意を得てください。
管理ルールがなければ、「不用意に社内で共有されていた」「個人のPCに保存されていた」などの形で漏洩リスクが高まります。

違反時の対応が不明確

「違反があった場合は別途協議する」とだけ書かれていると、実際に問題が起きた際に話し合いが難航しやすくなります。
リスク管理のポイントは以下の3つです。

  • 違反によって損害が出た場合に損害賠償を請求するかどうか
  • 損害額の上限を設けるかどうか
  • 裁判ではなく仲裁や調停で解決するか

できるだけ具体的に定めましょう。

まとめ

秘密保持契約(NDA)は、取引を始める前の段階で結ばれるケースが多く、信頼関係を築くうえでも重要な意味を持ちます。
形式だけの契約にせず、自社の情報を適切に守れる内容かどうかを確認してから締結してください。
法的にわからない部分があれば、弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。

雇用契約書や労働条件通知書を作成する際の注意点

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雇用契約を結ぶ際、雇用契約書と労働条件通知書は兼用が可能です。
ただし労働条件通知書の作成には法的な決まりがあるため、兼用する場合には適切に要件を満たすよう注意しなければいけません。
この記事では、雇用契約書と労働条件通知書の作成で気を付けるべきことを解説します。

雇用契約

労働者が企業に使用されて労働し、その対価として報酬を得る契約が雇用契約です。
雇用契約を結ぶことで、長時間労働の抑制や社会保険の加入など、労働者として法的に保護を受けられます。
契約を結ぶときには、その内容を明らかにするため契約書を作成することが一般的です。

雇用契約書

雇用主と労働者の間で雇用契約を結んだことを証明する書類が雇用契約書です。
雇用契約は口頭でも結ぶことができ、必ずしも書面にする必要はありません。
しかし口頭だけではトラブルになることもあるため、契約書を作成し、署名押印しておくことが大切です。
同時に雇用主には、労働者に対して労働条件を明示する義務があります。
このとき、雇用契約書に法で定められた通知内容を記載することで、労働条件通知書を兼ねることも可能です。

労働条件通知書

労働条件通知書とは、労働者へ明示しなければならない労働条件などを記載した書類です。
交付が義務付けられており、記載しなければならない内容も法的に決まっています。
書かなければいけない内容は次の通りです。

  • 労働契約期間
  • 就業場所
  • 業務内容
  • 始業・終業の時刻
  • 残業の有無
  • 休憩や休日について
  • 賃金について
  • 退職や解雇について

そのほか、交代制の場合はそのルールや、有期契約の場合には更新などについても記載しなければいけません。
就業場所や業務内容が変更になる可能性がある場合にも、その内容を記載します。
また、パートやアルバイトの方には別途記載しなければいけない内容もあります。
明示義務を果たしていない場合、30万円以下の罰金が科せられる可能性があるため注意が必要です。

作成時の注意点

トラブルを発生させず、また万が一トラブルが発生した際にも速やかに解決させるため、契約書や通知書の作成は重要です。
必要な内容を漏れなく記載し、不備のないように作成しなければいけません。

内容が有効であるよう注意する

たとえば時間外労働に対する割増賃金を支払わないなど、労働基準法に違反した内容を記載してはいけません。
そのような内容を記載した契約書に署名や押印していた場合でも、その契約は無効になります。
また労働条件通知書に記載した内容が実際の条件と異なっている場合には、労働者は即時に契約を解除することが可能です。
経営に大きな影響を与える可能性があるため、注意して作成しなければいけません。

また、就業規則と雇用契約書の内容が異なっていた場合には、就業規則の内容が優先されます。
ただし雇用契約書の内容の方が労働者にとって有利な条件であった場合、雇用契約書の内容が優先されることもあります。
とくに契約更新時などは以前の契約書のまま手続きを進めるのではなく、現在の就業規則や法律に合っているか確認が必要です。

相対的明示事項に注意する

労働条件通知書には必ず書かなければいけない内容のほか、該当する場合のみ明示が義務付けられている内容が存在します。
具体的には次の内容です。

  • 退職手当に関する内容
  • 賞与や手当について
  • 最低賃金額について
  • 食費や作業用品費
  • 安全や衛生について
  • 職業訓練
  • 災害補償、疾病扶助
  • 表彰や制裁
  • 休職について

