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労働条件の不利益変更の実施方法と注意点

目次

会社経営では、経済状況の悪化などの理由で、労働者の労働条件を見直す場面もあります。
しかし労働条件を、労働者にとって不利な内容に変更する場合、法的な制約や注意点が数多く存在します。
今回は、労働条件の不利益変更の実施方法と、その際に企業が注意すべきポイントを解説します。

労働条件の「不利益変更」とは何か

労働条件の「不利益変更」とは、労働者にとって今までよりも悪い内容へと変更されることを意味します。
具体的には、給料の引き下げや勤務時間の延長、休暇制度の変更などです。
不利益変更は、労働者の生活や権利に大きく影響するため、法律的な観点からも慎重な対応が必要です。

不利益変更の実施方法

不利益変更の実施方法は、以下の通りです。

  • 労働者からの個別合意を得る
  • 労働組合との包括的合意を図る
  • 就業規則の改定をする

それぞれ簡単に解説します。

労働者からの個別合意を得る

まず、不利益変更をそれぞれの労働者と話し合い、書面による同意を得るのが原則です。
トラブルを避けるため、内容や減額の程度が明記された同意書を交わします。

労働組合との包括的合意を図る

会社に労働組合がある場合は、締結された労働協約により適用できる場合があります。
労働協約で定めた場合は、組合員には当然に適用され、非組合員にも就業規則と同様の効力が及ぶ可能性があります(組合員数が事業場労働者の4分の3以上の場合)。

就業規則の改定をする

合意が得られない場合や、多数の社員に適用したい場合は、前述のように就業規則を変更する方法があります。
ただし、「合理的な理由」が必要です。
就業規則を変更した後は、労働者が新しいルールを「見て知れる状態」にしなければなりません。
具体的には書面で配布するか、社内の見やすい場所に掲示するか、電子媒体で保存して閲覧可能にする方法が認められています。

合理的な理由として認められる基準

就業規則の改定に関して、合理的な理由として認められるかどうかは、以下の4つが基準となります。

  • 労働者の合意が得られているか
  • どれくらいの不利益があるか
  • 変更の必要性があるか
  • 代わりの対応や配慮がなされているか

企業が一方的に就業規則を変更しても、これらの要素を満たさなければ、法的に無効とされる可能性があります。
それぞれ確認していきましょう。

労働者の合意が得られているか

労働条件の不利益変更では、労働組合や労働者の多数から合意を得ているかどうかが重要な判断要素です。
会社側があらかじめ丁寧に説明を行い、多くの労働者が同意している場合には、変更が合理的と認められる可能性が高まります。
一方で労働者の大半が反対している場合は、たとえ就業規則を改正しても、その変更の正当性や有効性が疑問視されます。

どれくらいの不利益があるか

変更によってどれほど労働者が不利になるかも、大きな判断材料です。
たとえば基本給の大幅な減額や長時間労働など、生活に大きな影響が出るような変更だと、合理性が認められにくくなります。

変更の必要性があるか

変更しなければ会社の運営が困難になるような事情がある場合には、必要性があると評価されやすくなります。
一方で、特に理由がなく変更するようなケースだと、合理性が認められにくくなります。

代わりの対応や配慮がなされているか

不利益を受ける労働者に対して、会社がどれだけ代替案や補償などの配慮をしているかも重要です。
「給料が下がる代わりに特別手当を支給する」「勤務時間の変更に応じて通勤手当を増やす」などの対応があれば、合理性が認められやすくなります。

不利益変更の実施に関する注意点

企業が法的な手続きを無視して労働条件を変更した場合、行政指導や民事訴訟など、さまざまなリスクを抱えます。

  • 直接的な金銭的リスク
  • 職場環境や労働者の信頼への悪影響
  • 企業の信用失墜のリスク

違法な不利益変更がどのような結果を招くかを整理して解説します。

直接的な金銭的リスク

就業条件を正当な理由や手続きなしに下げた場合、労働者から民事訴訟を起こされる可能性があります。
裁判で変更が無効と認められた場合、企業は本来支払うべきだった金額との差額を補填しなければなりません。
給与の減額が問題になったケースでは、減額分の全額をさかのぼって支払うよう命じられる可能性もあります。
上記のような訴訟が複数の労働者から同時に起きれば、会社にとって大きな負担となります。

職場環境や労働者の信頼への悪影響

不利益変更は、仮に裁判に発展しなくても、労働者の不満を生み出す可能性もあります。
最も顕著なのが、労働者の士気の低下です。
「自分たちは軽く扱われている」と感じ、仕事に対する意欲が薄れて、生産性が下がるケースも少なくありません。
企業の対応に不信感を抱いた労働者が退職を選ぶ可能性もあります。

企業の信用失墜のリスク

不当な対応が外部に漏れると、企業としてのイメージも悪くなります。
採用や取引先との関係にも悪影響が及ぶかもしれません。
一度失われた信用を取り戻すには、時間もコストもかかります。
経営上やむを得ない場合もありますが、対応を誤ると企業に大きな悪影響が出る可能性があるため注意が必要です。

まとめ

今回は、労働条件の不利益変更の実施方法や注意点を解説しました。
労働条件の見直しは、会社の存続や業務改善のために必要となる場合もあります。
しかし労働者の生活に直接関わるため、慎重に進めるべき問題です。
不利益変更に関して不安な点があれば、弁護士などの専門家にいち早く相談してください。