これまでの業務を改善するため、活性化・効率化を目指して業務委託契約を導入する企業が増えています。
しかし業務委託契約における大きなメリットがある反面、トラブルも増加しています。
本稿では業務委託契約を行うことによるメリット・デメリットと、トラブルや注意点について解説します。
業務委託を行うことによるメリット
業務委託契約を行うことによるメリットは以下の通りです。
- 生産性の向上
- 人件費の削減
- 専門性の高い知識やスキルが必要な業務の委託ができる
生産性の向上
業務委託によっていつでも必要な人材を必要なタイミングで、必要な場所へと配置することができます。
それにより業務の効率化を図ることができ、生産性の向上へとつながるのです。
人件費の削減
業務委託にすると、人材確保のために行う人材採用や教育などの人件費を削減することができます。
専門性の高い知識やスキルが必要な業務の委託ができる
専門性の高い知識が必要な場合に、委託契約の人材に必要な業務を任せることができます。
自社で対応が難しい専門的な知識も業務委託契約によって活用は可能です。
業務委託のデメリット
業務委託のデメリットは次の通りです。
- 社内に知識やスキルが蓄積しない
- 業務品質の均一化が難しい
社内に知識やスキルが蓄積しない
業務委託によって仕事が完結してしまった場合には、社内で知識やスキル、経験などが蓄積されないため、企業としての能力がいつまでも育ちません。
従業員の活用もあわせて考える必要があります。
業務品質の均一化が難しい
業務委託は委託者と受託者に使用関係がないため委託者の方から直接指示することができにくく、作業現場での作業の品質管理や維持ができません。
そのため業務品質の均一化が難しいのがデメリットとなっています。
業務委託で起こる可能性のあるトラブル
業務委託で起こる可能性のあるトラブルを紹介します。
コンプライアンス違反や不正
業務委託の場合は雇用契約ではないため会社への愛着も乏しくなりがちで、コンプライアンス違反や時には不正などを引き起こしてしまうことがあります。
できれば委託者と受託者で信頼関係を構築するため、積極的なコミュニケーションをとるなどの対策が必要です。
契約不履行と成果物の納品遅れ
業務委託契約で請負契約の場合によくあるのが、契約の途中で音信不通になってしまったり期限通りに納品がされなかったりする場合です。
納品物の修正に対応してくれるかどうかも契約時に確認しておく必要があります。
再委託によって業務品質の低下懸念
再委託というのは、受託者が委託業務を第三者に依頼することです。
再委託は委託者と下請けの連絡やコミュニケーションが取りにくいため、完成する業務の品質が低下してしまう可能性があります。
報酬に関して認識が違う場合
報酬に関しては金銭的な問題であることから深刻なトラブルに発展する可能性が高いため、特に注意が必要です。
報酬の支払い日の管理、成果物の合格基準、また認識の相違などがあります。
契約を解除したことによる損害賠償
業務委託を自己都合で一方的な解除をする場合もトラブルに発展する可能性があります。
場合によっては違約金や損害賠償額を請求する場合もあります。
契約内容の理解不足している場合の偽装請負
偽装請負というのは、業務委託契約の締結をしているのに委託者が受託者へ直接指揮命令を行っている状態のことです。
業務委託契約を締結している状態で指揮命令を行うのは違法になる場合があります。
契約内容をよく確認し内容を正しく理解しておくことが大事です。
情報セキュリティ甘さによる情報漏えい
情報のセキュリティの甘さが引き起こす情報漏えいには要注意です。
業務委託によって受託者が故意に情報を窃取したり、過失によって発生する情報漏えいなどもあります。
社内の情報漏えいは重大な信用失墜となりますので、十分な対策を行う必要があります。
業務委託に関する注意点
業務委託をすることで注意する点は次の通りです。
必要事項を契約時点で取り決めておく
委託者は受託者との間で業務委託契約を行う場合、契約のなかに必要なことをすべて細かく取り決めておくことが大事です。
お互い納得のうえで契約を交わすことでトラブルは減少します。
業務委託契約書に明記すべき項目は次の通りです。
- 報酬
- 契約期間
- 報酬の支払い条件
- 成果物の権利
- 再委託について
- 禁止事項
- 損害賠償について、など
高い意識で法律を守る
法律に対する意識を高く持つようにします。
法律を守るのは当然のことですが、お互いしっかりと認識して法律違反をしないようにしましょう。
信頼できる相手と契約する
業務委託契約は信頼関係がとても重要なポイントです。
信頼できる相手であれば問題はないわけです。
しかし知人でもなければ信頼できる人であるかどうかは判断しづらいところです。
- 契約をする前に入念に面接などを行いしっかりと話し合う
- 信頼できる仲介サービスを利用する
- 信頼できる人物からの紹介をしてもらう
以上のことに注意し、信頼できる相手と契約をするよう心がけましょう。
条件を途中で変更する場合は変更契約書をつくる必要がある
業務委託の契約中に内容に変更があった場合には、必ず変更契約書を作成するようにします。
あとでトラブルにならない、またはトラブルになったときの証拠品として契約書は必要となります。
条件によっては業務委託ではなく雇用契約として扱われる
専属性があったり勤務時間の指定などにより、業務委託に使用従属性があると認められた場合には「雇用」としてみなされることがあります。
雇用契約となるとさまざまな部分に影響がでてきてしまうため要注意です。
まとめ
業務委託契約のメリット・デメリットを把握し、トラブルになった事例についてよく確認し前もって対策を講じておくことが大事です。
契約書についても必要だと思われることは契約書に記述しお互い納得のうえで締結をするようにします。
業務委託契約はトラブルの発生することが多く解決が難しいことから、できれば早めに弁護士へご相談されることをおすすめします。