必要に応じて忘れずに明示するよう注意してください。

テンプレートをそのまま使用しない

インターネット上にはさまざまな雇用契約書や労働条件通知書のテンプレートが存在します。
しかしそれらをそのまま使用すると、企業の実態に合わない内容になってしまう恐れがあり、トラブル発生のリスクが高まります。
テンプレートを使用する際には、実際の契約に合わせて内容を適切に作り変えなければいけません。
とくに正社員や契約社員、パートなど雇用形態が異なる場合には、それぞれ異なる内容について記載義務があるため注意が必要です。

また、テンプレートに記載されていない内容であっても、企業の実情に合わせて記載するべき内容が存在する可能性もあります。
記載漏れを防ぐため、テンプレートを使用する場合であっても、法律の専門家などに相談しながら作成すると安心です。

まとめ

この記事では、雇用契約書や労働条件通知書を作成するうえでの注意点を解説しました。
労働契約を結ぶ際には労働条件の通知が義務付けられており、決められた内容を通知していない場合には違法となる可能性もあります。
また、記載内容が労働基準法に違反している場合や就業規則と異なる場合には、無効となることもあります。
作成時には社内に存在する規則や法的な観点をもとに、適切に作成しなければいけません。
雇用契約書などの作成の際には、弁護士までご相談ください。

残業代を請求されたときの対応について

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事業を行っていると、従業員から未払いの残業代を請求されることがあります。
支払わなければいけない残業代を支払っていなかった場合だけでなく、従業員の認識や計算が会社と異なっていた場合にも、このようなことは起こります。
この記事では、従業員に残業代を請求されたときの対応について解説します。

残業代とは

残業代とは、決められた労働時間を超えて行った労働に対する賃金です。
法内残業に対する賃金や、以下の労働に対する割増賃金を合わせて支払います。

  • 時間外労働
  • 休日労働
  • 深夜労働

割増賃金は、それぞれの割増率を用いて計算します。
1か月間に時間外労働を行った総時間数や、労働した時間帯によって割増率は変わるため、正確な残業の記録や正しい計算知識がなければ計算を間違えてしまうこともあります。

残業代の未払いがある場合

支払わなければいけない残業代を未払いにしていた場合、遅延した期間の遅延損害金を上乗せして支払わなければいけません。
さらに、訴訟によって支払いが決定した場合には、未払い額と同額の付加金も合わせて支払わなければいけないことがあります。
従業員から残業代の請求を受けたときには、その請求が正しいかどうかを精査し、誠実に対応しなければいけません。

残業代を請求されたときの対応

従業員から残業代を請求されたとき、それを無視してはいけません。
正しく事務処理を行ったつもりでも、時間外労働の把握や計算に誤りがあり、未払いが発生していることもあります。
また、たとえ従業員の認識が間違っている場合でも、対応せずにいると大きなトラブルへ発展する恐れがあります。

請求内容を精査する

まずは従業員の請求内容を精査し、従業員の請求が正しいか確認する必要があります。
たとえば次のような理由により、従業員の請求に誤りがあることもあります。

  • 残業時間の認識に誤りがある
  • 計算が間違っている
  • 固定残業代を支給している
  • 時効が成立している

残業時間の確認は、タイムカードなどの記録によって行います。
残業に関する報告書などがある場合には、それらをもとに確認してください。
このとき、労働時間の切り捨てや切り上げを間違えていないか注意が必要です。
1か月の時間外労働の合計時間に1時間未満の端数がある場合、30分未満の端数は切り捨て、30分以上の端数は1時間に切り上げることが認められています。
ただしこれは1か月単位の計算でのみ認められるものであり、日単位・週単位では認められません。

営業職や外回りを中心とする従業員は正確な労働時間を把握することが難しく、固定の残業代を支給することもあります。
固定残業代とは、あらかじめ一定時間の残業が行われることを想定し、一定の残業代を支払うものです。
実際の残業時間が決められた残業時間内に収まっていれば、追加で残業代を支払う必要はありません。
ただし、深夜労働や休日労働に対する割増賃金は発生します。
決められた労働時間を超えた分の残業代や、深夜・休日労働に対する割増賃金が未払いになっていないか、注意する必要があります。

