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加害者が逃げてしまった場合に被害者は補償を受けられるのか

目次

交通事故の被害に遭った際、通常であれば加害者が加入している自賠責保険や任意保険から賠償金が支払われます。
しかし、加害者がそのまま現場から逃走してしまった場合、誰に賠償を請求すればよいのかわからずにいるかもしれません。
今回は、加害者が逃走した場合に被害者が受けられる補償の仕組みや具体的な手続きの方法について解説します。

交通事故の加害者が逃走した場合に被害者は補償を受けられるのか?

交通事故の加害者が逃げてしまい、相手を特定できない状態であっても、被害者は補償を受けることができます。
本来、交通事故の被害者は加害者が加入している自賠責保険に対して請求を行いますが、加害者が不明な場合には自賠責保険を使うことができません。
そこで、国が加害者に代わって損害を補填する政府保障事業が用意されています。
この制度によって、被害者は最低限の補償を確保することができます。
ただし、政府保障事業には以下で説明する注意点があります。

補償の対象は人身損害のみ

政府保障事業では、補償の対象が人身損害に限られるという点に注意が必要です。
車の修理代などの物損損害については補償されません。

補償の限度額は自賠責保険と同じ

政府保障事業の補償の限度額は自賠責保険と同じ水準であることに注意しましょう。
限度額を超える損害については後述する自身の任意保険などでカバーする必要があります。

給付分が差し引かれる

健康保険や労災保険などの他の社会保険から給付を受けられる場合は、政府保障事業の補償額からその分が差し引かれることに注意が必要です。
政府保障事業はあくまでも他に救済手段がない場合の最終的な手段とされるため、他の公的な制度が優先されます。

加害者が逃走した場合に被害者が補償を受ける方法

加害者が特定できない状況で補償を最大限に受けるためには、いくつかの窓口を使い分けることが重要になります。
以下でひき逃げにあった被害者が補償を受ける方法について説明します。

政府保障事業の活用

政府保障事業による補償を受けるには、被害者自身が損害保険会社(自賠責保険を扱っている会社)の窓口を通じて請求を行う必要があります。
請求期間には時効があり、事故が発生した日の翌日から3年以内(死亡の場合は死亡日の翌日から3年以内)に手続きを行わなければなりません。
政府保障事業の審査は慎重に行われるため、実際に金銭が支払われるまでに数ヶ月から1年程度の時間がかかる場合がある点には留意してください。
また、健康保険や労災保険を利用している場合は、その支給決定通知書などの写しも必要になります。

自身の任意保険による補償

政府保障事業の限度額を超える損害がある場合や、物損の被害をカバーしたい場合には、自分や同居の家族が加入している任意保険を確認する必要があります。
契約内容を正確に把握するために、早めに保険代理店やコールセンターに連絡を入れることが大切です。

労災保険や健康保険の活用

事故が通勤中や勤務中に発生したものであれば、労災保険(労働者災害補償保険)を優先して活用すべきです。
労災保険には支払限度額がなく、治療費が全額支給されるほか、休業補償についても手厚い給付が行われます。
政府保障事業よりも迅速に給付が始まることが多く、治療に専念できる環境を整えるための大きな助けとなります。
業務外の事故であれば健康保険を使用することになりますが、交通事故のような第三者の行為による怪我で健康保険を使うには、健康保険組合などへ「第三者行為による傷病届」を提出することが義務付けられています。
これを怠ると後に健康保険組合から治療費の返還を求められる可能性があるため、注意が必要です。

加害者が特定された後の手続き

警察の捜査によって加害者が特定された場合、加害者個人および加害者が加入する保険会社に対して直接損害賠償を請求することができるようになります。
もしすでに政府保障事業から給付を受けていた場合は、その金額を差し引いた残額を加害者側に請求することになります。
国は、被害者に支払った金額を求償という手続きによって加害者から回収します。
加害者が特定されると、刑事裁判が行われることもあります。
被害者は被害者参加制度を利用して公判に出席し、加害者への質問や意見陳述を行うことが可能です。
また、刑事裁判の中で損害賠償の問題を解決する損害賠償命令制度を活用できる場合もあります。
ただし、加害者に支払能力がない場合にどのようにして実効性のある回収を行うかは、法律的な専門知識が求められる難しい問題となります。

まとめ

交通事故の加害者が逃走してしまった場合でも、被害者が補償を受けることは可能です。
しかし、補償を受けるためには被害者が自ら申請しなければなりません。
もし、ご自身やご家族がひき逃げ被害に遭い、どのように補償を求めていけばよいか迷われたり保険会社とのやり取りに不安を感じたりした場合には、早めに弁護士に相談することを検討してください。