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養育費の取り決めを公正証書にすべき理由と手続きの流れ

目次

離婚をした後、子どもの将来を考える際に重要になるのが「養育費」です。
とはいえ、口約束だけで養育費を決めてしまうケースも少なくありません。
今回は、養育費の取り決めを公正証書にしておくべき理由と、その手続きの流れを解説します。

養育費とは

養育費とは、子どもが社会的・経済的に自立するまでに必要な費用です。
離婚した後も、親には子どもを育てる責任があります。
どちらか一方が子どもを引き取った場合、もう一方の親が養育費を支払う義務があります。
養育費に含まれるのは、以下のような費用です。

  • 食費、衣類、住居費などの日常生活費
  • 医療費や通院費用
  • 保育園や学校などの教育費
  • 習い事や塾などの課外活動費

子どもの年齢や進学希望によって必要な金額は変わります。
そのため、将来も視野に入れ、十分に話し合うのが大切です。

口約束では不十分な理由

養育費の支払いに関して、離婚の際に話し合って決めても、文書にしなかったり口約束だけだったりするケースがあります。
しかし文書化しないと、さまざまなリスクがあります。

  • 支払いが滞るリスクが高い
  • 証拠が残らない
  • 子どもが不利益を受ける

それぞれ確認していきましょう。

支払いが滞るリスクが高い

養育費の取り決めが口頭だけだった場合、支払いが止まっても法的に強制できません。
仮に一度は約束を守っても、再婚や転職、収入の変化などを理由に支払いをやめる可能性があります。

証拠が残らない

「養育費を支払う」と口約束をしても、文書がなければ後からその約束を証明できません。
仮に裁判になった場合、証拠がないと養育費を請求するのが難しくなるリスクがあります。

子どもが不利益を受ける

養育費の支払いが止まると、子どもの生活や教育環境に直接的な影響を与える可能性があります。
必要なサポートが受けられず、将来の進路が制限されることも考えられます。
養育費の取り決めは、強制執行が可能な「公正証書(強制執行認諾文言付き)」として残すのが重要です。

公正証書とは

公正証書とは、公証役場で公証人が作成する、法的な効力を持つ文書です。
離婚の際に養育費や面会交流、財産分与などを取り決める場合、公正証書を作成するのが推奨されます。
特に重要なのが、「強制執行認諾文言」が付いた公正証書です。
養育費の不払いが起きた場合、訴訟を経ずに、裁判所を通じて差し押さえの手続きができます。

公正証書を作成する手続きの流れ

公正証書を作成するには、一定の手順があります。

①内容の合意
②必要書類の準備
③公証役場に相談・予約
④作成・署名
⑤正本・謄本の受け取り

それぞれのステップを確認します。

①内容の合意

まず、養育費の金額、支払い方法、支払期間などの詳細について、当事者同士で合意します。
以下のポイントを話し合っておくと安心です。

  • 毎月の支払金額
  • 支払日
  • 支払い方法
  • 支払いの終了時期
  • 将来的に収入が変動した場合の対応

必要に応じて、弁護士や行政書士への相談も検討してください。

②必要書類の準備

次に、公証役場に提出する書類を準備します。

  • 離婚協議書(養育費の内容が記載されたもの)
  • 身分証明書
  • 戸籍謄本
  • 不動産の登記簿謄本
  • 固定資産税納税通知書もしくは固定資産評価証明書

年金分割も行う場合や、代理人に依頼する場合などで、内容が若干異なります。

③公証役場に相談・予約

公正証書の作成は、原則として公証役場で行います。
事前に電話などで予約を取り、必要書類や内容を確認しましょう。
不明点がある場合には、相談に応じてもらえるケースもあります。

④作成・署名

公証人の面前で内容を確認し、問題がなければ当事者が署名・押印を行います。
公正証書が完成し、法的効力が生じます。
なお公正証書の手数料は、取り決める金額によって異なるため、事前に確認してください。

⑤正本・謄本の受け取り

公正証書の原本、正本、謄本の違いは以下の通りです。

種類説明
原本大元の書類。公証役場に保管されるため、当事者は持ち帰れない
正本原本をもとにして作成される「正規の写し」。原本とまったく同じ内容で、法的な効力がある
謄本証拠や参考資料として使うためのコピー。法的な強制力はない

公正証書が完成すると、正本と謄本が発行されます。
養育費などで将来の強制執行に備えるなら、「正本」は必須です。
内容を確認したり保管したりするために「謄本」も持っておくと安心です。
特に養育費など継続的なお金の支払いがある場合は、正本を適切に保管してください。

公正証書の内容の見直しはできるのか

公正証書は、「一度作成したら永久にそのまま使い続けなければならない」というわけではありません。
子どもの成長や親の収入状況の変化など、環境の変化によって、養育費の内容を見直す必要が出てくる場合もあります。
当事者同士が合意すれば、公正証書の内容の変更が可能です。
ただし、口頭での約束やメモ書きだけでは、法的効力を持ちません。
変更内容について新たに修正後の合意書を作成し、それをもとに公正証書を再作成する必要があります。

まとめ

今回は、養育費の取り決めを公正証書にするべき理由と、手続きの流れを解説しました。
公正証書にすれば、養育費の支払いに法的な裏付けを持たせられます。
作成には一定の手間・費用がかかりますが、長期的に見ると安心して子育てを進めるための大切な備えになります。
不安があれば、弁護士や司法書士などの専門家に相談してください。