また、残業代請求に関する時効が成立している場合も、その分の支払いは必要ありません。
残業代の時効は3年で成立しますが、成立前に残業代の請求や裁判などを行うと、時効完成までの期間が延長されます。

和解もしくは反論する

従業員の請求を精査し、会社側に誤りがあった場合には、和解によって解決を目指します。
未払いの残業代や遅延損害金を支払い、和解についての合意書を作成しておくと、その後のトラブルを防止できます。
従業員の請求を精査した結果、会社側の計算などに誤りがない場合には、従業員の請求に対し反論していくことになります。
労働時間に関する認識の間違いがある場合には、タイムカードなどの客観的な証拠をもとに、会社側の認識が正しいことを証明してください。
残業代の計算は法律の知識がないと間違ってしまうこともあるため、従業員への反論は弁護士に依頼すると安心です。

双方の主張が対立している場合、裁判に発展する恐れもあります。
裁判には時間も労力もかかるため、裁判に発展しないよう交渉した方が良い場合もあります。
裁判の際、労働時間の認識や残業代の計算が正しいか判断するのは裁判所です。
第三者が見ても会社側の主張が正しいと判断できる客観的な証拠を用意してください。

まとめ

この記事では、従業員に残業代を請求されたときの対応について解説しました。
残業時間の認識や計算ルールの認識を間違えていると、残業代を正しく計算できません。
従業員から残業代を請求されたときには、従業員の主張が正しいか、会社側にミスがないか、精査する必要があります。
会社側のミスが発覚した場合には、誠実かつ速やかに対応します。
しかし従業員側の主張を受け入れられないときには、反論していかなければいけません。
労働に関する問題の交渉は、弁護士までご相談ください。

電子化できない契約書とは|電子保存についても解説

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近年、書面による契約ではなく、電子契約書を用いた契約が普及しています。
便利かつ安全に契約を締結できるようになりましたが、まだ一部の契約においては電子化できないものも存在します。
この記事では、電子化できない契約と、書類の電子保存について解説します。

電子契約とは

電子契約とは、電子化された取引の中で締結する契約です。
紙の契約書や物理的な署名・捺印を必要とせず、電子的な契約書に電子署名を施すことによって契約します。
インターネットを介して契約できるため、書面の郵送や対面でのやり取りが必要なく、遠方にいる相手とも即時の取引が可能です。

電子契約書の証拠力

次の条件を満たした電子署名を施すことで、その電子契約書は裁判においても十分な証拠力を持ちます。

  • 本人による署名であると確認できる
  • 署名後、その文書に変更がないことを確認できる

本人確認は、電子証明書の発行や、電子契約サービスを利用する方法で行えます。
本人確認の方法によって、印鑑でいうところの三文判程度の効力から、実印相当の効力を持った契約まで可能です。

電子化できない契約

2025年現在、ほとんどの契約が電子化できます。
ただし、一部の契約は電子化できません。

公正証書による契約

公正証書によって締結するように決められている契約は、電子化できません。
公正証書の作成は、対面かつ書面での作成が義務付けられているためです。
公正証書によって締結しなければいけない契約は次の通りです。

  • 事業用定期借地権
  • 企業担保権の設定や変更の契約
  • 任意後見契約

ただし現在、公正証書のデジタル化に向けて、法整備やその他の準備が進められています。
令和7年度内のデジタル化施行を目指しており、施行後は公正証書の電子的な作成や保存が原則となる見込みです。

取引相手の同意や承諾が必要になる契約

一部の契約において、電子契約実施の同意や承諾を得なければいけないものがあります。
たとえば建設工事に関わる請負契約書や、宅建業者の媒介契約書などを電子契約書にするためには、事前に契約相手の承諾が必要です。
承諾を得られなかった場合には、従来通り書面で契約書を発行しなければいけません。
また訪問販売などの契約も、事前に消費者から承諾を得なければ電子契約書の交付はできません。
取引相手が電子的な取引に不慣れであっても問題なく契約できるよう、相手の状況に合わせて契約書を作成してください。

