相続人同士で遺産の分け方について話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所の遺産分割調停を利用できます。
しかし、調停という言葉に不安を感じる方も多くいらっしゃいます。
この記事では、遺産分割調停の制度概要から申立ての流れ、必要書類、弁護士を依頼するメリットまで解説します。
遺産分割調停とは
遺産分割調停は、相続人間で遺産の分け方について協議が整わない場合に、家庭裁判所の調停委員会が間に入り、話し合いによる解決を目指す手続きです。
民法第907条では、遺産分割について共同相続人間での協議を原則としていますが、協議が整わない場合には、家庭裁判所に調停または審判を申し立てることができると定められています。
遺産分割事件については調停前置主義が採用されており、いきなり審判を申し立てても調停手続きに付されます。
調停は話し合いの場であり、調停委員が間に入って相続人全員が納得できる解決策を探る手続きです。
調停と審判の違い
調停は、裁判官1名と調停委員2名以上で構成される調停委員会が当事者双方の意見を聞きながら、合意による解決を目指す手続きです。
一方、審判は調停が不成立になった場合に自動的に移行する手続きで、裁判官が法律に基づいて遺産分割の方法を決定します。
調停では当事者全員の合意が必要ですが、審判では裁判官の判断によって分割方法が定められます。
遺産分割調停の流れ
遺産分割調停を申し立てる場合、申立先は相手方のうちの1人の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所となります。
申立書と必要書類を裁判所に提出すると、裁判所から調停期日が指定され、通常は申立てから1か月から1か月半後に第1回期日が開かれます。
調停期日は平日の日中に行われ、当事者は調停委員と交互に面談する形式で進められます。
調停が成立した場合には調停調書が作成され、この調書は確定判決と同じ効力を持ちます。
一方、調停が不成立となった場合には、自動的に審判手続きに移行します。
遺産分割調停にかかる期間は事案によって異なりますが、半年から1年程度を要する場合が多いとされています。
調停期日の進め方
調停期日では、申立人と相手方が交互に調停室に入り、調停委員と面談する形式が一般的です。
待合室は申立人と相手方で別々に用意されるため、直接顔を合わせることなく手続きを進めることができます。
1回の調停期日は通常2時間程度で、複数回の期日を重ねながら相続財産の範囲や評価額などについて話し合いを進めます。
なお、裁判手続のIT化が順次進められており、WEB会議システムを利用した調停も実施されています。
遺産分割調停に必要な書類
遺産分割調停を申し立てる際には、標準的な必要書類を準備する必要があります。
遺産分割調停申立書を作成し、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、被相続人の住民票除票または戸籍附票を添付します。
これらの書類によって、相続人の範囲と相続分を確定します。
さらに、相続財産目録を作成し、不動産については登記事項証明書、預貯金については残高証明書や通帳の写し、株式については証券会社の残高証明書などを添付します。
申立ての際には、収入印紙1200円と予納郵券が必要です。
予納郵券の金額は裁判所ごとに異なるため、提出先の家庭裁判所に事前に確認することをおすすめします。
事案により追加で必要となる書類
特別受益や寄与分を主張する場合、それらを裏付ける資料の提出が求められます。
特別受益とは、生前贈与や遺贈を受けた相続人がいる場合に、その利益を相続財産に持ち戻して計算する制度です。
生前贈与に関する契約書、贈与税申告書、振込記録などが証拠資料となります。
寄与分とは、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をした相続人が、貢献度に応じて相続分を増やすことができる制度です。
介護記録、通院付き添いの記録、事業への貢献を示す資料などが必要となる場合があります。
遺言書が存在する場合には、その写しまたは検認済証明書の添付が必要です。
遺産分割調停を弁護士に依頼するメリット
遺産分割調停を弁護士に依頼することには、法的手続きの複雑さと心理的負担を軽減するメリットがあります。
特別受益や寄与分の主張には法的な評価と計算が必要となり、相続財産目録の作成にも専門的な知識が求められます。
弁護士はこれらの法的評価を正確に行い、依頼者にとって有利な主張を組み立てることができます。
また、親族間の対立が激化している場合、冷静な第三者である弁護士が代理人となることで、直接の衝突を避けながら感情的な紛争を法的な議論へ導くことが可能となります。
調停期日への代理出席も可能なため、依頼者が毎回裁判所に出向く負担を軽減できます。
まとめ
遺産分割調停は、相続人間の協議が整わない場合に利用できる法的手続きであり、家庭裁判所の調停委員が間に入ることで冷静な話し合いが期待できます。
民法第907条および家事事件手続法に基づく手続きであり、調停前置主義により審判の前にまず調停を経る必要があります。
申立てには、被相続人と相続人の戸籍謄本、相続財産目録、不動産登記事項証明書や預貯金残高証明書などの書類準備が必要であり、収入印紙1200円と予納郵券も必要となります。
手続きには半年から1年程度の期間を要するため、早めの対応が重要です。
特別受益や寄与分の主張、感情的な対立がある場合には、弁護士を代理人とすることで法的に適切な主張が可能になり、精神的負担も軽減されます。
遺産分割でお困りの際は、弁護士へ相談することをおすすめします。