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雇用契約書や労働条件通知書を作成する際の注意点

目次

雇用契約を結ぶ際、雇用契約書と労働条件通知書は兼用が可能です。
ただし労働条件通知書の作成には法的な決まりがあるため、兼用する場合には適切に要件を満たすよう注意しなければいけません。
この記事では、雇用契約書と労働条件通知書の作成で気を付けるべきことを解説します。

雇用契約

労働者が企業に使用されて労働し、その対価として報酬を得る契約が雇用契約です。
雇用契約を結ぶことで、長時間労働の抑制や社会保険の加入など、労働者として法的に保護を受けられます。
契約を結ぶときには、その内容を明らかにするため契約書を作成することが一般的です。

雇用契約書

雇用主と労働者の間で雇用契約を結んだことを証明する書類が雇用契約書です。
雇用契約は口頭でも結ぶことができ、必ずしも書面にする必要はありません。
しかし口頭だけではトラブルになることもあるため、契約書を作成し、署名押印しておくことが大切です。
同時に雇用主には、労働者に対して労働条件を明示する義務があります。
このとき、雇用契約書に法で定められた通知内容を記載することで、労働条件通知書を兼ねることも可能です。

労働条件通知書

労働条件通知書とは、労働者へ明示しなければならない労働条件などを記載した書類です。
交付が義務付けられており、記載しなければならない内容も法的に決まっています。
書かなければいけない内容は次の通りです。

  • 労働契約期間
  • 就業場所
  • 業務内容
  • 始業・終業の時刻
  • 残業の有無
  • 休憩や休日について
  • 賃金について
  • 退職や解雇について

そのほか、交代制の場合はそのルールや、有期契約の場合には更新などについても記載しなければいけません。
就業場所や業務内容が変更になる可能性がある場合にも、その内容を記載します。
また、パートやアルバイトの方には別途記載しなければいけない内容もあります。
明示義務を果たしていない場合、30万円以下の罰金が科せられる可能性があるため注意が必要です。

作成時の注意点

トラブルを発生させず、また万が一トラブルが発生した際にも速やかに解決させるため、契約書や通知書の作成は重要です。
必要な内容を漏れなく記載し、不備のないように作成しなければいけません。

内容が有効であるよう注意する

たとえば時間外労働に対する割増賃金を支払わないなど、労働基準法に違反した内容を記載してはいけません。
そのような内容を記載した契約書に署名や押印していた場合でも、その契約は無効になります。
また労働条件通知書に記載した内容が実際の条件と異なっている場合には、労働者は即時に契約を解除することが可能です。
経営に大きな影響を与える可能性があるため、注意して作成しなければいけません。

また、就業規則と雇用契約書の内容が異なっていた場合には、就業規則の内容が優先されます。
ただし雇用契約書の内容の方が労働者にとって有利な条件であった場合、雇用契約書の内容が優先されることもあります。
とくに契約更新時などは以前の契約書のまま手続きを進めるのではなく、現在の就業規則や法律に合っているか確認が必要です。

相対的明示事項に注意する

労働条件通知書には必ず書かなければいけない内容のほか、該当する場合のみ明示が義務付けられている内容が存在します。
具体的には次の内容です。

  • 退職手当に関する内容
  • 賞与や手当について
  • 最低賃金額について
  • 食費や作業用品費
  • 安全や衛生について
  • 職業訓練
  • 災害補償、疾病扶助
  • 表彰や制裁
  • 休職について

必要に応じて忘れずに明示するよう注意してください。

テンプレートをそのまま使用しない

インターネット上にはさまざまな雇用契約書や労働条件通知書のテンプレートが存在します。
しかしそれらをそのまま使用すると、企業の実態に合わない内容になってしまう恐れがあり、トラブル発生のリスクが高まります。
テンプレートを使用する際には、実際の契約に合わせて内容を適切に作り変えなければいけません。
とくに正社員や契約社員、パートなど雇用形態が異なる場合には、それぞれ異なる内容について記載義務があるため注意が必要です。

また、テンプレートに記載されていない内容であっても、企業の実情に合わせて記載するべき内容が存在する可能性もあります。
記載漏れを防ぐため、テンプレートを使用する場合であっても、法律の専門家などに相談しながら作成すると安心です。

まとめ

この記事では、雇用契約書や労働条件通知書を作成するうえでの注意点を解説しました。
労働契約を結ぶ際には労働条件の通知が義務付けられており、決められた内容を通知していない場合には違法となる可能性もあります。
また、記載内容が労働基準法に違反している場合や就業規則と異なる場合には、無効となることもあります。
作成時には社内に存在する規則や法的な観点をもとに、適切に作成しなければいけません。
雇用契約書などの作成の際には、弁護士までご相談ください。