電子保存の決まり

国税関係帳簿書類に該当する電子契約書は、電子帳簿保存法の対象です。
会計の帳簿だけでなく、注文書や雇用契約書など、取引に関わる契約書も電子帳簿保存法に則って保存しなければいけません。
電子取引によって得た書類は電子データのまま保存する必要があり、紙に印刷して保存することはできません。
ただし、FAXによる受信などで電子データが残っていない場合には、電子保存の対象外です。
受信した書類をそのまま保存するか、スキャナ等で取り込み画像データとして保存してください。

電子保存の要件

電子的な取引をした場合、そのデータは次の要件を満たしたうえで電子保存する必要があります。

  • 真実性が確保されている
  • パソコンやシステムのマニュアルが完備されている
  • 必要なときに速やかに取引データを表示または印刷できる
  • 必要事項に応じたデータの検索ができる

真実性の確保とは、電子データに偽りがないことを証明するものです。
たとえば取引相手からタイムスタンプが付与されたデータが送られてきた場合、そのデータは真実性が確保されていると言えます。
そのほか、取引後すみやかに自社でタイムスタンプを付与したり、データの訂正や削除に関する社内規定を作ったりすることで、真実性を確保できます。
さらに、データの訂正や削除の履歴が残るシステムを用いてデータの保存を行う場合にも、真実性の確保がされていると認められます。

紙で作成された書類も電子保存できる

紙で作成された契約書や請求書などの国税関係書類も、電子的に保存することが可能です。
書類をスキャナで取り込んだり、写真撮影したりして、画像データとして保存します。
スキャナ保存せず、紙のまま保存することも可能です。
ただし仕訳帳や総勘定元帳などの国税関係帳簿類は、電子的に作成されたもののみが電子保存の対象です。
手書きによって作成された帳簿類をスキャナ等で取り込み、電子的に保存することはできません。

まとめ

この記事では電子化できない契約書と、取引したデータの電子保存について解説しました。
ほとんどの契約書は電子化することが可能ですが、取引相手の同意を得られなかったり、公正証書による作成が必要だったりする場合には、電子化できないこともあります。
また、電子化された取引データは、電子帳簿保存法に則って正しく保存しなければいけません。
電子取引や電子帳簿保存法に不安のある方は、弁護士までご相談ください。

電子契約書は法的に有効なのか?

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契約を結ぶ際、紙で作成した契約書を使用するのではなく、電子的な契約書を導入する企業が増えています。
しかし、電子契約書は法的に有効といえるのでしょうか。
この記事では、電子契約書の法的な効力や、電子契約書を保存するうえでの決まりを解説します。

電子契約書とは

電子データを用いて契約を結び、電子的なやり取りで作成された契約書が、電子契約書です。
一定の要件を満たしている場合、電子契約書に法的な効力を持たせることが可能です。
紙による契約書では署名や押印によって法的な効力を持たせますが、電子契約書では電子署名やタイムスタンプを施すことにより法的な効力を持たせます。

法的な効力を持たせるための要件

電子契約書に法的な効力を持たせるための要件は次の通りです。

  • 電子文書に電子署名を施している
  • 本人だけが使用できる電子署名である
  • 電子署名を施したあと、データが改ざんされていないことを証明できる

電子的なファイルに対する本人確認や、内容の改変がないことの証明は、紙と同じ方法ではできません。
そのため、特別な認証システムを利用し、電子署名が本人によって作成されたものであることや、署名後に内容が改変されていないことを証明する必要があります。

電子署名

電子署名を利用するには、電子署名サービス業者を利用する方法と、認証局によって発行された電子証明書を使用する方法があります。
電子署名サービス業者を利用する方法では、業者が立会人となり、本人確認や同意の意志を確認して、電子署名をほどこします。
その効力は、認印と同程度であることが一般的です。
メールアドレスなどを用意するだけで簡単に利用できるため、導入しやすい方法です。

一方、電子証明書を利用するには、認証局などに電子証明書の発行を申請し、取得しなければいけません。
申請や発行には手間や時間がかかりますが、電子証明書には実印並みの効力があります。
たとえば、法務局が発行している会社代表の電子証明書は、法人の登録印に相当する効力があります。
一般的に実印が必要とされる契約書には、電子証明書を用いた電子署名を行うことが適切です。

タイムスタンプ

契約の締結後にデータの改ざんがないことを証明するため、タイムスタンプを使用します。
タイムスタンプを付与することで、付与した日時にそのデータが存在していたことと、それ以降データが改ざんされていないことの双方を証明できます。
タイムスタンプを付与するには、タイムスタンプの発行業者と契約しなければいけません。

