離婚時、夫婦の共有財産を夫婦で公平に分ける仕組みが、清算的財産分与です。
たとえ夫婦どちらかの名義の財産であったとしても、それが夫婦の協力によって築かれた財産であれば、清算的財産分与の対象です。
この記事では、清算的財産分与の対象や、分配するときの割合について詳しく解説します。
清算的財産分与とは
夫婦が協力して築いてきた財産は、基本的に、離婚時に公平に分配します。
それは共働きであっても、どちらかが専業主婦(主夫)であっても変わりません。
たとえ専業主婦であっても、家事や育児を担うことで就労していた相手の生活を支えていた場合には、夫婦で協力して財産を築いてきたといえます。
そのため清算的財産分与では、財産を2分の1ずつ分け合うことが基本です。
財産形成の貢献度に応じて分配割合は変わる
分配するときの割合は、財産形成への貢献度に応じて変わります。
たとえば夫婦のどちらかが収入もなく、家事や育児も行っていなかった場合、財産形成に貢献していたとはいえません。
この状況で財産を2分の1ずつ分けることは不公平です。
そのため貢献度が低い場合には、分配割合が少なる可能性があります。
また特殊な資格や技術によって多額の収入を得ていた場合、その人は財産形成への貢献度が高いといえます。
その資格がなければ、それだけの収入を得られなかったと考えられるためです。
たとえば医師や弁護士など資格を生かした職業や、危険をともなう職業など、その特殊性とそれに対する報酬額によって、分配割合が変動する可能性があります。
そのほか、マイナスの貢献も考慮されることがあります。
どちらか一方が莫大な金額を浪費した場合、分配割合に影響を与えることがあります。
財産分与の対象となる期間
清算的財産分与は、婚姻期間中、夫婦が協力して家庭を築いていた期間に形成された財産を公平に分け合います。
そのため夫婦関係が破綻し、別居していた場合には、別居するまでの間に築いた財産を分け合うことになります。
離婚が成立していなくても、別居後に築いた財産は、夫婦それぞれの特有財産として認められます。
清算的財産分与の対象となる財産
対象となるのは、夫婦が協力して築いてきた財産です。
そのため、それぞれが結婚前から所有していた財産は分け合う必要がありません。
また結婚後に得た財産であっても、夫婦のどちらかが相続や贈与などによって得た財産は個人のものであると認められ、分与の対象外です。
さらに、夫婦の合意によって「個人の財産である」と認めた財産については、分与の対象から除外できます。
具体的な財産の例
清算的財産分与の対象となる主な財産は以下の通りです。
- 預貯金
- 不動産
- 有価証券
- 生命保険
- 退職金
- 家財道具
不動産の名義が夫婦どちらかの単独名義であったとしても、分与の際には相手にその価額分の財産を分配する必要があります。
夫婦どちらかが不動産を取得し他方には現金を渡す方法や、不動産を売却してその売却益を分配する方法によって分配します。
退職金
将来支給される予定の退職金も財産分与の対象です。
退職金は、労働の対価の一部を後払いする仕組みであると考えられます。
そのため、婚姻期間中に働いた分の退職金は夫婦で分配できます。
退職金の分配は、原則として離婚時に行います。
しかし実際に企業から退職金が支払われるのは退職時であり、離婚時には手元にありません。
経済的な理由により離婚時に分配することが難しい場合には、夫婦の合意のもと、分割払いや退職時に支払うなどの取り決めを行うことも可能です。
個人年金と厚生年金
個人年金は生命保険などの契約と同じものと考えられ、財産分与の対象です。
個人年金を解約した場合に得られる解約返戻金の額を分与の対象額とします。
一方、社会保険の一種である厚生年金は財産分与の対象にはなりません。
ただし、保険料の納付実績を夫婦で分割することは可能です。
専業主婦歴が長く厚生年金保険料の納付実績が少ない場合には、将来的にもらえる年金額が少なくなります。
そうならないよう、年金分割手続きをして納付実績を分け合っておくことで、将来に備えられます。
対象となるのは婚姻期間中の厚生年金部分であり、基礎年金や私的年金部分は対象外です。
専業主婦や扶養の範囲内で働いているなど第3号被保険者であれば、配偶者の合意がなくても2分の1ずつ年金分割できます。
まとめ
この記事では清算的財産分与について解説しました。
婚姻期間中に夫婦で協力して築いた財産は、基本的に2分の1ずつ分配できます。
ただし財産形成への貢献度の違いによって、分与の割合が変わることもあります。
現金や不動産など現在手元にあるものだけでなく、将来的に支払われる予定の退職金も財産分与の対象です。
対象となる財産や分与の割合は状況によって異なるため、財産分与を行う際には専門家の弁護士までご相談ください。