法人破産は、企業が多額の債務を返済できず、裁判所に破産を申立てる手続きです。
破産手続きでは、法人が持つ資産を現金化し、債権者に公平に配分します。
この際、債権には法的な優先順位が定められており、その順番に従って弁済が行われます。
本記事では、法人破産における債権の種類とその優先順位について詳しく解説します。
法人破産における債権の種類
法人破産手続きで取り扱われる債権は、以下のような種類に分類されます。
- 財団債権
- 優先的破産債権
- 一般破産債権
- 劣後的破産債権
- 約定劣後破産債権
これらの債権は、法的な優先順位に従って配分されます。
法人破産における債権の優先順位
法人破産において、優先的に充当を受けることができる債権は、優先度が高い順に、財団債権、優先的破産債権、一般破産債権、劣後的破産債権、約定劣後破産債権となります。
破産をする法人が有していた財産については、上記優先順位にしたがって充当されるため、財団債権の債権者は充当を受けやすく、約定劣後破産債権の債権者は、充当を受けにくいといえます。
各債権の特徴の解説
法人破産における各債権には、それぞれ特徴があります。
以下で、各債権の特徴を解説します。
財団債権
財団債権とは、法人破産という手続きとは別で、破産財団から支払いを受けることができる手続きであり、もっとも優先的に支払いを受けることができます。
財団債権に当たるか否かは、政策的観点から決せられます。
財団債権にあたる例としては、破産管財人の報酬や破産にかかる登記費用などといった破産手続きに必要な費用や、破産手続開始決定前3か月分についての従業員の給料債権があげられます。
また、納期限から1年間を経過していない租税債権についても、財団債権となります。
優先的破産債権
優先的破産債権は、法律で特に保護されている債権であり、一般破産債権よりも優先的に配分されます。
優先的破産債権の例として、財団債権にあたらない未払い賃金や、財団債権にあたらない租税債権があげられます。
賃金は、当該企業に属する従業員の生活の基盤となるため、重要な債権といえます。
したがって、賃金債権を優先的破産債権とし、破産債権の中で優先的に充当を受けることができるようにすることで、従業員の生活を保護するという趣旨で、賃金債権が優先的破産債権に該当します。
優先的破産債権の中でも優先順位があり、租税債権がもっとも優先され、賃金債権などの私債権はもっとも劣後します。
一般破産債権
一般破産債権は、優先的破産債権に該当しない通常の債権です。
これは破産手続きにおける配分の対象となる資産が残っている場合に、割合に応じて弁済されます。
一般的破産債権の主な例としては、金融機関や取引先からの借入金や商取引に基づく未払い債務といった、通常の商取引による破産企業に対する債権がこれにあたります。
一般破産債権は財団債権や優先的破産債権に比べ、配分の優先順位が低いため、破産財団に十分な資産がない場合は、全額が弁済されないこともあります。
劣後的破産債権
劣後的破産債権は、一般破産債権よりもさらに優先順位が低い債権です。
この債権は、一般破産債権までのすべての他の債権が弁済された後、残った資産がある場合に限り配分されます。
劣後的破産債権該当する主な債権は、破産手続開始決定後の遅延損害金や利息といった元本に付随する債権や、延滞税や加算税などがあげられます。
実際には、破産企業に十分な資産がない場合が多く、劣後的破産債権が弁済されるケースは稀です。
約定劣後破産債権
法人破産において、もっとも配当の優先順位が低い債権は、約定劣後破産債権です。
約定劣後破産債権は、債権者と法人の間で、法人破産の場合に、劣後的破産債権よりも配置順位を低くする点について合意した債権を指します。
約定劣後破産債権は、劣後的破産債権まですべて配当が完了した時にはじめて弁済がされますが、法人破産の場合に劣後的破産債権に配当があるまで財産が残っていることは珍しく、約定劣後破産債権の配当まで行われることはほとんどありません。
したがって、約定劣後破産債権を有している場合には、当該債権に対する配当はないと考えても問題はないといえます。
まとめ
本記事では、法人破産における債権の優先順位と各債権の内容について解説しました。
法人破産における債権の優先順位は、財団債権、優先的破産債権、一般破産債権、劣後的破産債権の順に定められており、さらにそれぞれの債権には特徴があり、どの範囲で弁済が行われるかが明確に規定されています。
法人破産をする際は、これらの債権の性質を理解したうえで、会社の財産状況を理解して手続きを進める必要があるため、法人破産を検討する際は、弁護士に相談することをおすすめします。