ただし、電子データの訂正・削除ができないシステムや、訂正・削除の履歴が残るシステムを利用している場合、タイムスタンプは不要です。
また、タイムスタンプが付与された契約書を取引先から受け取った場合も、自社でタイムスタンプを付与する必要はありません。

電子契約書の保存

電子契約書の保存方法は、電子帳簿保存法によって決められています。
電子契約書を送付・受領したときは、一定の要件を満たした状態で保存しておかなければいけません。
その要件は次の通りです。

  • 改ざん防止の措置をとる
  • 保存データを確認するためのディスプレイやプリンタを用意する
  • 日付・金額・取引先の要素で検索できる

改ざん防止の措置

タイムスタンプの付与や、訂正・削除の履歴が残るシステムを利用することは、改ざん防止の措置に該当します。
そのほか、自社で改ざん防止のための事務処理規程を作り、それを運用することも改ざん防止措置として認められます。
規定を作成することで、新しいシステムを導入せずに電子帳簿保存法に対応できます。

データを確認できるようにする

電子契約書は紙に印刷して保管するのではなく、サーバやクラウド上に電子データとして保存しておく必要があります。
そのうえで、必要に応じてすぐにディスプレイで読める、印刷できる等の状態にあることが必要です。
従業員が速やかに書類へアクセスし、必要な形で契約書を出力できるよう、システムの操作マニュアルやプリンタを用意しておく必要があります。

データを検索できるようにする

沢山の電子契約書の中から必要な書類をすぐに探し出せるよう、検索機能の設定も必要です。
取引年月日、取引先、取引金額の3要素について検索できなければいけません。
そのほか、2つの要素を組み合わせて検索する機能や、日付や金額の範囲を指定して検索できる機能が必要です。

まとめ

この記事では電子契約書の法的効力や、保存方法の決まりについて解説しました。
電子的に作成された電子契約書は、電子署名やタイムスタンプを活用することにより法的な効力を持たせることが可能です。
たとえば電子証明書の利用により、実印と同程度の効力が認められます。
電子契約書は作成時だけでなく、保存方法の決まりも守らなければいけません。
電子契約の導入をお考えの際には、専門家である弁護士までご相談ください。

コンプライアンスを重視すべき理由とは

企業法務

現代の企業には、高いコンプライアンス意識が求められています。
その背景には、さまざまな企業の不祥事に対するマスメディアや消費者の批判と、適切なリスク管理により企業価値を高められるという考え方が世界的に広がったことがあげられます。
本記事ではコンプライアンスを重視すべき理由について、コンプライアンスを実践するための具体策とあわせて解説します。

コンプライアンスとは何か

コンプライアンスには本来、企業などが法令や規則を守ること(法令遵守)という意味があります。
「法令」とは、憲法や法律、行政機関が発する命令、規則、条約、地方自治体の条例などを総称する言葉であり、「法令遵守」とは国や地方自治体が定めた法令などに背かず、よく守ることです。
しかし、近年になってコンプライアンスの意味がより大きく捉えられるようになり、基本的には以下にあげる3つの要素を含んでいます。

・法令
・社会倫理
・社内規則

コンプライアンスを重視すべき理由

それでは、コンプライアンスを重視すべき理由を順番に解説します。

法律違反によるリスク回避

コンプライアンスの中でも法令を遵守することが基本となる部分であり、企業活動を行う上で法律違反が引き起こす罰則や制裁を回避することができます。
また、日頃から法令遵守の意識を高めることで、随時改正される法令にも迅速に対応することができます。

企業の信頼性を確保するため

企業は、顧客や取引先だけではなく、投資家や従業員により経営を行うことができます。
コンプライアンスがきちんと守られておらず、不正が横行するような企業であれば、顧客や取引先からの信頼を得ることはできません。
さらに、優秀な人材を確保できなくなるだけではなく、投資家や金融機関からの資金が得られないといったリスクを抱えることになります。

