2026年から下請業者の取引環境の適正化などを目的に、下請法が取適法になります。
今回は、取適法になったことによる、適用対象などの変更点について解説いたします。
下請法が取適法になった理由は?
下請法が改正され、取適法へと名称が変更された理由には、取引の公正性を確保するための規制範囲と実効性の強化が強く求められたことがあります。
長らく、下請法は、親事業者と下請事業者との間の優越的な地位の差を利用した不当な取引を規制し、下請事業者を保護する役割を担ってきました。
しかし、経済社会の変化やサプライチェーンの複雑化が進む中で、従来の法律では対応しきれない新たな問題が次々と顕在化しました。
法律の名称を変更したことは、単なる下請けの保護に留まらず、すべての事業間取引における公正かつ健全な取引慣行の確立を目指すという、法律の目的と役割の拡大を象徴しているといえるかもしれません。
取適法のおもな改正ポイント
取適法の施行により、取引の公平性を高めるために、主に四つの重要な改正が行われます。
これらの改正は、従来の法律の隙間を埋め、より多くの事業者と取引行為を規制対象に含めることを目的としています。
①適用対象が拡大された
これまでの下請法では、親事業者と下請事業者の区分を資本金の額を基準として行っていました。
この基準は明確である一方で、一部の企業が資本金を意図的に減額することで下請法の適用を逃れるという事例が指摘されていました。
こうした適用逃れの問題を解消し、規制の実効性を高めるために、資本金に加えて従業員数を新たな基準として追加しました。
具体的な基準として、製造委託や修理委託などの場合は従業員300人、情報成果物作成委託や役務提供委託などの場合は従業員100人が基準のひとつとなります。
②下請業者が買いたたかれないように規制が強化された
取適法では、買いたたき規制が強化されました。
現行法においても、親事業者が不当に低い価格で下請事業者と契約する行為は規制されています。
しかし、物価や人件費、原材料費が高騰している状況下で、親事業者が契約価格を据え置くことにより、下請事業者が実質的に買いたたかれているのと同じ状態になっていることが大きな問題とされてきました。
下請事業者が親事業者に対して価格の見直しを求めても、親事業者がその協議に応じないという行為が、不公正な取引として指摘されていたのです。
価格変動が生じた際に親事業者が下請事業者からの価格協議の申し出に応じない行為も規制対象に追加されます。
これは、親事業者に協議に応じる義務を負わせるものであり、下請事業者が適正な対価を得るための機会を保証し、取引の透明性と公平性を高めるための重要な措置となります。
③報酬の支払い条件が見直されることとなった
下請事業者の資金繰りの改善は、事業の安定性にとって非常に重要です。
従来、親事業者による支払手段として広く利用されてきた約束手形は、現金化までに時間がかかることや、手形割引料というコストを下請事業者が負担することになる点から問題視されていました。
政府は、こうした約束手形の利用を全面的に廃止することを目指しており、今回の改正案では、手形による支払いを認めない方向性が示されています。
電子記録債権やファクタリングを利用する場合も、下請事業者が支払期日までに満額の現金との引き換えができることが条件となります。
これにより、手形発行や決済に伴う下請事業者の資金繰りの不安を解消し、迅速かつ確実な現金収入を保証することが期待されています。
④適用対象が物流分野へも適用拡大された
サプライチェーンの維持に欠かせない物流分野においても、発荷主企業と運送事業者との間で、親事業者の優越的地位を利用した不当な取引が行われている事例が問題となっていました。
運賃の不当な買いたたきや、不必要な付帯業務の無償強要などです。
現在、発荷主から運送事業者への委託取引は下請法の規制対象外ですが、改正案ではこの取引も下請法の規制対象に追加されることになります。
取適法が施行されることによる注意点は?
取適法が施行されることによる最大の注意点は、法律の適用を受ける親事業者の範囲が大きく広がることです。
適用基準に見直しが入った結果、特に情報サービス業や役務提供を主とする業種において、従来は下請法を意識する必要がなかった企業が、新たに親事業者として規制対象となることが見込まれます。
企業は、この改正内容を深く理解し、自社の取引全てについて、下請法が求める義務を遵守できているかどうかを徹底的に見直すことが求められます。
具体的には、取引先に発注書を交付する義務、代金の支払期日を守る義務、そして特に重要なのが、価格協議に真摯に応じる体制を社内に整備することです。
価格転嫁を円滑に行うためのガイドラインを参照し、取引先からの価格見直しの申し出に対して、部門間で連携して透明性のある対応ができるように、社内体制の整備や教育が急務となります。
新たな規制対象となる企業は、コンプライアンス違反による指導や勧告を受けないよう、改正法施行に向けて準備を進める必要があります。
まとめ
今回は、2026年1月より施行される取適法について考えていきました。
取適法の施行により、契約書の見直しなどをしなければならない可能性があります。
見直さない場合、会社の信用を下げてしまう可能性もあるため、不安な方は弁護士に相談することを検討してください。