夫婦間の話し合いだけでは離婚の条件がまとまらないとき、家庭裁判所での「離婚調停」を選ぶ方法があります。
とはいえ、調停の場では感情的になりやすく、冷静な判断を欠いて不利な結果につながる可能性もあります。
今回は、離婚調停を少しでも有利に進めるために押さえておきたいポイントを解説します。
離婚調停とは
離婚調停は、家庭裁判所で行う法的な手続きです。
夫婦双方の話し合いを、裁判官と調停委員の立ち会いのもとで進める形式となります。
離婚調停の流れ
離婚調停の流れは、以下の通りです。
①申立書および必要書類の提出
②初回の調停期日の通知
③調停
④調停調書の作成・調停の終了
それぞれ確認していきましょう。
①申立書および必要書類の提出
まずは、家庭裁判所に調停申立書と必要書類を提出します。
提出先は、相手方(配偶者)の住所地を管轄する家庭裁判所です。
②初回の調停期日の通知
申立てを受けた裁判所は、調整後に初回の調停期日を指定し、当事者双方に通知します。
調停は裁判所が開廷している時間、つまり平日の昼間に行われるのが原則です。
仕事や育児があっても、都合を調整して出席しなければなりません。
③調停
調停当日は、夫婦が別々の待合室で待機し、交互に調停委員と話すのが一般的です。
いわゆる「非対面方式」であり、相手と直接顔を合わせずに話ができるため、冷静なやりとりがしやすくなります。
調停委員2名(男女1名ずつが多い)と、家庭裁判所の裁判官が対応するのが基本です。
まずは申立人から意見を聞き、次に相手方の意見を確認するという流れで話が進みます。
調停委員は中立の立場から、事実関係や希望条件を整理し、妥協点を探ります。
④調停調書の作成・調停の終了
複数回の期日を重ね、双方が合意に達すれば「調停調書」が作成されます。
調停調書は、裁判所が作成する正式な文書です。
確定判決と同じ効力を持つため、離婚届を提出せずに離婚が成立します。
一方で、意見が折り合わず合意に至らない場合には、調停は不成立となります。
上記の場合、家庭裁判所が職権で判断を下す「審判」に進むか、あるいは当事者が改めて「離婚訴訟」を起こします。
離婚調停を有利に進めるためのポイント
離婚調停を有利に進めるためには、以下のポイントを意識してください。
- 事前に目的と優先順位を明確にする
- 証拠や資料を準備する
- 調停委員には丁寧に接する
- 調停の記録は自分でも残す
- 調停中の言動には注意する
それぞれ確認していきましょう。
事前に目的と優先順位を明確にする
調停を始める前に、自分が「何を一番重視するのか」を整理するのが重要です。
「親権を得たい」「養育費を確実に取り決めたい」など、希望内容を紙に書き出します。
すべてを主張すると対立が激しくなるため、譲れない点と妥協できる点の線引きをすると、より柔軟に交渉を進めやすくなります。
証拠や資料を準備する
主張を裏付けるためには、客観的な証拠が欠かせません。
以下のような資料を整理すると効果的です。
- DVやモラハラの証拠(録音データ、LINE、診断書など)
- 夫婦共有財産の資料(通帳、不動産登記簿など)
- 収入を示す資料(源泉徴収票、給与明細など)
- 子どもの養育状況に関する記録(学校の連絡帳、写真など)
調停委員はあくまでも第三者として関与する存在であり、一方に肩入れするわけではありません。
しかし当然、人間としての好感や嫌悪感を抱くのも事実です。
調停委員たちの心証を良くするのも、調停を有利に進めるうえで重要です。
調停委員には丁寧に接する
調停の進行役を担うのが調停委員です。
調停委員に対して高圧的な態度を取ると、話し合いが進まず、結果的に自分に不利な展開になる可能性があります。
たとえ相手側の主張に納得できない場面でも、礼儀ある対応を心がけましょう。
調停の記録は自分でも残す
調停は複数回にわたって行われるのが一般的です。
自分自身でも、できる限り毎回のやりとりを記録してください。
調停の内容をノートにまとめたり、話し合いで合意した内容を書き留めたりすれば、次回以降の方針が立てやすくなります。
相手側の主張が変わったときにも、過去の記録があれば主張の矛盾を指摘できるかもしれません。
調停中の言動には注意する
調停の場だけでなく、その前後の言動にも注意が必要です。
たとえばSNSで相手を非難するような投稿をしたり、感情的なLINEを送ったりすると、その内容が調停に持ち出される可能性があります。
子どもが関わる離婚の場合、親としてのふるまいも評価の対象になるため、節度ある行動が求められます。
弁護士に依頼すべきかの判断ポイント
離婚調停は自分だけでも対応可能ですが、状況によっては弁護士への依頼を検討する価値があります。
たとえば、以下のようなケースです。
- 相手が弁護士を立てている
- 複雑な財産分与や借金問題がある
- DVや精神的虐待を受けている
- 親権や面会交流について争いがある
- 精神的に不安定で自分では交渉が難しい
弁護士に依頼すれば、調停への同行だけでなく書類作成や主張の整理も任せられるため、心理的な負担が軽くなります。
まとめ
調停は法的な手続きでありながら、個人のふるまいなどで結果が変わる可能性もあります。
証拠の整理を徹底し、当日は冷静な対応を心がけてください。
自分だけで対応できない場合は、早めに弁護士へ相談するのがおすすめです。