法人が経営破綻した場合、最終的に選ばれる手段として「法人破産」があります。
法人破産の手続きにはどのくらいの時間がかかるのか、そしてその期間にどのようなプロセスを経るのか。
本記事では、経営者や債権者が知っておくべき、法人破産の期間や手続きについて解説します。
法人破産とは
法人破産とは、債務超過や支払不能に陥った会社について、裁判所の関与のもと会社を清算する法的な手続きです。
裁判所が弁護士の中から選任した「破産管財人」が、法人の財産を「破産財団」として管理し、換価できるものは換金するなどして債権者に分配します。
また、借金返済を免除して良いか調査されるなどして、最終的には法人格の消滅により債務も消滅します。
法人破産のメリット
法人破産には、次に挙げるようなメリットがあります。
メリット①債務が免除され、返済や取り立てから解放される
法人破産を弁護士に依頼すると、すぐに債権者に支払停止の通知が送られます。
その後の対応や交渉は全て弁護士が行うため、債権者による取り立ては実質的に行われなくなります。
メリット②負債が消滅する
法人の規模によりますが、数千万円から数億円ほどの負債があったとしても、法人格の消滅によりそれらの負債も消滅することになります。
民事再生など、破産以外の債務整理では債務自体が消滅するということはないので、負債が消滅するというのは法人破産の最大のメリットと言えます。
法人破産のデメリット
一方、法人が破産した場合には、次のようなデメリットが考えられます。
デメリット①会社の再建ができない
法人破産は、法人自体が消滅することになるので、今まで行っていた事業を継続できなります。
また、中小企業の多くは経営者が法人の債務保証をしている場合が多く、そういった場合には、法人破産と同時に個人破産の手続きが必要になります。
個人が破産すると、個人の名義で保有していた財産についても借金返済の対象となるうえ、金融機関からの借入ができなくなるので、もう一度会社を築くことは難しくなります。
デメリット②従業員を解雇しなければならない
破産の場合は会社が消滅してしまうので、従業員を全員解雇しなければなりません。
長きにわたり貢献してくれた従業員を解雇するのは心苦しいだけではなく、今まで培ったノウハウも失うことになります。
法人破産の流れ
法人破産の手続きについて、流れを説明します。
1.破産手続きの申し立て|1〜2ヶ月
債務整理についてまずは弁護士に相談し、最適な債務整理の方法についてアドバイスをもらいます。
その結果、破産することになった場合は破産申し立ての準備を行います。
この準備には、1〜2ヶ月程度かかるとされています。
2.破産手続きの開始|1〜2週間
破産手続きの準備ができたら、地方裁判所へ必要書類を提出し、破産手続きの申し立てを行います。
裁判所による書類審査が行われ、破産手続きが開始されます。
申し立てから手続き開始決定までは1〜2週間程度かかります。
3.破産管財人の選任と調査|3〜6ヶ月
裁判所が破産管財人を選任し、会社の資産や債務の状況を調査します。
破産管財人の調査には3〜6ヶ月ほどかかるとされています。
4.財産の清算と債権者への分配|数ヶ月~1年以上
会社の資産を売却し、債権者に公平に分配します。
資産や負債の規模が大きく、複雑な場合は清算作業や資産売却に時間がかかる可能性があります。
また、債権者が多数いる場合、分配に関する調整が必要で合意に時間がかかることがあるうえ、債権者の異議申し立てや訴訟が発生することもあり、手続きの期間を延ばす要因になります。
5.手続きの完了と会社の解散
最終的に破産手続きが終了すると、会社は正式に解散となります。
ここまで見てきたように、法人破産の手続きにかかる期間は、おおよそ6ヶ月〜2年程度が一般的です。
法人破産が完了するまでの注意点
最後に、法人破産が完了するまでの注意点について解説します。
1.手続き中の経営者の義務
破産手続き中も、経営者は破産管財人への協力や情報提供など一定の義務を負います。
破産手続きが滞ると期間が長引く可能性があるため、適切な対応が必要です。
2.破産による影響を考慮する
法人破産後は会社が解散し、経営者の再起には制約が生じるので、信用回復や新たな事業立ち上げを検討する場合は、事前に対策を考えておく必要があります。
3.法的責任の整理
破産手続き終了後も、経営者個人に対する保証や債務が残る場合があります。
個人保証や役員責任の範囲に注意し、必要に応じて弁護士に相談することが重要です。
まとめ
法人破産にかかる期間は、準備や会社の状況によって大きく異なりますが、一般的には6ヶ月〜2年程度と考えられています。
経営者としては、事前のリスク管理や法的な知識を持ち、必要な場合には迅速に対応することが重要です。
早期に適切な準備を行い、弁護士に相談することでスムーズな手続きを目指すことができます。