金法律事務所

金法律事務所公式ロゴ

就業規則はなぜ必要なのか?その意義と役割を徹底解説

目次

会社運営において、就業規則は欠かせない存在です。
就業規則の存在が労使間のトラブルを防ぎ、従業員の安心感を高める役割を果たすため、企業への信頼感、優秀な人材の確保や定着につながると言えます。
本記事では、就業規則の必要性やその重要性について詳しく解説します。

就業規則の基礎知識

まず、就業規則とは何かについて、順番に説明します。

1.就業規則とは

就業規則とは、労働者の労働時間や賃金、休暇などの労働条件、職場内の規律について定めたもので、職場のルールブックと言えます。
労働基準法第89条に基づき、常時10人以上の労働者を雇用する企業(事業場)での作成が義務づけられたおり、就業規則を新しく作成したり変更したりした場合には、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。

2.就業規則に記載すべき項目

就業規則に記載すべき項目として、以下の3つの項目に分けることができます。

  1. 絶対的必要記載事項
  2. 相対的必要記載事項
  3. 任意的記載事項

絶対的必要記載事項には労働基準法に定められた記載項目として、労働時間、賃金、休暇、退職や解雇事由などを明記します。
相対的必要記載事項とは、制度を設ける場合には必ず記載しなければならない項目で、たとえば退職手当や福利厚生、評価制度などを記載します。
また、任意的記載事項には服務規程や試用期間、休職についてなど、企業で任意に定めた規則を記載することができます。

3.就業規則が対象とする範囲

就業規則は、正社員はもちろん契約社員や派遣社員、パートタイムやアルバイトなど、その企業に雇用されている労働者すべてを対象とします。
原則として、会社役員や業務委託(外注)スタッフには適用されませんが、就業規則の適用範囲についても明確にしておくことが重要です。

就業規則が必要な理由

次に、就業規則が必要な理由について3つ解説します。

1.一定の条件を満たす企業では作成する義務がある

まず1つ目として、一定の条件を満たす企業では就業規則を作成する義務があります。
上述したように、常時10人以上の労働者を雇用する企業(事業場)での作成が義務づけられており、10人という人数は、正規雇用者だけではなくパートタイムやアルバイトなどの非正規雇用者も含みます。
ただし、本社とそれぞれの支店の従業員を合わせると10人以上になるといった場合は作成の義務はありませんが、職場の規律とトラブル防止のため、作成することが望ましいでしょう。

2.労働者保護と権利の明確化

就業規則には、労働時間や賃金といった従業員の労働条件が記載されており、労働者の権利などが明確になることで、従業員が安心して働くことができます。
また、賃金や休暇などのルールが統一されることで従業員の安心感が生まれ、従業員間の公平を実現することにもなります。

3.労使間のトラブル防止

就業規則は、労働者側だけではなく使用者(企業)側も遵守する必要があります。
たとえば残業代を支払わない、休暇を取得させないといった不当な扱いの防止につながり、労使間のトラブルを未然に防ぐ役割を果たします。

就業規則の作成・運用時の注意点

次に、就業規則の作成・運用時の注意点について解説します。

1.法律に準拠した作成

就業規則の作成にあたっては、社内の人事部や総務部などが作成する以外に、社会保険労務士や弁護士など、人事労務の専門家に依頼する方法があります。
どちらの場合についても、労働基準法や関連法規に沿った就業規則の作成が重要です。
自社で作成する場合は、厚生労働省のホームページで「モデル就業規則」を公開しているので、自社の実情に応じた就業規則作成の参考にすると良いでしょう。

2.従業員への周知が必須

就業規則は新規作成後、または変更後に全従業員に周知されることが法律で義務づけられています。
周知の方法としては社内の見やすい場所に掲示する、電子的データとしてパソコンで閲覧できるようにする、書面で配布するなどがあり、その内容を従業員がいつでも確認できる状態にしておく必要があります。

3.実態との乖離を防ぐ

実際の運用と就業規則に記載された内容とが一致しているかどうか、定期的に確認することが重要です。
不一致がある場合は、労務トラブルの原因となる可能性があります。

就業規則の見直しが必要なタイミング

最後に、就業規則の見直しが必要なタイミングについて簡単に解説します。

1.法改正があったとき

たとえば、働き方改革関連法や育児介護休業法の改正など、労働に関する法改正があったときは、必ず見直しが必要なタイミングと言えます。
なぜなら、労働基準法92条1項により法律に違反した就業規則は無効になることが定められており、就業規則で定めたルールが法律違反にならないか、定期的に見直す必要があります。

2.社内制度の変更時

人事評価制度や労働時間制度の変更など、社内の仕組みに変化が生じた場合は、それに合わせた規則の見直しが必要と言えるでしょう。
また、事業規模が拡大し、さまざまな働き方が求められるようになれば、それに応じた就業規則も必要になります。

まとめ

就業規則は従業員だけではなく、雇用側である企業にとっても重要な役割を果たします。
法律に準拠し、実態に即した内容で作成・運用することで、労務トラブルを防止することが期待できます。
就業規則の作成にあたってはさまざまな関連法規に沿った作成が必要となるので、弁護士への依頼を検討することも視野に入れてみてはいかがでしょうか。