従業員の働きやすい環境づくり

コンプライアンスが守られることで、ハラスメントや不正のない健全な職場環境が実現できます。
社内規定や就業規則を整備して従業員に周知することは、社内の秩序を保つこと以外にも従業員間の賃金や処遇の公平を実現することにも寄与し、従業員が安心して働くことができます。
また、健全で働きやすい環境であれば従業員の責任感や意欲を高め、生産性の向上へとつながります。

長期的な企業成長への寄与

短期的な利益を追求してコンプライアンスを軽視する企業は、重大なミスが発生した際に対応が遅れ、より大きな問題に発展する恐れがあります。
このような企業は長期的な成長を見込むことができず、持続可能な経営を実現することができません。
また、企業は社会の一員として環境や人権などに配慮し、社会貢献を行う責任があると考えられています。
これを企業に求められる社会的責任(Corporate Social Responsibility=CSR)と呼び、自社の利益だけを追求していると社会から取り残され、持続的に発展することができません。

コンプライアンス違反の事例

コンプライアンス違反の事例は、大きく分けると次の4つに分類することができます。

・労働問題
・法令違反
・不正経理
・情報漏えい

過重労働や各種ハラスメントなど、労働問題に関するコンプライアンス違反は複数の要素が原因となっている場合が多く見られます。
また、法令違反は小さなものを積み重ねることで取り返しがつかなくなるケースが多く、この程度の違反なら、と見過ごさないようにすることが重要です。
架空請求や粉飾決算、業務上横領といった不正経理は、取引先や関連企業など広い範囲に被害を与えるため、最終的には経営破綻に至るケースがあります。
情報漏えいは、社員が秘匿性の高さを認識せずに情報を扱い、顧客情報の流出を起こしてしまうケースです。
情報漏洩は、社会的信用を失墜させるのに十分なコンプライアンス違反のため、セキュリティー対策に力を入れている企業が増加しています。

コンプライアンスを実践するための具体策

それでは、コンプライアンスを実践するための具体的な対策を解説します。

社内規定の整備

まずは、きちんと社内規定や就業規則などのルールを整備することが重要です。
コンプライアンスの基準である法令や社会倫理は、時代に応じて変化します。
最新の基準と照らし合わせ、コンプライアンス違反がないか常にアップデートしていく必要があるため、定期的な法令遵守のチェックと外部監査を活用した第三者視点の評価を行うことが重要です。

従業員教育の強化

社内規定などのルールを整備した上で従業員へ周知することで、コンプライアンスの意識を浸透させる必要があります。
そのためにも、定期的なコンプライアンス研修の実施と、従業員がルールを守りやすい環境づくりが必要不可欠です。

内部通報制度(相談窓口)の整備

内部不正や問題行動を報告するための相談窓口を設置します。
コンプライアンス違反は従業員からの相談や指摘で発覚する場合が多いため、相談窓口を設けることで大きな問題になることを防ぐ役割を果たします。
また、相談窓口を設置する場合は従業員が相談しやすい環境を整備することが重要であり、相談者は公益通報者保護法による保護の対象となります。

まとめ

今回は、コンプライアンスを重視すべき理由について解説しました。
コンプライアンスは単なる「守るべきルール」ではなく、企業の成長戦略の一部と捉えることができます。
法律だけでなく、倫理や社会的責任も重視する姿勢が求められるため、すべての従業員が一丸となり取り組むことが必要です。
コンプライアンスについて何か心配がある場合は、法律の専門家である弁護士への相談も検討してみてはいかがでしょうか。

就業規則はなぜ必要なのか?その意義と役割を徹底解説

企業法務

会社運営において、就業規則は欠かせない存在です。
就業規則の存在が労使間のトラブルを防ぎ、従業員の安心感を高める役割を果たすため、企業への信頼感、優秀な人材の確保や定着につながると言えます。
本記事では、就業規則の必要性やその重要性について詳しく解説します。

就業規則の基礎知識

まず、就業規則とは何かについて、順番に説明します。

1.就業規則とは

就業規則とは、労働者の労働時間や賃金、休暇などの労働条件、職場内の規律について定めたもので、職場のルールブックと言えます。
労働基準法第89条に基づき、常時10人以上の労働者を雇用する企業(事業場)での作成が義務づけられたおり、就業規則を新しく作成したり変更したりした場合には、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。

