交通事故による死亡事故は、被害者とその家族に計り知れない悲しみと影響をもたらします。
その損害を補うため、加害者やその保険会社から慰謝料が支払われますが、金額は一定ではなく、さまざまな基準や条件によって変わります。
そこで、本記事では、死亡事故における慰謝料の算定基準や、その金額を決定する要素について詳しく解説します。
慰謝料の役割とは?
死亡事故における慰謝料は、被害者の命を失ったことで遺族が受けた精神的苦痛に対して支払われる金銭です。
これは被害者の命の価値を直接的に評価するものではなく、家族の精神的損失を金銭的に補償するためのものです。
慰謝料の算定基準
死亡事故の慰謝料は、以下の3つの基準に基づいて算定されます。
自賠責基準
自賠責保険は、すべての車両に加入が義務付けられている最低限の保険です。
この基準で支払われる慰謝料は、あくまで最低限の補償であり、3つの慰謝料算定基準の中で最も低額です。
自賠責基準による、被害者本人の死亡慰謝料は400万円となっています。
なお、交通事故により被害者が即死した場合、被害者本人の慰謝料請求権が発生しないのではないかと疑問に思う方もいるかもしれませんが、被害者即死の場合でも、本人の慰謝料請求権が発生し、それを遺族が相続することとなることが裁判例で示されたため、被害者本人の慰謝料請求も相続人が受け取ることができます。
これに加え、被害者遺族固有の、精神的損害を補償する慰謝料額を加えて、合計の慰謝料額を算定します。
任意保険基準
任意保険基準は、加害者が加入している保険会社独自の基準に基づいて算出されるものです。
自賠責基準よりも高額になり、以下で解説する弁護士基準より低額になる場合が一般的ですが、会社によって基準が異なります。
任意保険基準の慰謝料額の相場は約1400万円~約2000万円とされていますが、あくまでも目安であり、保険会社によって異なるため、確認が必要です。
弁護士基準(裁判基準)
弁護士基準は、裁判所が過去の判例をもとに決定する基準です。
この基準は自賠責基準や任意保険基準と比べて最も高額になることが多く、遺族にとって有利な結果をもたらす可能性が高いといえます。
弁護士は、この弁護士基準を使って、相手方に慰謝料請求をしていくため、高額の慰謝料を受け取りたい場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
死亡事故における、弁護士基準による慰謝料請求の相場は、約2000万円から2800万円であり、高額といえます。
慰謝料の金額に影響を与える事情
慰謝料の金額は一律ではなく、以下の事情が金額に影響を与えます。
被害者の年齢
被害者が若いほど、残された家族の精神的苦痛は大きいと判断されるため、慰謝料が高くなる傾向があります。
また、被害者が若いと、失われる時間が長く、得られるはずであった労働による利益が大きくなるため、逸失利益の額も高額になりやすいです。
したがって、被害者の年齢が慰謝料の金額に影響を与えるといえます。
扶養関係
被害者が家族を養っていた場合、一家の大黒柱を失ったという遺族の経済的苦痛も考慮され、慰謝料が高額になることがあります。
特に、未成年の子どもがいる場合は、慰謝料が高額になる傾向があります。
過失割合
被害者に一定の過失があれば、過失相殺として、その分が減額されます。
一方、加害者側が危険な運転をしていたり、飲酒運転をしていたりといった、加害者側に重大な過失がある場合は、慰謝料額が増加する場合があります。
慰謝料の請求方法
慰謝料を適切に受け取るためには、以下の手順を踏むことが重要です。
保険会社との交渉
まずは、加害者が加入している保険会社と交渉し、提示された金額が適正であるかを確認します。
弁護士への相談
保険会社の提示額が不適切と感じた場合や、交渉が難航する場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
特に、弁護士に依頼することで、弁護士基準により交渉が進むため、高額の慰謝料を受け取ることができる可能性が高まります。
裁判での解決
交渉で合意に至らない場合は、裁判に発展することがあります。
この場合、弁護士基準が適用されるため、より高額な慰謝料が期待できます。
まとめ
本記事では、死亡事故における慰謝料の算定基準について解説しました。
死亡事故における慰謝料請求の基準は、自賠責基準、任意保険基準及び弁護士基準があり、慰謝料の算定基準もそれぞれ異なります。
中でも、弁護士が使う弁護士基準がもっとも高額になるため、交通事故にあった際は、弁護士に相談することをおすすめします。