2.就業規則に記載すべき項目

就業規則に記載すべき項目として、以下の3つの項目に分けることができます。

  1. 絶対的必要記載事項
  2. 相対的必要記載事項
  3. 任意的記載事項

絶対的必要記載事項には労働基準法に定められた記載項目として、労働時間、賃金、休暇、退職や解雇事由などを明記します。
相対的必要記載事項とは、制度を設ける場合には必ず記載しなければならない項目で、たとえば退職手当や福利厚生、評価制度などを記載します。
また、任意的記載事項には服務規程や試用期間、休職についてなど、企業で任意に定めた規則を記載することができます。

3.就業規則が対象とする範囲

就業規則は、正社員はもちろん契約社員や派遣社員、パートタイムやアルバイトなど、その企業に雇用されている労働者すべてを対象とします。
原則として、会社役員や業務委託(外注)スタッフには適用されませんが、就業規則の適用範囲についても明確にしておくことが重要です。

就業規則が必要な理由

次に、就業規則が必要な理由について3つ解説します。

1.一定の条件を満たす企業では作成する義務がある

まず1つ目として、一定の条件を満たす企業では就業規則を作成する義務があります。
上述したように、常時10人以上の労働者を雇用する企業(事業場)での作成が義務づけられており、10人という人数は、正規雇用者だけではなくパートタイムやアルバイトなどの非正規雇用者も含みます。
ただし、本社とそれぞれの支店の従業員を合わせると10人以上になるといった場合は作成の義務はありませんが、職場の規律とトラブル防止のため、作成することが望ましいでしょう。

2.労働者保護と権利の明確化

就業規則には、労働時間や賃金といった従業員の労働条件が記載されており、労働者の権利などが明確になることで、従業員が安心して働くことができます。
また、賃金や休暇などのルールが統一されることで従業員の安心感が生まれ、従業員間の公平を実現することにもなります。

3.労使間のトラブル防止

就業規則は、労働者側だけではなく使用者(企業)側も遵守する必要があります。
たとえば残業代を支払わない、休暇を取得させないといった不当な扱いの防止につながり、労使間のトラブルを未然に防ぐ役割を果たします。

就業規則の作成・運用時の注意点

次に、就業規則の作成・運用時の注意点について解説します。

1.法律に準拠した作成

就業規則の作成にあたっては、社内の人事部や総務部などが作成する以外に、社会保険労務士や弁護士など、人事労務の専門家に依頼する方法があります。
どちらの場合についても、労働基準法や関連法規に沿った就業規則の作成が重要です。
自社で作成する場合は、厚生労働省のホームページで「モデル就業規則」を公開しているので、自社の実情に応じた就業規則作成の参考にすると良いでしょう。

2.従業員への周知が必須

就業規則は新規作成後、または変更後に全従業員に周知されることが法律で義務づけられています。
周知の方法としては社内の見やすい場所に掲示する、電子的データとしてパソコンで閲覧できるようにする、書面で配布するなどがあり、その内容を従業員がいつでも確認できる状態にしておく必要があります。

3.実態との乖離を防ぐ

実際の運用と就業規則に記載された内容とが一致しているかどうか、定期的に確認することが重要です。
不一致がある場合は、労務トラブルの原因となる可能性があります。

就業規則の見直しが必要なタイミング

最後に、就業規則の見直しが必要なタイミングについて簡単に解説します。

1.法改正があったとき

たとえば、働き方改革関連法や育児介護休業法の改正など、労働に関する法改正があったときは、必ず見直しが必要なタイミングと言えます。
なぜなら、労働基準法92条1項により法律に違反した就業規則は無効になることが定められており、就業規則で定めたルールが法律違反にならないか、定期的に見直す必要があります。

2.社内制度の変更時

人事評価制度や労働時間制度の変更など、社内の仕組みに変化が生じた場合は、それに合わせた規則の見直しが必要と言えるでしょう。
また、事業規模が拡大し、さまざまな働き方が求められるようになれば、それに応じた就業規則も必要になります。

まとめ

就業規則は従業員だけではなく、雇用側である企業にとっても重要な役割を果たします。
法律に準拠し、実態に即した内容で作成・運用することで、労務トラブルを防止することが期待できます。
就業規則の作成にあたってはさまざまな関連法規に沿った作成が必要となるので、弁護士への依頼を検討することも視野に入れてみてはいかがでしょうか。

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